2019/06/27 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】 中庭」にジナイアさんが現れました。
ジナイア > 昼に刺すような強い夏の日差しが降り注いだ日。
陽が落ちて、すっかりその陽気も成りを顰めるようになれば、王都には少し湿ったような風が吹き始める。
そうして天は相変わらずの雲一つないまま漆黒に塗り替わって、星々も瞬き始めた頃。
王城の広大な中庭にある生垣で出来た迷路の、その中心の広場に、足を踏み入れる人影がひとつ。
その人影、黒髪に赤銅色の肌の女は、王城内にしては簡素な造りの噴水の、そのさらさらいう音に翠の目を細める。
月も未だ半分以上欠けた光の下、その翠だけが閃いて、次いで天に向けられてから、また広場へと漂う。

日中日差しに照らされながら遠出していて戻ったばかり。
王城勤めの学者に頼まれたものを渡して、さっさと辞去しようと思っていたが…外を渡る風にふらりと中庭へ漂い出た所。
街灯がぽつりぽつりと立つ迷路は、思った通り人気もない。
何とはなく、熟れた唇から溜息が零れた。

ジナイア > 広場の、生垣沿いに置かれたベンチを見止めれば近付いて、ゆっくりと腰を降ろす。
遠くから微かに、近頃聞きなれたシェンヤン風の音曲が聞こえてくる。
背を凭れ、少し仰向いて瞳を閉じれば、風に乗る香りは水と新緑のそれを含んでいた。

(悪くない夜だ…)

脳裏にそう思って、うっすらと瞼を上げる。
日光に照らされる道行は慣れたものだが、疲労が無いわけではない。
心地よい気だるさのようなものがあって、そのままぼおっと噴水へと視線を投げる。
間断なく、規則正しく汲み上げられ、零れ落ちる筈の水音。
時折風に吹かれるのか、はたまた何処かに障りがあるのか、ぱしゃんと微かな異音が混じった。

ジナイア > もう一度、翠の双眸を伏せて一呼吸。

「……さて、と…」

次に吐息と共に瞼を上げ、言葉と共にすうと立ち上がった。
幾らもの好きとは言っても、此処で一夜を明かす訳には流石に行かない。
揺らぐ噴水の水面、星の瞬く天へと、もう一度視線を流す。
そしてふいと身を翻す。
風に黒髪を揺らしながら、ゆっくりと生垣の向こうへと姿を消した。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】 中庭」からジナイアさんが去りました。