2020/02/16 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にリスさんが現れました。
リス > 【お約束待ち】
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にミリーディアさんが現れました。
リス > 少女は、王城を歩いていく、今回は、アポを取っての正式な面会である。
 母親の友人ではあるが、立場というものがある彼女故、やはり適当な手続きと言うのは必要なのである。
 当の本人は、面倒くさいから顔パスで良いと言ってくれてはいる物の、其れはいけないんじゃないかと思うのが少女なのである。
 王城の中魔術研究所……と言っただろうか、その場所へと足を運ぶのである。

 目的の扉の前に到着してみれば、こんこんと、扉を軽くノックする。
 確か以前来た時も、ノックは要らない、と言われていたことを思い出す、たしか、招かれざる者には開かれない魔法をかけているとかなんとか。
 少し息を吐き出し、覚悟を決めてみる。

「しつれいしまーす……?」

 そっと扉を押し開けて、少女は中を探るように視線をめぐる。
 今回は、いつもの服装に加えて、籐籠を持っている、ボックス型の手提げ籠である。
 お土産などを入れるときに持ち歩く少女のお気に入りでもある。

ミリーディア > 自分にとってアポイントメントというものは、自身を束縛する面倒なものであるとの認識だった。
其れを行う相手というのは大概表沙汰に出来ない依頼主ばかりだから。
其れでも、偶に其れに該当しない相手からのものも在る。
今回の様な律儀な顔見知りの相手の時等だ。

今居る研究施設内の室長室。
普段の様に柔らかな椅子の上に身を預けていた。
少しでも気を緩めれば寝入り出来そうな居心地の中、施設内へと近付く反応に気付く。
其れでも身を起こしたりしないのが、此の少女で在るのだが。

アポイントメントを取り、扉をノックして入って来る少女の姿。
相変わらずの律儀さだ、見習うべきものだろうがとても自分には出来そうも無い。
そんな事を考え乍、やっと柔らかな椅子から身を起こす。

「やあ、久し振りだねリス君。
今日は如何いった用件かね?君の事だ、遊びに来た訳では無いのだろうが…」

声を掛け乍、確りと少女の姿を目視で確認出来れば嫌でも手にしている籠に気付けるものだろう。
其れにも又期待するものだが、取り敢えずは彼女の用件を聞く事である。

リス > 彼女は面倒くさがりなのと共に、手早い話題を好む女性である、研究室にあるフカフカな彼女の椅子は、何処を見ても見つからない代物である。
 あれが有ると、家の目玉商品になりそうだけどなぁ、と思ったりするのは少女の商売人の心根か。
 彼女の言葉に、扉を締めつつ軽くお辞儀を一つ。

「お久しぶりです、ミリーディア様。
 遊びに来ても良いのですが、お邪魔になりそうで。

 はい、先日、妹がちょっとお出かけして、その際に見つけた物を見てもらえないかな、と。」

 どこに、とは言わない、彼女であれば理解してくれているだろうし、口にすることがはばかられる場所へのお出かけなのである。
 小さく苦い笑いを零しながら、持って帰って来た物を見てもらいたい、と。

「とはいえ、ですね、せっかく来たのですし?
 お土産を先に、と。」

 そう言って、籐籠から取り出すのは、数本の薄いピンク色のワインである。
 其れと、もう一つ箱を取り出す。それは少し甘さを控えめのバターケーキである。

「ストロベリーを使ったワインです、とても甘いのと、普通のワインと風味が違うのでどうぞ。
 あと、甘すぎるので、ケーキは甘さを控えめにしたものにしてありますわ。」

 用件を先に伝えて、その後にお土産を、どうぞ、と彼女の目の前のテーブルに、置くのだった。

ミリーディア > 少女は椅子に付いて何か考えていた様で在るが、其の視線は自分に向けられているものとも取れて。
流石に其の考えを読む様な無粋な真似はしていない為、純粋に彼女は挨拶をしただけと思っていた。
彼女が此処に来た理由を口にすれば、成る程と納得した様子で僅かに身を屈めてデスクに腕を付く。
勿論、其れを見れば大凡の事は解るだろう。
 
「そうか、小さな内は腕白なぐらいが丁度良い。
ばれなければ問題は無いし、あの子なら其の程度の腕は在るんだろう?」

御偉方為らば見過ごしはしないだろう、一応は自分も其の立場だが。
然し事はそう重大で無いと判断出来る上に、不出と為ろう事を理解しているからこそ敢えて不問とする少女で在った。

