2018/12/22 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城」にゼロさんが現れました。
ゼロ > タナール砦を出てから、夜通しで走り抜けた。
 重要な情報だからこそ、少年は人に任せることをせずに、山を抜け、野を掛けたのだ。
 魔術師であれば転移の魔法でも使えたのだろうが少年は魔法を使うことができないから、物理的に走ることしかできなかった。
 馬は――――借りるという手もあったが、馬よりも走ったほうが早かったのだ。
 山を登り、降りるなら馬よりもこの足の方が役に立つ。
 故に、少年はタナールから直線で走り……そして、今、到着したのだ。
 全身の鎧は血と泥でドロドロに汚れ、仮面にも泥が付いている、が、目的地は貴族のいる場所ではない。
 第七師団の団長室、それに火急とも言える情報であれば、躊躇いはない。
 流石に疲労が大きく、体がよろけてしまいそうだが、それでも、一歩、一歩と、歩みを進めていく。

 とはいえ、将軍は忙しい人間である、出会えるとは限らない。
 が、それでも、せめて執務室に行き、いるかどうかは確認せねばなるまい。
 少年は、廊下を進んでいく。

ゼロ > 「―――――。」

 仮面の中に映る景色は、久しぶりに見た景色である。
 懐かしささえ感じられる王城の廊下は、前と変わった様子はなかった。
 そこかしこで、貴族たちが遊興に耽っており、男と女の声が響き渡る。
 傷は直ぐに治るが、疲労はそうでもない、早く治らないだろうか、と歩きながら考えつつ、少年は何度も歩いたろうかを、右に左に迷いなく進む。
 もう少し歩けば、第七師団の将軍の執務室が見えてくるだろう。
 道を思い出しながら進み、何をどの順番で報告するべきかを頭の中で反芻する。

 ふと歩きながら窓の外を見る。
 いつの間にか、夜になっていたようだ、少年は仮面に頼っているからだろう。
 現在時刻が昼か夜かをあまり気にしていなかったりもする。
 そして、外が夜であり、そこで気がついた。

 ――――夜なんだし、寝てる可能性というものがあるということ。

ゼロ > 「本気で失念してた。」

 将軍であれば忙しいこともあるし、遅くまで起きているということも考えられる。
 が、普通に考えれば、事務的な仕事などを終わらせてしまえば、眠ってしまうだろう。
 つかれた思考や肉体で軍を維持をできるとも思わないし。
 持っている情報は大事なもので、重要なものだがさて、休んでいる将軍を起こしてまで渡すべきものであろうか。
 少年は悩む。
 悩んでいても足は進んでいるから、結局到着してしまうのだ。

「―――――よし。」

 少年は最後に一つ気合を入れるように小さく呟いて。
 それからノックをして。
 第七師団の団長の部屋に入っていく。

 ――――将軍に会えたかどうかは、別の機会でのお話になるのだろう――――。

ご案内:「王都マグメール 王城」からゼロさんが去りました。