2020/02/27 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城」にルインさんが現れました。
ルイン > 王城の一角、衛兵やメイド、または役人などが行きかう大きな通路を当たり前という顔で歩く。
本来なら違和感を持たれ侵入者と思われても仕方のない格好だがそれを呼び止める者はいない。

「これだけ簡単に入れて歩けるんだし、人間は能天気だよね」

ちょっとした認識障害の術、それなりな魔法の品や耐魔力があれば抵抗できてしまう術。
それのお陰で城の関係者と思われて歩き回り、気に入ったメイドや女騎士に手を付ける事数度。
そうして今も見学気分で城の中を歩き物色をすると繰り返していて。

ご案内:「王都マグメール 王城」にアマーリエさんが現れました。
アマーリエ > ――会議は躍って、踊って、そこから先に進まない。

予算繰りの話し合いとは得てしてそういうものだ。
個々人の言い分は大変もっともだが、その正しさを全て果たすがために切り分けるべきパイは決して大きくはない。
会議のために用意した書類その他の始末は侍従の騎士見習いに任せ、王城の通路を歩く。

「ああもう、嫌になるわね。必要なコトだからって時間だけが無駄にかかるのって」

長い髪を揺らしつつ、憤懣やらかたない面持ちで歩むのは黒いマントと騎士服に身を包んだ女の姿だ。
マントの背に描かれた紋を見れば、その者が所属するもの、そして騎士服の襟元の徽章を見れば如何なる地位かは知れることだろう。
平時は凛としている面持ちも、面倒事が重ねれば辟易とした色に染まる。
こうも面倒が続くなら、いっそ何か鬱憤晴らしが欲しくなる。例えば美食。例えば、女。

「あとで街にでも繰り出してやろうかしら。……――?」

ぼそ、と嘯きながら通路を進む中、微かな違和感を覚える。普段通りで普段通りではない、そんなズレだ。
常人であればそのまま意に介さず流すものを、認知しえるのは常ならざるモノの端くれ故にほからない。
そのずれは目を凝らせば、丁度ヒトの形をしていた。

「ねぇ、あなた。見ない顔ね?」

だから――、そう声をかけるのだ。我が物顔で闊歩する姿に。

ルイン > それなりにこの国も歩いたが王城という場所はどの場所よりも綺麗どころが揃うようで。
物色するように歩くだけで少なくとも片手以上の好みといえる女性を目にする。
あのメイド服の子もいい、あの騎士も中々と目を付けては歩き。

「あの子もいいね。でも……少し厄介そうかな」

更に歩けば先に見えるのはマントと騎士服を纏った女。
実に食指の動く見た目ではあるが騎士服に見えた徽章に確か…と思い出すようにし。
確か結構な地位の徽章と思い出すと楽しみとリスクを考えては出さない事に決め。

術式を維持したまますれ違い、王城に来た直後に食い散らかした子をもう一度などと考えて行き交おうとしたが。

「…へ?私に気が付けるんだ」

まさか気が付かれている、声をかけられると思っていなかった油断から間の抜けた声を上げて足を止め。
ここに居ますと自分からアピールしてしまう。

アマーリエ > 近衛騎士、並びに兵たちもけっして技量に劣る訳では、ない。その筈だ。
だが、こうしてちょくちょく異物が侵入するというのは、由々しい事態と考えざるを得ない。
最悪何処まで機密事項が漏れているのか、否か。
極論、個々人の単位で自衛をしなければやっていられない時代なのかもしれない。
目についた、悟ってしまったのならばそれを看過するというのは、一軍団を率いるものとしてあってはいけないコトだ。

――故に此処にひとつ、大義名分は整う。

すれ違う、素知らぬ風情で通り抜けそうな姿をかつん、とブーツの靴音を鳴らして呼び止めよう。

「変な感じがしたもの。よーく見たら、気づけるわ。
 ……仕方がないわね、こっちに来なさいな」

声を上げる姿に吐息して、周囲を見回す。確かこの辺りだとあそこが空き部屋だったか。
そう考え、改めて見詰める姿に右手を伸ばす。
その手を掴むことが叶うなら、近場にある未使用の部屋へと引っ張ろうか。他の者達に見られるのも、面倒だ。