「お、相変わらず、そうした事に於いても気を遣ってくれて助かるよ。
勿論有り難く頂かせて貰おう。
それにしてもストロベリーのワインか、色々と考えるものだね」

目の前に置かれるワインやケーキに、向ける眼は期待の込められたもの。
理論的には理解出来るのだが、実際に出来た完成品と云うのは人それぞれの出来栄えだ。
其れに期待をしてしまうのは仕方の無い事だろう。

リス > 「ふふ、一応、家庭教師同伴の課外授業という事らしいので。
 その際の、副産物を持ってきたのですわ、力あることは見て判りますけれど、一応判定してもらいませんと、と。」

 彼女一人ではなく、保護者同伴での実地訓練という形、そのせいで、ほんのちょっとだけ、魔族の国に新しい建物が出来てしまった程度か。
 この国の迷惑ではないし、と少女はあっけらかんと笑って見せるのだった。
 なので、彼女の言葉には、肯定の首肯と、持ち上げた籐籠を揺らして見せる、このなかにはいってますよ、と。

「ええ、甘いもの大好き、なんて弱点を教えてくださるんですもの?
 餌付け作戦とか仕掛けてしまいますわ。

 ワインと言うのも色々な種類が有る様ですわ、本当に、見かけた時は驚きましたもの。」

 少女は楽し気に、何処か悪戯っぽく笑って見せてウインクをパチリと一つ。
 難しい話の前に、甘いもので頭の回転を速くしましょうか、と。
 慣れた動きで彼女の部屋の戸棚から、皿とナイフとフォークと、グラスを取ってきて。
 バターケーキを切り分けて、ワインを一つ開封して、グラスに注いで、彼女の前へ。

ミリーディア > 「程々にと伝えておいてくれ。
此方と同様、あちらにも国柄の事情も在るからね。
まあ、其の服産物とやらは後で見るとしよう」

国として迷惑を被る行為で在れば、其れがどんな形で影響と出るか分からない。
そうは云っても、今回の件は直接的な被害を出した訳では無いのだから気にするものでも無いだろう。
流石にそこ迄の事はしないとは思うが、念の為にそう添えておいた。

其れよりも自分にとって重要なのは目の前の品々だ。
彼女の言葉の通りに餌付けだろうと理解はしていても、手を出さずには居られないものである。

「材料を理解出来ていれば大凡の結果も予想は出来る。
だが予想は予想で在り、必ずしも結果が同様とは限らない。
だからこそ、と云うものも在るものなのさ」

改めて自分の考えを言葉として語り乍、支度を始める彼女を目で追う。
まだ来るのは数度目だろうに、其の動きはまるで知ったる何とやら。
切り分けられたケーキとグラスに注がれたワインの準備が整えば、待ってましたとばかりに身を乗り出す。
先ずは香りを楽しみ、味わうのは其の後だ。

リス > 「ええ、彼女たちは、目立ちたくはない―――が、至上な所もありますからね。ちゃんと釘差しておきますわ。」

 彼女の懸念に少女は頷いて見せるから、後でもう一度言って見せることにした方が良いわね、とメモに残すのである。
 確かに、一つの王城クラスの大きさのものが平原とは言え落ちているのであるから。
 その後どうなっているかは、判らないのだけれども。

「料理はとても繊細ですものね、同じものを使っても材料の配分で、調味料一つでがらりと変わってしまう。
 ふふ、さて、だれがどんな思いで作ったのでしょうか?」

 彼女の様子は、自分の母親と同じとは見えない、その容貌も相まっての事である。
 なんとなく、妹を相手にしているような気分に包まれながら少女は、彼女の対面に腰を掛ける。
 バターケーキは、言ったとおりに甘さが控えめである、理由は、彼女の手元にあるストロベリーワインが理由である。
 その甘さは、バターケーキで隠すように。
 しっとりとしてはいるが、ケーキ自体は喉が渇いてしまうだろうからの、組み合わせであった。

ミリーディア > 「ああ、其の件はリス君に任せた。
儂は儂の出来る範囲の事をするだけさ」

同種とは云え、以前問題を起こし消え去った存在とは違う。
下手な人間依りも信頼が置ける存在だからこそ、全面的に任せても良しと出来るのだろう。
寧ろ、最近王国内で起こっている事の方が問題だと云う事も在る訳だが。

