2019/10/06 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】 弓修練場」にジナイアさんが現れました。
ジナイア > 半月よりもやせ気味の月が、はれわたった夜空に白々と昇った時限。
王城の敷地内、何れかの建物では今宵も夜会が催されているのか、微かな舞踏の音曲が風のない空気を伝ってくる。
下生えが綺麗に刈り揃えられ、所々に設えられた庭園では其処ここに秋の花が夜なお咲き乱れる。近付けば、香しい香りさえ楽しめようか。

漂う音曲の合間を縫うように虫の声が喧しい、その広大な敷地内の一角にはくろぐろと佇む兵士のための修練場があった。
日中はそれこそ血気盛んな声が溢れていたであろう建物は今しんと静まり返り、常夜灯のうっすらとした灯りがともるのみ。
誰ぞ居るような風景ではない―――が

カン!と言う乾いた音が、虫の音に混じって夜空に響く。続いてパン!とごく軽い音。
修練場の脇、王城の建物とは反対側からだ。
低い柵で囲われただけの場所に、幾つかの的が立ち並ぶ、弓の修練の場。
僅かな月明かりの中灯りもともさず、佇む長い黒髪の女がひとり。
放った銀色の光の行く先を眇めるような視線で見ていた眦をゆるめると、ゆっくりと長弓を下ろていく。

「………実戦には、未だかな」

軽く首を傾げると、下ろしたその手で弓弦を、つ、となぞっていく。
月明かりの下で黒髪がぬらりと光り、耳元では金の輪が揺れた。
赤銅色の肌を闇の中に溶かしながらその翠の視線が下へ落ちれば、其処だけがまた月明かりの下で瞬く。

友人の将軍に届け物をした帰り、ふと興を誘われて弓を借り受けて来てみたものの。
的には当たっているようだが…馬上で扱うにはまだまだ鍛錬が必要だろう。