2018/06/19 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城」に紅月/コウゲツさんが現れました。
■紅月/コウゲツ > ーーーどさっ、ごんっ!!
修練場に何かが落下する音が響く。
それは、丁度鍛練をしていた青年の後方…大体ベッド1つ分くらいの距離だろうか、そこに紅の髪をもつ、民族衣装を身に纏った人間が転がっている。
…仰向けに、後頭部を抱えながら、足をジタバタさせて無言で悶絶しつつに。
「……、…お、っおまえらなぁああ!
いつもいつも私で遊んでくれちゃってからに…っ、不意のどーでもいい痛みは止めろって言ってんでしょうがぁああ!!」
ガバッと起き上がりその場にぺたりと座る紅髪は、空に向かって吼える。
青年へはほとんど背を向ける形になっている故、表情は分かりにくいだろうが…片手で後頭部をおさえながら涙目で御立腹だ。
気配に聡いか魔法に精通しているなら感知できるだろうか、小さな…手のひらくらいの大きさの気配が、悶絶する紅髪の上空に複数。
見える者には小さな妖精が5体、紅髪を指差しながら腹を抱えているのがわかるだろう。
それらは誰もが感知できる程に盛大にケラケラと爆笑した後、紅髪を残して消え失せてしまった。
「……全く、酷いめに…此所どこ…」
■ヴェルム > 「ふぅぅぅぅ……」
神経を研ぎ澄ませ、剣の型を成す。
人気も無く静かなのが幸いし、集中できて調子もいい。
これなら新しい技の一つでの会得できそうだ、なんて思っていたら…
何かが地に落ちたような、鈍い音。
静かな雰囲気もへったくれも無くなったことで、一気に集中が途切れてしまい、しょうがないのでその音の主のほうへ顔を向けた。
人が頭を抱えてのた打ち回っている…派手な見た目だ、オリエンタルな感じがする…よくわからないけど。
落ちてきたオリエンタルな人は、天井に向かって声を張り上げる。
それにつられて天を仰いでみると、ちっちゃい生き物がいくつかふわふわしているのが見えた。
なるほどこれが妖精か、どこから入り込んだのか、はたまた誰かに飼われているのか知らないが、なかなか珍しいものを見た。
まぁそれで、妖精の様子やオリエンタルな人のセリフを鑑みて、悪戯をされたのだろうというのは察することができる。
「大丈夫かい?なかなか鈍い音がしたけど」
天から妖精たちが消え、この場に二人取り残される。
妖精によってどこからか運ばれてきたのであろう人物に、後ろから声を掛けてみよう。
とりあえず、ここが王城だというのはわかっているだろうか。
振り向けば王国軍の服装を身に纏った男がいて、その手には訓練用の模造刀ながら得物が握られてはいるが。
■紅月/コウゲツ > 「……ふぇ?」
紅髪が振り返る。
顔の造形から、目尻に朱をさした女だということがわかるだろう。
いまだ『いつもの悪戯をされた』という事しか認識できていない為、向けられるのは自然とキョトンと間の抜けた表情だろう。
けれどまぁ、相当強かに打ったのか、紫の瞳の縁に涙が溜まっている。
だがしかし、だ。
『刀を持った軍人さんに声かけられた、どうしよう私不審者なんだけど』
彼女の思考はコレである。
…自然と、あっヤバイ、といった表情になるだろうか。
「…あ、ハイ、とりあえずは。
えぇと、たまに癒師をしております故、何かあっちゃっても大丈夫です…?」
咄嗟にその場に正座して…首からさげっぱなしの、タナール砦で貸し出された『臨時治癒術師の身分証明』となる木札をバッととり、両手で差し出す。
不審者だけど不審者じゃないです、とばかりに、平身低頭で。
■ヴェルム > 背後からではよくわからなかったが、このオリエンタルな人は女性。
召し物もそうだが、独特なメイクからもわかる通り、異国人なようだ。
振り向いた彼女の表情は、実に無防備なもの…無理もないか。
その後焦るような表情にころころ変わるのは面白いところだが、まぁやっぱり状況を把握しきれていないみたい。
「ふぅ、ここは王城の中…もちろんマグメール王国のね。
別に立ち入り禁止なとこじゃないから、処したりしないよ」
