2020/10/20 のログ
メイラ・ダンタリオ > この飢えこそが、ダンタリオの証
戦と性に注がれたからこそ得た剛力と狂気だった
王以外に飼い慣らせる者などいない 唯一絶対 それが王を笑みに変える

そしてそれ以外は侮蔑と恐れを馴染ませる
メイラは空ばかりを斬りつけて飢えた両腕が、ふくらみ、筋肉を主張するような強張りを感じる
人型の木偶にたっぷりと、魔導機械の成れの果てを塗したそれを見る
両脚を支える台が床に食い込んだそれ

重量 硬度 形 全てが誰彼を相手にすることを意識するようなもの
後方の切っ先を引きずるようにして近づいていく。
引きずる鉄の音は、不気味極まりない
まるで処刑人の斧が近づいてくるそれのように

例え相手が意識のない、ただの鉄と木の暮れだとしても
今のメイラの渇きが、“うがい”程度には癒えるだろうか
その三日月形の口元で噛み締めた、ギザ歯がまるで虎ばさみのようにこじ開く。

「■■■■―――っ!!」

重量級の両剣を手に、裂帛のような猛りが口から出ながら叩きつける。
右での袈裟に振り下ろした、身体ごと廻すようそれ。
右、左、右、左 王城の中で鉄の悲鳴が何度も響き渡る

斬り落とすようにではない ぶつけ殺すようなケダモノのようなそぶり
わざわざ切り落としやすい関節ではなく厚い部分を狙った撃
鋼が奮える音、撓む音が響き続ける。
火花という、剣花が幾つも先、鉄欠片が零れていく。

メイラ・ダンタリオ > 叩き続ける 斬り続ける 左右に伸びた鉄塊を操る中心の柄
段々と形が食い込み 削れ、変形していく魔導機械の木偶人形
王城 王族は騒音迷惑と顔を顰めるだろうか

しかし誰彼であれ此処を潰すことはできやしない
王ならばいざ知らず、此処を潰そうとすれば立ち上げた者が牙を剥く
ならば奴輩を貶めようとすれば幾つが犠牲になるかもわからない

腐敗してしまえば腐り切った歯抜けの顎
噛みつくことすらできやしないのだから
故にメイラもまた、それを理解しており、身体を回しきるような横薙ぎがとうとう首を落とす
赤も白も桃もない、金属色のそれがべったりとついた木の頭が飛び、壁に辺り転がろうと止まらない

「―――ガァッ!!」

貴族令嬢があげていい声じゃない、と見た者がいれば呟くか
両の手で肩に沿って担ぐように持たれた両剣
振り下ろすような動作と構えのまま、真ん前を向いていた逆の刃が突きという形で捻じ込まれた

継ぎ接ぎの間と間へ無理やりこじ開けられ、木偶の胴体を突き破る。
鉄が別れ、木が千切れる音と共に食い込んだ状態のそれに対し、抜く動作と共に身体を回す
狂々と廻りながら抉れた胴の半分のまま、重さで勝手にちぎれ落ちたそれが堕ちる音が、石壁の中で響いた

「はぁぁぁ……ふぅぅぅ……。」

汗を滴らせ、白い吐息を吐き出すメイラ
臓腑から生まれた熱が、冷たい空気を焦がし白く凍る
そこでやっと区切りになった。

持ち込んでいたのか、塩と柑橘が絞り込まれた水の瓶
其処へ近づき、煽りながら体はまだ熱を産んでいる
長い黒髪の一房が首と頬に張り付いているのを、後ろ髪ごとバサリと払いのけ、背中へと綺麗に戻った。

