2018/04/16 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城 執務室」にオーギュストさんが現れました。
■オーギュスト > 第五師団がタナールで不覚を取ったらしい。
とはいえ、魔族相手の事だ。事故などいくらでもある。
問題は、最近の軍に関して、貴族どもがまたぞろ不平を言い出した事だ。
負けが込むとこういう面倒な連中が出てくる。
曰く、タナールでの防衛の為の最低限の軍だけ残し軍縮をして、その分を国内発展に投資すべきだ、との事。
「最低限、ってのは誰が判断するんだかよぉ」
第一、国内発展と言っても、どうせ貴族どもの懐に入るのだ。
なら、師団の為に使った方がマシである。
しかし……
「――結界、なぁ」
オーギュストは呟く。
あの魔王の言った言葉――マグ・メールの結界。
■オーギュスト > 確かに魔族の軍事行動には不可解な事が多い。
連中はタナールから先、王国領内に侵攻してくることがほとんどない。
あったとしても、軍ではなく、高位魔族が単騎で、という事がほとんどである。
あの吸血姫ロザリアが街を攻めた事自体が例外なのだ。
「――王都を中心とした、魔族の力を弱める結界が存在する?」
なるほど、それならば頷ける。
魔族がタナールを超えて侵攻してこない事。高位魔族が単騎のみならば侵入してくる事。それでいて高位魔族たちが王城内では戦闘に及ぼうとしない事。
色々な事に説明がつく。
「――だとしたら、何の結界なんだ?」
ご案内:「王都マグメール 王城 執務室」にフォーコさんが現れました。
■フォーコ > 王国内で魔族について詳しい者の話を聞きたく、ある将軍の執務室の前にやってきた。
扉をノックし、声をかける。
「フォーコだ。 入っても良いか。」
耳の良い彼の事だ。
昨夜の事は既に知られていることだろう。
さて、彼も他の貴族衆のように揶揄するだろうか。
どちらにせよ、私は今宵彼に聴かねばならない。
■オーギュスト > 「おう、入れ」
聞き覚えのある声だ。
衛兵には下がるように言いながら、執務室へ通す。
オーギュストも立ち上がりながら、来客用のソファーを勧め
「大変だったらしいな、何か飲むか?」
第七師団が動けなかった時、タナール方面を支えてくれたのは第五師団の働きが大きい。
言わば恩人である、無碍には出来ない。
とりあえず、棚から上物の酒を出す。
向こうが飲まなくても、自分は飲むつもりで。
■フォーコ > 「すまないな。」
意外にも彼は温かく迎え入れてくれた。
城に戻ってから団員以外からはほぼ敵意しか向けられずにいた私は少し肩の力が抜けた。
部屋に入ると、勧められたソファに座る。
フカフカで座り心地が良い。
「君の好きな酒で。 私はザルだからな。」
気を使ってくれたのか、衛兵の姿もない。
私は今日一日の疲れを口から吐き出していた。
「恥ずかしながら、うちの完敗だ。
あの女は何者なんだ?」
単刀直入になるが、いきなり本題をぶつけた。
彼なら私以上に色々知っているだろうと思ってだ。
私は昨夜遭遇した闇について何も知らない。
名前すらだ。
■オーギュスト > 「んじゃあこれな」
そこそこだが、量は多くきつめの酒を用意する。
あんな事があった後だ、今日はなるべく酔いたい事だろう。