つまり落ちてきた場所がアカンところだった場合、残念ながら処すことになるという意味にも取れる、まぁそうなるのだが。
この修練場は関係者はもちろん、外部の人間も使うことができる。
もちろん不審者は城入口で省かれることになるだけだ。
「ヒーラーやってるのか、それなら大丈夫かな。
数日後にぽっくり…なんてならないでね」
頭を打って数日後に…なんてよくある話なので、大丈夫と言う相手に対して一応言っておく。
こちらに萎縮したのだろうか、行儀よく正座する彼女は木札を見せてくる。
「へぇ、身分証か、まぁ不審者だなんて思ってないから安心しなよ。
なかなか酷い目にあったみたいだね」
正座している彼女を立たせようと手を差し出してくる。
彼には妖精の姿も見えていたため、彼女が悪い悪戯に巻き込まれたというのは、よく理解していた。
■紅月/コウゲツ > 「あ、よかった…また国外だったらどうしようかと」
ホッと胸を撫で下ろす。
とりあえずの安心ポイントはそこである。
何せ、質の悪い悪戯で世界すら超えてきちゃっている…奴ら妖精は加減ってものを知らないから困る。
「あぁ、ハイ、良かったです処されなくて…今回はマトモな所に落としてくれたみたい、ホントよかった」
ようやっとキョロキョロ辺りを見回して、そこが見たことのある場所…修練場だと気付く。
「ぽっくり!? …あっ大丈夫、たんこぶだけだ。
ほんに、よく遊ばれてゴンするから随分と頑丈になりましたよ」
思わず後頭部をチェック…気の流れにも魔力の流れにも、たんこぶ以上の変調なし。
差し出された手をとり、立ち上がる。
「あ、申し遅れました…私はコウゲツ。
東の果ての言葉にて、紅の月と書きまする。
王都で冒険者をしておりますよ」
立ち上がった時のその手のままに、更にもう片手を添えて握手をば。
これも何かの縁だと、にこやかに名乗る。
■ヴェルム > 「悪戯妖精にずいぶん気に入られているみたいだね」
妖精とは悪戯を好んだりするのが多いと聞く。
中には死につながる悪戯を仕掛ける者もいるとか…。
また国外だったら…なんて彼女のセリフを聞けば、妖精もバカにできないと思うと同時に、そんな頻繁に妖精に悪戯されてるのかと苦笑いも浮かべた。
妖精避けでも身につけていたほうがいいのではなかろうか。
そんな頻繁にぽんぽん国内外に飛ばされていたら、自分なら二回目くらいでキレてるだろうな。
「コウゲツ…やっぱり東の国あたりの出身なんだね。
僕はヴェルム・アーキネクト、王国軍第十三師団を任されてる者だよ」
独特な見た目から、彼女の出身はなんとなく想像がつく。
ただ自分の知る東の国の人の風貌と比べると、いささか民族的な雰囲気が強く出ているか。
立ち上がった彼女がそのまま手を伸ばしてくるならば、きちんと握手に応えてこちらも自己紹介を。
十三師団のことを知っているか、知っていればどういう認識になるかは人それぞれなところ。
「しかし、どこにでも飛ばせるなんてある意味恐ろしい存在だね、妖精ってのは。
出口はわかるかな、もしあれなら案内するけど」
望まずして訪れてしまった彼女としては、早々に帰宅したいところであろうか。
知っている場所であるなら不要かもしれないが、案内を申し出る。
千人以上の部下を従える騎士にしては、ずいぶん若くフランクな青年に映るだろうか。
■紅月/コウゲツ > 「そうなんですよ…なんか『見えて構ってくれる』のが楽しくて仕方ないらしくって。
この間なんか魔族領の森のど真ん中ですよ…やっとタナールまで着いたと思ったら、そっちもたまたま占拠されてるし!
紅でなければ冗談で済みませぬぞ…!」
苦笑した後、拗ねたような表情で愚痴る。
それでブチキレない上に律儀に構ってやる紅月も悪いのだが、当人が『可愛いは正義』なんて言っちゃう変わり者である…どうしようもない。
「べる…ぶぇ、ル…ヴェル、ム?
…どうも西の発音は難しくてなぁー、ベルさんかムーさんじゃダメかしら。
ん、へぇ…師団を任、さ、れ…」
彼の名を復唱しようと、かなり真剣な顔で頑張ってみるものの…出来てるような出来てないような。
次いで、笑顔で固まる。
え、つまりそれって団長さんというアレでは…?