ルイン > この国の、一番厳重と言える王城にいる人間を侮っているつもりはなかった…はず。
だからこそ自分としてはそれなりな術を用いていたのだから。
時折に違和感を感じられても通り抜けてしまえば次には忘れられているはずであった。
しかしブーツを鳴らし呼び止められると無理かと諦め。

「それを気付けるのがまず凄いことだって認識すべきですね。
やっぱり位の高い人って面倒なのが多いのかな。
仕方ないね」

正直逃げてしまっても問題は無いのだが、この相手が周囲を気にせずに仕掛けてくる性格ならしばらくはここでは遊べない。
そのデメリットを考えると取り敢えずは付き合い、後は煙に巻く方が損は少なく。
仕方ないなとため息を吐き手を掴まれるとそのまま引っ張られて行って。

アマーリエ > そう。一定水準以上のものであれば、それだけでフリーパス状態で闊歩できてしまうのだろう。
市井の者にも、そういう無理、無茶が通せてしまう力の持ち主が居ることは知っている。よーく知っている。
しかし、認識してしまったからには看過(スルー)してしまうには難しい立場にいる。
面倒なものだ。だが、その一方でその面倒の対価ともいうべき権限その他を行使できる立場でもあるが。

「そうねぇ。運が悪かったと思っておきなさいな。それが多分楽よ。
 特にこの私、第十師団の長――アマーリエ・フェーベ・シュタウヘンベルクに遭ったとなったら、ねぇ?」

空き部屋は、丁度倉庫だったらしい。
薄暗さに灯りの魔術を短く唱えれば、積み上げられた木箱やら何やらが見える。
扉を閉じた後、手を取って引き込んだ姿を検分しながら名乗ろう。

「で、あなたは何かしら?」

埃っぽさにしまった、と柳眉を顰め、マントに纏わり付く埃を払いながら問おう。
無駄な問いではあろう。しかし、一方で戯れるようなトーンを籠めて告げつつ、壁際に押しやるように踏み込んで。

ルイン > 今の術で看破出来る存在がいるならば術を変える必要が出てくる。
そうすると力のロスも増え疲れるのにと肩が落ち。
この国に多い面倒ごとには関わらない者なら話は早かったがそうではなく。

「お互いに運が悪かったのかも。私は最悪すぎるけど。
第十?たしか魔族とのお遊戯に躍起になってる所だったっけ?
あれ……でも確か潰れてなかった?」

相手の言葉に答えたのは的外れな言葉。
そもそもにどの師団がどうなのかと名前以外は覚えていなく、他の師団と勘違いをし。

連れ込まれた部屋は埃っぽく薄暗い倉庫。
こそっと自分の周りにだけ微弱な風を纏う術をかけ埃をシャットダウンし。
相手が魔術の灯りを灯せば木箱や何やらが見えて。

「私?私は永遠の旅人で堕落し堕ちた存在かな?」

正解ではなく嘘でもない、文字通りに自分を表す表現はこれしかないと笑み共に口にし。
壁際に押しやられそうになればするりと抜け出し木箱に飛び乗り腰をかける。

アマーリエ > 詰まるところ、このようなアクシデントは路傍の石に躓いた程度でしかないのだ。
賽を振れば、偶々一番低い目が出てしまったでも良い。物事に絶対がないのだから、その程度の事象であるとも言える。

「私は逆にラッキーだったわ。さっきまで面倒なコトやってたから、気晴らしが欲しかったのよ。

 それ、多分第七師団の方ね。この位調べればわかることだから、講釈してあげるわ。
 うちも潰れたクチだけど、特段血眼にはなっていないわ。他に遣ること色々あるもの」

的外れ、というべきか否か。だが、よく知らない事柄であればこういう反応もあり得るだろう。
故に問題ないと判断できる範囲で言葉を選び、答えよう。
交流こそないにしても、その同行を注視している。彼らが出征するのなら、その空きを埋めに回るのだろうから。

