2020/09/08 のログ
■エリア > 「わたくしは感覚もありませんし、部屋の名前も覚えておりません。
それで探し当てるのは無理ですわ。ええ、早々に諦める事に致しました」
案外切り替えの早いタイプ。そう勝手に決断してその上で、違う楽しみ方を思い付いた。
年若い兵士にはよくある事だが――言い含める様に微笑みかけると割と素直に受け入れられる事もある。
今回はそのパターンに嵌って頂けた様で。面倒ごとを嫌う彼からの了承に得心がいった様に柔く首肯を見せ。
「お願い致しますわ。――申し遅れました、わたくしファンケット家の長女、エルセリアと申します。お名前を伺ってもよろしくて?」
騎士でもなく食客の兵士という事で略式の礼で済ませつつ、彼の名前を問い。
自然と右手を差し出した。探索に連れ回すつもりの癖に手を取ってのエスコートを求めるのは半ば癖であった。
■ブレイド > 割と適当な…切り替えの早い。
悪く言ったら身勝手な令嬢らしい。
というには少しばかり年が上なのだが、見目麗しいためか
違和感はあまり感じない。
「まぁ、そりゃいいんすけど…アテとかは」
探索と言っている以上…そして、思いつきである以上、そんなものはないだろうが
一縷の希望に託して聞いてみることにした。
差し出された手を取れば、ひとまず…あるき出そう。
そうでなければむしろこっちが引っ張られそうだ。
「あー、すんません。ブレイド…ブレイド・エッジっす」
兵士だと言うのに遅れて名乗ってしまうあたり作法がなっていなかったのかも知れない。
それをふまえても、目の前の令嬢が活動的すぎるところがあるだろうが。
■エリア > 「勿論――ありませんわ。
そうだ、あなたのお気に入りの場所や面白い場所などはありませんの? 新たな王城の一面を発見したい処ですわ」
どこへ行くのかなんて、野暮な事は恐らく訊かない方が良かったのだろう。何故ならもっと面倒な返しがやって来るからだ。
歳の割に屈託のなさそうな、楽し気な笑みを刻みながら緩やかに小首を傾け。
嘱託兵士のお気に入りスポットなど、如何にも面白そうに思えた。
きっと貴族や王族の行かない様な場所があるに違いない、と期待を寄せる。
「ブレイド…エッジ……どうお呼びすればいいかしら?愛称などはございますの?」
個人的にどう呼べば適当かが判断できず、やはり小首を傾げて。
「わたくしの事はエリア、で構いませんわ。そう呼ばれておりますの。――あら、あちらから何か良い匂いが……」
名についての話を自分で振っておきながら、取られた手を逆に引く様に甘い匂い……砂糖と小麦粉の匂いに誘われて、ふらふら、とアカシアに吸い寄せられるミツバチの様にそちらへ歩を向けていた。
■ブレイド > 「…増築されてるってなるとわかんねぇっすね。
といいますか、オレみたいなただの兵士が勝手に部屋に入ると怒られるんで」
巡回任務はするが、それ以上は認められてはいない。
王族貴族のサロンやらプライベートな部屋があるこのあたり。
地理がわかっても部屋の内容まではわからない。
期待に答えられないのは申し訳ないが、中庭とか訓練場にいってもおもしろくないだろう。
「特に愛称はないっすね。ブレイドでいいっす」
槍を担ぎ手を引いて歩く。
呼ばれ方は特別なものでなくてもいいだろう、別に。
むしろこっちがなんと呼べばいいのか…やっぱり様づけだろうか?
などと悩んでいると…別方向に引っ張られた。
「うおっ!?」
なるほど、こういうことか…。
■エリア > 「あら、残念……。ですが、ここでお勤めなのでしたら――きちんと、人の来ない昼寝スポットは確保しておくべきですわよ? 勿論、すでにお持ちで教えて下さったとしても、誓って口外は致しません」
砕けがちな彼の敬語に何となくつられてきたのか、気の置けない調子になってきた。
何となく、勘と言えるのかも知れないが謀略の渦巻く城内で、何かと不慣れな様子のこの若い兵士は余り気を遣わなくて済む相手に思えた。
「解りましたわ。ブレイド。今日はわたくし専属としてお願いいたします。もしも上役の方に咎められる事がありましたら、どうぞわたくしの名をお出しくださいな」
こうして連れ回すせいで彼が仕事をサボっていただろう、と咎を受けるのは忍びない。故に責任は持つ、と。
そしてふらふら…と甘い匂いにそのまま引っ張られ、少年の手も引っ張り、やがては今は菓子職人の働く厨房まで吸い寄せられてきた。まさに今オーブンで焼かれている菓子の鼻腔を擽る甘い香りが一杯に全身を包んだ。
■ブレイド > 「あ、いいんっすかね。そういう場所なら探す気にもなるってもんっすけど…」
意外というかなんというか。
見たところ温室育ちのお嬢様と言った感じだが
妙にこちらに理解を示すような…むしろ悪戯好きといった風情だ。
おかげさまで、少し気楽だ。
「専属、うっす。えーとエルセリア様…でよろしいっすかね」
彼女の言葉にうなずきつつも、呼び方の確認。
厨房の前まで引きずられていくが…やはり、これは…
「…中に行ってもらっときます?それとも…」
つまみ食いか。
