2019/06/16 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】 回廊」にホアジャオさんが現れました。
ホアジャオ > 初夏の頃にしては少し気温の低い、霧のような雨の降る日。
王都の中心たる王城は、尖塔のうち高い所では灰色に霞むくらいに雲が低く、なんとも陰鬱な空模様。
その王城の、中庭に面した回廊。
天候のせいもあるのか行き交うひとのないそこに、手摺りに寄り掛かるようにしてその上に頬杖を付く女がひとり。
手入れの行き届いた中庭の、雨にけぶる様子見とれている…
というわけではなく
退屈そうに、半ば不貞腐れたような表情で、ぼんやりと視線を投げている。

「无聊(詰まンない)……」

紅い唇から零れる言葉も、何度目だろうか。
色々と曰くのある王都の王城のこと。
毎日とまでは言わないが、怪しげなやつをとっ捕まえて喧嘩にありつけることぐらいあるだろうという予想は、今のいままで裏切られたまま。
今日も今日とて何事もなく――まあ、仕事としては何事もない方が良い筈だが――暮れていこうとしている。

ホアジャオ > 本当は、『公主の用心棒』なのだから、公主の傍に控えて居なければならない。
しかし如何せん、会う人会う人に品定めのような目つきを投げるものだから、公主の『お相手』候補まで怯え出す始末。
『頭を冷やしてこい』とその場で野放しにされて…このままうろつけば、自分のほうが『怪しげなやつ』になるんだろう。

「……そのほうが、喧嘩相手捕まえられるかなァ…」

言葉にはしてみるものの
流石に体裁が悪くなって、一発で護衛の仕事自体無くしてしまうことぐらいは想像が付く。

「啊――誰か居ないかなァ…」

溜息をつくと、嘆きの言葉と共に頬杖を解いて、手摺りに顔を伏せた。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】 回廊」にクロさんが現れました。
クロ > 今にも紅の帝国の華服に身を包んだ彼女の心を表すような重く立ち込めた雲より雨が降り注ぎそうな空の下。
貴人、貴族、王族、華族、公主とやんごときなき身分が集い、そしてそうでない者にしても相応の地位にある者や護衛といった限られた者ばかりが享楽の宴に興じる其拠。

部外者など立入る事は叶わず、もし居るとすれば精々催しの為に招かれた『道具』ぐらいのもの。

選ばれた者による、飽食と贅が生み出す娯楽が此処にはあった。

尤も、其れを享楽、娯楽として消化できる精神性を持つか否かは参加者にもよるであろうが。

「~~♪」

がさり、退屈に殺されそうな彼女がぼんやりと投げかけている先から物音が。
日々庭師が技巧を凝らして整えている中庭の茂みが動く。

そして、現れたのは黒のドレスを纏った女にしては平均よりも高めの背丈、癖の強い跳ねた髪をドレスの開かれた背中を覆うように流し、快活、利発とこの場の退廃に倦んだ空気に見合わぬ爛々と光を湛えた双眸に緩んだ笑みを浮かべた女。
獣の特徴を持つ耳と尻尾はミレー族のそれと思しきモノ。
何処ぞの貴族か何かの奴隷か娼婦か。

ただ、黒い女のドレスはどうもおかしい。

というより、着方を知らない子供が無理矢理被ったとしか言いようがなく、背中のファスナーは閉じていないは動きにくいからとドレスの裾を破ってスリットにするはあちこち無理に着たから皴が寄っているはと見苦しいことのこの上ない。

当の本人は別に気にすることなく、くんくん、と鼻を鳴らしてから中庭よりパーティ会場へ視線を移し、目的の場所を定めて歩きだして――目が合う。

偶然にせよ何にせよ、大半が会場に集い回廊にはろくに人が見当たらないから必然的に燃えるような華やかなチャイナドレス姿の相手と。

ぱっ、と笑顔になれば、やはりこの場に招かれるには相応しくなく右手をぶんぶん挙げ特に他意はなく挨拶してみて。

この、街中で都合の良いところだけ切り取って毎日ご馳走が振る舞われているという風に解釈し、一回目は門前払いをされたものだから二回目はちょうど来賓として招かれた女性を襲うついでにドレスを借り、警備の目を掻い潜り常人が侵入しようがない経路を用いて潜入を試み、中庭へと降り立った獣の女は自分が不法侵入の立場だと自覚が足りない危機感の無さでそのまま中庭から回廊の縁へそのまま一見して力みもないながらしかし確かに地面を蹴り己が身を羽根と化すような飛翔じみた跳躍。

一蹴りで壁に沿った茂みから回廊の縁の上に長距離を零にし飛び移ってから、今度は間近な距離で相手の整った勝気そうな印象を抱く面貌を覗いて。

「あは。ね、ね。雌(きみ)。此処が食べ放題会場って聞いたけど合っている?」

ホアジャオ > 物音に、伏せていた顔を上げる。
そして――霧雨の中、姿を現した『彼女』と目が合う。
その恰好や出で立ちの不審さに気付くよりも先、その瞳が湛えた光に思わずじっと見つめてしまって。

(――!)