「以前、物は試しと腕を揮ってみた事が在ったからね。
よくあれだけの物を、何の力も無しに作れるものだと感心させられるよ」

何かを思い出す様に其の視線を天井へと向ける。
知識と技術は別物なのだと改めて理解出来た一時で在ったと。
そうしている間にも支度が整ったか御互いに対面でデスクに着いた形に為る。
早速とナイフとフォークを手に取れば、手馴れた手付きでケーキを先ず一口。
ケーキだけでも美味では在るが、ワインも共に味わってみれば其の味わいは中々のもので。
もう一口、更に一口と、ゆっくりと味を楽しむ事に集中を。
其の姿は彼女からすれば、見た目相応の少女と見えるかもしれないか。

リス > 「お任せくださいましね?」

 確かに、妹の制御は―――姉である自分の役割だろう、というか、本来は父母の方になるのだろうけれど、実家で今もいちゃいちゃしてるんだろうなぁ、と思考を這わせる。
 彼女は彼女で、第二師団の副団長やら、魔導研究所の所長やら、色々とやることが有るのだろう、知り合いとして面倒を増やすのは本意ではないのだ。

「分量をちゃんとそろえて調理しても、美味しくなるには色々と作業とか必要なのですし。
 そう考えると、パティシエールの人の技量は、本当に凄いと、おもいますわ。」

 彼女の言葉に頷く、少女も似たことを知るのだ、ドワーフの作る武器、それらは同じもので作られているが、それでも良しあしは出てくる。
 同じものを同じ工程で作っていても違うものが出来てくることが有るのだ。
 だから、何時もおいしい物を作れる技術には少女も感嘆を覚えるのである。

「ふふ、たっぷりありますからね。」

 とは言え、彼女の体格で1ホール一度は難しいのではないだろうか。
 後で飲めるようにお酒はいくつか持ってきているが、さて、どうなのだろう。
 少女は美味しそうに平らげる様子をのんびり眺めているのである。

ミリーディア > 彼女の言葉に頷いてみせる。
此方としては仕事の増減の影響は大きいのだ。
尤も普段はそうでもなく、こうしてのんびりと過ごしている時の方が多いと云えよう。
但し、忙しく為った時は完全に真逆と為る。
其の作業量と作業効率は、普通の人間で対処出来るレベルでは無いのだから。

「何事も魔術の様に簡単に出来れば良いのだがね。
誰しも得手不得手と云うものは存在するし、其れが在るからこそ良い処も在るのだろう」

自分も彼女も感じる、相手に対する感嘆と云う感情。
何でも出来る存在が居るとしたら、其れは本当につまらない存在に成るだろうと。
そんな理知的な考えを、ふと浮かべてしまうのだった。

「さて、難しい考えは止めだ。
美味しい物は楽しんで食べてこそ、だからね」

考えを振り払う様に、また一口を頬張る。
そうは云っても自分の胃袋は人並みと云える程でも無い。
見た目相応と云える程のもの、とても1ホールを丸々食べるなんて芸当は出来やしないのだ。
下手をすれば半分どころか、1/3を減らす程度で満足してしまうだろう。

リス > 「魔術は魔術でとても難しいと思うのですわ……まあ、其れこそ、魔術にしろ、技術にしろ、修めた物から見ればなんてこと無い。
 というのが正しいと思うのですわ、得手不得手の前に、修めたかどうかも、また、有るのだと思いますわ。」

 彼女の言葉に、少しだけ修正を入れてみた。人はそれぞれ違う、何せ、同じ技術を取っても、才能が有り修めた者、才能がなく修めた者、才能があり修めない者、才能もなく、修めない者、と細分化できると思うのだ。
 得手不得手に関しては、修めた者にのみ、適応すればいいと思うのだと思う。

「蛇足でしたわ、申し訳ありません。」

 少女は軽く呟くのだった、そもそも才女から前提をどこに置いたものかとか、そんな詳しく考えて無い雑談なのだ、言った後に気が付いて、少女は謝罪の言葉を紡ぐのだった。

「あと、考えは止めるのではなく、後に回す程度にしてくださいなー?」

 美味しそうに食べている彼女に秘書のようなことを言う少女。
 とは言え、最初に、此処に来た理由というものがあるのである、前座ですべて終わっては大変なのである。
 忘れるのだけは、止めてくださいねーと。