それに13…確か掲示板で見たアレか。
「ほへぇ…顔を合わせる騎士がたまたま団長格なのはそういう縁なのかしら、5の団長さんとも知り合いなんですよ。
飲み友・ご飯友です」
面白い縁だなぁ、と、クスクス笑いつつに…何とも緩い笑顔で握手、そこにあるのは友好の色のみ。
紅月としては流れ者故にこの国に忠義など無いし『自分と仲良くしてくれる人間であるならどーでもいいや』といった感じである。
無論、目の前で何か起これば別だろうが…今は純朴そうな人間の青年にしか見えない。
「あ、じゃあお願いしても?
入った形跡のない人が城内散歩は、私的にも、ちょっと…ね?」
苦笑、そして困ったように頬を掻く。
…言った理由は嘘ではないが、この人と話してみたいというのが本音。
噂は噂、直に見て確かめねば意味がない…と、好奇心旺盛な冒険者は思うのである。
ご案内:「王都マグメール 王城」にフィル=クォーレンスさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 王城」にフィル=クォーレンスさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 王城」からフィル=クォーレンスさんが去りました。
■ヴェルム > なるほど、確かに認識されるというのは妖精とか精霊とかだと嬉しかったり興味を持ったりするものなんだろう。
ただ、当人の認識にも原因があるんじゃなかろうか。
さんざん振り回されているらしいのに、あんまり怒ってるような感じがしなかった。
「あー、ベルでいいよ。
ムーさんは…もうちょっと年食ってからお願いしたい…。
師団長って言っても、ようは中間管理職だからね、そんな華やかなもんじゃないよ」
やはり異国の言葉や名前は発し辛いらしい、こんなやり取りを前にもしたことがあったな。
まぁ変じゃなければ好きなように呼んで構わない様子。
こちらの肩書きに様子が変わるのであれば、気にしないでくれ的なことを言って濁すだろう。
「第五師団か、師団長の彼女とは面識は無いけれど、一騎当千とも聞くね。
あそこ海上戦力持ってて羨ましいよ」
他師団のことについてはあまり見ないようにしている。
ここ最近はそうでもないが、ちょっと前まで立派な装備も無かった師団だ。
持ってないものを見ると欲しくなってしまうというあれだ。
十三師団には使いどころが無いかもしれないが。
「おっと、内輪の話なんかつまらないよね。
一応その木札があれば大丈夫かもしれないけれど、城内も安全ではないから…いろいろと」
身分証があれば兵士にはそう引き止められないだろう。
問題は兵士よりも上の立場の人間…ましてや夜ともなれば廊下にまで行為の声や音が聞こえてきたりするのだ。
彼女一人で城内を歩いてしまえば、貴族連中に目を付けられてしまう…なんてこともあるかもしれない。
女兵士やメイドに魔の手が伸びるなど、もはや日常なのだから。
■紅月/コウゲツ > 「ふふっ、それじゃあベルさん、と。
あー、中間管理職…だからか、なんかベルさんちょっと御疲れっぽいから。
何なら少し、疲労を払いますよ?」
職業病というやつだろうか…どうも彼の肩書きよりも、顔に出る疲労の色や氣の巡り方の方などが気になってしまう。
「フォーコの所は部下さん達もまんま武闘派というか、血の気の多そうな子ばかりだからなぁ…陸でも海でもアタックできなきゃ気が済まないんでしょう、たぶん。
私は治療の人なので隊の事はよくわかりませんが…13の隊の人、ちょっぴり真面目すぎちゃったり正義の人だったり、素敵な方多くて好きですよ?」
タナールで第5の戦勝宴会に呼ばれた時にじっくり見たが、うん…隊の雰囲気がパワー型っぽかった。
さすが突撃部隊。
治療した時に見た黒鎧の兵士さんも実にいい筋肉の付き方してたし。
対して13は合同部隊なんだったか…ごちゃ混ぜ過ぎて、治療してて逆に面白い。
癒師としての腕を上げたいなら、このくらい人種の混ざった隊をやらせた方が絶対に育つ。
「いやいや、興味深いです…だって、こんな機会でもなきゃ聞けない話じゃないですか!
私はたまに、人の話を『うっかり聞こえなかった』りも出来ますので…ご安心を。
…うーん、それ、この城に勤めてる友人にも言われました。
城だからこそ、だって…変なの~」
偶然か、豪運の賜物か、悪漢にまだ出会っていない紅月…クスクスと笑ってのんきなものである。
■ヴェルム > 「そう?