次のふたつ、みっつめ、瞬く間に、間近に迫った彼女の顔。
思わず、更に見つめながら、何度も細い目で瞬きを繰り返す。

「――…ちょッと、ちがうよ。
それだッたら宴会場だから、もッと向こうの別棟だよ」

言いながら背後の廊下の奥を指し、漸く相手を上から下まで眺めまわす。
どうやら、『招かれざる客』の類らしく思える………

「――でも今はまだ、夜の宴会前だとおもうケド」

手摺りに預けていた半身を起こす。
愉しげな笑みが紅い唇に浮かぶ。

「アタシ、『ホアジャオ』ってェの…
アンタ、何者?どッかのお姫さまかなンか?」

身のこなしを見て、もうとおに喧嘩を売るつもりは満々ではあるが
万が一、相当なお転婆姫の類の可能性だってある。
また雇い主にがみがみ言われるのは御免だ…

クロ > 獣。
敵意、殺意等無くとも、身のこなしがなくとも、真直ぐに過ぎるあまり曇天の薄闇ごと射貫く瞳は獣のそれである。

均整のとれた体つき。匂いで分かる、飼い殺された犬でもなければお貴族サマとして華だと愛でられ満足しているとは到底思い難い戦の香。
正直、食欲を満たす目当てで此処に来ていなければ性欲か闘争本能を満たす為の遊びとしてすぐに襲いたくなる『雌』であった。

嗚呼、先程迄の退屈そうにしている顔よりずっと、可愛らしくて生き生きとした笑みだ。

喧嘩を売られる数秒前。
そんな自覚があるのか否か、王族貴族の礼儀作法以前に一般市民でも品が無いと唾棄しそうだが、手摺に両足で器用に乗って体勢を微塵も崩さずドレスをふわりと風を孕ませてから屈みこみ、屈託なく可愛いなぁ、なんて相手の顔をじぃと覗き込み続けている女の表情は笑顔だが、それは狩猟者、捕食者のそれだ。

ただ、相手が教えてくれた来賓客なら知らぬわけがない情報には目をまん丸くをし、口を半開きにして眉を顰めた。

「えっ、違うの?そんなぁ……えー……折角こんなひらひらした服借りたのにまたお預けー?」

露骨に落ち込み、がくりと頭垂れればぴんと立っていた三角耳もドレスからはみ出た尻尾も垂れ下がり、ぶーぶーと不満を零し口を尖らせ彼女の背後の会場へと。

あれでも晩餐ではないらしいが、偉い人達は一体どれだけ美味しい食べ物を毎日食べているのか。羨ましい限りである。

しかし、ならば尚更相手に興味が移る。

食欲を満たすならその別棟を探すべきだが、目の前の雌を放るのはどうにも惜しい。

「ホアジャオ?ホアジャオ。雌の名前だよね?私(クロ)はクロだよ、お姫さまとかじゃないけどよろしくねっ!」

もし潜入だとしても、あまりにお粗末。簡単に名前は教えるは身分を偽ることもしないは、どうにも間抜けである。

まともな考え、常識があればそうするのであろうが、生憎まともでも常識人でもない黒い獣の女は紅い女へ化粧すらしていない顔に人懐っこい笑顔を浮かべたままひらひら手を翳し。

一見無防備である。
構えはおろか、敵意も戦意も一切無い。

先手必勝を機す事は、果たして。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】 回廊」からクロさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】 回廊」にクロさんが現れました。
ホアジャオ > 口元の笑みを崩さぬまま、向けられた瞳が湛える、覚えのない色をまた興味深そうにしげしげと見入る。
生来の乱暴者。
色事よりも食い気よりもまだまだ喧嘩。
彼女が宿している光の深い意味は捉えられないが……喧嘩を売りたくなるには、十分。

(やッぱ、お貴族様とかじゃァないみたいだし…)

重要なのは、大手を振って喧嘩を売って良い相手かどうか、それだけ。
それ以外は王城内で何をしでかそうが、知ったことではない。
溢れる闊達さと、感情を正直に表しているであろう耳と尻尾にも素早く目を走らせて。

