2019/09/26 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城/バルコニー」にクロニアさんが現れました。
クロニア > 「…………ハァ…………。」

言葉も無い。
連日連夜王城に貴族の屋敷に豪商の館に入り浸り、
父親のひいては自分の財産となる家を盛り上げんがため、
悲しかろうがつらかろうが柔らかな笑顔を浮べて愛想を振り撒くのに疲れた。

どろどろとした熱気の中を1人抜け出し、王城の中でもお気に入りの城下を一望できるバルコニーに足を踏みれたのだが、
まず何よりも溜息、そして深呼吸。

まあまあ新鮮な空気を肺一杯に収めてから、
先程の溜息よりも大きく深く息を吐き出す。
と、同時に何時ものようにバルコニーの手摺に背中を預けて、
「あーーーあーー」とゾンビが如く唸り声を上げると、
顎を首をぐぃと仰け反らせる事でエメラルドとも翡翠とも言われた眼を夜空へと向けて、
少しは綺麗なものを視界一杯に収める。

自分も腹黒い自覚は有るがそれでもどす黒いものばかり見ていると眼が腐る。
普通なら屋敷の地下で飼っている人形を着せ替えて眼の保養をするか、
出資している教会に顔を出してシスターや原石たちを眺めるか、
するのだが今は時間がなくてそれすらも出来ていない。
もう心が先に枯れそうで、故に吐き出す言葉は唸り声だけだ。

今だけ誰も居ない今だけは素の顔で過ごしたいのだ。
笑顔なんて掻き消して、浮べる表情は眉間に皺を寄せ眼を釣りあがらせて、
全身で不機嫌さを余す所なく体現し腹に溜まりに溜まった黒いものを吐く。

クロニア > 二度三度深呼吸をくり返すと左手を自らの顎に添えてから首を左右に捻りゴキゴキと音を鳴らす。
あまりの鈍い音に首が折れたと勘違いされそうだが、
幸い今宵のバルコニーは城下の風景は独り占めである、ので特に気にせず。

首の鳴らした事で気のせいかもしれないが少しスッキリした。
後はこの夜景と星空をツマミに酒が飲みたい
出来れば愛らしい女を侍らせて、その尻を撫でながらが最高であるが、
それは贅沢とも言えようかそもそも酒もないんだが。

――なら代わりはコイツである。

ポケットに手を入れて親指と人差し指でシガーケースをつまみ出すと、
親指で蓋を弾き上下に燻し銀のケースを揺すって1本だけ器用に取り出し、
それを唇に浅く咥える。

で、もう片方の手をポケットに入れて燐寸箱を取りだして、
シガーケースをポケットに戻した手で今度は燐寸箱を開けて中より燐寸を一本だけ取り出すのだった。

流れるような手馴れた手つき。
まあ実際になれたものである、こうやって隠れてご禁制のアレを愉しむのも……だ。