…それじゃあちょっと、お願いしちゃおうかな」
疲れてるっぽいと言われてしまうと、まぁ心当たりはいっぱいある。
やつれた顔でもしていたかと自分の顔を両手でごしごしと。
とはいえそれ専門の人がいるのであれば、何かまじないでも処方でもいいからお願いしようか。
「こんなご時勢だからね、ヤル気ある人がいっぱいいる部隊ってのは頼りにされるよ。
はは、そう言ってもらえると嬉しいね、ウチは爪弾き者にミレーと魔族までいるもんで、あんまり評価してもらえないから」
今は平和な時代と程遠い、だからこそ力で敵をねじ伏せる逞しい軍隊が必要でもある。
十三師団とは真逆であるが、それ以上にミレーや魔族がいることが何よりのマイナスとなっている。
ミレーと魔族が王国内でどういった扱いを受けているかは、コウゲツもよくわかっているだろう。
「都合良くしてくれて嬉しいけど、…あんまり人のことを言わない方がいいかな。
十三師団は今のままで十分だと思ってるから、これ以上は望まないよ。
聞きたいことがあるなら、答えちゃうかもだけど。
普通に考えたら変だろうね、その変な城なんだよここは」
その友人の言うとおり、おかしい城なのだ。
権力者が好き勝手に女を喰らう…その現場を知ることがあればもう笑えやしないだろうか。
もちろん、知らないほうが良いと思うけれど。
ついでに、もし下心をむき出しにした貴族が無理矢理コウゲツを部屋に連れ込もうとしても、ヴェルムは立場上何もできない。
そういうものだ。
■紅月/コウゲツ > 「ふふふっ、あぁはい、お任せあれ!
それでは失礼を」
両手で顔を揉んでいる彼の様子にクスクスまた笑いつつ、いつもどうり…立ってるか寝てるかの差は置いておき、服の上から胸の辺りに手を触れて、まずは軽く調べる為に彼の中に自身の魔力を流し込み始める。
「そうだなぁ…個人的興味で聞きたいといえば、ベルさん個人がミレーや魔族についてどう思うか…かなぁ?
…仕事だからとか、どこぞのテロリストみたいな例外は置いといて、です」
繊細な問題である、が、相手が混合部隊のリーダーだからこそ興味がある。
自分にも魔の血は入っている訳だし、これが聞ければ相手に対する今後の方針も考えられそうだ。
しかし、そこまで彼の目を見ながら話していた紅月は…不意に、首を傾げつつに彼の胸元を見る。
氣の流れから察するに無機質な物、魔力の流れを少々強力すぎるくらいに排出している事から魔道具の類いか…つまり、心臓に違和感、である。
「え、なにこれ体に悪そう。
…や、でも、そうでもない…か、技師の腕と相性の問題かしら?
んーと、これを邪魔せずにだから…とりあえず、手を拝借しても?
接触面積が多い方がやり易いので、腕捲りして頂ければ更に助かります~」
ぶつぶつと呟きつつ、何だか微妙な表情になっているだろう…けれども仕事仕事と切り替えて胸元から手を離すと、そのまま手を差し出して待つ。
■ヴェルム > 何をするのかはわからないが、疲労を取れるのなららばと無防備に触れられる。
こんな場で不自然なことをするはずがないと心配はしていない。
彼女の魔力が手の平から流れ込むのを感じると、まるで身体の中を調べられているかのような感覚に。
まぁその通りらしいのだが。
「まぁそこら辺だよね。
僕はオリアーブ島出身だから、これといった偏見は持ってないと思ってるよ。
島にはノーシス教無かったし。
それに、ミレーの獣耳とか可愛らしいと思うし、魔族もいろいろ頼りにしてるからね」
オリアーブ島は都ティルヒアが存在した地域、王国に対して戦争を起こし敗北、現在は王国の正式な領土となっている。
王国のヤルダバオートを信仰するノーシス教も、島にまでは影響力を持っていなかった。
そのため島の人間は、ミレーや魔族に対する偏見が王国よりも少なかったのだろう。
事実、ヴェルム本人も人種による偏見を持たず、寧ろその違いこそ活用すべきものだと思っている。
「ああ、心臓のやつは気にしなくていいよ、ただの魔導機械だから。
腕まくりね、了解~」
男の身体には人間にしてはやたらと濃い魔力が流れていたことだろう。
それくらいならまだそういう人間はいたりするので気にしないか。
だが男の心臓部分にあるべきものが、無機質だが溢れんばかりの力を生み出しもしているものになっているのには、違和感を感じるだろう。
あっさりと魔導機械であると説明すれば、納得するか。
ともかく、疲労を取るのに魔導機械は関係は無いはず。
求められれば腕まくりをして腕を出し、彼女の差し出された手に触れてみる。
■紅月/コウゲツ > 「えぇ、そこら辺です。
あーわかります、獣耳可愛い!
