2017/12/04 のログ
タマモ > 「ふむ…所詮、真に実力のある者なんぞ、一握りじゃろう?
………まったく、心配のし過ぎじゃぞ?」

ちらりと、歩いている廊下の一部へと、視線を向ける。
普通に見れば、特に何があると言う訳でもない、壁が見えるだけだろう。
なぜならば、そこに張り付いている子蜘蛛なんて、気にする者なんていないからだ。
だが、そこを通してここを見詰めている、己が式である少女の姿…それが分かる。

『いえいえ、そんな心配はしておりませんわ~?
私が心配なのは、ご主人様が調子に乗り過ぎて、無駄に警戒を強められる事ですもの~』

そんな、別の少女の声が、子蜘蛛を通して聞こえてくる。
もちろんだが、この声は周りの人間達には聞こえていない。
その声に、うぐっ、と小さく唸る…否定が出来ない。

「と、ともあれ…もう少しで着く、馬鹿鴉、しっかりと見ておくのじゃぞ?」

びしり、子蜘蛛へと指差し、ふんっ、ともう一度胸を張る。

『………すぐ油断をし、失敗をするのが主の欠点だ、馬鹿狐』

次に聞こえる男の声に、その姿のまま固まった。
多分、経験があるのだろう、ゆらゆらと揺れる尻尾が、あらぬ方向へと動いている。

タマモ > なぜ、己の式はこうも揃って反抗的なのだろう?
もう少し、こう…持ち上げてくれても、良くないか?
そんな事を考えながら、廊下を歩く。
少女は気付いていない、だが、そこを眺める二人の式は気付いていた。
その歩いている方角、目的地に向かっていないのだと。

子蜘蛛を通し見詰める邸宅の一室で、一人の少女はころころと可笑しそうに笑い、一人の男は深い溜息を吐いていた。

「むむむ…それにしても、そろそろ到着と思うのじゃが…」

そんな二人の様子は知らず、少女は道を右に左に曲がっていた。
もはや、目的地は進んでいる反対方向に近い方角である。

ただ進むだけでは飽きてきたか、ついには適当な部屋へと入ろうと扉へと手を掛けた。
これは余裕を見せているだけなのだ、そう己に言い聞かせて。
己が周囲は人間には理解出来ない、扉を開いているはずが、その付近の光景は変わってないように見えている。
あくまでも、己の周囲だけが、周りに対してだけ違って見えるだけ。
すぐ側に相手が居る場合は?…もちろん、気付けてしまうのだ。

タマモ > 普段は、己の姿を見えなくする。
こうして、何かに手を触れどうにかする場合は、周囲の光景を固定化して気付けなくする。
臨機応変に力を使い、周囲に気付かれぬように行動をするのだ。
扱い方次第では、非常に利便性の高い能力だろう。
なのに、少女の利用方法と言えば…悪戯の一択であった。

さて、この部屋はどんな部屋で、誰か居るのだろうか?
確認もしないまま、入り込む少女…さて、ここは一体どんな部屋なのか?

ご案内:「王都マグメール 王城」にバルジリスさんが現れました。
バルジリス > (その部屋は、ただの倉庫であった。武器やらなにやら、色々雑多なものが転がっていて…もちろん、転がっているのはものだけではなく……者もいた)
………
(咥え煙草をした執事服のチンピラ風の男。ポケットに手を入れ、見おろしているのは…凌辱されきった、ハーフミレーの少女)
………
(この場所に忍び込んだのは、単にこの倉庫から、自身の主が欲しがっている貴重な触媒を盗み出すためであった。だが、思わぬ発見である)
……っち、胸糞わりぃ…
(そう呟き、タバコを吐き捨てれば、上半身の執事服を脱ぎ、少女を包んでやって…
別にこの少女が人間だったり、ミレー族だったらここまではしないが…
ハーフミレー。自身の主の娘と同じ種族だったから…
そして、少女を抱きかかえれば、扉があいて…)
……!ッチ!
(身を隠す時間はない。なら……できるだけ、時間を稼ぎ、何か案が出るのを待つ)
失礼、私、バルジリスと申します。まあ…執事見習いでして。
倉庫の掃除をしていたのですが…そちらは?
(そう、狐耳の相手に聞いて)

タマモ > 扉を開く、その先には倉庫だったらしい。
それならば、この辺りの物を適当に…なんて、考えはさせてくれなかった。
そこいらの人間であれば、扉を開いた事にも気付かないはずだ。
なのに、扉を開いた途端に何かの反応があった…要するに、やはり己の隠身の術は半端だったという事か。
…と言うか、これに気付いたって事は…少なくとも、中に居た存在は並みの人間じゃない?と言う事だろう。

「………なん…じゃと…!?」

男の言葉に、こう、どこかショックを受けたような少女の姿が何も無かったはずの扉の前にゆらりと現れるだろう。
それはそうだ、気付いた相手の言葉に、執事見習いという単語が含まれていたからだ。
そんな相手に気付かれた…まぁ、その反応は当然かもしれない。

