2019/10/01 のログ
ルヴィエラ > (――彼女の結論には、ただ、微笑を向けるのみだ
何処か、愉しげにも見えるのは、きっと気のせいではない
相手が深く追求せぬのなら、此方も其れ以上応える事も無いだろう。
けれど、自己防衛にも似た其の引き際は逆に、相手に"恐れ"が在るのではと
逆に、そう疑念を抱かせる事にも為り得る物だ。)

「此処を訪れるのは、実は初めてでね
この城にも、こんな場所があるのかと感心して仕舞ったよ
美しい物は、どれだけ眺めていても飽きない物だ。」

(四阿の中へと、軽く顔を覗かせてから、中へと踏み入ろう。
成る程、四阿とはいえ城内の其れは、中にも精巧な印章が掘り込まれている
其れも又美術品なのだろうと、一頻り天井や柱に視線を向けた後で
再び、先客たる麗人へと視線を向けたなら

まるで何かを含んだ様な其の物言いに、静かに首を傾けて。)

「それはそれは…随分と、厄介な一日だった様だ。
だが、それが貴族と言う物。 相性ではなく、組み合わせと繋がりこそが優先される。
……勿論、そうやら貴方には、余り好ましい風潮ではないようだが。」

(現実は、そう言う物だと伝えながらも。
けれど、ふわり、月明かりの下で微笑んで見せれば
其の瞳を見詰めたままに、「お疲れ様」だなんて、伝えるのだろう)。

バージル > ――――見知らぬ相手が、如何にも浮世離れしているからか。
常ならば張り巡らせている警戒心の壁が、今宵は少し影を潜めていた。

普段、渡り合っている王侯貴族の類であれば、嬉々として食らいついてくるであろう隙が、
意識せぬ儘、其処彼処に。
四阿に足を踏み入れてきた男を、些か無防備に仰ぎ見て。

「美しいドレスで着飾った≪花≫に飽きられたら、此方をお勧めしますよ。
 油断すれば痛い目をみるのは変わりませんが、少なくとも此方の≪花≫は、
ずっとお淑やかで物静かですから……、」

外から見れば蒼白く、闇に浮かび上がって見えた四阿だが、
中へ入れば随分と、闇が、影が深い。
そんな中でも相手の紅い一対は、何故か炯々と――――見つめ続けていれば、
此方の背筋が寒くなってしまうような。
其れも気の所為であろうか、言葉にして質しはしない儘。

「……ええ、……私の最初の結婚も、家と家との繋がりのためのものでしたから、
 ―――――ただ、今は未だ、≪其れ≫を繰り返す気にはなれないだけで…、」

――――トクン、と鼓動が跳ねる。
たった一度だけ、視線を重ねた其の瞬間だけ、新たな違和感が背筋をざわつかせた。
恐ろしい、と思う反面、魅入られたように――――暫し、見つめ返してしまってから。
溜め息と共に頭を振って、口の中でもごもごと、失礼、と呟き落とした。
膝の上で組み合わせた両手が、知らず、指先の震えを抑えるべく、己の膝頭をそっと掴んでいた。

ルヴィエラ > (――薔薇の芳香に包まれたこの場は
城内の中でも、穏やかな心地で居られる場所なのだろう。
まるで、小さな隠れ家めいた四阿の中で、彼女の戯言に小さく笑う。
確かに、と、其処には同意を重ねて、そして、相手の対面へと位置しては
其の紅い瞳を、静かに、例え瞳が重ならなくとも向け続け。)

「其の花の美しさは、見目だけでは判らぬ物だ。
薔薇の様に棘持つ、苛烈な華も、毒花の様に妖艶な花も
私にとってはどれも美しく愛でるべき者…だけれど
確かに、城内で此処は美しいね。 我も我もと迫って来る華より
いっそ、可憐で居心地が良い。」

(――其れは、薔薇、の事を意味している筈の言葉だ。
けれど相手には、別の意味を含んでいる様にも感じられそうな言葉でも在るか
一瞬、相手の瞳が此方を見上げた刹那に、紅い瞳は
月明りの下で、僅か輝きを増した様に感じられるやも知れない
慌てた様に視線を落とし、膝を掴んだその仕草に、双眸細めては
――ふと、彼女の前、椅子へと座り込み――目線を、合わせて。)