ミリーディア > 「おっと、そうだったね。
如何も端的に言葉を洩らしてしまうから誤解されてしまう。
確かに儂が何でも出来るのは知識に魔術が在ってこそだ。
リス君の意見に間違いは無いし問題も無い、安心してくれて良いさ」

謝罪する彼女に納得するかの様に手を打ち乍言葉を返す。
口に出さなければ良いのだか、ついうっかり出してしまう時がこうして在るのだ。
かと云って考えていた事を丸々口にしてしまうのも、其れは其れで言葉が止まらなくなるので大問題であるが。

「分かっているさ、ちゃんと後で考えるから安心してくれ」

止める方の考えは得手不得手の件であった訳だが、又端的に洩らして誤解を生んだらしい。
其れが理解出来れば、彼女に合わせてそう答えるのだ。
取り敢えず、自分だけで考えれば半分も食べきれず満足で。
後は彼女がどれ程食べたかで残りは算出出来るだろう。

先に手が止まるのは此方だと思われる。
そうであれば、次は逆に此方が彼女の食する様子を眺める事となろうが…
其れに関しては如何とも云えない処か。

「さあ、後はゆっくりと食後の寛ぎを……とは、流石にね。
気が向いたらで良いから、さっきの話の続きを聞かせて貰うよ」

と、忘れてない処を見せる様に、そう言葉を添えて。

リス > 「私も口が過ぎましたわ。とは言え、程々には言葉を紡いだ方がよさそうですわね、其れこそ、長年連れ添う夫婦とか。
 気心知れるくらいに共に居る相手ならともかく、ね?

 ありがとうございます。」

 彼女は、恥ずかしい話、生まれたころから自分の事を知っている、自分も又、ちょくちょく出はないが良く会い、良く話し相手になってもらって居た。
 最近は、お仕事もあり、然程お会いできてはいないけれども、幼馴染と言う関係でもあるのだ。
 だから、彼女の口足らずというのは時に理解できてしまうものなのだろう。

「はーい。」

 ちゃんと後で考えてくれると言うなら、少女はそれ以上言う事もない、嬉しく軽く返答して見せるのだ。
 そして、自分の分もと。
 自分の分は、最初に彼女に切り分けた分と同じだけを一つ、此方は贈る方なのだ、味が判ればいいんので、沢山欲する必要はない。
 彼女に楽しんでもらうためのご相伴なのだから。
 なので、彼女とさほど変わる事無く、終わる事だろう。

「はい。確か、風の魔王の遺産ともいえる天空にあるお城に入り込んだそうで。
 その内部には二つの魔道具があり片方は、結界を張り、城を空に浮かべているもの―――風帝の亡骸と呼ばれるものは、妹が無力化しちゃいました。
 そして、城に有った魔法の道具と、城の中の詳細な地図です。」

 そう、言いながら少女はカバンの中から、魔法の武器や防具をひょいひょいと、取り出す。籠は魔法が掛けてあり、見た目以上の荷物を入れられるようになっているようである。
 重量に関しては、少女はドラゴンなので、気にすることなく、持つことが出来るのである。
 そして、最後に、十数枚の、城の詳細なスケッチと、見取り図を出すのだ。

ミリーディア > 「此処に居ると、思った以上に細かな言葉の遣り取りは不要なのさ。
大体はこうした資料で終えてしまうんでね。
長ったらしい説明は助言する時だけのものだろうし、中々如何して難しい。
まあ、其れ以外では気を付ける様にしよう」

彼女に伝える通りに、此処での遣り取りの大体は紙面上のもの。
デスクに散らばった何らかの資料の一つを手に取って見せ乍、そう説明すれば資料をデスクの上に戻して。
理解が在るからこそ頼ってしまうのだが少しは考えねばね、と思うのであった。

如何やら此方が食べ終わった時点で彼女も食べ終わったか。
満足した様子でフォークとナイフを置けば、彼女も同様で。

為らば丁度良いかと、次の話に取り掛かるのだ。
鞄から取り出された品々はデスクの上に、其れ等に軽く目を通してみる。
自分からすれば見覚えも記憶も在るものだった。
其処で生きた者達の存在さえも。
だからこそか、其れ等を見た後に少しばかり考える様な仕草を見せる。