と、そんなショックを受けているのも僅かな間だった。
視線の先に、その男が抱えている存在が見えたからだ。
はふん、軽く溜息を一つ。

「やれやれ…妾の隠身も大したものでもないのか…
バルジリスと言ったか?…倉庫の掃除の割りには、大層なものを持っておるようじゃな?ん?」

うん、ショックを与えてくれたお返しくらいはしておきたい。
状況的に、抱えてる存在をどうにかしようとしているのは分かったが…気紛れに起こった悪戯心に従った。
わざとらしく扉へと背を預け、ここから出るのを困難にしつつ…とりあえず、相手の姿を確認してみようか。

バルジリス > (狐耳の相手が驚けば、小首を傾げ)
何を驚いているのですか?
(そう言いつつも、隠身と言われればしまったと思う。自分の目は腐ってもバジリスクの目だ。能力は半端なく低いのだが…レーダーとしては働いてくれる。それが仇となったか…!)
い、いえ。実は…その、このサングラス。我が家の家宝でして。私の事を送り出してくれた田舎の母からの贈り物で……その…
(我ながら苦しい言い訳であるとは思うが、あくまで、時間が稼げればいいのだ。
その間に、何か良い案を考えれば…と思っていれば、手に持っている大層な物について言及されれば…)
ええ。掃除をしようと思い、入ったらすさまじい青臭さで…その真ん中にこのハーフミレーの女の子が…可愛そうに……
(この文章は一応本当である。侵入したら、すさまじい青臭さの中にこの少女がいたのだ。
可愛そうに…その言葉だけには、本当の感情を込めて…)
……すいません、このゴミを捨てに行きたいので、どいていただいても……?
(そう、扉を背にする女ににこやかに……だが、できるだけ切実に言って。
だが、少女をゴミ扱いするにしては、先ほどの言葉や、半裸になってまで、わざわざ自身の執事服を少女がかけられた精液まみれにしているという違和感はあるだろうが…)

タマモ > 男が時間稼ぎの為に言葉を紡いでいるのは、逆にこちらにとっても男が人間でない事に気付く余裕を与えた。
すん、と匂いを嗅ぎ、気配や感覚の違いに勘付き…かくん?と首を傾げる。

「ふむ…どちらも、人間では無いようじゃな?
そして、どちらも、なにやら混じっておるようじゃ。
さて、それはどうでも良いとして…
お主はそこらのゴミを、いちいち可哀想だの思いながら捨てておるのか?
それを捨てるのは妾がしてやろう、お主は掃除を続けるが良い」

くすくすと笑いながら、どうせ誤魔化しの言葉と分かり切っているサングラス等の話は流し、目の前の二つの存在について言ってみる。
言いながらも、それを捨て置くように続く言葉。
手にしているものを指で示しながら、ほれ、寄越せ、と言わんばかりに手を差し出す。
ちなみに、本当に妨害をしてやろうという意思は見られない。
目的はあくまでも、それっぽく見せるような悪戯なのだから。

バルジリス > (人間ではないと言われれば、冷や汗が止まらず…)
な、何を言っているのですか。わ、ワタクシ。じゅ、純正100%の人間でございます。
(そう、しどろもどろに言って…と、とにかく会話で、会話でつなぐのだ!と考えていると…手を差し出され、少女をよこせという)
………!
(その手を見て、バルジリスは目を細め、ノータイムで)
嫌でございます。こちらこそ、貴方様のような高貴な服を着た方に、このようなゴミを持たせるわけにはいきませぬ。
(そうきっぱり言って。本心的には、少女をこんな目に合わせた奴らの仲間かもしれない相手に、傷ついた少女を渡せるものか…!と思って。そして、言い切ってからハッとする。自分は、なぜ見ず知らずの少女をここまでして守っているのだ…?ここで渡せば、少なくとも自分はこの女が去った後に、逃げればいいのに…しかし、理由はわからないが、後悔はない選択で)
そ、それに、こんな埃っぽい場所に居たら、貴方様のお召し物や、髪が汚れます…!
ここは、いったん外に出ましょう…!
(相手が後ろを向いた瞬間に、自身の下半身を蛇に変化させ、全力で窓から逃げればあるいは…!と思い、そう言って)

タマモ > 「ふふ…焦っておるか、バルジリス?
本当に人間であるならば、そんな反応は見せぬものじゃ。
言われた事を理解出来ぬか、馬鹿にするか、呆れるか、怒るか…そんなものじゃろう」

まぁ、その辺り、似たような事があるから予想が出来る訳だが。
相手の反応に、内心は良い感じに言っていると、細く笑む。
表面は、自信満々な態度でそう言っているが。

「ふむ…そうか、しかし、妾はそれをゴミだと思っておらんのでな?
相応しい対処をするに、必要と思うておるだけじゃ」

一度ならず、二度もゴミ呼ばわりをする男に対し、さらりと掌を返す言葉を掛ける。
実際のところ、女子をそんな格好のままにする訳がないだろう?と、思っているのだが、それはあえて言わない。