「あら。――永遠、ねぇ。竜が生きるよりも永いのかしら?」

後で埃は魔術を使って焼却しておこう。腰の剣を鞘ごと外し、手近な壁に立てかけては視線を移す。
そこには壁に押しやろうとしたが、抜け出して木箱に座す姿が見える。
豊かな胸を下から押し上げるように腕を組みつつ、考える。
そうしながら、永遠ってこういう存在なのかしら?とか嘯きつつ、向こうの太腿やスカートを触ってみようか。

ルイン > 「ここって綺麗どころが多いから適当につまみ食いして帰るつもりだったのに。

第七師団?私は上で見てただけだし判断できなかったからね。
第十師団も潰れてるんだね」

説明をされ違ったのかと判ると興味があるのかないのか判らない反応。
ただ知らなかった事、判らなかった事を知れたのは良い事だと笑い。
潰れているのにやる事と言われても判らずに首を傾げて。

「その個体次第かな。エルダークラスよりはまだ生きてないね」

どれだけ昔だったか見かけたドラゴンを思い出し、あれよりは生きていない。
けれどもその辺りで見かけるモノよりは生きているから…と指を追って計算して。
どう説明したものかと視線を天井や相手と行き来し、腕を組んでいる姿、豊かな胸に視線が向いて。
触れられた太腿は人間と同じ感触、スカートもその辺りで打っているものと同じ感触であり、触れられた事にくすぐったそうにして。

アマーリエ > 「摘まみ喰いだなんて、――正直看過できないわねぇ。
 私の管轄じゃないから、しょっ引くなんてできないし。手打ちにするのだって面倒だわ。

 でも、ちょっと興味が沸くコトバね。見ていただなんて。
 うちが潰れたのは、私の前。前代の話よ。そこから立て直したの。

 他所の軍団が出張るなら、おのずと何処かに空きが出るでしょ? それを誰が埋めるのかってお話よ」

後腐れなく、分からないようにやられるとなれば罪に問いづらい。
それに如何に軍団の長であったとしても、王城を守る騎士達の管轄の問題になるなど、面倒だ。
遣る必要がある面倒は遣らざるを得ないが、わざわざ遣らずとも良い面倒は売り買いするとなると、さらに大変面倒だ。
困ったものね、と大袈裟に息を吐きつつ、向こうの言葉に耳を傾けては答える。

第十師団は固定した任務に限定せず、遊撃部隊として動ける性質を持つ。
故に何処かの軍が動いた後の後詰に回る、救援に回るということも珍しくはない。

「思った位には、永いわね。
 でも、思った以上にちゃんと普通ね。堕ちたとかいう割にはぷにぷにしてるし」

師団で囲っている竜の最年長位には、永い。そう判別しながら己に向く視線に目を撓らせて笑い、背を逸らそう。
そうすれば、嫌でも豊かな胸元が強調させる。
触れる感触も落ちた、堕落したというには程良く柔らかいという印象を持つ。
奥は、どうだろうか。悪戯ついでに内股まで手を差し入れ、擽ってみよう。

ルイン > 「何処でもやってる事だからお裾分け貰ってもよくない?
だって……二つ隣の部屋でもヤってるし?
私をしょっ引くのが可愛い子なら途中までは付いて行ってもいいかも。

攻め込んで良い所まで攻め込んだよね、でも最後は逆に追われてね。
この国って戦争で潰れて出来て、また潰れてで……正直何時だったかややこしいし。

そんな簡単な話だったわけ…」

大きく広い場所ほど死角も多く、そんな死角で美味しく頂いたのは果たして何人か。
頂いた後は放置だが、この国の貴族は手が早いものが多く、二つ隣の部屋でもそれがあるとさらりと告げ。
万が一見つかってもその被害者としか思われないだろういう確信犯。
そんな件に混じり問題を起こしているので確実に面倒ごとを増やしている一人。
大袈裟な溜息には同情するように視線を向けて。

そして話を聞いていけば第七が駄目になり第十がそこに入ったのだと認識し。

「長く長く旅をしてるよ。
私たちはね、魔力があれば身体は若いままなんだよ」

ドラゴンに勝てるかは別として長く生きてはいて。
背が逸らされると強調される胸元を美味しそうとみてしまい。
触れられる程度はまあいいかと擽ったそうにしてはいたが、その奥に手は進もうとすれば浮き上がって後ろにと下がり。
見ればその背中には黒い二対の翼がいつの間にか生えていて。

