2019/03/11 のログ
■ヴェルム > 「ふぃー、いやぁちょっと歩いただけなのにびしょ濡れだよ」
声を掛けた途端、すぐに門が開く。
やはりお菓子を持ってくると話が早くて良い。
門のすぐ傍、と言うより管理人室みたいな配置の室長室に軽くノックしてから入れば、髪とコートを濡らした一人の男。
「しばらくだねミリーディア、相変わらず忙しそうで…
あ、あとこれお土産ね」
相変わらず呑気な雰囲気の男は、ふかふかソファでゆったりしているかもしれない…というかそんなイメージしかない彼女にご挨拶。
お土産として渡すのは白い箱に入ったチョコケーキ。
ラベルを見れば有名店のそれとわかるはず。
あととりあえず、タオルとかが欲しい。
■ミリーディア > 「あんな雨なんだ、濡れるのは当然だろう?
まったく、御菓子が湿ったら如何するんだ」
身を起こしてはいるものの椅子に座った侭の少女。
濡れ鼠と為っている男性へと呆れた様に言葉を向ける。
「君は濡れても如何とでも為るが御菓子は元に戻すのが面倒なんだ。
気を付けてくれよ?
忙しいか如何かは兎も角として、中々良いタイミングで来てくれたものだね。
……お、其れは富裕地区で売ってる例のケーキ屋の物か?」
トンと指でデスクを小突くと濡れていた男性は一瞬で乾く。
只濡れているのを乾かすのは周囲を濡らす水分を取り除けば良い。
然し湿ってしまったお菓子を乾かす場合、物に依っては微調整が必要と為るからだ。
そして男性の予想通りに少女はラベルを見て一発で其れを言い当てた。
と為れば用意するのは洋菓子に合わせた紅茶か。
再びデスクを小突くと、其処には何時の間にかティーセットが準備されていた。
紅茶は注がれた状態で温かい、勿論ティーカップは二人分だ。
■ヴェルム > 「いやぁ、水も滴るうんたらかんたらってあるし、いけるかと思ったんだけど…
滴るレベルじゃあなかったなぁ」
彼女が男よりもお菓子を気にするのはいつも通りなので気にしない。
水も滴るどころかびっしょりな男は、けらけら笑いつつコートを脱いだ。
「さすがミリーディア、正解だよ。
しかも新作だよ?行列に並ぶのキツかったよ~、女の子しかいないんだもん。
て……良いタイミング?嫌な予感がするなぁ…こっちも用があって来たけど…早めにお暇するか…」
有名店の箱なのだし、彼女が知っていて当然。
頭を使う仕事…だと思うので、チョコケーキを選んで買ってきたのだった。
魔法で容易く身なりを乾かされると、便利だなぁ~なんて呑気に感想を漏らしつつ、適当な椅子にでも座ろうか。
良いタイミング、と聞くと嫌な予感がしたりしなかったり。
お紅茶を頂いて颯爽と立ち去ろうか…なんて考えていた。
■ミリーディア > 「まあ、最初の小降りで甘く見て後悔したと云った処かい?」
出た途端に降っていたのなら傘の一つも持っている事だろう。
其れが確実と云う訳でも無いのだが予想を口にして。
「当然だ、美味い甘味の店は制覇しているからな。
然し、新作か……期待しておこう。
ああ、買出しに行こうと思っていた処に来たのが君だったからね」
既に傍に置いてあった椅子に腰掛ける相手へと自慢気に述べる。
そして、少々勘違いを彼はしている様なので簡単に其れを伝えた。
伝え乍に箱を開ければ、出てくるチョコケーキに満足そうに頷く。
直ぐに器へと移せばフォークを添えて御互いの前へと置いた。
「其れで、用事が在って来たと云っていたが…何かね?」
フォークで一口サイズに切り分け、一切れを口へと放り乍に質問を向けた。
■ヴェルム > 「まぁそんなところ、というか傘持ってきてなかったし」
まぁあれだ、めんどくさがってとかいうしょうもない理由だ。
「ああ、なんだ…
謎の実験につき合わせるとかじゃなくてよかった」
この研究所になんかそういうイメージがついているのか、そういう風に巷で言われているのか。
とりあえず勘違いとわかれば安堵した様子で、落ちついて紅茶を一口頂こう。
