2019/10/07 のログ
ジナイア > 銀色が吸い込まれた先を、闇の中見つめながら麻の弦指先で軽く弾く。
その音は虫の音に混じって響く。
指先から伝わる軽い痺れのようなものに、瞼を落とすように目を細めると翠が陰った。
憂鬱な気分ではない。
ただ少し、試案に暮れる表情を。

「――――さて」

どう、修練を積んだものやら。
先ずは己の身の丈、身体と技量に見合った弓を見繕うところから始めなければなるまい。
しかし、今は。

風のないはれわたった夜空を見上げてみる。
翠の視線が、月明かりが滲む場所を夜鳥の群れが笛のような鳴き声を上げながら横切っていくのを捉え、熟れた唇の端が綻ぶ。

借り受けた矢筒には、未だ数条の矢が残っている。
巡回の兵士も今日ここ辺りには廻ってこないらしい。だれに誰何されるでもない。

女は視線を落とすとまた、暗闇の向こう、木立の合間に吊るされた的へと眦を強める。
そのままゆっくり、衣擦れの音とともに矢をつがえる。
緊張を孕んで糸を引き絞る音が夜空に溶けて、滲んでいく。
しんと冷たい、秋の夜の空気に
やがてまた、高く乾いた音が。
その日は、舞曲よりも、夜遅くまで。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】 弓修練場」からジナイアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「…いかんな。少々遅くなってしまったか」

政争と欲望が渦巻く王城。今宵も、そこかしこの大広間で放蕩と淫蕩の宴が繰り広げられていた。
勿論、自分もその宴を時には主催する側であり、時には招かれる側でもある。今宵は、客人として招かれていたのだが、公務に手間取って少々遅くなってしまった。

「…まあ、どうせ中身のある集まりでもないが……?」

と、呟きながら到着した広間の前。
その宴の性質上、護衛どころか扉を開く為の従者もおらず、凝った彫刻が施された扉がぽつんと己を出迎えるばかり。
その扉に手をかけた時、中から零れ聞こえてくるのは――

「……御盛んな事だと褒め称えるべきか。それとも、節操がないと悪態をつくべきか…」

甘い嬌声が僅かに漏れる室内の様を想像して、深い溜息を一つ。意識を集中すれば、甘ったるい香の様な香りも漏れ出しているだろう。

遅れたとはいえ、開始時刻から早々経たない内に既に宴はその本質を曝け出している様だ。
どうしたものかな、と一人だだっ広い廊下で再度溜息。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 悩んでいても仕方がないか、と諦めて扉を開く。
途端に己の鼻孔を突くのは、甘ったるい香と酒の匂い。そして、女達を弄る参加者達の姿。

「遅くなって申し訳ない。しかし…随分と皆、精力的に夜会を楽しんでいる様だな」

小走りに近付いてきた主催者に声をかけつつ、早速女を宛がおうとするのを片手を上げて押し止める。
今宵の参加者の中でも上位の王族とあって、横柄な態度を取っても年上の主催者は愛想笑いで頷くばかり。

その様を一瞥すると、取り合えず喉を潤す為に手近にいた女中に声をかけながら室内を眺める。
今宵どう過ごすにせよ、その相手くらいは自分で見繕いたいことであるし。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > そうして、少年の夜は更けていく――
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からギュンター・ホーレルヴァッハさんが去りました。