アマーリエ > 「いいわよ。――って、言える立場じゃないの。建前上はね。
 ……――奔放過ぎるのって、本当にコトね。あとで蹴り込んでお盛んですね!とか言ったげるわ。
 多分、あなたを認識できてしょっ引けるのって私と同格か、それ以上位じゃないかしら。

 第七の壊滅の真偽を認めるには情報が足りないけど、大筋の流れは多分それで合っていると思うわ。
 
 用兵の問題って割と簡単よ。
 四方に隙なく軍備を置きたいなら、欠けた処に他所から宛がうのは当然の決理よ」

嗚呼、憂さ晴らしいたい事項が増えた。天井を仰ぎ、あとで件の二つ隣の部屋をからかってやろう。そうしよう。
そんな輩が居るのであれば、思いっきり引っ掻き回す方が自分としては愉しめる。あとは知らない。
真偽を定めるのはむずかしくとも、多分嘘は言っていないであろうという予感はある。
正直現行犯でもない限り、取り締まれる立場には居ないのだ。出来て釘を刺すこと位である。

「それはそれで、ちょっと羨ましいわね。
 その翼は、魔族――というには何か違う気がするけど、合っているかしら?」

好きに何処にでも行けるということだ。それは立場ある身を選んだとして、少しは羨望がある。
奥は駄目とばかりの仕草にちろりと舌を出し、ちぇっという風情で手を戻して顔を起こす。
見える翼の色は魔族の其れをつい連想するが、どうだろうか。

ルイン > 「私を黙認してくれたらそれで十分なんだけど。
でもそれがこの国だって私は思うけど。きっと驚くね、それ。
しょっ引かれてもいいって子なら術を解除するかも?

最後の方は観察も飽きたからね、逃げて追撃されてしか知らないから。

本当に簡単な話だけど……この国ってそれも出来てないよね」

本当に真面目な人間ばかりならつまみ食いも無理だそうではないからこそ王城内ですらつまみ食いが出来。
意気揚々と攻め込んでいく光景、それが逆襲され敗走するまでは楽しいがそれ以上はオマケ。
だから細部までは詳しく知る訳ではなく……ただ気に入った数人を食べるついでに助けた程度で記憶にもほぼ残っていなく。
何かの目的で危害を加えようとされない限りは人間にも魔族にも干渉はしていなく。

「立場は捨てれば自由になれる。私もそうだった。
近くて遠い外れ。正解は天使だったもの。下界に染まり堕ちた存在」

元は監視し人間を救う事が存在だったが破棄し自由を得た自分。
すべて捨ててしまえばいいという誘惑と共に笑い。
自分は今は美味しく頂くものであり、今はそんな気分ではないと逃げて。
翼から連想された答えに違うと首を振り答え合わせとして。

アマーリエ > 「駄目よ。……でも、そうねぇ。何か見逃す対価でもくれるなら、考えてあげなくもないわ。
 わたしたちが不毛な会議で血眼でうんうん唸っているってのに、貴族の義務もそっちのけで繁殖行動に励んでいるのが悪いのよ。
 
 ともあれ、参考程度ではあるけど興味深い話を有難う。
 出来ていないなら、権限の及ぶ範囲で適切にさせて貰うだけよ。有事に役立たない騎士なんて塵以下だわ」

真面目な事なんてしたくないのに、真面目なコトをやらざるをえない。
好き勝手適当に遣る、振舞うと標榜している癖に性根が真面目なのだろうか。だが、子供のような悪戯は好きな方だ。
件の師団が最終的にどうなったかどうかの顛末はそれこそ、本人らに聞くしかないが、参考として聞くには値しただろう。その点については素直に礼を述べる。

そして、そう。真面目にできていないなら、状況判断で動いても文句を言わせない余地があると言える。
竜とはそういうものだ。人世なぞ意に介さない。そして、竜を従える騎士や将もまたそうだ。

