2020/04/14 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にキャスリーンさんが現れました。
キャスリーン > ――――酷く、喉が渇いていた。

喘ぐように息を吐けば、ひりつく痛みが増すばかり。
寝間着代わりにざっくりと身体へ巻きつけてきたシーツの胸元を掻き合わせ、
ひやりと硬い床の上、滑らせかけた足を止めた。

「――――何方か、いらっしゃいません、か」

掠れた声でそう問うて、周囲の静寂に耳を澄ます。

夜会の余興に供されて、喉が嗄れる程啼かされて。
何処ぞの部屋で目覚めた時、身体は清められていたのだから、
当然、誰か控えているものと思ったが――――

扉をひとつ、潜った先。
此処は恐らく、外廊下である。
次の間らしきものは無く、其処で控えている侍女も無く。
此処は一体何処なのか、勝手に歩いていても良いものなのか。
判断がつかずに立ち止まり、痛む喉元をもう一方の手でそっと押さえた。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にダグラスさんが現れました。
ダグラス > 先日王城にて開かれたあらゆる職業の人間が集められた大会議。
そこで王城へ訪れたとき、次いでに贔屓の貴族に王族と人脈をつないでもらっており。
王族とは言ってもかなりの傍流らしいし、近年では本当に王家に連なるものか怪しいものも多いらしいが。
自分にはそんなことは関係なく、そして今日はその王族に面白いものを見せてやると言われ再び城へと脚を踏み入れ。

「俺みたいな人間が呼ばれるようじゃ、程度が知れるな」

案内してくれるメイドの尻を見ながら小さくつぶやき。
かつて兵士時代に警備のために何度か来たことのある場所を通って一つの部屋へと案内されていて。

その部屋があるという通路を歩いていれば外から流れる月明かりに照らされる相手を見つけ。
暫く沈黙が漂ったのちにメイドはそのままごゆっくりと頭を下げて立ち去っていく。
どうやら見せたいものと言うのは目の前の女の事らしい。
とはいえ初対面の女にいきなりどうしろというのか悩むように少し顎に手を当てて相手の身体を舐めるように眺め。

キャスリーン > 五感の何れかを損なわれている場合、他の感覚が研ぎ澄まされると聞く。
けれども己の場合は、半ば、意図的に他の感覚すらも鈍らせている節があった。
其れでも、流石に、近づいてくる誰かの靴音には気づく。
――――声を掛けられるか、触れられるかしない限り、此方から注意を向けはしないが。

白いシーツを羽織り、申し訳程度に身体へ巻きつけていても、
頭部から首筋、肩へ至る部分はほぼ露出しており、
裾からは剥き出しの片足、膝辺りから下が覗いている。
貴婦人や令嬢に相応しい慎みとは、余りにも無縁の立ち姿を晒して、
――――――暫し。沈黙の後に、俯いていた面を擡げる。

「……其処に、何方かいらっしゃる、の、ですか」

足音はもう聞こえない、けれどほんの少し離れた場所に、
未だ、確かに人の気配が感じられる。
正しく男の方を向いてみせたが、瞼は未だ閉じられており、
掛ける声音にも、異性に対する警戒心らしきものは欠片も無かった。

ダグラス > 「なんだ目が見えないのか……」

暫くの沈黙ののちに響く声に小さくつぶやいてみせ。
一応アウェイな王城であるし、あまり好き勝手するのもどうだろうかと思っていたが。

目を開かない女を紹介するということはそういうことなのだろうと勝手に判断して相手と距離を詰め。
相手の顎に指を添えれば顔を上げさせて自分の顔に向け。

「あぁ、いるぜ。
 貴族の—————に紹介されてな」

恐らくその名は相手も知る相手なのだろう。
知らなかったとしてもさほど問題はない、貴族が自分の利益のために他人を犠牲にすることなどよく聞く話だ。

「とりあえずここは寒い、中に入ろうや」

一応場所も考えて、粗暴ながら丁寧な言葉で相手を部屋の中に連れ戻すだろうか。

キャスリーン > 返ってきた声は、明らかに男のもの。
伏せた睫毛が微かに震えたが、其れだけならば特段、身構えも逃げ出しもしない。
盲目であることも、城内ではほぼ、周知の事実でもあるので。

だが、――――頤に掛かる指先、仰のかされる角度。
そうして告げられた人の名に、僅か、白い貌に感情の色が過った。
其れは例えるならば、嫌悪だったか、其れとも恐怖だったか。
何れにせよ、ほんの一瞬の幻めいた変化だ。