グラスに二つ、なみなみと注ぎ、一つを相手の前に。
どっかりと腰を下ろしながら、自分も杯を傾ける。
「――確認するが、そいつは空中に刃物を召喚して、やたらスカしたドレスを着て、そんでデカい乳をぶら下げてたんだな?」
第五師団の生き残りから聞いた限りでは、そんな相手だったらしい。
となれば、彼にも心当たりがある。
吸血姫ロザリア・キルフリート。
彼の中での呼び名は……
「囚人番号666番……ま、それは俺のつけた名前だがな。
吸血姫ロザリア。冒険者の間で噂になってる、あの『宵闇の城』の主だ」
■フォーコ > 「ありがとう。 良い匂いだな。」
手元に置かれたグラスを手にし、私も口を付ける。
全身が温まるような強い酒。 私の好みであった。
「よく分かったな。 おまけに金色の燭台だの鎖だのを飛ばしてきたな。」
見てきたかのように言い当てる彼。
うちの団員から話を聴いていたのだろう。
やはり彼は耳が良いな。
「大物だとは思ってはいたがそれほどの相手だったか。
私も弱い魔王なら昔殺したことがあるが、あれはそんなレベルじゃなかった。
君も戦ったことがあるようだな。」
宵闇の城は聴いたことがある。
まだ遭遇したことはなかったが、今目の前に現れても近づく気にすらなれないな。
■オーギュスト > 「あぁ、戦った。
一度は運良く捕まえて、奴隷にして飼ってやったんだがな――あれは、愉しかったなぁ」
思い出しても顔がニヤける。
あれほどの良い女は二人と居なかった。いつか必ず取り返す。
今度は逃げられないように、足の腱でも切っておくか。
「下手な魔王よりもよっぽど厄介だ。あいつには、魔族特有の『人間を見下すが故の油断』が無い」
彼女が持つのは、人間への決定的な憎悪だ。
それがある限り、どんな人間でも油断なく、羽虫の如く潰そうとする。一筋縄では行かないだろう。
「俺も二度目は完敗してな。師団にかなりの損害が出た挙句、異世界に飛ばされた」
■フォーコ > 「あれに勝ったのか?
凄いな。 どうやれば勝てるんだ?」
昨夜は一方的に玩具にされた。
勝負にすらならなかった。
私は彼のにやけ顔に食い入るように問いかけた。
「どうも、敵味方以上に憎悪を感じるな。
何かあったのか? それとも、君が玩具にしすぎたのか?」
彼の話を興味深く聴いていたが、次の発言で眼を瞬かせる。
「しばらくいなかったのはそういう訳だったのか。
それで? よくぞ戻ってこれたな。 どんなところだったんだ?」
■オーギュスト > 「あいつがタナールを超えて侵攻してきてな――ほれ、例の街ひとつがアンデッド化した事件だ。報告は読んでるだろ?
あの時は朝まで粘ってから軍団で寄って集って抑え付けた」
街一つがアンデッド化し、吸血姫を捕えた例の事件。
あの時は本当に運がよかったとしか言えないが――そういえば、あれも結界で弱体化していたのか。
「いんや、まぁそれもあるだろうが、普通に最初から人間を憎悪していたぞ――まぁ、事情があるんだろうがな」
人間と魔族の確執など、吐いて捨てるほどある。
特に珍しい事ではない。
「あぁ、まぁ楽園のような世界だったよ。『常世島』ってとこでな」
そして彼は聞かせる。
あの楽園のような世界。誰もが平等で、科学により様々な恩恵を受け、この世界よりかは千年は先を行くあの島の事を。
■フォーコ > 「朝が苦手なのか?