メイラ・ダンタリオ > 事が終わり、筋肉の熱も冷める
身体が、気が、一応は済んだというのか。
メイラ自身の汗が熱ではなく冷を帯び始めながら、飢えが消えた

それはほんの一時のことながら、鉄と木切れも役に立つ、と笑みを深める。
剣を確かめるや、身体を解し直し、黒布に愛剣を包みなおすだろう。

その場を離れる際、手短な王城に仕える者へ訓練場の片づけを命じていく。
言わずともいいものの、すれ違い様でのそれだった
このまま富裕地区へと戻る頃には夜がくる。

そろそろ戦地へと戻るかと思いもする中で
今はこの痛めつけるように動き続けた身体を強靭につなぎなおそうと
肉と酒精を食むだろうか。

ご案内:「王都マグメール 王城 訓練場」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にリズさんが現れました。
リズ > 「ニーナ……ニーナ、どこ………?」

白いネグリジェ姿の小柄な人影が、静まり返った薄暗い廊下を、
ふらふらと漂い歩いている―――といえば、まるで季節はずれの怪談のよう。
確かに長い黒髪は良いだけ乱れているし、表情もぼんやりしているが、
大きな枕を抱え、ぐずるようにある人物の名前を呼び歩いているのは、
紛れもなく生きた子供、幼い公主である。

「ニーナ……ニーナのお話じゃないと、リズ、眠れないの……
 ねぇ、ニーナぁ……どこ、いっちゃったの?」

くすん。
啜り泣くその理由は、いちばん気に入っていた侍女が、最近そばに居ないからだ。
先日、この公主を危うく失踪させかけた、その責めを負ったということらしいが、
この子供の頭はそんなこと、聞いても理解していない。

かくして、拗ねて、ぐずって、別の侍女が髪をとかしてくれるというのも拒んで。
あげく、寝たふりをして侍女の目を盗み、ひとり、お気に入りの侍女を探しに出たのだ。
ぺたり、ぺたり、室内履きのままの足音は、あっちへふらつき、こっちへよろめき、
今度は城内で迷子になるつもりか、というありさまだった。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にロブームさんが現れました。
ロブーム > 黒いローブの男が、彼女の背後に突然に現れる。
突然も突然――ほんの刹那の間に、男は少女の後ろに現れたのだ。
男は、威厳のある声で、少女を呼び止めた。

「如何なされたかな。少女よ」

振り返れば、そこに黒いローブの男がいる。
その怪しげな風貌は、本来決してこの様な場所に居てはいけないものだが――しかし、見張りの兵士や通りがかる王族や貴族も、何故か此処にはいない。

「もし宜しければ、このロブームに話しては頂けないかな?
もしかしたら、力になれるやもしれぬ」

と、屈んで少女との目線を合わせて言う。
普通ならば、怪しまれ、人を呼ばれる所だが、彼女はどうか。

リズ > 幼い子供であれば、そもそももう眠っているべき時間である。
もちろん昼間であったとしても、このぼやぼやした小娘が、
突然背後に現れた人物をいぶかしむ、なんてことはなさそうだが。

背後から声をかけられて、その近さから反射的に振り返ったものの、
ぱしぱしと瞬きながら相手を見やる眼差しにも、小首を傾げる表情にも、
警戒心らしきものはまったく見当たらず。

「ろ、ぶーむ……って、おじちゃんの、お名前?」

耳慣れない名前をたどたどしく復唱し、もうひとつ、ふたつと瞬いて。
屈み込んでくれたことで同じ高さになった相手の顔を、眠たげな眼差しで見つめながら、

「おじちゃん、ニーナを知らない?
 リズね、ニーナを探してるの。
 ニーナじゃなきゃ、おやすみなさい、したくないの」

ぐすん、と小さくしゃくりあげるオマケつき。
しかも名乗られたにもかかわらず、堂々と相手をおじちゃん、と呼んだまま。

ロブーム > 少女がたどたどしく復唱すると、それに頷く。
間近で顔が近づいた事で、男の肥え太った醜悪な顔が見えるだろう。
とはいえ、男は好々爺らしく笑って見せると、