魔法があるとはいえ甘味の前ではこうもテキパキとするんだなぁとか、彼女の所作を微笑ましく眺めていた。
「ああ、うん。
用事というか相談事かな。
知り合いに狐ちゃんがいるんだけどさ、まぁその子とは遊んだりした仲なんだけど。
ついこないだタナール守備隊がやられたじゃない?生存者の話を聞く限り多分襲撃犯はその子だと思うんだよ。
たぶんその子は覚えてないんだろうけど。
ミリーディアなら、もっと詳しいこと知ってるんじゃないかって思ってさ」
あの時サイコロ遊びした彼女が、狂気の人格を隠し持っている。
現に十三師団もかつてわずかでも被害を被っているのだ。
とはいえ神出鬼没なこともあって有効な対策が取れていない状況。
友人として彼女をどうするかを決めるためにも、彼女についての詳しい情報が知りたかった。
神妙な面持ち…というわけでもなく、差し出されたチョコケーキをフォークで食べながら、ちょっと困ってるみたいな感じではあった。
■ミリーディア > 「成る程、傘を持つのが面倒か、濡れない様にするのが面倒か。
儂の二択と似た様な悩みだね」
其れは何処か少女と通じる処が在ったらしい。
彼の場合は濡れてでも出掛けるのを取った。
少女の場合は此の部屋に留まる事を取った。
御互いに面倒事を避けた結果が今なのだろう。
チョコケーキを頬張り、紅茶を合間に啜る。
食を進め乍に彼の言葉へと耳を傾けていた。
其の言葉が終わると共に、一度手にしていたフォークを器に置いて。
急に此の部屋全体からの違和感を彼は感じるだろう。
此の瞬間から此処は、彼の知らない侭、部屋毎世界から切り離されたのだ。
「……確かに、その狐の娘に関しては調べてある。
先日の砦を放棄しての撤収も、彼女が原因だったらしいしね。
従っていると云う式神を名乗る者と少しばかり話し合ったよ。
君の予想通り、其れを行った事を本人は覚えていない。
覚えていないと云う依りも、知らないが正解か。
二重人格に近いもので、あれは彼女の先代、玉藻の前との名前だそうだ。
然し、彼女達からしても其れは予想外の事らしい。
本来は危険を引き金に発動するものと云っていたからね。
……儂が聞いたのは其の程度だが、他言無用に願いたい。
其の事実を聞かれた時に、相手を選び答えても良いとの承諾は得ているが…
此方としても、対処を如何するか思案中なんだ」
そう伝えれば、再びフォークを手に食を再開し始めた。
■ヴェルム > 「…」
特に重苦しい雰囲気にはしたくないがため、気軽そうにケーキを口にしつつ、紅茶を嗜みながらの相談のつもりだった。
だが話が終われば男はふとしたように、きょろきょろと部屋全体を見渡す…なんかちょっと変な感じと。
とはいえ、その仕組みを聞いたところで理解できないだろうし、理解できないのならそういうものなのだと受け入れるだけ。
「ふーん…ピンチの時に現れるはずのご先祖の意識が勝手に現れて好き勝手してる…ってことか」
やはりミリーディアは彼女のことに詳しいらしい、それどころか知った間柄であったことは驚きだが。
彼女の言葉を自分なりに噛み砕いて理解すれば紅茶をまた一飲み。
あんまり動じていないところを見れば、ある程度は想像していたのだろう。
「他言無用はもちろんだけど…長続きはしないと思うよ。
こうも被害が重なれば強力な部隊を差し向けられるだろうし、タマモが原因だと知られれば何をされるか…
その先代とやらが出てこれないようにするか…あるいは力を奪えればいいんだけどねぇ」
あれと相対したことがある身としては、二度と相手は御免被るところだった。
無駄死にさせるとわかっていて部隊を差し向ける気にもならないのだから。
ともあれ、問題を共有できる者ができたことは良いことか。
■ミリーディア > 「ああ、そうだ。
然も其の先代とやらは人間の国を脅かしていた存在だったらしい。
シェンヤンの大妖と云えば分かるかね?
