2019/02/01 のログ
アマーリエ > 「……帰って良いのかしら、ねぇ。奴隷を飼ってどうこう、という趣味無いのに」

いっそ、この広間を術か剣で一掃したい欲動を駆られる。
狂騒めいた風景は遠巻きにして眺めて、躍る人間の痴態を酒の肴にする方が少なからず溜飲は下がるが、そうもいかない。
多少は気を払うのは、彼らが出す資金の一部が師団の運営の一助となっている以上、途絶えると困ることが多いからである。
勿論、国に仇為す者となることの危うさは弁えた上ではあるが、如何せん阿る気にもならない以上、如何ともし難い。

壇上に立てられた柱に絡みつくように踊る半裸の少女の姿があれば、あちらはどうか。
椅子に手足を拘束され、身体の前面を見せつけるように開かれた上で振動する魔法仕掛けの性具で緩慢に悦を煮え立たす様もある。

手塩にかけた名馬、名物を自慢げに見せっているのと同じ感覚だ。
戦士や騎士であれば、垂涎ものの武具の数々を互いに見せ、称え合っているのと同じ――として、いいのだろうか。

「……――え、何? もっと近くで見ろって? 公、前々から言っているけど、よく分からないのに、ってもう。」

強くない酒をちびちび嗜んでいれば、己を呼びに来た姿がある。
師団の出資者の一人である。国防に強い関心のある貴族、と日頃より宣っている御仁だが、貴族の嗜みにうるさい嫌いがある。
思わず、素で答えながら、酒に酔った件の人物は気にした素振りもなく己を人の集まりの中に引っ張ってくる。

全力で断るべきだった。今さら後の祭りであるが。

アマーリエ > 「……で。」

――どう品評すればいいのだろうか。答える気もナニもないわよ?

そんな言葉を交わしながらも、並ぶ席の一つに座す。背凭れのない椅子となれば腰に佩いた剣を外さずに済む。
思いっきりやる気のない顔で頬杖を卓の上で突きつつ、空にした酒杯を横手に突き出す。
その仕草を組んで、注ぎに来るものもまた服の意味を成してなさそうな奴隷だ。
メイド代わりでいいのだろう。注がれる酒を零さないように、礼を失しない程度に用を満たすのは仕込みの結果か。

「――さっきも言ったけど、評する気も何も無いわ。実演でもさせたいなら好きに遣って頂戴な。そういう趣向なんでしょう?」

この奴隷の具合を試してみないか、と名乗りを上げるものを募る声がする。
君はどうか、と掛かる声に、はいはい、といった風情で手を振りつつ、どうぞ勝手にと受け答える。
敢えて欲しいものとなれば性欲処理の奴隷では飽き足らない。寧ろ、妻の方が欲しい。
家を継ぐかどうかはさておいても、誰かの妻となって子を孕むより、孕ませる方が性分としては合っている。

アマーリエ > 「……――悪いわね。やっぱり、性分じゃないわ。あとはお好きに、ね?」

ああもう。どうせなら高級娼婦を買って、一晩中駄弁ったり繋がったりする方がまだ気分が良い。
肩を竦めて立ち上がり、片手を振ってこの広間を辞すとしよう。
主催者の制止の声なぞ知ったことではない。

ちら、と見遣るのは性具責めにされている奴隷の一人の目に宿る哀愁めいた風情の光。
己が同類の慰み者になることもあるのが、この時世だ。

腰に佩いた剣と髪を揺らし、肩で風を切って――。

ご案内:「王都マグメール 王城」からアマーリエさんが去りました。