「うむ。我が名はロブーム。おじちゃん、とは……否、光栄な事だ。
君のような無垢なる心に、そう呼ばれるのなら」

そう言って、男は彼女の頭を優しく撫でて、それから少女の訴えに耳を傾ける。
ニーナ、なる……恐らく女性、それも侍女か乳母か。
とにかく、彼女を探しているらしい。

「否、私は知らない――が。しかし、君は運が良い。
私は、こう見えて魔法使いなのだ。それも、とても力のある、な。
当然、君の探し人を見つける事など、簡単な事だ」

と、いけしゃあしゃあと嘘をついてみせる。
彼は悪魔である。
それも、人の美しき心を堕とす事を生業とするもの――本来、人間側の王城になど、決していてはならない存在である。
だが、この少女にそれを理解せよという方が、無理な話だろう。

「しかし……それ故に。
君が本当に、私の力を借りる素質があるかどうか、そのテストをせねばならない。
それも、実に大変なものだ――幼き君にこの様な事を言うのはこちらも心苦しいが、これは魔法使いの掟なのだよ」

と、尤もらしく言ってみせる。
つまり、こういう事だ。
ニーナを探して欲しければ、こちらの言うことを聞け――と。

「もし、君が私にニーナを探して欲しいのなら……」

と言うと、少女の目の前に白亜の扉が現れる。
その先には、豪奢な――それこそ、王族の部屋の様な豪奢な部屋の光景が映し出されている。

「この扉の向こうまで、進むと良い。
そうしたら、そこで試験を始めるのでな――」

リズ > 相手の外見を、その美醜によって判断する、という物差しは存在しない。
異性を異性と認識する年頃になれば、あるいは、といったところだが、
現在のところ、この幼い公主が抱く好悪の感情は、相手から向けられる感情に依存しており、
とくに、分かりやすい上澄み部分の優しさに、あっさり懐く傾向があった。

なので、笑顔を向けられればもともと低いハードルはないも同然になり、
頭を撫でる掌があたたかく感じられれば、それだけでふにゃりと相好を崩す。
そして話をまともに聞いてくれるなら、あっさり信頼を寄せるのだ。

「むく、なる、こころ……は、よく、わからない、けど。
 ―――――え、おじちゃん、魔法使い、なの?」

これもまた、あっけないほどに信じた。
きらきらと大きな瞳を輝かせ、抱えていた枕をきゅっと抱き締めて、
飛びつかんばかりに相手との距離をさらに詰める。

そもそも、帝国民にとって、魔族という存在自体があまりにも遠い。
おとぎ話に出て来る、魔法使い、のほうが、まだしも身近な存在であるぐらい。
そして、なんの力も持たない子供には、相手が嘘をついていることも、
相手が隠している禍々しさも、何ひとつ分かりはしないのだ。

「リズ、難しいこと、分からないの……でも、
 おじちゃ、……ロブームさん、の、言うこと、聞けば、
 リズ、ニーナにまた会えるの?」

幼いなりに一生懸命、相手の言葉を咀嚼して、やっとそんな結論に達する。
たぶん間違っていないと思うけれど、心なしか不安げに、相手の顔を窺い見ながら。

―――――突然、目の前に現れた扉。
その向こうに広がる光景が、ここではないどこかのものなのでは、という危惧さえ抱けず、
こくん、とひどく素直に、小さな頭は上下に振られた。

「リズ、行く。
 ニーナに会いたいもの、……ニーナに、おやすみなさいって言いたいもの」

ほかの侍女たちに聞いても、もう彼女はおそばには現れません、と繰り返されるばかり。
けれども目の前のこの人は、探せる、見つけられる、というから。
大好きな侍女に会いたい一心で、小さな足はそっと踏み出される。
開いた扉の向こうを、おずおずと覗き込んで、―――――そうして、その奥へ。
赤子の手をひねるより容易い、とは、このことであったろう―――――。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からロブームさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からリズさんが去りました。