育ちの所為でそうは見えないが、彼女もそう云った存在だ」
正直な気持ちは育ち一つでそうも変わるのかと疑ったものだ。
だが言葉を交わした相手が真実を述べていたのは理解していた。
だからこそ余計に考えさせられているのだが。
進める手は止めぬ侭で会話を続ける。
「……手段が在れば、其の式神とやらが取っている事だろう。
此方には、本来余り大きな影響を与えたくは無いと云っていたからね。
兎にも角にも今は様子見以外の手段が無い。
だが、何れは大きな選択が迫れるかもしれないらしいぞ?
其の時に何れを選び何かを起こすのか、其れとも…」
一旦言葉を区切り、残った一切れを頬張る。
そして紅茶を啜ってから、其の一言を紡ぐ。
「最悪は、其の前に儂が相手をするかだ」
云い乍も、其れは本当に最後の手段としたい処だ。
自分が本気で動こうとするのは、其れ程の意味を持つ事なのだから。
空に為ったティーカップを置き、彼へと顔を向ける。
「まあ、そんな事に為る事は無いだろう。
其れに他に何か起こる可能性だって無い訳では無い。
ポンポン表に出てくる訳では無いらしいし、気楽に構えるのが一番だ。
気を張りっ放しなんて疲れるだけさ」
そう締め括り、再び其の身を椅子へと沈めた。
其の表情は真面目な話を終えた後と云う依りも、美味しい甘味に満足したと云ったものだった。
■ヴェルム > 「まぁ、そりゃそうか。
妖怪相手に人間風情にできることはあんまりないか」
狐っ子にも一応味方はいる。
その味方ですら手を焼いているのであれば、こちらではどうしようもない。
もしくは、全くの第三者がねじ伏せてしまうとか、そういうこともあり得る。
彼女の言う大きな選択とやらが実際に起こるのかどうか、人の命を決める選択というのは、したくないものだ。
「ま、人を脅かしているって意味なら普段のタマモも似たようなことしてるっぽいけど…」
彼女の悪戯とやらで、それなりの被害者は多そうだと、冗談交じりに笑って。
ほんのりと重苦しい空気を一蹴しようか。
妖狐よりも遥かに謎めいたミリーディアが動く状況など、あんまり想像したくないのもあった。
「ごもっとも、まぁ今後彼女と会って異変の予兆があったら、いろいろ試してみるさ。
先代化した彼女とは会いたくないけどね」
普段の彼女は遊び相手としては十分に楽しめる相手。
それに負けっぱなしというのも柄ではないので、またいずれ勝負をするつもりで。
ただし先代との勝負だけはこりごりなのだ。
「紅茶、美味しかったよ。
美味しかったついでに、雨が上がるまで雨宿りさせてもらえるかなー?」
ケーキを食べ終えた彼女のなんとも満足そうな表情に微笑めば、男も紅茶を飲み干して一息つこう。
さて未だ雨が降りしきる中、今度は帰るのが面倒となって、雨宿りと言う名の一泊を要求してきた。
■ミリーディア > 「さてな、シェンヤンの大妖為らば兎も角…
いや、どちらにしても、まともに相手するものでもないさ」
此の世界の存在で在れば、如何とでも為るのが正直な感想。
だが彼女は異世界の存在、解らぬ事も在るものだろう。
研究対象にしたくは思うが流石に此の世界で手一杯だ。
其れに彼女の事を気に掛ける相手も居るのだと知る事が出来たのだし、此れで良しとしておこう。
「……其の点はな、同じ様な者達が居過ぎて判別し難い。
ある種、此れも異常な事なのかもしれん」
魔族にも、他の種族にも、処か同じ人間同士でも。
其の脅威は在る為に困った様に肩を竦めてみせた。
彼が自分の事さえも気に掛けている、そう迄は気付けぬ侭。
「儂としては、其の時は逃げの一手に勤めて欲しいものだがね。
