2020/11/22 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にミシェルさんが現れました。
ミシェル > 「それでは、今月の定例成果発表会を始めたいと思います」

王城のホールの一つでは、王国の貴族を始め魔術師や騎士達が集まって会合を開いていた。
魔導機械に関する新しい発見や発明を発表する会である。
そして、檀上には数個の機械と、司会に呼ばれ前に立ち挨拶する男装した女貴族。
ミシェル・エタンダル女男爵は朗らかなよく通る声で貴族達に成果を発表していく。

「最初に発表いたしますのはまずこちら、先週発掘され今朝ようやく解析が終わった……」

魔法の水晶で壁に資料を映し、紙でも資料を配り、時には実演も交えながらミシェルは自分の発見、解析した魔導機械を説明していく。
その度に、貴族達からはおぉ、だとかあぁ、だとかと声が漏れ聞こえる。

「……以上で、私の発表を終了します。質問等ございましたら後ほどお気軽にお尋ねください」

ミシェルは檀上を降りていく。次に成果発表する魔術師が檀上に上がっていく。
さて、自分の発表はどれだけウケたかな?聴衆に混じりながら、
ミシェルは自分に興味を示してそうな者がいないか周囲を伺った。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にレナーテさんが現れました。
レナーテ > (「……言葉がわかっても、理屈がわからないことってあるんですね」)

魔導機械に関する発表会に出席したものの、話が理解しきれない。
彼女の視野の中で隅の席でぽつんと一人、難しい表情を浮かべていた。
第零師団の刃としても動くこともある自分達の装備の大半は、魔法とそれに携わるものばかり。
現状装備や設備に困ったものはないものの、当面の衝突が遠ざかったであろう懸念が消えたわけでもなく。
向こうが力を強めれば、此方も強めて喧嘩させたくないようにしなければならない。
それもあり、新しい技術と知識の取り入れとここに参加したのはいいのだが……さっぱりわからないのである。
魔法は分かるのだが、機械的な部分は造兵廠のメンバーが主体なので畑違いなのだ。
とはいえ、きっちりと話の要点らしいところは手帳にびっしりとメモを取っており、同じ畑の人間が見ればわかりそうには纏めておいた。

(「こっち側でも研究用に小さい工房を敷設したほうがいいのかも……」)

等と今後を憂いる様に瞳を伏せながら、小さくため息を零す。
次の研究結果を発表する魔術師の話が始まれば、ハッとした様子で顔を上げ、回ってきた資料を受け取りつつ手帳の新しいページを開く。
時折専門的な難しい言葉が出てくる度に、目が点になったり、頭から疑問符が浮かびそうになりながらも、手だけはしっかり動いていた。

ミシェル > (んー……?)

ミシェルの視界に留まったのは一人の少女。
場違いなほど若く見える割に、誰かの付き人という風でもなく一人だ。
とはいえ、魔術師なんかは若き天才などといった者も珍しくはないのだが…。

(…あれ、わかってるのかな?)

熱心にメモを取っているが、どうも聞いた話をそのまま全部書き写しているといった風で、落ち着きがない。
ここに集うのは大体が魔導機械に理解のある人間だ。魔術師は勿論、貴族も、騎士も、それなりの知識を有しているのが殆どだ。
メモを取るにしても要所だけだろう。
ミシェルはおもむろに近づく。

「やぁお嬢さん、メモに忙しそうだけど大丈夫かい?」

そして、親し気に声をかける。
彼女は女には優しいのだ。

レナーテ > 普段の業務であれば護衛も兼ねたお手伝いが二人程いたりもするのだが、彼女達もどちらかといえば前線派の肉体派。
恐らくこの場につれてきたら、年相応な分からない顔をするだろうし、難しさに眠りこける可能性すらある。
流石にそれも失礼なので一人というのもあるが、彼女が近づくと比較的近くに居た貴族や騎士、魔術師も一瞬だが彼女へ視線を向けた。
祟り神と呼ばれる王族が雇っている私兵戦力、その長の代理を務める少女。
下手なことをして死神の鎌を首に掛けられたくはない。
だからこそ、死線へ踏み込むような彼女の正気を疑うのだろう。

