2019/04/13 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】 長廊下」にホアジャオさんが現れました。
ホアジャオ > 深夜、花冷えの夜。
数多の美しい公主の歓待で浮かれている王城内も、静けさが…
ということはなく。
流石に賑やかな調子のものは無いものの、未だ其処彼処からシェンヤン風や王都風、様々な音曲が遠く近く、漂い聞こえる夜。
王城内でも人気のない…静かな方へと歩いていく人影が一つ。

「嗳(ちぇっ)…居ないなァ………」

進む周囲に鋭く視線を走らせながら、ロングチャイナのスリットを大いに生かした大股で、ずんずん進んでいく。

公主の護衛のアルバイト中…だが、当の公主は何処ぞの貴族としっぽり褥の中。
護衛の合い方も、その貴族方の護衛とどこかへとしけこんでしまって、野放しになった女は一人、王城内を探索することに決めたのだが。
折角なので目的を…と、何を探しているかと言うと

(こおいうとこッて、お化けうようよ居ると思ってたンだけど)

ぽりぽりと後頭部を掻きながら、人気のない静かで、暗い方へとずいずい進んでいく…

ホアジャオ > 歩きながら、左腕の銀の腕輪をちらりと見る。
このアルバイトを始めるときに支給された、『魔法を掴む』ことができる道具。

(……幽霊も、魔法みたいなモンだから)

掴めるのではなかろうかと…それを試したくて、うずうずと手を握ったり開いたり。
大体、公主の護衛と言ったってそうそう荒事がある訳でもなく、兎に角退屈なのだ。
面白い事のひとつやふたつ、探しに出たって良い…はず。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】 長廊下」にシュライアさんが現れました。
シュライア > 「…ん?」

祭りでにぎわう、王城内。
末席とはいえ、貴族の一角であるシュライアは…しかし祭りに参加せず城内を歩き回っていた。
それには理由があり。
理由の一つは…褥に消えていく貴族たちを視たくなかったから。
もう一つは、こういった浮かれた雰囲気の中にこそ、悪の種が潜んでいるかもしれなかったから。

「あれは…」

その巡回の途中、見慣れない服を着た女性を見つける。
たしかこちらは…一般には解放されていない場所に繋がってしまう廊下だ。

「…貴女、少々、お待ちいただけますか?」

かしゃ、かしゃ、と少し遠くから軽鎧を鳴らし、近づいていこう。
衛兵に見える出で立ちだが、鎧と剣には貴族の紋が刻まれており。貴族であることがわかるか。
近くまで寄ることができれば、金髪と青目を貴女に向けよう
まずは…迷い込んだのか、忍び込もうとしたのか確かめようと。

ホアジャオ > 「…怎么(はあ)?」

かしゃかしゃと軽い鎧の音、さては噂に聞いた鎧のお化け…ではなく。
細い目を爛々とさせて振り返ってみれば…好みのタイプの美少女だった。

「………什么(なに)?」

がっかりするやら、嬉しいやら。
両手を腰にやって…爪先から登って行って…兎に角彼女の顔をしげしげと見る。
…ああでも、もしかしたら美少女の幽霊かもしれない?
そう思うと、かくん、と首を傾げた。

シュライア > 「……」

素直に足を止めた相手の言葉を聞いて。
やはり祭りに招かれた、客だったか、と。
相手の素性は知らないが…名乗らねば失礼だ

「失礼しました。私は、この国の貴族の一席。ラクスフェル家の次女、シュライア=フォン=ラクスフェル。
見回りの途中…警備に咎められそうな場所にいる貴女を見つけたもので。声をかけさせていただきました。」

ぴし、と姿勢を正した礼を。
実態のある、剣士のような姿をしっかりと見てもらい。

「良ければ、お部屋まで案内しますが…いかがでしょう?」

手を差し出し…咎められない場所まで連れて行こう、と提案する。
相手を尊重するような態度から、わがままが通りやすい…悪く言えば、だまされやすい性格の者だと感じるか。