相手をしても無駄に被害が大きく為るだけだ」
実際に話に上がっている女性自身とは直接に会った事はない。
なので、其れに関しては思うが侭に答えを述べる。
後の言葉には思案する様子も見せずにこう云うのだ。
背後に在る本棚、隠し階段の在る其処を指差し乍。
「どうせならば泊まっても構わんよ。
そこ等のソファーに転がっても風邪を引く事も無いだろう。
何だったら、又暇潰しにあそこで相手をしても良いさ。
君の選択次第だがね」
■ヴェルム > 「狐恐怖症になる前に問題が解決してほしいところ…
ただでさえ問題が山積みなのに、増えることはあっても減ることがない」
魔族にしてもシェンヤンにしても、国内にしてもそうだが…
ああ、後は来訪者というのもあるか。
あまり良いニュースは聞かず、問題だけが増えていく国内の原因は、やはりもっと大きな者の意思故か。
「そうしたいけど、まだ意識がある状態で背中向けて逃げる姿は見せるのも酷じゃない?」
もちろん先代と相対するなんてしたくないが、本来の彼女の前で露骨に逃げる姿勢というのも可哀そうというか。
まぁあれだ、なんか気を使ってしまうのだ。
そんなタイミングに巡り合わないことを祈ろう。
「おー、助かる。
えぁ?…じゃあうん、お願いしちゃおうかな。
今度は暴走も無しで、普通に」
泊まっていって構わないとなれば、上機嫌に。
どうにも彼女の部屋というのは、無駄に居心地が良かったりするのだ。
次いで、もう一つの提案をされればきょとんとするが、なかなか乗り気な反応を見せた。
■ミリーディア > 「全く以て大変なものだね、師団長と云うのは。
矢張り気楽な立場と云うのが一番だと改めて認識させられる」
過去、一度在った就任の誘いを蹴った少女。
当時思っていた事が、現実と為っている様子が彼から見て取れる。
自分の選択の正しさを示す様なものであった。
「ああ、異常が起こりそうな時にって話さ。
尤も、何を以て其れを判断するのかいまいち分からないがね」
流石に彼女自身の時に其れは可哀想だろうとは思う。
自分で云っておきながらだが、実際に前にして難しい事だろう。
そんな事が自分の元では起こらない故に、少女は気楽なもので。
「分かった、では今夜は好きにしてい給え。
……其れは残念。でも相手をしようと云うのは…流石だね」
居心地の良さは自慢の一つ。
何せ此の部屋の気温や湿度は常時過ごし易く調整されているからだ。
更に今自分が座っている特製の椅子は座り心地も寝心地も抜群である。
其れは兎も角として、此方の誘いには乗って来る様子で。
普通に、との事には小さく舌打ちをし乍も、地下への案内を後にするのだろう。
其れからの話は…二人だけが知り得る事で在ろうか。
■ヴェルム > 「ふふ、その余裕…いつまで持つかな~」
こうも問題が多いと、彼女のような立場でも矢面に立たされるかもしれなくなる。
誘いは断れても、命令では断りにくかろう。
こんな情勢では、その内上層部が無茶ぶりしてきても不思議じゃない。
「もちろん、のんびりゆっくりさせてもらうよ。
…今舌打ちしなかった?……ねぇ?」
今更気を遣う間柄でもなく、むしろ遠慮しろと思うほどゆっくりするつもりで。
地下でのあれこれは普通にと言うと、なんか舌打ちが聞こえたような気がしてにっこり微笑む。
何かしたら、後でお仕置きしてあげよう。
そうして二人、地下の階段を下っていった…
ご案内:「王都マグメール 王城内研究施設」からヴェルムさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城内研究施設」からミリーディアさんが去りました。