2018/08/10 のログ
エズラ > 男の肉厚な舌が、不躾に貴婦人の舌を犯す。
舌だけではない――歯茎や頬の裏側に至るまで、文字通り味見するかのように入念で――執拗な責め。
こちらの鼻孔にもまた、熱を帯びた雌の芳香が立ち上って心地良い。
唾液を啜り飲み、その逆に飲ませ――自分の味を、教え込む。

「……ぷはぁ――」

ねっとりと銀糸を引きながら、長い口付けから解放――そして、おもむろに。
彼女の下腹に指先だけで触れ、徐々に下へ下へ這い進み――しかし、秘所には決して触れず、その先、己の腿へと指を当て。
そこから感じるぬめりを確かめると、彼女の目の前に、彼女で濡れた指先を見せつけ――それを、はむ、じゅる、と礼儀を知らぬ子供が、手掴みで食事した後にその手をしゃぶるように無邪気に――また、彼女の味を確かめる。

「ムフ……良い味だぜ、奥様――その扉の向こうの男が「これ」を味わったのは、いつが最後なんだ――ン?」

相変わらず、品性下劣な素性を喜んで晒しながら、彼女の腕を解放し、緩やかに身を下げる。
ただし今度は――彼女の反撃を許さぬ距離に。

「それじゃ――ゆっくりお休みくださいませよ、奥様――また会えたら、嬉しいね――」

べろり――舌なめずりを見せつけた後、男の姿が薄闇の廊下の向こうへと、溶けるように消えた――

アビゲイル > 「ん………ん、ぅ、…ふ、ッんん――――ん、く……、」

夫との行為では、終ぞ味わった事の無い濃厚な蜜が、男の舌が触れたところから、
重ねた唇の狭間から、惜しみ無く与えられ、同時に貪り尽くされる。
飲み込み切れずに喉を鳴らせば、口端から伝い落ちた銀糸の雫が、ほと、ほとと己の鎖骨辺りへ滴り。

「―――――ぁ、……は、…………」

頭の芯が痺れて、咄嗟に言葉は出てこなかった。
つ、と二人の唇の間を繋いだ唾液の糸を、無意識に掬い取ろうと、
紅く濡れた舌先が閃く。
男の膝に支えられ、漸く立っている有り様の己の下腹へ這い降りる掌に、
確かに、期待してしまっていたけれど――――其の指先が向かったのは、
男自身の腿の辺り、微かな水音が弾けて。
濡れ翳む視界のなか、男が其の手をゆっくりと蠢かせ――――指と指の間を繋いだ、
己が口づけだけで感じてしまった証を、躊躇い無く舐る様が映った。
其の仕草だけで、ぞく、ぞくり、と―――――また、滴り落ちそうになる、のに。

「―――――、………!」

其の瞬間、己の喉が引き攣れたように声を発せなくなったのは、
憤りからだったか、其れとももっと別の――――忘れようとしていた傷みが、
胸を衝いた衝撃ゆえだったか。
何れにしても、男は其れを限りに、すっと身を引いてしまう。
己が扉に後ろ手で縋りつく程度の猶予は与えてくれたけれど――――
叩くどころか、もう、触れる事も叶わぬ距離へ。

何方のものともつかぬ唾液に濡れた唇を、肉厚の舌がなぞる仕草を鮮烈に残して、
男の姿が闇の中へと消えてゆく。
己は暫し、其の場に立ち竦んで言葉も無く――――荒く乱れた呼吸音を響かせて。

「―――――会いたく、なんて、……」

無い、と言い切れなかったのは何故なのか。
其の答えを探す勇気は未だ無く、――――己は再び、部屋の中へと。
夫の眠る寝台に戻っても、熱に浮かされた身体を鎮めるのに、相当の時を要した、とか―――――。

ご案内:「王都マグメール 王城」からエズラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」からアビゲイルさんが去りました。