2017/11/26 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城」にリュシーさんが現れました。
リュシー > (『バーゼル公爵令嬢』として、己の意志などまるで無視して連れて来られた夜会だが、
抜け出すこと自体はさして難しくなかった。
賑わう広間から、風にあたりたい、ような顔をしてテラスへ出てしまえば、
あとはテラス伝いにずんずんと、ほかの部屋へ抜ければ良い。
明かりのついていない窓を見つけるたび、ぐ、と押してみたり引いてみたり、
広間の喧騒などずいぶん遠くなったころ、ようやく鍵のかかっていない窓に行き当たる。
キィ、と引き開けた窓から、ふわり、テラス側へ漂い来るレースのカーテンを掻き分け、
今宵は使われていない客間なのか、誰かの私室なのかは知らないが、
星あかりだけが淡く差し込むばかりの暗がりへ、そっと身を滑りこませて)

―――お、じゃま、しまぁ…す……。
怪しい者じゃありません、すぐ、お暇しまぁ、す……。

(誰かが居た時のために、一応はそんなことを呟きながら。
後ろ手に窓を閉めて、闇の中に目を凝らす。
廊下に続く扉が見つかったなら、まっすぐ、そちらを目指すつもりだ。)

ご案内:「王都マグメール 王城」にマヌエラさんが現れました。
マヌエラ > 「ん、む……ぅ?」

 暗い部屋。リュシーの声に応じるように、幼い声が返った。
 その響きは寝起きのようにぼんやりしたもの。
 実際、暗闇に埋没するように、部屋の中で蹲っていた少女が、やたらに長い髪を揺らしながら起き上がるのが、窓より差し込む月明かりに照らされた。

「ふわぁ……えぇとぉ、お客様?
 いらっしゃいませ……」

 大きな欠伸と、伸びをしてから、ふわりと笑って。

「かわいいお客様?あやしいものじゃないなら、あなたはだぁれ?」

 ドレス姿の幼い少女は問いかける。

リュシー > (――――――ぎくん。

レースのカーテン越しの星あかりを背に、目に見えて肩を震わせてしまう。
誰かの声が聞こえた、ついでに、きらきらと光を弾く何かが、
むくりと起きあがるのが見えた。
どうやら誰かの部屋だったらしい、もしかしてお姫様の私室だったりしたら、
とんでもない醜聞になるのでは、などと。
その瞬間、己の頭の中は完全に、30代男性のものに戻っていた。)

い、いいいいえ、その、すみません、ごめんなさい、えっとその…、

(女の子だ、というのはわかった。
女性、と呼ぶのはまだ早そうな、たぶん、幼女と呼んでも怒られなさそうな。
―――しかして、つまり、お姫様なのではないだろうか。
対する己はといえば、すっかり不審人物である。
しどろもどろになりながら、彼女を遠巻きにして、壁際をじりじりと。
窓の反対側、きっと扉があるはずのほうへ、身体をずらしていこうとしながら)

あの、えっと、ぼ、…わたし、は、ですね、
……ま、ちがえ…そう、部屋、間違えちゃって……、
すみません、今、いますぐ、失礼します、から……ごめ、ごめんなさいね?

(とにかく、一刻も早く退散しよう。
目覚めたばかりのこのお姫様が、ものすごい悲鳴をあげたりする前に。)

マヌエラ > くすくす、くす。
本来の口調や性格が出そうになっているリュシーの言葉に対し、幼女から漏れたのは笑い声。

「おかしなかたね。どうしてそんなに、あわてているのかしら」

ゆっくりと立ち上がり、ゆらゆらとした歩き方でリュシーへと近づいて行く。一歩踏み出すたびに、髪が揺れ、月の光に艶かしく輝く。

「でも、よかったわ。あのね、わたし、とってもたいくつだったの。ねむっちゃうくらい。
 だから、あなたみたいに、かわいいおきゃくさんがきてくれて、わたし、とってもうれしいの」

