2019/01/17 のログ
■ミリーディア > 椅子から身を起こしデスクの上の資料を掻き集める。
其れ等は既に少女のサインが記されており、全て目を通しているのだと云う事を伝えていた。
椅子から立ち上がり、デスクに水晶球を置くと窓の前へと歩み寄る。
腰元へと後ろ手を組み、窓から夜空を見上げて…
「さて、魔王としての儂は一石を投じておくとしよう」
深く吐息を吐き、続けて呟く。
そして目を閉じて次の言葉を遠く魔族の国に向かい飛ばすのだ。
『ファウスト騎士団よ、儂の城は眷属の者達に任せ研究要塞に移るのだ。
タナール砦付近へと配置した後、君達は侵入者の排除に専念。
遣り方は各々に任せる』
■ミリーディア > 「さて、そろそろ寝るとしよう」
踵を返し、再び其の身を柔らかな椅子の感触の中へと沈める。
体を休める事は生きる上で重要な事の一つ。
遠き場所の出来事は、又後にでも確認し様と考え乍。
ご案内:「王都マグメール 王城内研究施設」からミリーディアさんが去りました。
ご案内:「王城 迎賓区画」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 贅の限りを尽くした、という表現が此処迄似合う場所も中々無いだろう。
調度品どころか、テーブルクロス一つとっても金貨の山が唸る様な一品。つまみ食い程度にしか手を付けられていない多くの料理は、どれも名のあるシェフが腕によりをかけて作ったものばかり。
大広間の一角で演奏するのは、宮廷楽団の選りすぐり。殆ど誰も聞いてはいないのだが。
そんな破滅的とも言える晩餐会の中で、熟れた様な笑みを浮かべて貴族達と談笑する少年の姿があった。
「……いえいえ。利潤や我欲ばかり追い求めていては、王国を憂える者として相応しくありません。御相談事は何時でも御伺いしますので、御一報頂ければ」
心にもない事を平気で口に出すのも随分と慣れてきた。
朗らかに笑いあいながら腹を探りあう貴族達の視線を受け流しつつ、手に持ったグラスを煽り空にする。
「…それでは、また後程。ああ、御相談事を早急にとあれば、ヴェルリナス・バンクの者が本日此方に顔を出しております。後程御挨拶に伺わせますので、その際に御声掛け下さいな」
金が欲しい貴族達に温和な笑みと実務家を案内すると、小さく一礼してその場から離れる。
会場の一角に設けられたカウンターに腰を下ろすと、深々と、しかし小さな溜息を吐き出した。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 今回の晩餐会は、表向きは【魔族との戦争に注力する貴族達の懇親会】だっただろうか。下らなさ過ぎて忘れてしまったが。
だが、金だけは盛大にばら撒いている。というよりも、今回の晩餐会の資金の大半は此方が負担しているのだ。
酒、料理、新たに置かれた調度品。そして、遊戯室に‴置かれた‴様々な嗜好を満たす奴隷や道具の数々。持たせる手土産まで準備したのだから、どれ程の金が動いたのかなど考えるのも面倒。
だが、その効果は絶大だった。なまじ戦争で資金繰りに喘ぐ貴族達は、こぞってホーレルヴァッハ家へ支援を求め、その影響下に収まるだろう。戦争とは、金がかかるものなのだから。
「…とはいえ、マネキンを演じ続けるのも些か疲れるのだがな」
金を出したとはいえ、表向きの主催は別の貴族。ホーレルヴァッハ家はあくまでスポンサーに過ぎない。それ故に‴この程度‴の晩餐会には当主たる父親が顔を出す事は無く、嫡男として己がニコニコと笑みを振りまき、挨拶回りに奔走していた。
執務室で書類に向かっていた方がどんなに楽だろうか、とげんなりしながら、差し出された果実酒でゆっくりと喉を潤す。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 会場に視線を移し耳を傾ければ、貴族達の勇ましく景気の良い話が聞こえてくる。
やれ魔族を何匹捕縛しただの、タナール砦において戦果を上げただの、勇壮な騎士団を大量に抱え込んでいるだの。
だが、訪れた貴族達の税収も、軍備にかかる支出も、現実問題として碌な戦果があげられぬまま悪戯に兵を損失している事も、その殆どは資料として此方の手の中にある。
そうやって、辛うじて首の皮が繋がっているだけの貴族ばかり集めたのだから。
「王国軍は兎も角、貴族の私兵如きで戦争が出来る訳もあるまいに。いや、それが理解出来ていないからこそ、優良な顧客足り得るのだが」
個室や遊戯室へ消えていく貴族達を横目に、僅かな苦笑いを零してグラスを傾ける。
一通り挨拶も済ませたし、どうしたものかと思考を煙らせながら、程良く回り始めた酒精に身を任せていた。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > グラスが空になった頃、此方へずかずかと歩み寄る足音に振り替える。
僅かな溜息を吐き出した後、再び人当たりの良い笑みと共に振り返った。
「これはこれは、レムズベルグ卿。今宵はもうお見えにならないのかと――」
こうして、再び大人達に交じった少年は笑みを絶やさない。
財貨と享楽を蜜の様に垂らし、群がる蟻を観察する様な心境と共に、少女の様なたおやかな笑みを浮かべ続けていた。
ご案内:「王城 迎賓区画」からギュンター・ホーレルヴァッハさんが去りました。