「でも、捨てたものを拾ったモノが盆暗なら、目も当てられない。後悔はしてないわ。
 天使、ね。堕ちて――どうだった? 後悔してる?」

空いた椅子に誰が座るのか。それが信を置けるものであればいい。だが、そうでないなら、取り返しがつかないことになる。故に捨てられない。
お気持ちだけいただいておくわ、と肩を竦めて天使を名乗るものを、その象徴というべき翼をしげしげと見よう。
実体かしらと思えば、ついつい翼の羽を突き、触ってみようとするのは、子供のようだけど止められない癖だ。

ルイン > 「勝手に見つけておいてそれはちょっと酷くない?私が出せるのなんて……貴族が色々やってるのを知ってるぐらいだよ?
繁殖行動は本能だし仕方ないよ。

助けなかったのを非難はしないんだ。
折角だからサービスしておこうかな。タナール砦付近、今スカスカだよ」

対価と言われても特に何かを持っている訳でもなく。
何が欲しいのか判らなければそれを提示も出来ず、ここでだから貴族のやっている事と例を示し。
その師団の侵攻から撤退までを見守り助けなかったことを非難されなかったことに不思議そうにして。

適切にするという言葉に笑みを見せ、ほんの気まぐれと王国の隙間を口にして。

「アマーリエ見たいな真面目な人間が上にいる間は大丈夫だね、苦労は絶えないけど。
全然、毎日が楽しいよ。好きに生きて食べて遊ぶ。自由って素晴らしいね」

捨てた後を考え捨てれない責任感は好印象を持てる。
多分信じないかなと思っていたが意外な言葉に後悔はないと言い切り。
翼に触れられるとそれは高級な羽毛のようにふかふかな感触をしていて。

「もっと話をしていたいけどそろそろ私はいくね。
次に会える時に可愛い騎士を紹介してくれるなら天使の加護ぐらいはあげてもいいよ。
それじゃね、アマーリエ」

もっと話していたいがタイムアップと残念そうにして。
その姿が段々と透けていけばまた会おうと笑って虚空へと消えてしまって…。

アマーリエ > 「あら、見える処に居たのが悪いのよ。あ、イイわねそれ。そういうお話位で丁度釣り合うわ。

 出来たことかどうかは兎も角、過ぎたことなのに今更非難しても仕方がないわ。それに愉しくもないしね。
 ――サービス、ありがと。あとで手の者を先遣隊として出しておかないと、ね」

金銭のやり取りなど、出来そうな風情には見えない。その気があって何を出せるかどうか次第だ。
故に「考えてあげなくもない」と言ったのだ。
自分の肉欲を満たす云々でもいいが、情報はその内容如何では何かと役に立つ。
現在の砦の情勢を聞けば目を細め、軽く手を合わせて笑おう。かの地も何かと忙しい場所だが、陣取れるなら早い方が良い。

「憂さ晴らしは欲しいけれど、ね。後継ぎ作れとか母様たちもせっついてきて、大変よ。
 愉しいのは良い事だわ。そうじゃないと、自由なんて持ってもやってられないわ。」

長子の責務として、子を孕むのではなく「作れ」という。
気質としてもそうするのは合致しているが、人を選ばないといけないのはつくづく困ったものだ。
自由を得た処で、結局中身のない空虚な自由であれば、捨てた甲斐がない。
故に、楽しいという向こうの現状を何よりと笑う。そうでなければ、天使とて生を謳歌することにはつながらない。
羽毛をさわさわする表情は、どこか子猫を愛でて癒されるような。そんな表情を見せていれば――、

「残念だけど、男ばかりよ。うちの騎士たちは。また、ね。今度は私に見つからないようにね?」

ふっと消えゆく様に残念そうにしながら、見送ってゆこう。
失せてしまえば、そこには何もない。手に残る感触をぎゅっと握って思うのは。

「……名前聞いてなかったわね。仕方がない。
 さぁて。二つ隣りの部屋だったかしら? まだヤってたらお笑い草だわ」

あ、と。思い出したように気づいて苦笑を滲ませ、気を取り直す。
纏わり付く埃を魔術で焼却し、剣を掴みなおして倉庫の外に出よう。目指すは別室。更なる気晴らしのために――。