昨夜も朝日が昇ってきたと思えば姿を消したな。」
運も味方しただろうが、一度でも捕えただけでもたいしたものだ。
しかし、同じ手は流石に通用しないだろう。
それでも朝日が苦手と言うのは少し嬉しい情報だ。
「最初からか。 根深いものがありそうだな。
ただ、家畜扱いされた私が気にすることではないがな。」
何より、部下の仇だ。
むごたらしい目に遭わせでもしなければ気が済まない。
「なるほど。 君の隊が新しいことを色々始めているのはそこで学んできたことを
実戦しているわけか。 学者でも居るのかと思っていたよ。」
この国とは随分と異なった世界の話を聴かされる。
興味はあるが、私の頭では理解が追い付かない。
芯までこの国の貴族である私と彼では目線が違うようだ。
「で、あれをしとめるにはどうするのが良いと君は思っているんだ?」
■オーギュスト > 「吸血鬼だからな――まぁ、朝は苦手なんだろう」
としか言い様がない。
魔族は基本的に固体によって性能が違いすぎる。一概にこれが得意・苦手と分けられるものではない。
とはいえ、吸血鬼である以上、夜に戦う事は避けた方が良い。
「仕留める方法な――」
そう呟くと、棚から一枚の地図を広げる。
例の事件で凍結していたが、まだキルフリート遠征を諦めたわけではないのだ。
「ヤツの城に奇襲をかける。時刻は夜明け――砲兵隊を主軸とした攻城戦だ。
ヤツは確かに恐ろしい相手だが、軍隊同士の戦いなら、俺達の戦場にあいつを引きずりこめる」
その為の砲兵隊、そしてライフル部隊だ。
もっとも、それだけでは足りないだろうが――切り札ばかりは、彼女に今教えるわけにもいかない。
■フォーコ > 彼の話を頷いて聞いていた。
夜は避けるべきだろうが、向こうは必ず夜に現れるだろう。
次にタナールに現れた場合、どうするべきか。
「城攻めか。 第七の戦力で総攻撃にするわけか。
勝てる見込みはありそうなのか?」
彼はあくまで師団全体を強化し、組織戦で仕留めるようだ。
個人の力を上げることを考えている私とはやり方がだいぶ異なるようだ。
まだ何か武器はあるだろうが、私はそれ以上聴かなかった。
ここの会話が漏れる可能性もあるし、理解できるかも少し怪しかった。
■オーギュスト > 「――ま、五分だがな。何時までも相手を迎撃してばかりじゃ話にならん」
こちらが先手を取る事、それが重要なのだと言う。
そして遠征に関しては――
「タナールまでの街道、それにタナール近辺の道の整理、そして――こいつだ」
オーギュストはひとつ、金属の缶を置く。
そう、缶詰――の、試作品。ナルラに任せておいた品だ。
この缶詰は、なんと1年以上の保存に耐えるというシロモノだ。これがあれば、遠征軍の食料はまったく問題にならない。
■フォーコ > 「そうだな。 いきなり現れてあっと言う間に掻きまわされてしまった。
あれでは勝負にならない。」
悔しさを紛らす為、グラスの中を一思いに開ける。
空になったグラスを置いた。
「随分と念入りに用意が居るのだな。
しかし、これならなんとなくだが勝つ道筋が見えてくる気がするな。」
彼は本格的にあの吸血鬼を狩り取るつもりのようだ。
その為の準備も一つ一つ着実に進めている。
そして、私は金属の塊のようなものを見せられ首をひねった。
手に取って見ても言われるまで食べ物とは分からず。
「保存食というわけか。 こんな物の中に食べ物を入れるのか。
これも楽園とやらで知ったことなのか?」
缶と言われる物体を上下左右にひっくり返し、じろじろと眺める。
全く訳が分からない。 凄い世界に行ってきたのだと言うことだけは分かるのだが。
■オーギュスト > 「魔族相手に先手を取られりゃ、そりゃ勝てん。
あいつらは神出鬼没だ、よしんば上手く対応しても逃げられちまう」
だからこそ、本拠地に乗り込み討ち取る必要がある。
こちらが主導権を握らなければ、いつまでもかき回されるだけだ。
「あぁ、これはな――ほれ」
缶詰の一つを開けてみせる。
中身は魚の塩漬け。まだまだ瑞々しく、もちろん普通に食べれる。保存食よりか味は良いくらいだ。
「これは確か4ヶ月前に作ったものだ。1年前の物もあるぞ」
■フォーコ > 「なるほどな。
確かに向こうも本拠地が荒されるとなれば逃げるわけにはいかんか。」
情報収集においても一日の長があるようだ。
なんでも力で解決するやり方では限度があることを実感する。
「おぉ!? これが四か月前だと?