ホアジャオ > 丁寧な言葉に何度も目を瞬く。
名乗りにまた、ぽりぽりと後頭部を掻いて

「アタシはホアジャオってェの…」

そうして、差し出された手と彼女を交互に見てから、ああ、とケラケラ笑い出した。

「ごめんごめん、アタシはタダの護衛のバイトだよ。
ひまつぶしにうろうろしてたンだ。部屋は解るよ」

言っている内容が取り締まり対象だとは微塵も思っていない。
あっけらかんと笑いながらぱしぱしと彼女の肩を叩いて、紅い唇でにいっと笑う。

「…ねえ、アンタも暇だったら、遊ばない?」

喧嘩とかして、と、彼女の腰の剣を見て…また視線を戻して笑った。

シュライア > 「ホアジャオ、様?ええと…」

ぴし、と決めたつもりが肩透かしを受けて。

「護衛の方がこんなところに…主人は…、と…ああ…。」

笑いながら護衛と言われれば、なぜ主人から離れているのかと不思議に思うが
よく考えれば、何ら不思議ではない。
否定はしないが、嫌いな…『外交』を行っているのだろう。

肩を叩けば、もしかすると戦い慣れたホアジャオには…
シュライアの腕に凝縮された力を感じ取れるかもしれない

「…喧嘩、でしょうか。それは、シェンヤン風の挨拶で?
…確かに…私以外にも警備はいますし、暇と言えばそうですが…。」

この相手も自分がたまたま見つけただけだ。
見回りが他にもいる以上、会ったのは偶然。
少し考えた後…


「訓練になるなら、ぜひ。流石に、剣は使いません。護衛とはいえ客人にけがを負わせるわけにもいきませんので。」

丁度鈍っているところだ、と。
しかし、当然のように剣を選択肢から抜いて。
そこから、シュライアの自信を感じ取れるか。

ホアジャオ > 彼女の戸惑う様子に、けらっと笑う顔は変わらない。

「『様』は要ンないよ。
ううン?喧嘩ふっかけンのは、アタシがしたいから…
シェンヤン人皆じゃないから安心してよ」

触れた手から、彼女も相応の手練れだと解る…女の頬が桜色に上気してきて、細い目も輝きを放ち始めた。
彼女の肩から手を放すと、ぱし、と片手の拳を手のひらに打ち付けて辺りを見回す。

「好吧(よしよし)……割れそうなのは窓しかないし、場所はココで良い?
修錬場とか行く?」

何故かもう、修練場の存在と場所を知っている。
場所も武器もどちらでもいい。

「怪我、ねえ……」

すう、と細い目が面白そうに更に細くなった。

シュライア > 「ん、んん。…では、ホアジャオと。
…良かった、これから先に会うシェンヤンの方に、そう接してしまうところでした。」

彼女には珍しいことだが、あっさりと相手を呼び捨てに
敬語はそのままだが、どこか声音が柔らかくなり
相手の動作にはただゆっくりと微笑んで

「流石に、王城の中では不都合かと。…なぜ知っているかは追及しませんが、修練場にしましょう。」

もし窓が割れてしまえばこの気のいい相手が迷惑を被るかもしれないという思いもあり。


「?、なにか…?」

自分の言葉に自覚がないのか、先導して、修練場へと向かおう

ホアジャオ > 「……なァんでも。アタシも、怪我には気を付けるよ…」

にい、と笑って肩を竦める。
先導する彼女の後ろについて歩きながら、両手を組んで後頭部の後ろへ。
幾分柔らかくなった彼女の雰囲気に少し気をよくして、軽い足取りを運ぶ。

「えッと、シュライア?は騎士かなンか?
可愛いし育ちが良さそうなのに、大変だねえ?」

その道すがら、なんとはなしの問いかけを。

シュライア > 修練場までは少し距離がある。
中々会えない他国の人だ。交流をするのもいいだろう、と

「何と言いますか。貴族なのですが…少々成り立ちが特殊でして。」

と、軽くではあるが自分の家の事を話す。
武力を持って王に認められたこと。
だからこそ、有力貴族に目を付けられていること
しかし、それに負けず…腐敗を正そうとしていること。

「…む。ただ、可愛いというのは訂正が必要ですね。私より可愛い女性などいくらでもいるでしょう。」

既にある程度心を許しており。表情が本来の彼女らしくころころと変わっていく

ホアジャオ > フーンと吐息を漏らしながら、弾む足取りで彼女へ続く。

「なンか色々大変なンだね…
可愛いに上も下もないでしょ。素直に受け取っときなよ」

照れてる。カワイー。
彼女の背後で目を細めてにんまり笑うと、無造作に手を伸ばしてその金髪をくしゃりと撫でようと…
気付かれたなら、その手を彼女の脇腹をくすぐる手に変えてしまおう