 

ご案内:「王都マグメール 王城」からルインさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」からアマーリエさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にエリザベートさんが現れました。
エリザベート > 其の夜、狂女の姿は珍しく、静かな自室に在った。

―――とは言え、其れは少し前迄の話である。
現在、白い寝間着姿の女が漂い歩いているのは、自室から程近い廊下。
向かって左手には、私室の扉が並び、右手には窓が並んでいる為、
蒼白い月明かりが差し込んでおり、歩くに困る程暗くは無い。

もっとも、此の狂女にとって、歩き難さなど然したる問題では無かった。
暗かろうが明るかろうが、歩きたければいつでもふらりと。
今宵もまた、不意に足が向いただけのことだ。
両手で己の腹辺りに触れる、いつものポーズは変わらない。
茫洋たる眼差しも、感情の見えない白皙も、また、いつも通りのものだった。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にセイン=ディバンさんが現れました。
セイン=ディバン > 「ったく。相変わらず警備の緩い城だねぇ」

夜も更けてきた頃。男は、王城に侵入していた。
いつもどおり。魔族の国への侵攻作戦などの妨害工作を行い。
あとは脱出を、と。人目を避けて城を歩いているのだが。
曲がり角を曲がり、脱出するための最後の廊下に差し掛かったとき。

「……おっと?」

そこで、一人の女性に出会うことになった。
当然、侵入者たる男は考える。さてどうするか。
逃げるか。あるいは、排除するか。
そのどちらにせよ、まずは近づくか、と考え。
男は、相手にゆったりと近づいた。

「……どうも」

男の格好は、ある意味では執事っぽくはあるかもしれない。
だが、致命的なことにこの季節に、上を羽織っていない。
いわゆるベストにシャツだけであり。見るものが見れば、不振人物だとは一発で看破できるだろう。

エリザベート > 此処が城内の私的な領域であれ、容易く侵入する者は少なくない。
実際、かつての己も、其の様にして入り込んだ者に連れ去られたのだ。

然し今や、すっかり頭の螺子の外れた女は、
曲がり角から姿を現した見知らぬ男性に対しても、
当然そうあるべき警戒心は働かない。
ただ、緩く瞠目しながら一度、ひたりと足を止め、
闇にも溶けぬ白い髪を揺らして、軽く小首を傾げた。

「あなた、は、だぁれ?」

そう尋ねる声にも、相手を不審がる色は皆無。
序でに言えば、尋ねはしたが返答に特段の興味も無かった。
何故なら直ぐに、ぱちりと瞬いて一歩、此方から近づき、

「ねぇ、あなた、わたくしの赤ちゃんをご存知?」

見ず知らずの相手へ向けるには、かなり特殊な問いを重ねるのだった。
因みに此の寒い夜に、己の足は素足である。

セイン=ディバン > 男にしてみれば、この城への潜入はもはや朝飯前。
なんなら、趣味でやってます、というレベルであった。

そんな侵入者が現れたというのに。
であった女性は、まったく動じず。
警備の者を呼ぶことをもしなかった。

「……えぇ、っと」

問いの声色。なにか、透明というか。
意味も意図も感じられぬそれに、どう応えようか。
迷っているうちに、相手に近づかれ、更に問いを重ねられれば。

(……そういや、噂に聞いたことがあった。
 王城には、悲劇的な目に遭ったお姫様が居る、って話)

だとすれば。ひとまずは警戒はしなくていいか、と男は考える。
噂の真偽。どこまでが本当かは不明だが。衛兵を呼ばれることは無いと思えたのだ。

「申し訳ありませんが。自分は、分かりかねます」

とりあえずは相手にそう応えつつ。男は相手に近づき、しゃがみこみ。
その素足に触れてみせる。いくら城の中でも寒かろう、と思いつつ。
相手の身体に視線を巡らせれば……。

(……なんともはや。若そうなのに。
 ずいぶんと美味そうな。熟れた体だ)