「……! ぇ、ぁ……は、はい……! すみません、何分専門外なので……なるべく要所らしいところをとは思ってたのですが…」

集中していたのもあり、声をかけられると驚いた子猫のように跳ねる。
金色の瞳をまんまるにしながら彼女に振り返ると、先程の方だと驚きに淡く唇が開く。
そして、眉をひそめながらに謝罪混じりな答えを返していき、頭を下げるようにわずかに揺れる。
ほんのりとシトラスの香りが零れ落ち、口調は畏まってはいるが不意打ちもあって年相応な声色と笑みを見せた。

ミシェル > 「専門外とは珍しいね。ここに来るのは分かってる人間だけだと思っていたが…誰かの代理かな?」

知っていれば、王族の私兵の一員などといういかにも危ない人間に声をかけるような貴族はいないだろう。
だが、ミシェルは魔術と女にしか興味が無いような人間だ。
貴族なので流石に政治も軍事も何も知らないということは無いが、興味は薄い。
故に、どんな相手だろうが躊躇なく接するのだ。

「あぁ、メモは僕がやっておこう」

言うがいなや、筆記具と手帳に手をかざし、何やら呪文を唱える。
すると、それらはふわりと浮きあがり、猛烈に文字を書き記していくではないか。

「専門外なら一字一句書いておいたほうがいいのかな?」

女は笑う。優男がするような、爽やかな笑みだ。

レナーテ > 問いかける言葉には、苦笑いを浮かべながら小さく頷いていく。

「代理といえばそう……ですね。造兵廠の方が聞けば分かると思うのですけど、私は魔法の部分以外はよくわからなくて。」

こうも踏み込むように声をかけられたのは久しく、二重に驚きが重なる。
メモの手が止まっていると、彼女の魔法が自動筆記の如く文字を連ね始め、その光景に、わっ…と小さく声を零しながら子供っぽく吃驚していた。
続く言葉にはこくりと頷くと、ありがとうございますと柔らかに微笑みを浮かべながらお礼を告げる。
背丈や格好、雰囲気から男性っぽさはあるものの、自分にはない胸元の豊かさや声の高さは間違いなく女性の象徴。
異性でない分、安堵していき、その顔を見上げていた。

「申し遅れました、私、チェーンブレイカーという組織で秘書をしているレナーテといいます」

よろしくおねがいしますねと言葉を重ねて、改めて頭を下げていく。
軍事や政治に興味が薄いとしても、魔の技術を求めるということなら、こちらの組織の経歴に覚えがあるかも知れない。
ティルヒア戦争の最中、未完成だった速射魔法技術である魔法銃が投入され、国ではなくこの組織にだけ接収されている事。
一昔前、隷属から逃れるためにミレーの一族が編み出した魔力コントロールを主とした魔法弾技術、魔法弓を得ている事。
多目的船に搭載された、巨大な魔法の大砲から放たれる広範囲攻撃の魔導機械じみた装置など。
魔力に長けたミレー族を活かす魔法技術が満載されている組織。
それこそ、まだまだ魔法を主軸とした技術を隠しているのではと言われたりもするのだとか。

ミシェル > 筆記魔法に驚く彼女に、ミシェルは新鮮さを感じる。
研究畑の魔術師の間では割と普及している魔法だが、彼女はあまり見たことが無いらしい。
なら魔法が使えるといっても戦闘がメインなのだろうか?こんな子供が?