「じゃからな、さっさとそれを寄越せ。
この場所がいかんと言うならば、尚更じゃろう?
妾の事は気にするな、妾は気にせん」

大きな感情は、少し意識をすれば感じるもので。
感じるのは何かしらの決意、戸惑い、そんなものだろうか。
手を伸ばしたまま、じっと二人の姿を見詰めている。
渡すまで、その場を動くような様子はない。

バルジリス > ぐぬぬぬ!
(焦っていることを見抜かれれば……もう、偽執事の仮面をかぶっておく必要はない)
っち!
(そう盛大に舌打ちし…手に持っている小さな命をゴミだと思ってないと言われれば……)
……あんたを信用しない理由はねぇ…だが…信用する理由もねぇ。
(そう葛藤し……)
だけど、あんたも、人間じゃないようだな……だから、あんたに…人外として、頼む。
(そう言えば、膝を付き…)
頼む。このハーフミレーのガキの事……そして、俺の事……見なかったことにしてくれ。
(そう、頭を下げて…)
このガキには…適切な治療必要だ。俺は…それをできる方を知っている。
頼む………!このガキをあんたに渡したら…その後、このガキが無事に生きてけるかなんてわかんねぇ…俺の傍に置いて、治療を受けさせてぇんだ…!だから、あんたが人外で…人間ほど腐っちゃいないことを信じて…頼む…!俺たちを、見逃してほしい…
(そう、頼み込んで……)

タマモ > 男の変化を、変わらぬ表情で見詰める少女。
まるで、その変化を楽しむようにしているも…
それを少しの間だけ見ていれば、ふむ、と軽く頷いて。

「………最初から、そうやって素直に言えば良かったのじゃ。
初見の相手に信用も何も無いじゃろうが、な?」

膝を付き、頭を下げ、頼み込む男の姿。
まぁ、そもそも、その抱えた少女をどうこうするつもりはなかったのだが…気が済んだし、もう悪戯は止めておこう。
そう思えば、そう男に答えながら、すっと片手を払うように振る。
…と、不思議な事に、少女の汚れが、まるで最初から何も無かったように消え去った。

「妾とて、遊び半分にこの王城に忍び込んでおった身じゃ、お互い様じゃろう。
…これで良いか、女子をいつまでも汚したままにしておくものではない。
そうやって覆い隠すよりも、しっかりと汚れを取り除く方が良かったんじゃろうが…時間がなかったか?」

軽く肩を竦めながら、そこまで言うと、よいせ、と凭れていた扉から背を退けた。
さすが、これ以上は何もしない方が良いだろうと思う。
扉から身を退けながら、ふと、思い出したように。

「ほれ、行くが良い、気を付けてな?
…おっと、言い忘れておった、妾はタマモじゃ」

バルジリス > (相手の手が動けば、少女の汚れがウソのように消えて…)
……!
(そして、続く言葉には、サングラスの奥の目を輝かせ……名を聞けば)
すまねぇ……!タマモさん…!恩に着る……!
(そう言って、立ち上がり、タマモに深く一礼をすると、
少女を抱えたまま、女が背に持たれていた扉を出て…
あとは、元々考えていた脱出ルートを通るだけである。
そのご、少女がどうなったか…?もちろん、ワルセイが経営する廃教会に偽装した
孤児院で暮らすことになった。それが彼女にとって幸せかは。少女が決めることで…)

ご案内:「王都マグメール 王城」からバルジリスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」からタマモさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」にセシリア・ローズさんが現れました。
セシリア・ローズ > パーティもたまになら悪くはないけれど、毎日となればそれだけで退屈する。
そのうえ、今夜のパーティに招かれた客人の男たちは、お腹の迫り出したおじさんや、
額の前線が後退したおじさんばかりで、心躍る出会いも期待できない。
父親と同じ馬車に乗ってきたから、先に帰ってしまう訳にも行かないし。

そんなこんなで、淡い薔薇色のドレスに身を包んだ令嬢は一人、
パーティ会場の広間を抜け出して、月夜の散歩中である。
蒼白い光に照らされた庭園は、さすがに王家の城らしく、整えられて美しい。
四季咲きの薔薇のアーチを抜けて、人工的につくられたらしき小川のほとり、
瀟洒な石造りの四阿に入り込んで、冷たい石のベンチへ腰掛けた。

ドレスの上から羽織ってきたストールが外気の冷たさを和らげてくれるし、
すぐそばで聞こえるせせらぎの音も、仄かに漂う花の香りも心地よい。
こうしてぼんやり座っていると、すぐに眠くなってしまいそうな、長閑な夜だった。

ご案内:「王都マグメール 王城」にグスタフさんが現れました。
セシリア・ローズ > ぼんやり、のんびり。

やがて舟を漕ぎ始めた令嬢は、父親の命令でその姿を探していた使用人の手で、
馬車へ運ばれて行くのだろう。
それまでは暫し、のどかな微睡の中で―――。

ご案内:「王都マグメール 王城」からセシリア・ローズさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」からグスタフさんが去りました。