シュライア > 「わ、ちょっと、ホアジャオ、何を…」

話した後、手が伸びてくればすぐに気づき、少し警戒したが
敵意も何も感じないため、そのまま撫でられる。
貴族らしいいい髪油を使った金糸がホアジャオの手を滑り

ただ、いつまでも撫でられているわけにもいかず、する、と潜り抜け、前へと進んで
すっかり態度は相手にひきずられて砕け。年相応のふるまいを見せ。

「まったくもう。ほら、着きましたよ」

祭りで誰もいないであろう、修練場につき、共に扉を潜ろう。

ホアジャオ > カワイー、とくすくす笑いながら共に修練場へ足を踏み入れる。
そのまま、勝手知ったる修練場、すたすたと歩いて壁を探り灯りを灯した。

「さってと。ホントに素手でいいね?」

ぽんぽんと跳ねて彼女から距離をとると、半身を彼女へ向けて…特に構えを取ることもなく、ゆらりと立った。三日月に笑う紅い唇。

「今からなら、武器アリに変えても良いよ?」

シュライア > 少し乱れた髪を、しかし嬉しそうに直し。
修練場につけば邪魔にならないよう、括りはじめ

「ええ、かまいません。武器を選びませんので。」

あっさりと神秘的な力が籠った直剣を壁に立てかけ
軽鎧の拳の部分を外し。
同じように、少し距離を取って

「拳闘に自信があるようですが…その申し出は受けません。…いつでもどうぞ。」

相手とは違い、右手を前にした構えを。
先手すら、譲る様子。

ホアジャオ > 細い目を更に細める…目元まで桜色に染めて

「じゃァ…遠慮なく」

静かな声、最後にと、と軽い音と共に踏み込んだ。
次の瞬間、彼女の横を風が過ぎるだろう。
そうして身を交わして――するりと彼女の背後へ回って身を翻しながら、その膝裏へ鋭い蹴りを放つ!

シュライア > (速い!)

言葉を返す暇もなく、相手が消え
見ていたはずなのに、次の瞬間、背中にぞく、と悪寒が走る。
ほとんど反射に近いもので、どこを狙っているかわからないながら、身体を前に逃がし
まるで転けたように、蹴りを避ける。

「―――シッ!」

利き足の逆で地面を踏みしめ。くるり、と身体を反転させる。
そして、堂に入り過ぎた、性格と同じ真っすぐな拳を、背後にいたホアジャオに向けて放ち返す

ホアジャオ > 放った蹴りが宙を切る。
前へと身体を逃す彼女――女は放った蹴り脚の勢いをそのままに、軽く地を蹴って

「よッ」

くるり、翻してその身体を宙へ。
真っ直ぐに放たれた拳――その伸ばされた腕を両の脚で挟んで――ーそのまま十字固めの形でどすんと倒れ込もうと。
――身体を落とし、素早く転がれば擦り抜けられるか――

シュライア > 「っ…!」

カウンターが決まったか、と思えば
こちらにはない、身軽で、自由な動き。
軽業師のように拳を起点にしなやかな脚で挟まれ…勢いのまま倒される

がしゃん、と軽鎧が音を立てて

「やられ、た…く…っ!」

一瞬の油断。まっすぐすぎるが故の…二段構えの驚きに対応できなかったこと。
しかし固められてもなお諦めず。
何か加護でも受けているのでは、と思うほど…腕に力が籠り、暴れてしまうか。

ホアジャオ > 「!わッとっ…」

暴れる彼女。それこそ腕を折ってしまいかねない…と反射的に身を剥がし、ぽんと宙返りして距離を取った。

「…意外と、力強いね?」

その場でぽん、と飛び跳ねて零すと、次にはそのまま向かって前転するように跳んで――その脚が起き上がろうとする彼女の上へと振り下ろされる!