「……左様で、御座いますか……。
 でしたら貴方は、私の御客様、ということになりますわね」

溜め息のように、半ば独白のように。
顎に触れていた手指からさりげなく逃れつつ、そっと首肯をひとつ。

「畏まりました、……恐れ入りますが、手を、引いて頂けますか」

己が潜ってきたばかりの扉は、半開きになっている筈である。
其処から出て来たのだと察するのは、恐らく容易かろう。
冷たい左手を差し伸べ、控えめにそんな御願いをして。
今宵の新たな客人である男に伴われ、女の姿は部屋の中に消える――――。

ダグラス > 「あぁ、そうだな。
 よくその状態で部屋から出てきたものだ」

そういって肩をすくめれば相手の手を引いて部屋の中へ。
発言から客人の男を相手するのは初めてではない様だ。

いまだわずかに行為の香りが残る部屋を軽く見渡した後。
相手をベッドの縁に座り。

「そういえばあんた面白い目を持ってるらしいな。
 貴族やろうから聞いたぜ?見えねぇ代わりに近い未来を見れるとか?

 その力是非見せてくれよ」

客人用なのだろう、サイドテーブルの上に澄んだ水がピッチャーに注がれていて。
それを二つのコップに入れれば片方を相手の手に握らせて、自分はぐっと一息に飲んでこれからの行為に備えて水分を補給し

キャスリーン > 格好のことを指摘する声に、己が返すのは緩く首を傾げる仕草。
蒼白い頬にごく僅か、赤みが差しはしたけれど。

「……不調法で、申し訳御座いません。
 一人では、身支度も覚束無いものですから……」

そう告げて、曖昧に微笑む。

シーツを引き剥いでしまった分だけ、乱れた寝台が鎮座する部屋。
其の寝台の上にも、床にも、女の着衣らしきものは見当たらない。
男が居た名残も、可能な限り拭われている筈、ではあるが。

キシリ、とスプリングが軋む音に、男が寝台へ腰掛けたことを知る。
己は其の傍らへ、浅く腰を下ろして、から。

「――――面白い、でしょうか……。
 確かに、私は託宣の巫女で御座います、けれど、
 ……面白い、ものを、御見せ、出来るかどうか」

俯いて、歯切れの悪い口調で。
冷たい水で満たされたグラスを手渡されれば、そっと両手で包み持ち、
口の中で礼を言ってひと口、喉を湿らせたけれども。

客人たる男の方へ、顔を向けようともしない。
瞼はかたく閉ざされて、――――躊躇うように、唇を軽く噛んだ。

「御客様、からは……海の、香りが致します。
 潮風の香りと、………其れから、」

ほんの少し、血の匂いが。
そう、声に出して告げても良いものか、また一度、唇を噛んで黙り込む。

ダグラス > 「ほぉ、信託の巫女か。
 ぜひ聞かせてほしいものだな」

軽く足を組み、窮屈なジャケットを脱ぎ捨てれば相手の横我を見て。
小柄で細身ながらしっかり女性らしい体つきの相手の身体を視姦して。

「それから……なんだ?
 心配しなくても俺は何を言われようとかまわん身分だ」

相手の言葉を促すように告げ。
相手から漂う女の香りに何もしないほど人間は出来ておらず。

シーツで隠しきれない太ももや、銀糸の如き髪を軽く指で撫で。

キャスリーン > 触れられることに、一々怯える程初心では無い。
髪を梳き撫でる指先も、シーツから覗く腿を滑る掌も、
己には酷く熱いもののように感じられたけれども。

夜気に冷えた髪の、素肌の、柔らかく滑らかな質感を伝えながら。
手にしたグラスの水面へ、つ、と細く吐息を滑らせて。

「――――血の、匂いが、……少しだけ、ですが」

兵士の類であれば、其れも珍しくない。
しかし、男からは何故か、兵士とも違う気配のようなものが感じられた。

其処で、緩く頭を振った。
客人の職業を探るのは、己の仕事では無い。
此の男を此処へ招いた貴族も、其れは望んでいないだろう。
――――俯いていた頭を持ち上げ、男の顔を真っ直ぐに。
其れから、見えぬ双眸に男の姿を映すべく、震える瞼を開こう。

男の顔を、己は知ることが叶うだろうか。
知るとすれば、其れは恐ろしい断末魔の表情、ということになるのだが。
託宣が下りてくるまで、あと、ほんの数秒。