■エリア > 「ふふ。仕事中の息抜きは大事ですわ。もし手頃な休憩スポットをお持ちでないのなら一緒に見つけてしまいましょうね」
効率を考えると適度な休息は不可欠。極秘だが仕官済みで王国騎士たる弟もしっかり確保しているという話。
そう言えば弟とは全く雰囲気は違うが――年の頃は近そうだと感じて。
自然と城の兵士と言うより弟の友人に接する様な態度で。
「エリア、で結構ですわ。そうですね――特別にブレイドには敬称を略しても良い事にしますわ。その方が、きっとお話がしやすいのでしょう? 敬語もそんなに気にしなくて結構よ」
ある程度の身分の人間と接し慣れていないと態度が硬化する人間がいるのは経験上損じている事で。今日に限ってそれは面白くはない、と判断して。悪戯めかした笑みをふわ、と柔く投げかけながら告げた。
「――わたくし、こっそりお菓子をいただくのが内緒の楽しみですのよ」
それとも、と口にする彼の先の言葉を察したように自ら貴族とは思い難い様な事を軽やかな調子で口にし、そっと手を引きそして、扉の隙間から厨房の具合を窺う。つまみ食いスパイを始めた。
■ブレイド > 「お嬢様公認ってなら、こっちも気が楽ってもんだ
一緒に見つけるって…えーと、エリアもそこで昼寝とかしたり?」
こちらに気を遣うあたり
なんというか、少しばかり破天荒な令嬢なのだろう。
迷子になってたあたりから、行動派…いや、むしろ無軌道。
しかも悪戯好きとくる。
見た目の麗しさに反して親しみやすく、思わず緊張と表情がほぐれる。
そして、そういうお嬢様であれば当然。
つまみ食いを選ぶに決まっている。
「…こっちみてないっすね」
エリアが手を伸ばしている間、隙間から職人の様子をうかがって。
■エリア > 「折角の機会ですもの――ブレイドも少しは楽しいと思って頂けないとこちらも詰まらないです。ええ、それもいいですわね。秘密の昼寝スポットで微睡むのはきっと心地良いでしょう」
今頃侍女が血相を変えて城を探し回っている処だろうが。にこりと上機嫌な様子でゆったりと肯定して見せた。
そしてここに来て砕けてきた相手の態度に少し安堵した様に表情を緩め。
「今がチャンスですかしら――まあぁ…焼き立てのアツアツ……」
彼の言う通り焼き上がった菓子をオーブンから取り出して台の上に置いた菓子職人はそのまま別の作業をするのにそこを離れて背を向けている。こそこそと忍び入って絶好のチャンスに型から外された黄金色のフィナンシェを一つ。彼の為にもう一つ。
■ブレイド > 「じゃあ、屋根の上にでもでちまいますか?
エリアがそんなところで昼寝してるなんて誰も思ったりしねーでしょうよ。
寝返りうっておちないようにしねーとだけど」
侍女は可哀想だが、自分には関係のないことだし
彼女の人柄もあってか、むしろこちらも楽しくなってきたところだ。
そして、こちらの言葉にさっとフィナンシェを2つ
見た目以上の素早さで抜き出してきた。
「おっと、とと!?あ、オレの分も?ともかくバレねーうちに行きましょうや」
バレたところで貴族令嬢に文句が言える職人がいるとは思えないが…
エリアの性格上、他の者達も割とフランクに接しているのかも知れない。
■エリア > 「屋根の上……? まあ、そんな場所思いも寄りませんでした。
わたくし登った事ありませんのよ。連れて行って下さいますの?」
万一そんな場所に登って昼寝などしている処を侍女が発見したら気絶する事だろう。
しかし。そんな予想に反して想像するとわくわくと楽しい気持ちが湧き上がって、行ってみたいと意思を示す。
「勿論、一人で食べても美味しくないものでしょう? ええ、見つかったら盗み食いの甲斐がありませんものね」
両手に一つずつ持ったままでは移動しづらい。どうぞ、と一つを速やかに手渡して。
そのまま厨房から逃げ去ろう。人の気配に、職人が振り返った頃にはその場から消えていて。
「ねえ、ブレイド。屋根の上でおやつにしません事?」
屋根にそんなに興味があるのか、まんまと厨房からお菓子をかっぱらって彼の手を引いて言い出した。
■ブレイド > 「ああ、テラスの手すりからこう…
いいっすよ、それくらい。せっかくだし」
彼女の言葉にうなずいて快諾する。
侍女や両親やら、これがバレたら彼女よりもむしろこちらの首が危ない気もするが。
それでも楽しげなエリアの姿をみると、うなずかずにはいられない。
そういう魅力があるというか。
「なかなかエリアもわるいやつっすね。
おこぼれには預かりますがね」
人の悪そうな笑みを浮かべつつ彼女についていく。
これではどっちが案内役だからわからない。
「そっすね、せっかくだ。そっちのテラスから出ちまいましょう。
あの辺りは傾斜ゆるいんで丁度いい」
フィナンシェ片手に手を引く彼女を誘導する。
なんだかんだであっという間にこの令嬢のペースだ。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からブレイドさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からエリアさんが去りました。