2018/06/04 のログ
■フェイレン > 子竜の成長への杞憂はあっけらかんと肯定され、少し面食らってしまうが、飼い主の責任を果たす気らしいことは確かだ。
女の艶やかな唇から含み笑いが漏れたと共に、ふとこちらの頭に細い指の感触が伝った。
初めは何をされているか理解出来ず硬直していたが、子竜にしたのと同じように撫でられているとわかり、そのくすぐったさから逃れかけた際、告げられた言葉に息を呑む。
――友。
同じ言葉を口の中で反芻して飲み込むと、自身さえどこにあるのか忘れかけていた心臓が小さく跳ねたような気がする。
背中がむず痒くて落ち着かない。どう答えていいものかわからず、結局彼女の手が離れるまで黙り込んでからようやく口を開くことが出来た。
「……お前が来てくれて助かったのは確かだ。そいつを頼む――紅月」
素直な感謝の言葉を知らない自分にとって、相手の名を紡ぐことが精いっぱいの礼だった。
そんな自分に居たたまれなくなり、足早に彼女の横を通り過ぎる。
「もう行く。――お前も早く帰った方がいい」
――気取られるなよ。最後の忠告はやはり彼女には不必要だろうと口に出しはしなかった。
宵闇にその身を紛らせるよう男は静かな足取りで廊下を進み、やがて自室へと戻って行った。
妙な邂逅も悪いばかりではないらしいと胸の中で独り言つまま――。
■紅月/コウゲツ > 抱かれた子竜は遊び足りぬのか紅月の髪に顔を突っ込んだり、肩によじ登っていて。
これが巨大になるなど今は想像つかないが、そのうち空中散歩ができるとすれば楽しみで仕方ない。
男の髪を撫でれば、意外や意外、逃げない。
動物・魔獣から他人様まで、撫でるのが好きな紅月としては此れ幸い。
何だか固まっているようである友人をお構いせずに、いい子いい子と言わんばかりに髪を撫でる。
結構毛艶がいいから興が乗ってしまい…ポンポンと2度撫でたら離れるつもりだったのが、そこそこしっかり楽しんでしまった。
いやはや、満足満足。
「いいってことよう…あいさ、頼まれました!
……、…って、今…っ!」
擦れ違うように通りすぎる彼の背に、熱い、ちょっと刺さりそうなくらいキラキラと輝いた熱い視線を送りつつに。
「またね!フェイレンっ!
…さ、お前さん……お名前どうしようかね?」
しばし、その背が見えなくなるまで見送って。
子竜とたわむれながら、友の忠告に従い…珍しく素直に帰路につくのだった。
ご案内:「王都マグメール 王城」からフェイレンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」から紅月/コウゲツさんが去りました。