2019/03/23 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城」にホウセンさんが現れました。
■ホウセン > ある妖仙の小さなシルエットは、今宵、王城の中にあった。
子供として、好事家として、異邦人として、人外としてと、様々な肩書きを使い分ける存在だが、今は商人としての貌。
正確に言えば、相応に財と人脈を持つ貿易商の、王国内における実質的な経営者としての立場だ。
”実質的”と冠しているのは、傀儡たる父とやらを主に据えているだけのこと。
「掘っ立て小屋でよいとは言わぬが、もうちっと移動の手間を考えてくれぬものかのぅ。」
増築に増築を重ねた広大な城の廊下で、小股の歩みを止めぬままにぼやきを一つ。
行政的な機能と軍事的な機能の中枢たる王城は、複数の訪問先を持つ来訪者には、中々に不評ということらしい。
何処ぞの工務部門に顔を出して、街灯整備工事に必要な資材の搬入の段取りを整えた後、今度は何処ぞの軍団なり師団なりに顔を出すことになっている。
案内兼見張りの一人も付きそうなものだけれど、生憎と大きな宴があり場内は人手不足。
故に、異国の装束に袖を通した子供という、聊か奇異な輩が好き勝手に闊歩できている訳だけれど。
■ホウセン > 北方帝国の宮城とて開いた口が塞がらぬ程度には広大だし、城には示威的な役割を期待されていることも理解している。
それ故の仕儀だとは分かっているから、埒も無いことをと、自らの独り言に口元を緩めるのだ。
比較対象として北方帝国を引き合いに出したが、居心地という意味では、こちらの城の方が格段に良い。
魔族ではないにしても、得体の知れぬ人外は排除の対象となるだろうが、神性が残っているのと霧散しているのでは動き易さが違う。
おまけに始皇という未曾有の圧を持つ存在が敷地内にいないというのも加点対象。
端的に言えば、気楽。
「居心地が良いのは、それだけではないのじゃがな。」
今の王国の縮図といっても良い王城内には、如何に飾り立てても拭いきれない腐臭が満ち満ちている。
欲と怨嗟の混じった澱のような気配。
それだけの謀が日々繰り返されていることの証左であり、”呪”に特化している妖仙には、鬱々とした恨みの情念が糧となる。
緩んだ頬を隠すべく、帯に挟んだ扇子を引き抜いて開く。
ほくそ笑みながら行き当たる廊下の分かれ目。
はて、目的の場所は、右だったか左だったか。
ご案内:「王都マグメール 王城」にセレーネさんが現れました。
■セレーネ > 1人の女が王城の中、馬車でも通れそうなだだっ広い廊下を重たげに踏みしめる。栄光と反映の象徴と謳い無意味な増築を今も繰り返すこの城はさながら肥え太った肉体のようでそれはある種今の王族を象徴しているともいえた。
「はぁ…せめてゴーレムに乗りながら移動出来ればまた違うんだけどねぇ……別に良いでしょう魔法くらいつかっても」
深い溜息と共に悪態を吐きながらいくつあるともしれない会議室の1つを目指す。いくら場所が酷くてもここに来た目的はある、それを果たさずに帰るという無駄なことはしたくなかった。
昨年無名遺跡群で発生した魔導機兵暴走事件とその発端となったシェンヤンへの魔導機械密輸事件。これらは騒ぎとしては数カ月前に沈静化したもののその影響は各方々に未だ尾を引き摺っている。
特に冒険者に関しては再び密輸をか行う事を懸念してかシェンヤン人及びその関係者は無名遺跡の立ち入りが大きく制限される事も少なくなく、女はこの事態の打開の為、各方面へと足を運んでいた。
「えーっと、この先を真っ直ぐ行ったらって……前はこんな風に分かれて無かったわよね?本当に…」
更に増えている部屋に女は頭を抱え、目頭を揉みながらながらT状になった廊下を直進するために足を踏み出した。
■ホウセン > 記憶の糸を手繰り寄せ、道筋を再確認する。
顔を出すといっても、何かしらの打ち合わせという訳でもなく、顔見世と御用聞きぐらいのもの。
故に、省いてしまっても支障無い所ではあるが、折角王城に足を運んだのだから、事のついでと立ち寄っておきたい。
だからこそ、道に迷い無為な時間を過ごす――迷った先で遊興の種を見出しそうなものだが――のは避けたいが。
「うん…?