シュライア > 「…これが、可愛くない理由です。男性に恐れられるほど、力が強い、ことが。」

実際、細い体のどこにそんな力があるのか、というほどで。
倒れたまま、ぽつり、と言葉を
相手がこちらに向かい、脚を叩きつけようとしてくれば

「――――っ!」

その強靭な腕を組み合わせ真正面から、受け止めようと。
成功すれば、一瞬弾かれあった拍子に、ホアジャオの脚を掴み…信頼故か、無造作にその体を投げようと。

ホアジャオ > ばすん!と音を立てて落ちる脚。

(糟了(しまった)…!)

受けられた、その感触にごろりと身を捻ろうとして間に合わず、捉えられて投げ飛ばされる――!

「………我的天呢(あれまあ)…!」

彼女の力で宙を飛ぶ、そのこと自体に半ば呆然とした言葉を漏らしながらも、受け身を取ってごろり、転がって体勢を整えた。
そのままぽんと飛び上がってすとん、と立ち上がり

「…力の強弱だけでそンな事言う男、どうせ碌なのじゃァないから相手にしなくッていいよ…」

にい、と笑ってた、と地を蹴ってまた彼女へと迫る。
体勢を整える前に、その懐へ辿り着けるか。
辿り着ければ、身を交わすその瞬間に脾臓、顎と突きと掌底をくれてやろう…

シュライア > (ああ、やはり。)

体勢を整える相手を、水の中に堕ちたようにゆっくりとした感覚で見ていた
自分の信頼通り。彼女は…かなり乱暴に投げ飛ばしたにも関わらず、綺麗な受け身を取って

自分の身体は、ひどく重い。いや、相手が早いのか

そんなとりとめのないことを考えていけば、滑り込んでくる相手の身体。

衝撃があった、と知覚する前に。意識が揺さぶられ

とす、とその場に…すぐに復帰するだろうが、気をやって、倒れてしまうか。

ホアジャオ > 「…ン?」

打撃を放った瞬間。
確かな感触に身体を離すことなくそのまま彼女の身体を受け止める。
軽いものとはいえ鎧を纏った相手、流石にお姫様だっことはいかないが、身を潜るようにして支えて、床に横たえる…
興奮していたとはいえ、奇麗な女の子にやりすぎた…

「…ちょッと、大丈夫かい?」

傍らに跪くと不安げな表情で覗き込み、その白い頬へ手のひらを滑らせ、ひたひた、と触れる。

シュライア > 「……ふ、ぅ…」

手で頬に触れれば、すぐにその青い瞳は開く。
状況を察せば、どこか悔しそうに

「やっぱり、…私、弱くなって。…大丈夫ですよ、ホアジャオ。
そんなにやわじゃありませんし。…でも、悪戯してませんか?」

少し、暗い顔になったあと、誤魔化すように相手をからかい
負けてしまいましたね、とぽつり

ホアジャオ > 「よかったァ…弱くはなかったと思うケドねえ?
…悪戯……は」

目を開ける彼女に明らかにほっとして胸を撫で下ろす。
そうして、何だか憂鬱そうな様子を伺うと細い両目を瞬き…

「これからするつもり」

ぬうっと両手を彼女の脇腹に伸ばし、さわさわと擽ろうと

シュライア > 「慰めは…え?」

てっきり、笑って済ませてくれると思ったが
またもや意表を突かれ、今度は侵入を許してしまう

「ん、っ、あはは、ちょっと、ホアジャオ、やめ、どういう、つもりですか!
あは、はははっ、とめ、とめ、てぇ…っ」

青の瞳を細め、擽られれば明るい笑い声をあげて
本来ならば振り払うこともできるだろうが、なぜかそれはできず。
もしかすると、笑いたかったのかもしれない、と…。
相手の手で、弱いわき腹を擽られれば修練場に笑い声が満ちる。

ホアジャオ > 「あははッ」

擽りながらこちらも笑みこぼし、やっぱり可愛い女の子は笑っている方が良いなあ、なんて思って頬を染めてしまう。
それを誤魔化すように、手を止めると自分の頬をごしごしと擦って。