「……家は、誇るべき物とは言え、決して自分と同一ではない
貴方は、きっと責任感が強い人だ。……いえ、私の個人的な印象だけれどね。
でも…少々、自分を殺しすぎるのでは?」

(其処に、果たして愛は在ったのだろうか。
其れは、相手にしか判らぬ事だろう、けれど。
一度は其の婚姻を結んだ相手を、労い、そして、労わるように
告げるのだ、たまには、肩の力を抜けばよいのだ、何て囁きを。

そして――静かに、距離を詰める。 相手の前に膝を着き、膝を掴む其の掌に指を伸ばして
そっと、力を抜く様に。 ……心を、解く様に。 震えを癒す様、柔く撫ぜて)。

バージル > 夜通し繰り広げられる宴の熱気も、狂乱の残滓も、此処までは届かない。
眼前に広がる薔薇園はまるで、此の四阿を俗世から隔絶する結界のようだ、などと、
埒も無い思考を頭の片隅で玩びながら――――
向けられる視線を意識すればするだけ強くなる、痺れるような感覚の正体を、
捉え切れずに、ただ、むず痒さばかりが腰の辺りに蟠る儘。

「――――見かけによらず、随分とお盛んなようだ。
 艶やかに咲き乱れる≪花≫を、愛でに来られたのでしょうか……でしたら、」

男など捨て置いて、広間へでも向かわれては如何か。
そう笑って返そうとしたけれど、上手く言葉が繋がらなかった。
途中で迂闊にも、再び彼の紅い瞳を見つめ返してしまった所為だ。
何故、―――――何故、と、自問するよりも早く。

己の事情の何ひとつ、確とは知らぬ相手なのに。
心の一番深く柔らかいところを捕らえて慰撫するように、男の声は鼓膜を擽る。
大きく目を見開いて、瞬きも忘れて紅の双眸を凝視するうち、
―――――どろり、胸のずっと奥で、何かが崩れ、蕩け出すのを感じた。

「な、……に、を……そんな、大袈裟な、話で、は、
 ――――――ぁ、っ、」

触れた指先から、此度ははっきりと甘美なる感覚が、腕を伝い、背筋を駆け抜けて脳髄を灼く。
思わず洩らしてしまった声を、相手の記憶からも、己自身の中からも、消し去ってしまいたくて、
囚われた掌を、そっともぎ離そうとしながら。

「……お気遣いは、とても嬉しいです、が……私は、男ですから。
 貴方に愛でられる≪花≫には、なれないと思います、が……?」

ぎこちなさを自覚しながらも、辛うじて微笑んでみせよう。
口説き文句は無用です、などと付け加えることで、
此処までの遣り取りを全て、戯れとして封じ込めてしまうつもり。

ルヴィエラ > (城の中では、果たしてどれだけの《花》が散されて居るのだろう。
望んだ者、望まなかった者、欲望の渦にそれら全てが投げ込まれ
私利私欲の為に、或いは、其の中でも微かな愛に従って
只管に、我を忘れる程の熱へと溺れ行く

まるで、娼館の様だ。 一体何が異なると言うのだろう。
何だか可笑しくなって、ふ、と口元の笑みを深めながら
けれど今は、其の喧騒等、如何でも良いと言うかの如くに
ただ、相手を見ていた。)

「……愛し、愛でる術は、何も身体を繋げる事ばかりではないのでは?
……ふふ、冗談だ。 聖人君子を標榜する心算は欠片も無いよ。
ただ…、……貴方の言う通り、つい、気に入って仕舞ったのでね。」

(此処が、そして――貴方が。
相手の事など何一つ知らぬ、其の名前すらも知る筈も無い
けれど、まるで全てを見透かしているかの様な言の葉が
確かに其の刹那から、相手の内へと静かに染み込み始める
一度重なってしまった後、相手からは、逸らされる事の無くなった視線が
静かに絡まり合うなら、次第、惹き付けられる様な感覚すらを
相手へと与えながら――離れようとする指先を、そっと、絡む指が、引き止める。)