のぅ、そこなご婦人よ。
――騎士団の事務所はこちらで良かったかのぅ。」
渡りに船とばかりに、自分以外の者を見つけ、トテトテと足取りを速める。
衛兵でも捕まえられれば確実なのだろうけれど、贅沢は言ってられぬ所。
正対する女は、子供子供している己より頭一つ二つ分背が高いものの、特に物怖じした様子もなく声を掛けた。
見た所、王城の勤め人には思えぬが、さて、如何な素性なのかと興味が無いでもない。
■セレーネ > 不意に横から声を掛けられ視線をその方向に走らせれば1つの小さな影が小さな歩幅で走り寄ってくるのが見える。服装や顔立ちを見るに東方系かあるいはシェンヤンの出だろうか?多くの人が訪れる王城でもこの年齢や出立ちの者が一人でいる事は中々無く、その珍しさ故に故に屈むようにして少年の高さに頭を合わせて話を聞こうと。
「あら、お坊っちゃん。迷子かしら?えっと騎士団の詰め所があるのは確か城の西側だったはずだから…ちょうどここを左に曲がって階段を降りた先、だったかしら?」
少年にとって左側の通路を指差すものの、その口ぶりは覚束なく自信の無いもので。なにせ騎士団と王城でやり取りを行ったのは数年前、夫が遠征に出る前遣いを頼まれた時まで遡る。
ほんの数カ月来ないだけで見知らぬ道が増えるこの迷宮に古い情報が通用するかは窮めて怪しいところであった。
「ごめんなさいね、私もうろ覚えで…。ただちょうど私も同じ方向に行く予定だったしもし良ければ一緒に行くわよ?お父さんお母さんと逸れてしまって大変でしょう?」
騎士団の事務所が目的ということから迷子になり仕事でここを訪れている親と逸れてしまったのだろうと推測、少年に手を差し伸べながら案内を提案して。
■ホウセン > 立ち振る舞いから分かることというのは、存外少なくない。
例えば、幼さの残る見た目の己に対し、視線の高さを合わせるのは子供の扱いに慣れている身の上だというように。
幾つかの問いと、疑問符混じりの案内を受け、二秒ほどの思案顔。
どこまで話すべきか、どこまで好意に甘えるべきかと。
「元より単身で来ておるからのぅ。
逸れて難儀するということはありゃせんが、嗚呼、確かに迷子の三歩手前じゃ。
流石に往生して飢え死にするような場所ではないのじゃろうが、スルリと辿り着けるに越したことはなかろう。」
とりあえず、親なる者は同伴していないことを告げる。
さもなければ、王城に居もしない父母を探す騒ぎになるやもしれぬからと。
差し出された女の手に、己の右手を伸ばす。
小さく、指の細い、子供らしい体温高めの手で、きゅっと軽く手を握った。
「故に、ちぃとばかり世話になる。
儂はホウセンじゃ。」
王国出身者ではありえない響きの名。
案内を頼んだ手前、誘導者たる女の歩みに合わせて廊下を進むことになるのだろう。
■セレーネ > 見た目は高く見積もってもせいぜい10代前半、そんな少年が単身で王城を訪れているという情報に驚きを隠しきれずピクリと差し出した手が反応する。
一瞬騎士団入団志望者である可能性も頭を過ぎるが、そもそもそういった手続きであればギルドや一般地区にある詰め所からでも申請を行う事が出来るし艶やかな髪や傷一つなさそうな柔らかな顔肌の少年がそうだとは到底考えられず、
結局どこまで事情を聞くけべきか考えながら張り付いた笑みを浮かべてキュッと握られた手を包む様に握り返して、少年の歩幅に合わせてゆっくりと歩み始めて。
「ホウセン君、ね。もしかしてシェンヤンの生まれかしら?実は私も母親があっちの生まれでねー、ほらっこの服なんかもその影響なのよ。服装を見るにてっきり商人の子供かなーって思ってはいたけど、一人で迷子になっても戸惑ったりしてないみたいだし、もしかしてこういうのは慣れてるのかしら?」
開いた片方の手を自らの胸元に当てて自らのドレスを見せながら少年にも話題を返すストレート事情を聞くのは憚れるが少年が小恋にいる理由が気になるのも事実であって。
■ホウセン > 歩みの速さも、小さな妖仙の歩幅に合わせたもの。
単なる親切心の発露以上に、子供の扱いに長けているとの印象を補強する材料となる。
女の見目から伺える年齢を鑑みて、また小さな己の右手を握っている左手に感じる金属の感触から、子を産み育てたのだろうと察する。
王城の廊下では珍しい部類に入る装束というのはお互い様。
軽く驚く素振りを見せるのはご愛嬌といったところ。
「うむ、確かに北方の出じゃが、田舎の方でのぅ。
装束のみの着道楽と思うたが、あちらに由縁があったのじゃな。
世は狭いものじゃ。」
幾つか区画を進むと、漸く衛兵の姿が見える。
尤も、女に案内を任せている以上、妖仙の側から重ねて衛兵に道を聞くのも礼を失することになろう。
それ故に、澄まし顔で手を引かれるに任せるが――
「慣れるというのが迷うことに対してならば、不注意者と表裏一体故に首を縦に振れぬ所じゃな。
一人で出歩くことに対してならば…応というところじゃ。
何分、用聞きであちらこちらに出向いておるからのぅ。」
直接的に身の上を語ることはないが、”用聞き”という単語から、商人か、それに纏わる素性だということは知れよう。
それ故に、王城という特殊な場にも慣れている理由付けの足し位にはなるかも知れぬ。
「斯く言うご婦人は、何ぞ用ががあるのかのぅ?
いや、この時間に向かう場所にしては、聊か物珍しかろう。
尤も、良人なり子息が騎士団務めで…というのなら、不思議はないのじゃが。」
道すがらの世間話。
斜め下から大きな黒い瞳が女の顔を見上げるが、目立つ胸の稜線に阻まれて碌に見えない。
むぅ、と小さく唸るのは、視界が閉ざされる事への不平か、それとも十二分に主張の激しい乳房に対する感嘆か。