2019/09/12 のログ
シュバルト > 場違いとしか言いようがない、寧ろ本当に場違いなんだろう。
何故このような場所にいるのか?何故ふかふかのソファーに座っているのか?
答えはご贔屓の貴族様に雇われて、暫くの間いつでも良いので談話室に休憩に訪れた客人を調律と得意―でもない―話術でもてなして欲しいとの事だった。

きっと何処の馬の骨ともわからぬ自分を王城に招き入れるのに骨を折ってくださったのだろう、
その期待に応えるべくいつも以上に高価な商品を肩掛け鞄に入れて、
万全の体制で先程からじーっと大理石増の如く微動だにせず待ちぼうけている。

一応契約では接客しなくても、ある程度談話室で待機していれば賃金は出るように契約したが、
出来れば……自分からも名前と技術を売りたいと時々視線を出入り口に向けて、直ぐにそらしと不審者となっていた。

「……期待されてるのだろうけど、期待されているのだろうけど!場違いよな……うん。」

声が僅かに上擦ろう。
自分より立場が雲の上の方々の相手は仕事上何度か。
でも実際に王城に招かれてなど初めてのことであり、
頭の中で浮べていた「場違いではなかろうか?」の言葉が
脳裏に張り付いて消えそうにも無い。

騎士や貴族やお抱えの術師などと出会えるチャンスと二つ返事をした3日前の自分を酷く恨みたくなってきている。

さて賑やかな声が時折廊下から聞こえてくる。
分厚い木製の扉越しに聴こえてくるのだからきっと本当に賑やかなのだろう。
一応扉には許可を貰って「本日調律の無料サービス有り」みたいな文言が書かれた
木の看板を立てかけさせて頂いているから、誰だオマエなどと言われない平気のはずだ。

シュバルト > 今夜の仕事は無さそうだ。
あれからしばらく待ってみたが人の気配はすれど、
入室するところまで至らないようで、折角チャンスを用意してくれた貴族様には申し訳ないが、
今夜のところは是で帰宅することにする。

荷物をまとめ、すれ違ったメイドに貴族様への言伝を頼んで後にお城より出て平民地区の仮宿を目指すのであった。7

ご案内:「王都マグメール 王城/談話室」からシュバルトさんが去りました。