2020/06/09 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にラスティアルさんが現れました。
ラスティアル >  王国各地で発生している女性の、特にミレー族の女性の誘拐事件。それを追っていた男は、調査を締め括ることにした。新たに得た手がかりは2つ。王国兵が女性の『徴発』に携わっていること。貴族を名乗る男が主導していたこと。
 これを鑑みれば、情報を得るべき場所は最早明らかだった。

「ふむ、なるほど。これは」

 王城の小ホール。技官に連れられてやってきた半人の男は両手を後ろで組み、もっともらしく頷いた。
 本日の装いは何時もと少々違う。二振りのロングソードとクロスボウはない。鎧の代わりに仕立ての良いダブレットとホーズ、そして光る程に磨いた黒の革靴で飾り立てている。さながら、貴族のように。

「これは、壮観だ」

 空気穴のついた巨大なガラス板の上に立つ男には、数多の嬌声が届いていた。透明な床の下では、様々な形状をした魔導機械に拘束された女性が甘い声を張り上げ背を反らし、腰をくねらせ痴態を晒していた。犠牲者の殆どはミレー族で、これは誘拐事件の内実とも合致する。

「……快楽をもたらす魔力吸収装置とは、考えたものだ」

 半人の男に、神経質そうな細身の技官が愛想笑いを返す。現在ラスティアルの身分は、女王の命により、侍女として最高級のミレー族を国元へ連れ帰ることになった外国貴族、ということになっている。

「いずれ劣らぬ美女揃い。これならば陛下も喜ばれよう」

 顎を上げて眼下の女性たちを見下ろす半人の男は、いつもより尊大な様子だった。演技は完璧である。まあ演技というか、こちらが男の、いわば「素」なのだが。

ラスティアル > 「ところでこれだけの装置、これだけの人員を集めて生み出した魔力を、一体何に使うのだ?」

 技官は何の躊躇いもなくこう言った。「血の旅団」殲滅、と。魔力鉱石の供給が妨害されているので、それを補うのだという。「奴らにはせいぜい岩山を守らせておけばよいのですよ」という技官の口振りには、足元で進む計画への自信が窺える。

「攻城級の大魔術を行う儀式か?あるいは……魔導兵器」

 半人の問いには「詳細は申し上げられませんが」という言葉と共に首肯が返ってきた。つまり、そういうことだ。
 王国の作戦は実に単純明快。王城という最も厳重に守られた場所で、血の旅団の守りを一気に突き崩す武器を開発している。叛徒を討つのに小細工は不要。貫けぬ盾と折れぬ矛、それを大勢で携えて押し潰せば良い。こんなところだろう。

「魔力を吸収され終えた者はどうなる? 命を落とすのか?」

 男の問いには否定が返ってきた。工程を終えたミレー族は、再吸収が可能になるまでの間、神聖都市ヤルダバオートで休養を得るのだという。だが、「この意味、お判りでしょう?」と言い足した技官の顔を見るに、女性らにとって余り良いことは起きないだろう。

ラスティアル > 「委細承知。案内大義であった」

 小さく笑って、男は嬌声を張り上げる女性たちの上を歩み去っていく。彼女らを王城から救い出すのはほぼ不可能だろう。魔導兵器の開発阻止も同様。これだけ情報が明らかにされている理由は、つまるところ、最早阻止出来ないからだ。

「……急がなきゃな」

 見送る技官から離れた半人の男が独り言ちる。そう、急がなければなるまい。さもなければ、自分が欲するあの少女は崩れ去る山と運命を共にすることとなるだろう。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からラスティアルさんが去りました。