「情報には在ったが、成る程ね、彼も長い生涯を終えた訳だ。
主亡き後は遺跡同様の扱いと成ろう、其処で手に入れられた物は新たな所有者の元で使われるのは当然と云える。
此処の主を殺め奪った物ではないんだ、問題は無い。
尤も残してきた物は如何し様も無さそうなのだし、後は如何にか出来る者が見付ける事を祈るだけだね。
君達で利用価値が見出せない分に関しては儂が引き取っても構わないが、君達次第と云った感じだろう」

と、先ずは資料等に目を通した上での自分の見解を説明する。

「で、だ。
残りの持って来れた物に関してだね。
強い風の精を宿した魔晶石、此の杖は結構な代物だね、後は適当な武器や防具が何点か。
此れは此れで直せば普通に其処等で売ってる物依りも使えるだろう、其れ相応の価値も当然在るだろう」

続けて、残った物に関しての感想も述べた。
詳細まで確りとはまだ調べていないが、手にした事で特別に何か大きな変動が在るとは云い難い。
彼女が好きに捌いたとしても問題無いと判断したのだ。
そうでなければ警告の一つも在っただろう。

「こんな感じなんだが、細かい説明が必要なら確りと調べて書き出しておこう。
今直ぐ出来ない事は無いが、此の数だとちょっと掛かるからね」

と、最後にそう付け足しておいた。
彼女の時間がどれ程残っているかで、其れは又変わってしまうからだ。

リス > 「あぁ………。」

 其の辺りは、理解もできてしまう、店員への指示は言葉にしてするが、店同士のやり取りは報告書と言う形が多いのである。
 彼女らほど多くの書類は使わないので、理解はできるというレベルではある。
 其の辺りは職業の違いというものが大きいのであろう、資料を戻すところを眺めながら少女は有無、と頷くのだ。

 そして、自分の提出した書物を確認している間は、少女は手際よく、お酒は保存庫へ、お皿などは洗い場へと移動する。
 お仕事を頼むのだから、その位の作業はしてしかるべきなのだろう。
 濡れた布巾で、テーブルを綺麗に磨くのも忘れないのだ。

「―――そうですわね。
 それならば、出来れば鑑定の方もお願いできませんか?
 魔法の道具はそれこそ、危険物でもありましょうし、使い方などをある程度説明できなければ、売る事は難しいですわ。」

 魔道具を此処に持ってくる理由の大きな部分は、それである。少女では、魔力と価値は、その目で判断できる。
 しかし、使い方や、効果などまでを、知る為の術がなく、知識が無いのだから、彼女に願うのだ。

「時間に関しては大丈夫です、私、お店にはお話付けてありますので。
 朝帰りでも、問題はありませんの。」

 くす、と笑って見せる。逆に、彼女の時間の方が気になるところである。
 彼女の方が忙しいので、まだ、時間が有るかどうかと。

 売り物に出していいもの、で有るなら売りに出してしまおう。
 すぐ下の妹は杖に興味なく、娘たちもそういうタイプではない、末の妹と家庭教師も使う事は無いだろう。
 其れなら、売り物にしてしまおう、という考え。

ミリーディア > 彼女の様子から如何やら此方の言い分は理解されたらしい。
此れ以上の説明が不要なのは本当に助かるものである。

此方が資料や持ち帰った物に目を通している間、彼女は片付けをしてくれた様だ。
礼を云い乍も其れ等の説明を彼女へと伝えて。
其の後の事も聞いてみれば、直ぐに彼女からの回答は得られる。
時間の方が大丈夫為らば確かめる方向で話を進めよう。
流石に朝帰りをさせる程の時間は掛からないのだが。

「分かった、では調べに掛かろう。
少し暇に為るだろうから、此の前の魔力操作の練習にでも当てれば如何かな?
後で進行具合でも見てあげよう、此方も君が来ると決まった時点で時間は取ってあるからね」

そう伝え、早速と調べる対象へと目を向ける。
一言二言の呟く様な詠唱と集中、其の眼に薄っすらとした輝きを浮かべて。

考えてみれば、此れ等を得たのは風の影響の強い場所に在った物だ。
どれも其れに関した強い結び付きを感じる物ばかりだった。
流石に神掛かっていると云える効果は無いが、魔力付与に依る装甲の強化と風の付属効果が挙げられる。
特に杖に関しては高位魔術師が扱う程の代物で、他の装備品と同じ強化と付属効果。
杖の能力自体にも強い魔力が施され、風をある程度操作出来るのが解った。
魔晶石については此れと云って語る事も無いだろう。
商品価値としては、どれも其れなりに高い物である筈だ。