魔法で時間を止めたわけではないのか?」
私も含め、何かあれば全て魔法で賄っている以上、それしか思いつかない。
鼻を近づけ、匂いをかぐも食欲を注ぐいい香りだ。
■オーギュスト > 「まぁ……色々あって、まだ準備は完了していないんだがな」
凍結していた作戦を再度準備するだけでも一苦労である。
あの吸血鬼め、今度あったら絶対泣かす。
「あぁ、驚いたんだがな――缶に入れて加熱する事によって、驚くほど保存期間が上がるらしい」
常世島で得た知識の中で、特に軍事転用が効く技術がこれっだ。
まったく、あの島のおかげで今回の遠征計画が現実化しつつあるようなもんだ。
「いずれ量産できたら、お前さんの師団にも回すよう言っとく」
■フォーコ > 「まあ、そっちも色々あったらしいな。」
目の前で元気に話している彼が一時姿を見せなかったことは知っている。
そのいきさつは知らないが、一時私の師団に仕事が回ってきたことは記憶に新しい。
「加熱はわかるが、何故だろうか。 空気を入れ替えさせないからか?」
火はよく使うので加熱までは理解できたが、それから先は道の領域。
彼にとって、異世界に飛ばされたことはかえって良かったような気すらする。
「それは嬉しいのだが、貰いっぱなしも不味いな。
何かお返しできることはないか?」
彼の申し出はありがたいが、気が引けるレベルのありがたさであった。
私は缶から顔を離し、彼を見上げた。
■オーギュスト > 「さぁなぁ……俺も詳しくは知らん。なんか加熱したら、日持ちがよくなる、ってくらいしかなぁ」
オーギュストも専門的な教育を受けたわけではない。
所詮は付け焼刃の知識だ。にしても、随分と役に立ってはいるが。
「そうだなぁ――」
そういえば、彼女はマグ・メールでも有数の武門の家系。
もしかしたら――
「――王都を中心に、魔族の力を鈍らせる結界があるって話、聞いた事あるか?」
■フォーコ > 「加熱したらか…。
これ以上は詳しそうな者に聴くとしよう。」
彼は必要最低限は理解できているようだ。
私はそこまでもまだ至っていない。
これは人に聞いた方が良さそうだ。
「…聴いたことがあるが、この王都にそんな力があるのか?
私はそれよりは北の帝国の方を研究した方が早いと思っているのだが。」
彼の言う話はアッサルト家で持っている情報のひとつとして聞いたはことはあるが、
当主でもない私は詳細まで聴かされていない。
聴いた所で教えてもらえるとも思えないが。
■オーギュスト > 「さてな……この前会った魔王が、そんな事を言っててな。
曰く、王都を中心として、魔族の力を弱める結界があるらしい、んだが……」
不可解な事が色々説明がつく仮説なのだが。
今度は別の、不可解な出来事が出てくる。
「そもそも、そんなものがあるとしたら、誰が何のために設置したんだ?
それこそ神の加護ってんなら、あの教会の坊主ども、さぞ嬉しそうに宣伝するだろ」
そう、教会の設置したものではない。
かと言って、王家が設置したものでもないだろう。だとしたら、もっと王家の支配の正当化の為に宣伝するはずだ。
■フォーコ > 「あ~~、それはだな。」
基本的に思ったことを口にしている私でも、たまに口が重くなる時がある。
まさに今なのだが。
「私も当主ではないので細かいことは知らんのだが、アッサルト家は
この国の始まり位から今まで中枢に居る家でな。
で、端的に言うとこの国は過去に色々と入れ替わった事があるようなのだ。
何がどう入れ替わったのかは私ではわからないが、その時の遺物ではないのか?」
つまり、現在ではなく過去にこの国を担っていた者達が残した物。
恐らくこの国がもっと清浄であった頃の。
■オーギュスト > 「――過去の、か」
なるほど、と頷く。
過去の遺物であり、今の人間たちでは分からない、か。
それなら納得できる。過去の資料を漁ってみるとするか。
「それで充分だ、あとはこっちで調べてみる」
言うと立ち上がり、衛兵を呼ぶ。
そろそろ時間だ、駐屯地へ戻らなくては
■フォーコ > 「すまんな。 我が家でもこの件については触れない様になっているようだ。」
何が原因かは知らないが、意図的にそういった物と距離を取っているように見える。
だが、彼なら真実にたどり着けるのだろうか。
「今日は助かった。 面白い話があったらまた教えてくれ。」
私は彼に礼を言うと、部屋を後にする。
ご案内:「王都マグメール 王城 執務室」からフォーコさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城 執務室」からオーギュストさんが去りました。