「笑う門には福来るってえいうし。
兎に角シュライアは可愛いンだから笑っといてよ」

乱れた彼女の髪に触れる。どきどきする。やんなっちゃう。
ふいとそっぽを向いて鼻の頭を掻くと、視線を逸らしたまま立ち上がって、彼女へと手を伸ばした。

「立てる?…駄目ッてえなら、おぶったげるケド」

言葉の後半は、明らかに揶揄う表情で彼女をまっすぐ見た。

シュライア > 国の者ではない、他国の人だからこそ。
何の遠慮もなく…笑いを漏らす

「…勝者の特権を行使された、と思っておきます。
……ありがとう、ホアジャオ。…もし、また暗くなったら…笑わせに来てくれますか?」

はー、と深く息をし、呼吸を整えて
乱れた髪を直し…口約束でも…友人と言って差し支えない相手に、甘えて。

「もう、…立てます。そこまで、助けてもらうわけにはいきませんから。」

少しよろめいたもののしっかりと立って
からかうような相手の表情に、わざとらしく、む、とした顔を作って
快活な相手に当てられ、元気をもらったようで。

ホアジャオ > 暗い表情が消えた様子の相手に、自然、笑みが零れる。

「アタシでよければね?
また、喧嘩ふっかけちまうかもしれないケド」

あはは、と笑うと頭の後ろで手を組んだ。
そうして、行こう?と言うように少し首を傾げて彼女を見て微笑みをこぼす。
その脚は早々と出口の方へと伸ばされかけている。

シュライア > 「望むところです。今度は、負けませんよ。」

直剣を腰に佩き、外した装備を付けて。
一緒に出口へと向かおう。

短いやり取りだったけれど、彼女の実力と、太陽のような明るさは励みになった、と。
出口を潜れば…今度こそ、ホアジャオの部屋へ、わかると言っても、送っていこうか。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】 長廊下」からホアジャオさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】 長廊下」からシュライアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城内研究施設」にミリーディアさんが現れました。
ミリーディア > 先日に知人と友人を引き合わせた結果の認められた手紙を受け取った。
気難しい友人で在れど、予想した通りに不安も無かった様だ。
其の手紙をデスクの棚へと仕舞い込んで置く。

「御互いに少しは歩み寄りが出来て何よりだ。
問題緩和に為れば尚良いが、其れは彼女等次第だろうね」

吐息を吐き乍、少女は何時もの様に柔らかな椅子へと身を沈める。
週末の此の時間は研究員達も殆ど居ない。
如何しても必要で在ったり緊急性を要しない者達は帰しているからだ。
研究熱心なのは悪くは無いが無理はさせないのが少女の方針であった。

ミリーディア > 「……で、九頭龍山脈の報告も在る訳か。
例の件についても何ら問題も無いさ」

最近の動向に関してのもう一点。
手にしていた其の資料をデスクの上に散らばった他の資料の上に放る。
報告書作成者の名は誰が見ても分からないもの。
当然だろう、此の国の者では無いし、彼の国でさえ過去の深く迄掘り起こさないと浮かばぬ名なのだから。

のんびりと天井を見上げ乍、一旦小難しい思考は切る。
明日迄の休暇を如何取ろうかとの思考に切り替えるからだ。

因みに少女が此処に居るのは職務的な理由では無い。
富裕地区に在る住居に戻るのが面倒なだけであった。
もう一つ理由を挙げれば、少女に用件が在る者の大半は此処にやって来るのも在るか。

ミリーディア > 「尤も…」

ポツリと少女は言葉を漏らす。

「偶に望まぬ客人も訪れるのは面倒でしかないがね」

そう続けた言葉と共に研究所付近の存在が幾つか消えた。
少女を狙う何者か、其の存在を事前に察知し対処したのだ。
立場上、こうした事も起こり得る事は仕方なしか。

「……儂には通用せんよ。
存在感では無い、存在と云うものが在る限りね。
其れが解らん者が多過ぎるのは本当に困ったものだ。
裏の方には話は通っているのだし、余所者を使ったんだろう」

少女は表面だけでなく裏面にも様々な伝手を持つ。
故に其の手の伝手で少女を狙おうとすれば、逆に依頼した者自身が排除される。
其れを避けて狙おうとしても、今の様に少女自身の手に依って阻まれたり排除されたりするのだ。
建国以来存在し続けられる要因の一つで在る。

大きく溜息を吐けば椅子から身を起こし立ち上がった。

「気が変わった、夜の散歩にでも洒落込むとしよう」

着飾りもしない何時もの格好。
其の侭で部屋を後にすれば、扉に『外出中』の看板を掛け夜の街に繰り出すので在った。

ご案内:「王都マグメール 王城内研究施設」からミリーディアさんが去りました。