「……私に判るのは、貴方が強いと言う事だけ。
けれど、其の強さは何時かほころび、罅割れる物。
――氷漬けの華は、美しい。 けれど貴方は…もっと、鮮やかに咲く花だ。」

(――戯れとして、切り捨てようとされる言葉を。
戯れでは居られない言葉として、再び。
そうして、相手の片掌を、そっと引き寄せては
相手の瞳を、いまだ見上げ、視線を重ねた其の儘に
其の手の甲へと、己が唇を、柔く触れさせ、押し付けて。

――其の、刹那に。
ちろりと、舌先を柔く押し付ける。
ただ、其れだけの事で――相手の、其の身が。
湧き上る様な、熱と衝動に苛まれ始めるだろう。
其れを、果たして、女と言う物を知らぬ相手が…疼き、であると
そう、自覚出来るかは、判らないけれど)。

バージル > 美しく着飾って男を誘い、散らされる振りで男を虜にしてしまう花。
或いは同様に着飾ってはいても、望まぬ散華を迎えて嘆く花。
己を花に喩える不遜が許されるなら、己は初めから、芽吹くことすら禁じられた花だ。
星月夜に忍ぶ薔薇たちよりもずっと密やかに、誰にも気付かれぬことこそ、本懐。
―――――其の筈なのに、如何して。

「……気に、……ああ、です、か…ら、貴方は、何か……、」

勘違いだ、何もかも。
相手も、己も、勘違いをしているのだ。
女として、花として見出されたいなどと、己が望む筈は無い。
其れはずっと遠い昔に、自ら切り捨てた想いであった筈。
もう、とうに忘れ果てた筈―――――そう、心の奥底で繰り返しながら、
其れでも重ねた眼差しを逸らせないのなら、絡め取られてしまうばかり。

逃れようとした手を引き留められ、何処ぞの令嬢に、貴婦人にするような仕草で、
けれど有無を言わさぬ≪力≫でもって引き寄せられる。
腕ずくでは無い、然し、抗う意志を何らかの形で封じられているのなら、
其れはやはり、≪力ずく≫ということにならないだろうか。

声も無く男のする儘に委ねてしまっている己は、未だ気付けない。
己が心の何処かで、瓦解を望んでいることを―――――

「ぁ、……あ、あ、――――――っ、っっ………!」

手の甲に触れる形の良い唇、そして、ほんの微かに濡れた舌先が触れる気配。
其の瞬間、―――――見開いた瞳が翳むほどに、涙の膜。
頬にも、耳朶にも、首筋にさえ、俄かに朱色が差し始めて―――掠れた悲鳴を上げ、
ベンチに座した儘、己は身をふたつに折って蹲る。
空いたもう一方の手で己の喉許を掴み、漆黒に包まれた懐を掻き毟らんばかりに、
――――丸めた背筋が、びく、びくり、不自然なまでに震えていた。

女の性を知らぬ己にとって、何から何まで、得体の知れない衝動。
鼓動が弾み、呼吸が乱れ、下腹に、熱が。

「あ、………ぁ、なに、こ……れ、何、っ………っ、」

怖い、助けて、誰、か――――――見知らぬ男に囚われた儘の手が、縋りつくように、
男の手を逆に握り込んでしまおうと。
振り解いてしまえば、或いは離されてしまえば、其の儘ずぶずぶと、
足許の暗がりに飲み込まれてしまいそうな気がして―――――。

ルヴィエラ > (――其れは、決して不可思議な話ではない。
家を継ぐのは男の役目、そんな風潮は今も色濃く残り
特に血筋を重要視する家柄では、産まれた赤子を"息子として育てる"なんて事が
今ですら、決して多いとは言えないが起こっているのが、この国だ。
相手が、そうで在ったとは限らない。 もっと別の理由が在ったのやも知れない
徹底して、其の存在を書き換え、教育から周知から、全てに於いて
”男”で在ると完璧に偽った、其の存在が、看破される等在り得ぬ事だ。

