2019/07/23 のログ
グレナーデ > 西に希少な武具の噂があれば旅支度、東で停滞する戦線があれば甲冑を着込み、中央で兵站が滞れば書類を書いて陳情し、此処最近忙しすぎて屋敷と王城の間しか行ったり来たりして居らず本来の仕事が一つも片付かないまま、今夜も書類をていシュルする為に王城に登城し騒がし中を抜けて、今は王城で唯一安らぎを得られる薔薇庭園へと足を運ぶ。

本来なら、こんな時間でも王城で忙しなく働くメイドか騎士見習いでも拐かして、本来の仕事の方も充実させたいが、仕方なく、目ぼしい女も居なかったので休憩に来たのだ。

スーツベストの裏側にしまいこんだ魔力で封をしたシガーケースを取り出しながら、様々な色の薔薇咲き乱れる庭園の入り口に立つ、毎回思うがコレを維持するだけにどれだけ人件費が掛かってるのか、魔力が掛かってるのか算出するのも怖い。

「……残り何本だ………?」

スーツベストから取り出した鈍い銀色のシガーケースが妙に軽い、仕事をしながら、書類を片手に戦線に向う最中に諸々の際に咥えていたものだから、少なくなってるなとは想像していたが軽い、軽いのだ。

煙草、中身はただの煙草などではない。
特殊な己の能力で消耗する魔力を補充する特別なものだから、常に残りを数えていた筈だが……ダメだ忙しいとこんなものか秘書とか募集すべきか、メイドの1人の思考を開放して改めて服従させて使うべきか。

グレナーデ > 薔薇庭園にボっと小さな青紫色の灯火が点く。

赤青黄白黒、様々な色、様々な香りを匂わせる薔薇庭園に青紫色の灯火が浮かぶ後にふわりと薔薇の香りよりも蜜を思わせる甘たるい香りが広がり、その香りを追うようにして紫色の淡い煙が流れ、溶け込むように消える。

それは鈍く輝くシガーケースの蓋をあけて1本だけ取り出した葉巻よりの薔薇庭園への汚染、と言うべき行為。

親指で蓋をあけ、上下に軽くゆすることで1本だけを上手く取り出し口に咥えて、着火は魔法を使う極々単純な小さな火が燃え上がる魔法、で葉巻の先端に火を灯すと中の薬草と薬剤に火がつき青紫色の火が点り、燃える葉巻の先端からは薄紫色の煙が浮かぶ。

肺を満たすのは甘い香り、魔力を増幅させる効果のある薬効のある煙、それを満足げに咥えながら薔薇庭園の奥へと足を勧める、目的なんてない休憩だから。

暫くはのんびりと薔薇庭園に咲き誇る薔薇の花達をめでつつ、時々葉巻の煙を吹きかけて、人前では決して聞かせないケラケラと軽薄な笑い声をあげて、誰も居ない1人の時間を多少虚しく過ごすのだった。

グレナーデ > 葉巻に込められた効果が切れるまでのんびりしているが、それが吸い終ると、溜息を思いっきり吐き出して、薔薇庭園の外へと足を向ける。

行く先は一時的に借りている執務室。
其処で残りの資料を仕上げて、明日にでも提出できるように、仕事を続けるつもりで重たい足取りで戻るのであった。

ご案内:「王都マグメール 王城 薔薇庭園」からグレナーデさんが去りました。