2019/02/12 のログ
ジナイア > 薄暗い灰色の雲が空に敷き詰められた冬の午後。
王城の中庭にある、常緑樹の生垣で出来たちょっとした迷路は、王城のほぼ真ん中に設えてあるにも拘らずしんとして人が行き交う様子はない。
人の気配と言えば、どこか遠くで開かれているらしい宴会の楽曲だけが、時折風に吹かれてごくうっすらと聞こえて来る程度だ。

その中心、飾り気のない噴水から水がさらさらと、いっそ静けさを際立てて零れているちょっとした広場へ、ゆっくりとした足取りで踏み入れるフードを被った灰色の人影がひとつ。

「…静かだな」

フードの奥から覗く赤銅色の頤の唇から漏れた言葉は、白くけぶって天にゆっくりと昇った。

ジナイア > 雪が降るかもしれない、と友人に聞いた。
見たことないだろう、と言われた。見たいだろう、とも。
確かに実際見たことはないし、見てみたい。そう答えたら、王城の中なら中庭が一番見物するに良いという。
その通りに足を向けたわけだが、天はまだ唯々憂鬱な雲が敷き詰められているだけで、空気はひたすらに冷たい―――

「いつ頃なのか、訊いてみればよかったな…」

訊いたところで的を射た答えがあるかどうかは解らないが、少なくとも当てもなく佇む事は無かったろう。

ジナイア > 広場の中、生垣沿いに置かれたベンチへと歩み寄って、腰を降ろした。ひやりとする感触にすこし肩を竦めてから、足を投げ出して座った。
そうして薄暗い灰色の雲を見上げる。
じっと待つには悪すぎる気候だ。雲の形を見飽いたら、一度立ち去ろうと決める。

ジナイア > ほんの数刻、雲というよりは白くけぶる自分の吐息を見上げながら考え事をする…

そうして不意に背筋を走ったものがあり、諦めのため息をまた白くけぶらせながら立ち上がった。

(王城の中に戻るか、宿へ戻るかは悩みどころだな…)

広場から、迷路の中へと足を踏み入れる…と、ふわりと白いものが目の前を横切った。

ご案内:「王都マグメール 王城 中庭」からジナイアさんが去りました。