 悲鳴どころか、寝起きそのもののぽえぽえした口調で告げながら、いとけなく無防備な笑みを浮かべて、それこそ無邪気な幼子のように、しがみつこうとする。

リュシー > (おかしそうに笑うその声も、立ちあがるその姿も、確かに少女のもの。
なのに、何故か突然―――かすかな、違和感を覚えた。
その原因は彼女の言葉づかいだろうか、それとも、表情だろうか。
ゆらゆらと、漂うように歩く彼女の姿を、まるく見開いた瞳で凝視する。)

あ……わてて、るわけじゃ、ありませ…ん、よ……?
というより、あの、ですね、……あの、―――――

(声が喉に絡まって、か細く掠れてしまうのは何故だろう。
幼い女の子を相手にして、―――たぶん彼女は寝起きで、遊び相手が欲しいだけで。
それだけのはずなのだけど―――――どうしようもなく、違和感。
幼い娘ばかり好んで玩んでいた己だからこその、勘のようなもの、だったかもしれない。)

いや、あのね、ぼくは、……ごめん、遊んでる暇、は、―――うわ、っ!

(しがみつかれて、反射的に抱きとめてしまった。
やわらかくてあたたかい、ちいさな女の子。
戸惑いを露わに、そんな彼女の顔を見下ろして―――やんわりと、その身体を引き剥がそうと)

あのね、ごめん、ね?
ぼく、ほんとに、もう行かないと……それに、もう、ずいぶん遅い時間、だし。
きみぐらいの年の子は、もう、寝てなきゃいけない時間、だよ?

(まるで、まっとうな大人のようなことを―――さしあたっての、逃げ口上として。)

マヌエラ > 年齢相応の高い体温が、リュシーに密着する。
柔らかな身体。小さな掌。稚い上目遣いの笑顔。
どれも、不自然さはない。

だが、リュシーの勘は、正鵠を射ていた。

「だいじょうぶだよ、おにいちゃん…おねえちゃんのほうが、いいかな?」

どう見ても、特段に魅力的な少女であるリュシーに、おにいちゃんと呼びかけて。

「わたし、まぞくだから、夜のほうが、とくいなの!」

そのにっこりとした無邪気な笑顔のまま。
しがみつく手は頑として動かぬほど力強く。

更に、フリルとリボンに彩られた、膨れたロリータドレスのスカート部の下からは、粘液を纏った大小さまざまな触手が溢れた。
即座にリュシーに絡みつこうと。

リュシー > (とても褒められたものではない、己の性遍歴がはぐくんだ、勘。
抱きついてくる手は小さくて、ぽふん、と飛び込んできた身体は寝起きの子供特有のあたたかさで、
―――けれど次の瞬間、愛らしいくちびるが不穏な言葉を吐いた。)

―――― え、………
い、ま、……なんて………

(今の己の、この姿を見て、おにいちゃん、と呼んだ。
一瞬、以前遊んだことのある少女かと思ったけれど、それにしてもおかしい。
それに、―――細い腕なのに、小さな手なのに。
引き剥がそうとしても、離れてくれるどころか、息苦しいほどに絡みついてくる。

――――そうして、彼女が、まぞく、だと。
単語の意味を、頭がはっきりと理解するまでに、一拍の間。
その一拍が、命取り、となった。)

へ、――――― ッきゃ、ちょっ、なに、ぃ……!?
待っ、……や、無理、無理無理ぃ、ッ……は、離れ、ろぉ………!

(どこから出てきたのか、彼女を押しやろうとした腕に、後ずさろうとした足に、
にゅるにゅると、ねとねとと、得体の知れないものが絡みつく。
己がじたばたと抗えば抗うだけ、ますます強く、幾重にも巻きついて。
それらの源が、少女のドレスの奥だと気づけば―――きっと、己は顔面蒼白になっているはずだ。
瞬きもできず見開いた瞳には、恐怖のいろが揺らぐ。)