…なんというか安心しました、人間の騎士の方にもそういうタイプの方がいらっしゃるとわかって。
私、個人的には種族って概念、基本適性の差程度にしか思ってないんですよ…だから何か、この世界に来てちょっと悩む所もありまして。
もっと適材適所にすればいいのにー、とか!」
言葉のとおり、ホッとしたような表情を浮かべながら語る。
成程、生まれた土地の宗教の違いなら…ノーシスかそうでないかで認識の差は大きいだろう。
例えばシェンヤンもミレー差別がないし。
魔族はどこでもヤンチャする傾向があるから仕方ないとして。
「あ、成程、やはり魔道具の系統でしたか…ちょっと変わった代物みたいですし、そこ以外がきちんとしてらっしゃるから逆に目立っちゃって。
蓄積疲労以外は健康そのものです、ので、きちんと心も休めて下さいね~?
…はいどうもー、っと」
つまり、先程魔力を流し、氣を読んだ結果…即席の簡易健康診断。
普段なら痛みに唸る患者の装備を引っ剥がし、直に体に触れて対処していく為にあれこれ確かめる必要もないのだが…今日の相手は意識のある人間である。
さすがに脱げとは言いにくい、故、先に下調べをしたのだった。
腕を差し出されれば両手で包むように掴み、胸元へ…丁度祈るように俯いて目を閉じ、彼の指先に口付けを。
…着物はいちいち腕捲りをせずとも袖がするりと落ちる為、非常に楽である。
さて…疲れているということは、つまり、活力等々が足りていないのだ。
ならば、補えばいい。
ということで、触れている掌や腕を経由して彼に生命力を流し込む。
ふわりと少し風の流れが変わり、薄く白い氣を放つ紅月からヴェルムへと…暖かいものが流れてゆく。
例えば肩が凝っていれば肩、など、其処に重点的に流れ込む為に部分的に暑くも感じるかもしれない。
滞った流れを正常に、欠けたものを足して元通りに修復していく。
■ヴェルム > 継続になります。
ご案内:「王都マグメール 王城」からヴェルムさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」から紅月/コウゲツさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城 大広間」にヒマリさんが現れました。
■ヒマリ > 今日も今日とて夜会は開催される。
“やむなく”欠席と返事する場合も多いのだが、小娘家長にも付き合いがあり、
気が進まなかろうと何だろうと出席以外の選択肢が存在しないパターンもある。
今宵がそれであった。
カルネテル王家に連なる男が高笑いしているのを遠くで見ながら、果実ジュースを口に含む。
毎度のことながら退屈で無駄な時間である。
そんな様子に気づいてか、たまたま近くにいただけか、招待客の一人が話し掛けてきた。
怠惰な生活が透けて見える体型の、ニヤニヤとした笑みがよく似合う男。
「…………ご機嫌麗しく。お久しぶりでございます」
作った笑顔を張りつけた少女は内心舌打ちしつつ、会話を続ける。
その時間せいぜい数分なのだが、数分後解放された少女は何食わぬ顔でジュースに濡れた唇をハンカチで拭った。
(底気味悪い)
会話はセクハラばかりで終わった。
吐き出しそうになる悪態を水分と一緒に拭い、口を閉じることで抑え込む。
■ヒマリ > 再びいけ好かない者に捕まるのも癪で、人が集まる場を避ける様に大広間と繋がる中庭へ。
夜空はどんよりと厚い雲が垂れ、その雲の動きは鈍い。
少しでも気が晴れればと外に出てみたのに、見事期待を裏切ってくれるものである。
「不穏だな。近頃この辺りは災厄の気ばかり出る」
王国自体が微動している様な、妙な感覚は何なのか。
―――何にしても、災厄を退けるべく躍起になるのは己の役目ではない。
むしろこんな時だからこそ、好機と見えても大人しくしておくべきかもしれない。
「見定めるが肝要か…」
呟く言葉を流すよう、ジュースをまた一口。
自己満足に満ちた夜会は、まだまだ続く気配であった。
ご案内:「王都マグメール 王城 大広間」からヒマリさんが去りました。