そうして背後、宴会場への廊下へ踏み出す彼女を後ろから呼び止める。

「――ねえ、宴会まで時間あるンだし、ちょッと喧嘩しない?」

手摺りに背を預けて、腕組みをして。
どう反応するだろう?
相手を品定めするように、上目の視線を投げる…

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】 回廊」からホアジャオさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】 回廊」にホアジャオさんが現れました。
ホアジャオ > 霧雨が少し吹き込む回廊。
対峙した2人が、次に向かうのは―――

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】 回廊」からホアジャオさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】 回廊」にクロさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】 回廊」にクロさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】 回廊」にクロさんが現れました。
クロ > 「喧嘩?いいよ!……あ、でもでも私、お腹空いているから、私が勝ったらホアジャオがご飯に付き合ってくれるならいいよっ!」

不法侵入者。
稀有な野生児じみたお転婆姫説も消え去れば、力づくで排除しても誰も咎める事の無い招かれざる客であると殆ど確信しても良いであろう。

だからこそ、食欲と相手への興味とに揺れ動いていたところへ挑発的な問いを投げ掛けてこられたら、天秤が傾く。

こうなればもう此処でいいんじゃないかなとふらふら会場に向かおうと手摺から廊下へ降りて数歩進んだ足を止め、くるりと振り返いて、細い彼女の目を見詰める。

何故?だとか、嫌だとか、そういう選択肢は無かった。
一目で可愛がったり犯したりしたいなぁと思う雌の我儘なら聞いてあげたいと思えるからだ。
それに、喧嘩。殺し合いになるとその後肉として喰わないと勿体ないが、肉にする事自体も勿体ないからなるべくやりたくないが、命のやり取りではなく強弱を定めるじゃれ合いに等しい競い合いなら遊び感覚だ。

だから、なんてろくに考えていなかったのだが、大体それらを本能で判断し、ぐぅ、とお腹がみっともなく鳴るけれど快く大きく頷き了承。
機嫌よく垂れて落ち込んでいた尻尾を左右に振り、ちゃっかりと自分の食欲と相手への興味の欲求どちらも満たす為の要求を突きつけてーー相手が条件を呑んでくれるかどうかの答えを聞く前に、黒き獣が動く。

敵意は変わらず無い。
ただ、先程とは違い戦意があった。
人の型をした獣の意が戦に挑むそれとなり、純然たる意志、純粋に意の純度と強度が人と異なり過ぎるあまりに闘気として発現。
ぐにゃり、と廊下の景色が歪む。
既に此処が、貴族達の遊び場ではなく、黒き獣の狩場だと空間が置き換えられていくかの如く。
常人ならば、それこそ放蕩の貴族、身分に甘えただけの人間なら気に中てられた時点で『喰われた』と錯覚を起こし気を呑まれ、心身喪失しかねないが、生来の喧嘩師、生粋の武闘派の彼女がそんな醜態を晒す筈も無いか。

着崩れた黒衣を苦にするもなく、獣はたん、と軽い足音を立て、その軽さに反し地面が縮むかのように瞬きなどしたら即座に喰い殺しかねない猛然さで肉薄。
接吻、抱擁でもするかのような距離、そのままなら零となり一緒に体当たりして中庭へ手摺りを乗り越えんばかりの勢いで迫りながら、一見すれば女の細腕を、右腕をまるで死神の告死の大鎌の如く振り翳しーー突進を前に迎え撃つか、躱すか、いなすか、それとも別か。

獣は彼女を興味深く見詰めながらーー相手なら死なないだろうと、初対面で全く根拠は無いが本能的な勘に従い何もしないならこのまま中庭へ一緒に突き飛ばすだけだが、対応する前提で右腕をーー五条の軌跡を宙に刻み、細き剛腕が風を切り潰す音さえ置き去りにし、手摺が鉄製であれ金属製であれ紙を引き千切るのと大差無い軽さで獣爪で裂き、腕力で圧し潰す死の腕をーー振り下ろす。


笑顔は変わらない。
けれど笑顔の質は先程の無邪気な人懐っこいものでなく、完全に獲物を前にした獣のもの。双眸の色は、もう狩人のそれに変容している。
喧嘩を売られて、即買った結果がこれ。切り替えの速さ、行動に移す速さに現在自分の置かれた身や今後の展望の問題なんて全く配慮していないのもまた獣であった。

クロ > ーー獣なりの挨拶。喧嘩娘が捌く前提のそれを済ませれば二人の闘いに回廊はあまりに狭く、邪魔が入る。
さて、舞台は中庭か、あるいは別の何処か適所があるなら案内してくれるであろう。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】 回廊」からクロさんが去りました。