そう、男は内心で考える。そういえば。最近は『そういった事』はしていなかったな、と。
同時に、男の中で欲が芽生える。脱出する前に。少し楽しむか、と。

エリザベート > 何事にも動じない、というレベルでは無い。
興味が無い、というより寧ろ、認識すらしていないこともある。
たとえ、双眸がはっきり相手の姿を映していても、
其の相手に向けて言葉を発することがあっても。

但し、『わたくしの赤ちゃん』のことを思い出した時は別だ。
其の問いに対してだけ、女は明確な返答を求める。
ひと時、眼差しをぼやけさせている靄すら晴れる様な。

「……そう、…そう、知らないの」

だから其の答えを聞くと、本気で落胆を露わに肩を落とし、
深い溜め息すら零してみせる。
相手が知らないと答えた瞬間から、相手に対する興味も薄れ――――

「――――なに、を、してるの」

相手が其の場へしゃがみ込んだことさえ認識しておらず、
冷え切った素足に触れる温もりは不意打ちで、ぴくん、と身を震わせた。
再び茫洋と曇ってしまった眼差しが、ぼんやりとしゃがみ込んだ男の顔を見下ろす。
其処に、未だ、目立った感情の色は見えない儘。

「あなた……わたくしの赤ちゃんのこと、ご存知無いのでしょう?
 なら、わたくし、あの子を探しに行かなくては」

そんな台詞を吐きながら、己の両手はまた、何も宿していない腹をそっと撫でる。

セイン=ディバン > 男が聞いた噂。恐らく、この女性のことで間違いない噂。
それが、どこまで本当かは分からない。
だが、もしもすべてが本当なら……。

(……この姫さんの探してる、お子さんってのは)

……そこから先は、男は思考したいとは思えなかった。
正直に言って、同情に値すると思う。
もしも本当なら、ではあるが。
そうしてさまざまなことを考えている間に。
相手は、男への興味をなくしたようであり。

「……あぁ、いえ。足が。
 冷たそうだったので」

男は、言葉短くそれだけを言うと、懐から小さな石を取り出し、割ってみせる。
瞬間、相手の足は、少しだけ温かくなることだろう。
男が常備している、いわゆる暖房代わりの『ぷち結界石』というアイテムで。
少しだけ、暖かい空気を発生させ、自然治癒力なども高めるマジックアイテムだ。

「……それなのですが。
 一つ思い出したことがございます。
 もしかすると、あなたのお子様の居場所を、私知っているかもしれません」

次の瞬間。男の口から飛び出したのはウソであった。
男は、目の前の女性を陥れることに決めた。
普段外で善人面をするのも、疲れるのである。
ならばたまには悪人になってもいいだろう、と。
男は、瞬時に計画を練り、行動に移るのだった……。

エリザベート > 王城へ頻繁に出入りしている者ならば、耳にしていても可笑しくはない。
人の口に戸は立てられぬものであるし、己は当時、婚姻間近の身。
密かに、居なかったものとして扱うには、名も顔も知られた存在だった。

とは言え、其れも此れも過去の話だ。
今の女はただの狂女であり、もしも今宵此の身に何か起こっても、
朝が来て、女の不在が侍女にでも知られぬ限り、
誰一人、気にもしないだろう。

――――かつ、ん。

足許で何かが割れる音、そして、足先に広がる温もり。
寝巻の裾を左手で軽く持ち上げ、不思議そうに己の足許を眺めて、

「今は、冷たくないわ。
 不思議ね、あなた、――――――」

魔法使いか何かなの、と、子供じみた問いを発するところだった。
けれど相手が次の瞬間、己にとって唯一、意味のある言葉を紡いだので。
己は再び、其方へ意識を惹かれることになる。

「……ほんとうに?
 素敵、……それなら、今直ぐ行きましょう。
 あの子、きっとわたくしを待っていると思うの」

泣いているかも知れないわ、そんな風に呟く表情は、
ある意味、母性に満ちている。
然し其れは、酷く歪んだ母性だった。

其の母性に支配される儘、女は男の手の内に落ちる。
男の目論見はきっと、赤子の手を捻るよりも容易く成功しただろう――――。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からセイン=ディバンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からエリザベートさんが去りました。