「レナーテ嬢か。僕の名前はミシェル・エタンダル…
まぁさっき発表してたし知ってるだろうけどね」

女男爵は優雅に一礼する。

「チェーンブレイカー…あぁ、あの面白い魔法武器いっぱい持ってる傭兵連中?」

チェーンブレイカーという名前は知っていても、組織自体への理解はあまりないようだ。
しかし、興味深い魔法アイテムの持主だということは知っているようで、その瞳は一気に輝いた。

「じゃあ君、あの魔法銃だとかを使ったことがあるのかい?いいなぁ…」

レナーテ > 戦闘に携わる魔法や、生産に関わる魔法はよく見てきたけれど、こうして利便性に秀でたものというのはあまり目にしたことはない。
こんな魔法が使えれば、どんな事ができるだろう。
最初に浮かんだのは、事務職担当の娘達の年度末が大変楽になりそうだというところで、微笑みを浮かべながらその様子を眺めていた。

「ミシェルさんですね、よろしくおねがいしますね?」

続く冗談めかしたような言葉に、たしかにそうですねとくすっと微笑みながら頷く。
礼儀正しくていい人だなと、王城にきて出会う人々の大半とは異なる様相に嬉しくなる。
そして、彼女が口にした自分達の印象も今までにない反応で、パチパチと瞳を何度か瞬かせていた。
小さく頷いて肯定すれば、先程とは違い、興味に満ちた視線は彼女が研究者だと改めて思わされるところ。

「はい、面白いって言われたのは初めてですけど。ふふっ、こう見えて教える側の人もしてるんです。私はメインの娘が居ない時の代理ではありますけど。そこのケースの中と、これが魔法銃です」

近くの壁に立てかける様に置かれた革製のケースを指差し、続いて自身の腹部の辺りを示す。
壁の方のケースは長さと大きさからして、小銃サイズのものを収めるのに丁度いいものだ。
そして腹部には、革製のホルスターに斜めに魔法銃が収められているのが見えるだろう。

「先程の発表も今も、ミシェルさんはこういったものが本当に好きなんですね? どうすごいのかとか、どう画期的なのかとか、私はよく分からなかったのですけど、凄く楽しそうに喋られてましたから」

そちらに明るくない身としては、詳しいところはわからないけれど、知や技術を追い求める姿は尊敬するところを感じさせる。
柔らかな微笑みを浮かべながら、そんな彼女の姿勢を自然と褒めていった。

ミシェル > 「へぇそれが…意外に小さいのもあるんだね」

興味深げに、レナーテのホルスターを見る。
噂は聞けど現物を手にしたことはない魔法武器、それが目の前にある。
ミシェルは少し興奮を覚えた。
思わず手を伸ばしてしまいそうになるところで、レナーテの言葉にはっとする。

「あぁ、大好きだよ。じゃなかったら研究なんてしてないさ。
今は大昔の遺物を掘り出して真似しているだけだが…
いつかはこれを作った連中に自慢できるようなものを作るつもりでいる」

先史文明の遺産たる魔導機械。
今はまだ謎だらけだが、それでも進歩はある。
それはその研究に己の人生を捧げる王国魔術師たちの努力の賜物だ。

「ところで、君は秘書だって言ってたね?
ならこの筆記魔法にも興味があるんじゃないかい?
意外と簡単なんだよ、これ」

そう言いながら、今も熱心に手帳に文字を書き記している筆記具のほうを見やる。

レナーテ > 「職人さん達の努力の賜物ですね。このサイズに落とし込むのは大変だったと聞いています」

性能を落とさず、一定に保って数を揃えるのは至難の業。
それがどれほど大変か、どれほど手間かというところは詳しくは存ぜぬところだが、手に取れば分かる技術の結晶だ。
それが彼女に手に渡る前に話題が切り替わったのは、幸いといったところか。

「それでもすごい事だと思います。自分が知らないこと、わからないことを真似ることだって大変だと思います。ふふっ、ミシェルさんならきっとできそうですね?」

自ら危険な場所へと踏み入って、失われた技術を掘り返すだけでなく、それを習得しようとしていく。
未開の世界となった場所を切り開く熱意と姿勢は、研究者らしさに満ち溢れて見える。
故に彼女のような人がいれば、この国もまだまだ腐りきってはいないと思えてくるのだ。
彼女の言葉に微笑みを重ねながらその言葉を肯定していき、続く言葉には小さく頷いた。