――この出会いが幸か不幸か、其れは判らぬ事だろう
だが、今宵、この場所で、己に出会う事さえなければ。
彼女は未だ、夜が明けた後も、男で居られたかも知れない。)

「……咲かぬ花、ではなく、蕾であっただけ。
太陽に触れ続け、咲く事を赦されなかったのなら
――貴女は、月明りの元で咲けば良い。」

(うずくまる相手の、其の掌を握り返す。
男にしては細く、美しい其の指先を、そっともう片方の掌で撫ぜ
そして、其の掌を、相手の背へと触れさせたなら、腰元から背筋に掛けてを柔く撫ぜよう
其の身に、初めて湧き上がる鮮やかな疼きと、衝動
其の身体が、男ではなく、女であると訴える様に、急速に目覚めて行くのは
まるで、眠り続けた大きな蕾が、早咲きの蕾よりも一層大きな花弁を
咲き誇らせようとするのにも、似ている。

己は――水を注いだだけだ。 花を咲かせる為の、水を。
そして、其れはもう止まりはしない。 胎に灯った熱は、燃え上がる様に強まり続け
そして――雄を、希う。)

「――――私を、見上げて御覧?」

(誘う言の葉が一つ、響いて。
そして、もし相手が言う通りにこちらと視線を向けるなら
顔を寄せ、酷く間近に迫った互いの瞳を重ねながら
――口付けを、重ねてしまおう。 奪うように、そして――救う様に
其れが、きっと彼女の身体が、完全に花として目覚めきる、最後の一押し。
適えば、其の儘彼女の身体を、ゆっくりと仰向けに横たわらせて
重ね合わせた互いの掌を、静かに、彼女の胎上へと乗せ――柔く、圧して)。

バージル > 先代伯爵の胤で、唯一生れ落ちることの出来た子供が、己であったから。
だから、≪男≫でなければならなかった、決して≪女≫ではいけなかった。
そう教えられて、其の様に生きよと躾けられて――――疑問すら抱くことを許されない儘。

けれど、己は出会ってしまった。
己を女であると、花であると看破してしまう男に、そして、
此の身を冷たく閉じ込めた、氷を溶かしてしまえる男に。
こんなにも呆気無く見破られ、踏み込まれる事態を想定していなかったために、
咲きそめた花がそ手折られるよりも容易く、――――女は、目覚めてしまう。

「ぁ――――――…ぁ、あぁ、あ、は……っ、っ、
 駄目、こ、れいじょ…うは、駄目、や…め、止めて、どうか……っ、

 ―――――あ、あ、……っんん、ん………!」

今まで発したことの無い、高く、甘く、濡れた悲鳴が、ヒリつく喉を震わせる。
決して荒々しさは無いけれど、柔らかく背筋を撫ぜられただけの身体に齎されるのは、
暴力的なまでに身を灼く、決して男には持ち得ない、奥深くから迸る情欲の焔。
目の前が紅く、白く、そして昏く――――意識の喪失は、もう目前に。
だから、囁きに応じて仰のいた己の貌は、全ての虚飾を削ぎ落とした、
生まれたばかりの幼子のような稚さで――――泣いて、救いを求めようと。

「お、願い……です、か、ら、もう、――――――んん、っ、……」

止めて、と訴えるより早く、唇が男の其れで塞がれた。
熱く篭もる吐息を交わし、茫洋と見開いた儘の瞳から、大粒の涙を零しながら。
呼吸を――――そう、女として呼吸をせよ、とばかり、重なる掌が下腹へ。
自ら支えることを放棄した身体が、いつ、横たえられたものかも気づかずに、
――――――完全な覚醒へと導かれた、其の瞬間に。

己の意識はとうとう、ぷつりと途絶えて闇に沈む。
年頃から言えば、とうに女としての成熟を迎えている筈だった肢体は、熱を孕んで疼き続けている様子。
意識を手放しても、繋いだ手を離すことは出来ない儘。
一度堰を切ってしまった衝動の向かう先は、―――――果たして。

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