其の扱い方等細かい部分も在るだろうが、其の説明に関しては紙面上に纏めて書き出しておこう。
識別作業を終えてペンを置けば、其れが彼女への終わりの合図と為るか。

リス > 「はぁい。」

 調べてくれるのに時間がかかる様で、其れゆえに、少女は時間を持て余してしまう、その間に魔術の修行―――魔力の操作の修行との言葉に少女は頷く。
 一日数分程度ではあるが、時間が空いた時には必ず行う魔力の修行、一度パスを結んでしまえば後は良いのだが、パスを結ぶまでが長いのである。
 手のひらを開いて、少女は意識する。うーん、と集中すれば、掌から延びるのは、魔力の線。以前よりは慣れたのか、しゅるしゅる、と細い紐を伸ばすことが出来る位にはなっていて。
 戦闘で使いこなすには拙いだろうけれど日常生活で行う物であれば十分に魔力を変質して伸ばすことが出来るようになったともいえる。
 右に、左に、糸を伸ばして中空を彷徨させて、部屋をぐるり、と一周させるぐらいには。
 一周、二週、三週、彼女がカリカリ、とペンを走らせている間、ずっと部屋中に、魔力の糸を張り巡らせているのだ。
 魔力自体は、竜という事もあり、膨大で、その程度は苦にならない、ぐーるぐーるとゆっくり部屋を巻き付けていくのだ。

「―――、おわり、ました?」

 視線は、彼女に向いた。ペンを置く音が聞こえたので。
 その間も、ぐるり、ぐるり、と部屋の周囲に、魔力の糸を這わせ続けていた少女。
 意識は魔力に向けながら、会話をするという離れ業。

ミリーディア > 識別の魔力を扱い乍にペンを走らせている間、彼女のものであろう魔力は感じていた。
初めての時に比べてかなり自在に変化させられていると云えるだろう。
思っていた通りに彼女の成長速度は速いものだった。

そしてペンを置いて改めて確認をしてみれば、其の魔力は部屋中に何周かされた糸となっているのが見て取れて。

「ああ、杖に関しては少し細かくなってしまったが。
其れにしても此れは中々のものだ、ちゃんと続けていたようだね」

数枚程度のものだが資料を纏め、留めれば少女の前に。
椅子から立ち上がれば部屋に広がった魔力の糸へと改めて目を向ける。

「形が出来たのなら、次はもう少し複雑にしてみようか。
何を如何するのかは、其れを戻してから指示していこう」

そう彼女へと伝えれば、其の先を考え乍に待つのだ。
指導を始めた時点で次の段階、其の次の段階と取り決めは既にしてある。
そして彼女が指示した通りに戻し準備が整えば、次へと進むのだろう。
勿論、其れは時間が許す限り。
そして又今日も予想以上の成果が見込めた為らばと、其れも考えておかないといけないのかもしれない。

リス > 「いいえ、いいえ。杖が一番の難物でしたから。
 一番怖いのは、杖です、魔法を使うのに適してない物とか、魔力が膨大とか、色々ありますし。」

 魔法の武器はどれもこれも曲者だろうが、魔法の杖は特に注意すべきだと思っていた、何故なら、込められている魔法の力と、発動させる魔法の力が相反すれば、モノによっては魔術師自信を苛む物もあることも有るのだ。
 知らずに調べもせずに売るのは、売り手としての少女の商売人としての信頼に傷が付こう。
 故に、一番なのは、杖、なのである。
 まあ、剣などもちゃんと調べておくに越したことはないのである、魔法剣士が買うとも限らないし。
 彼女から書類を受け取って、少女は小さく笑うのだ。

「はい。判りました。」

 伸ばすのは兎も角、戻すのは速かった。しゅるしゅると戻っていく、其れこそ水を飲むような感覚を持ってしまえば、自分の中に戻すのは楽にできる模様。
 しゅるり、と戻してから、少女は待つのだ。
 彼女の考える次のステップと言うものを。
 じっと、空色の瞳は、彼女の指示を、その唇が動くのを待つ。

リス > また別の機会に、口説く事にしますねっ!

それでは、又金土日等、遊べそうなときに連絡、しますねっ!
お疲れさまでした!

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