「実は……秘書とはいっていますが、いろんな仕事をしてたりしますから、この魔法も使えたら、年度末決算でいっつも疲れ果ててる娘達も、少しは楽になるかなって」

どういうロジックで動いているかはわからないものの、決まった文面を自動筆記してくれるだけでも手間が省けそうだ。
そう思いつつ手帳の方を見やると、意外と簡単という聞き捨てならぬフレーズに目を輝かせながら彼女の方へと視線を戻す。

「ほ、本当ですか……っ!?」

声が大きくならないように抑えながらも、少々興奮気味に問い返してしまう。

ミシェル > 「本当さ、魔力の素質があるなら本一冊読めば習得できる」

基礎の基礎からやるならもっと勉強が必要だが、
とりあえず使えるようになるならこれで十分だ。
目を輝かせて食い入るように見るレナーテに、ミシェルは笑う。

「住所と必要な数を教えてくれ。後で僕が入門書を見繕って送ってあげよう」

安い本ではないが、そこまで高い本でもない。
貴族と研究者としての収入なら男十冊だろうと買えるだろう。
女男爵は女性には優しいのだ。

「それにしても、僕ならできそうか…そうだといいんだけどねぇ」

ミシェルはため息をついた。

「この国が無限の暇と予算をくれるなら出来そうだけど、
生憎そんな余裕も無いみたいだ。目に分かる成果を出せってせっつかれてるよ」

魔族とも、諸外国とも戦ってるし、そもそも王も決まらず安定していない。
ガタガタのこの国では魔導機械が生命線のようなもので、
それだけにそれを扱う者たちには当然、色々と注文が来る。

「現にほら、君も知ってるだろ?ナントカとかいう賊に占領された城塞を攻略するための兵器を開発中だって話。
僕も参加しているし、ここで発表したものも殆どがそれに使われる。
それはそれで楽しいんだけどノルマが厳しいんだよ…」

思わず、そんな愚痴を言ってしまう。

レナーテ > 「それなら……! ぁ、いいんですか…?」

魔力の素質なら、ミレー族である皆に素質があるといえる。
これは思わぬ収穫を得たと、情報だけでも喜ばしいことなのに、彼女に申し出にあわあわとしてしまう。
でも、せっかくのご厚意を無下には出来ず、申し訳無さそうに眉をハの字にしながら頭を下げると、送り先と数を伝えていく。
これで皆が目の下にクマを宿しながら、ぐったりとしながら夜食を掻き込む可能性が減ると信じて…。
そして、送ったエールに溢れる嘆息は予想外のことで、どうしたのだろうかと少し心配そうにその顔を見上げた。

「目にわかる成果、ですか…」

研究と言っても、やはり時間もそうだがお金も必要。
それは銃や装備の開発に必要な予算やらを聞かされる身としても、よく分かるところ。
彼女が思わず愚痴ってしまう内容も、ここ最近耳に入る話ばかりだ。
城塞都市の奪還は、こちらとしても直ぐ側に蜂の巣があるような怖い思いをする。
それの攻略に必要な兵器とならば、それはもう大掛かりな装置が必要になるのは想像に容易く。
それに似合うノルマとならば、自身に満ち溢れた彼女がこうも弱音を吐くのも無理はないと思えた。
成程と納得した様子で何度か頷きつつ、苦笑いを浮かべながら理解を示していく。

「あそこの奪還は私達としても望むべくところですからね……私からも、雇い主さんへ進言してみます」

色々お世話になったお礼もあるが、彼女のような素晴らしい人を疲弊させてはならない。
そんな事を思いながら、発表会よりも彼女との現状の談話に時を過ごすだろう。
後に本のお礼というように、カルネテル家の祟り神と呼ばれる男から、ノルマへの援助が僅かばかり濃くなったかもしれないが、今は知れぬこと。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からレナーテさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からミシェルさんが去りました。