2018/08/09 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城」にアビゲイルさんが現れました。
■アビゲイル > 「旦那様――――…、どうか、起きて下さいまし。……旦那様」
深更の夜、灯りを落とした夫婦の寝室。
久方ぶりに『其の気』になってくれたと思ったら、早々に寝入ってしまった夫の傍らで、
暫し、未練がましく声を掛けてみたが―――――
「――――、……解りました。もう、宜しいわ」
気の所為か、何処かひんやりとすら感じられる空気に満ちた部屋の中。
発散する事の叶わなかった熱を籠めた溜め息を夫の眠る寝台へ残し、
夜目にも仄白く浮かぶ裸身に白絹のローブを羽織った己は、
乱れ髪を両手で掻き上げながら、素足で部屋を横切った。
そっと扉を開けば、廊下から差し込む淡い光の帯。
其処から身を滑らせて、背中で扉を元通り閉ざした。
―――――そうして、またひとつ溜め息。
掻き合わせたローブの胸元のしどけなさに気づいて、申し訳程度に指先で直す。
とても、人目について良い格好では無かったけれど―――――息が、詰まりそうで。
ご案内:「王都マグメール 王城」にエズラさんが現れました。
■エズラ > 「やれやれ――随分遅くまで、面倒なことだぜ――」
手にしたランタンの灯明を頼りに、薄暗い廊下を歩く男――出で立ちは、王城内では最下級――本来入城を許されない者が、一時的に入城を許される際に貸与される、略式礼装である。
タナールの砦付近が、またぞろきな臭くなってきた――ということで、以前その奪還に一仕事した自分が、防衛態勢についての助言者ということで、軍部に呼び出されたのである。
傭兵稼業で築いた人脈の中には、王国正規軍に所属する者も何名かおり、その伝手であった。
とは言え、所詮傭兵は傭兵――自分を呼び出した知り合い以外の将帥達からの視線は軒並み「素性卑しい狗」を見る目であり、何とも耐えがたい軍議であった。
今日は王城内に一室を――警備兵が寝起きする集団部屋より、少しだけマシという個室である――を宛がわれていた。
とはいえ――
「……ったく、迷っちまった――」
時折この王城へ足を踏み入れることはあるのだが、その複雑な構造には慣れない。
そして男は――不意に足を止めた。
薄闇の中に突如滑り出てきた、異様な影――幽霊?その白い影に向け、ランタンを掲げた。
「誰か居るのか――」
■アビゲイル > 成る程、己は聊か無防備に過ぎたやも知れぬ。
けれど此の辺りには王族の私室ばかりが並んでおり、本来であれば、
身分の卑しい者が立ち入るなど考えられぬ場所。
勿論、高貴な身分の者が皆、中身まで高潔とは限らないが―――――。
兎に角も、そんな訳で。
普段ならば有り得ない姿を、有り得ない相手に晒す事になってしまったのだが、
声を掛けられ、ランタンと思しき明かりを掲げた人物の姿が、
闇に慣れた瞳にはっきり像を結べば、己の眉宇には微かな翳りが生まれる。
ローブの胸元を其れ以上は正そうともせず、傲然と其の人物へ視線を向けて。
「……居たら、どうだと言うのです。
此処は私と、夫の部屋の前なのですから…何も、可笑しいことなど無いわ。
其方こそ、……このような時間に、このような場所で、何をしているのです?」
ぼんやりと見えた、其の服装はどう見ても、王侯貴族の其れでは無い。
尋ねる言葉の僅かな間に、相手の身分を軽んじる色を――――敏い相手であれば、
正しく感じ取ってしまうだろう。
■エズラ > 「っと――こりゃ失敬、軍議の帰りでね――ま、とは言えオレは、ヨソ者だが」
そこに居たのは、無論、幽霊などではない――足もある。
それどころかむしろ――匂い立つような艶を帯びた貴婦人であった。
寝間着にしては扇情的すぎる出で立ちが、その身体の輪郭を薄明かりの前に晒している。
彼女の言葉遣いの端々には、つい今し方まで軍上層部の将帥達から受けていた視線と同様のものを感じた。
最早それに対して怒りを覚えたりはしなかったが――
「――ははぁ、こりゃいけねぇ、随分まずい場所へ迷い込んじまったみたいだ――ところで奥様、こんな時間に寝室から抜けだすたぁ穏やかじゃねぇな?」
