2018/07/23 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城」にイヴリールさんが現れました。
■イヴリール >
マグメール王城
そのテラスへと足早にやってくるのは、白基調のドレスに身を包んだ金髪の少女
その手には華美な装飾の凝らされた、小さな筒が握られている
「はぁ、ふぅ……うん、誰にも見られていないわ」
──こっそりと、自室から抜け出しこうやってテラスにやって来るのが少女の日課
召使いに見つかればすぐにお部屋へと連れ戻されてしまうので、毎回胸の鼓動が高なってしまう
手にもった筒をその片目で覗き込む
こうやって、お城の外の風景を眺めるのが少女の此処での暮らしの唯一の楽しみだった
■イヴリール >
賑やかなのは、富裕層の一角
身なりの良い貴族達が愉しげに会話をしていた
きっとその家のお嬢様なのだろう、綺羅びやかなドレスを纏って、沢山の人に囲まれている
「きれい…たくさん人が集まって…お誕生会なのかしら」
女の子の表情はとても眩しく、輝いたものに見える
きっと、望まれて生まれてきて、祝福されて育ったのだ
──私とは、違って
ちくん、と胸が痛む
少し慌てて、望遠鏡の向きを変えた
■イヴリール >
次に望遠鏡が覗いた先は、平民地区
がらりと雰囲気が変わって、往来を歩く人の姿も一変する
軽鎧をつけ、腰に剣を差したあの男性は冒険者だろうか
鎧はぼろぼろで、きっとたくさん危険な冒険を駆け抜けてきたに違いない
その人を追っていくと、酒場へと入っていってしまった
さすがに望遠鏡では酒場の中までは覗けない──
「…酒場…賑やかなところなのでしょうね」
お城の中で時折開かれる酒宴などとは違って、
誰が誰に遠慮することもなく、自由に飲んで、騒いで…
見たこともない、想像の世界
「あっ……」
そのまま覗いていると、男が一人酒場の入り口から飛び出し尻もちをついていた
■イヴリール >
それを追うように、すごい形相の大柄な男の人が出てきて……
「い、いけない…喧嘩……」
慌てて──
…慌てて、慌てたところで何かできるでもないことに気づく
「………」
望遠鏡を手にした腕が力なく垂れる
自分には縁のない世界
「……外に、出てみたいな」
誰にでもなく、ぽつりと呟く
…こんな言葉を召使いにでも聞かれたら、きっとまたすごく嫌な顔をされる
不義の子でしかないお飾りの姫が、自分達に面倒をかけるのはやめてほしいと
■イヴリール >
散歩くらいなら…とお願いしてみたこともあった
ダメだった
こっそりと出かけてみようとしたこともあった
入り口の衛兵さんに見つかって、すごく怒られた
「……はぁっ…」
溜息をつきながら、テラスの手摺に背中を預ける
柔らかい風が吹いて、少女の長い髪を撫ぜた
「平民の子に生まれたかったな……」
贅沢ともとれるような、そんな呟きは再び吹いた風に吹かれて、消えてゆく
■イヴリール >
『イヴリール様!』
突然、大声をあげられて身体がビクッと跳ねる
聞き覚えのある声、聞き覚えのある…声色
恐る恐る振り返ると、こちらを睨みつける、召使いの姿
お付きの者なしに勝手に城の中をあちこち歩き回られては困るのだと
そんなことをされると、自分達が怒られるのだと──
もう、何度目か
「……はい、ごめんなさい」
素直に謝り、まだ苛立っている様子の召使いの後について、在るき出す
まったく、妾の子なんかにどうして───
ぶつぶつと呟かれる
それももう、何度目かのことだった
ご案内:「王都マグメール 王城」からイヴリールさんが去りました。