無頼の輩であることを隠そうともしない話し方。
その視線も、遠慮なくその肢体へと注がれている。
さらに無遠慮に距離を詰めて――まるで肉食の四足獣が、獲物を前にその包囲半径を狭めるかのごとく、じりじりと彼女の周囲を回る――
「――ひょっとして、あんたの身体を慰めてくれる旦那は、別に居るのかい」
先ほどの彼女の言葉に対するお返しとばかり、下卑た台詞を吐く。
■アビゲイル > 「軍、議………ああ、そういう、事」
ほっそりとした線を描く顎が、僅かに上下する。
此の時刻、城内をこのような男が衛兵にも見咎められず歩いていた理由は、
其れで一応理解出来た。
とは言っても、此の辺りはどう考えても、男が入り込める場所では無い筈だったが。
「そうね、此処は本来其方のような者が、ふらふら歩いていて良い場所では無いわ。
――――何が、言いたいの」
卑しい身分の者である事を隠しもしない、其れどころかまるで、
『そう』である事を態と、主張でもしているかのような物言いと、身ごなし。
不躾に距離を詰めて、下賤の女を品定めするような眼差しで此方を見る男に、
もはや、不機嫌である事を取り繕いもせずに冷ややかな視線を投げる。
ローブの下、扉に預けた背筋を、ぞく、と駆け抜けた甘い痺れには、気付かぬ振りをして。
「―――――、控えなさい、無礼者……!」
刹那、頬に鮮やかな赤味が差した。
ローブの裾が乱れ、白い脚が半ば程も露わになるのも構わず、
一歩、大きく踏み出して――――振り上げた右の掌で、男の頬を鋭く打ち据えようと。
■エズラ > あまりにも品のないこちらの煽り文句に対して、彼女は当然の権利を行使した。
腰の入ったその平手打ちは、彼女の気性を物語るに十分であった。
だからこそ――男は、乾いた音が静かな廊下に響き渡るまで、微動だにすることはなかったのである――しかし。
強かに頬を打たれたその瞬間、その細い手首を、まるで大蛇が絡み付くかのように、それでいて、サソリが獲物を仕留める時のように俊敏に捕獲していた。
「おお、痛ぇ痛ぇ――」
頬から痺れを感じつつも、男は構わず歩を進め――彼女の背を扉に追い詰め、乱れたローブの奥、股の合間に、己の腿を押し当てる。
その太ももからは、鍛え上げられた筋肉の脈動――雄としての強靱さを、彼女の下腹へと伝える。
「無礼者ね――まったく、仰る通り。だが、どうせなら無礼ついでだ――」
ぐい、とさらに身を寄せると――そのままその形の良い唇を奪おうとする。
それが叶えば、獣臭のような野蛮な芳香を相手に擦り付けつつ、容赦なくその舌を食むだろう――
■アビゲイル > 怒りに任せた反射的な行動だったが、其れにしても相手は武人である。
本当は男にとって、己の一撃など避ける事も、阻む事も容易かった筈。
けれど―――――静まり返った廊下に、鋭く乾いた打擲の音が響き渡る。
「全く、…恥を知りなさ、い、―――――っ、っ………!」
憤然と息を吐いた己の、其の手首が男の武骨な手指に捕えられれば、
当然の権利として引き剥がそうと腕を振ったが――――ビクともしない。
どころか、更にと此方へ踏み込んできた男の圧で、己の身体は扉へ押し付けられてしまった。
乱れたローブの裾が男の膝でたくし上げられ、硬い腿が下着も着けていない秘部を捉える。
びく、と跳ねた腰を僅かに浮かせて逃れようとしたが、其れよりも早く。
罵倒を浴びせようと開いた唇が、男の其れで塞がれて――――
「――――っ何、を………ん、ンぅ、……っ、ふ………!」
薄絹一枚隔てて、男の体温が柔肌を侵してゆく。
右手は捕えられた儘、ならばと左手を伸ばして男の肩を掴んだが、押し遣るには全く力不足で。
鼻腔を衝く雄の香り、獰猛な獣の本性其の儘に、己を食い荒らそうと蠢く濡れた舌肉が、
絡め取られて切なく震える己の舌先から喉へ、余りにも甘く、粘つく欲望の発露を伝えてくる。
口端から零れる吐息に、微かに紛れて溢れた、声。
其れ、が発情した雌の喘ぎに色づくまで、然して時間は掛からず―――――。
堪え切れずに閉じた瞼の縁を、淡い水の膜が彩る。
次第に沈みゆく腰が男の腿へ密着すれば、其処に伝わるのはきっと、
熱ばかりでは無く、僅かな湿気も―――――。