2017/09/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城 庭園」にコンスタンスさんが現れました。
■コンスタンス > (満月には僅かに足りぬ月だけれど、降り注ぐ光は充分に、清らかで美しい。
今宵も城内の広間では、王侯貴族たちが華やかな装いで酒宴に興じ、
或いは何処ぞの物陰に隠れ、淫らな遊戯に溺れているのだろうが、
そんな猥雑さも喧騒も、此の庭園までは届かない。
恐らく人工的に引かれたのだろう小川の畔、少女趣味の小さな白い四阿のベンチに腰掛け、
己は常の如く女らしい装いもしない儘、ぼんやり夜風に吹かれていた。
組み上げた脚の腿上で揃えた両手は、未だ苦労を知らず力も持たない。
短く切り揃えた爪先辺りを見つめて、そっと、細い溜め息を洩らし―――)
■コンスタンス > (何処からか、己の名を呼ぶ声が聞こえる。
寝室が蛻の殻であることに気づかれたのだろう、あの声は確か、
一番年若い小間使いの声だ。
城内であっても、若い娘には決して、安全な場所では無い。
特に、地位も立場も無い小娘であれば尚のこと。
己の為では無く、只、彼女を早く自室へ下がらせる為だけに、
ベンチから立ち上がって四阿を出て行く。
探しに来ていた小間使いに軽く手を上げて近づき、
済まなかった、と微笑んで―――彼女の背に軽く手を遣り、共に歩き出す。
寝室までついて来ると聞かない彼女を、説き伏せて先に下がらせれば、
彼女との約束通り、己は寝室へ引き上げて―――――。)
ご案内:「王都マグメール 王城 庭園」からコンスタンスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」にランドルフさんが現れました。
■ランドルフ > 王座には未だ遠く――
今宵の夜会も一際華やかだ。
例え其れが末席の方から数えた方が近い王族の宴だったとしても。
「――は、旦那様。何か御入用でしょうか。」
とは言え、そう言った家の方が、贅を凝らした夜会を開くのもまた事実。
己の権力やら、財やら、そう言った物を誇示する為なのだろうが、
少々華美が過ぎる装飾は、却って気品の無さを露見させている。
今宵の目玉であったらしい見世物の人魚が、泥を飲んで虹を吐いて見せた後、
水槽毎引き上げて行くのを何とも言えない心持ちで見遣っていた執事は、
後ろからの声に折り目正しく振り返って礼を取る。
「御酒とカード――で御座いますか?」
旦那様、と呼んだのはあくまで呼称で、己の主では無い。
唯、執事が礼を取った分だけ踏ん反り返った貴族らしい風貌の青年の様子を見遣れば、
其の上下関係は明らかだ。
其の青年貴族が有無を言わさぬ様子で、一枚のカードと、フルートグラスを押し付けて来る。
此れを今直ぐ白薔薇の飾られた部屋に滞在の令嬢に届けろ、と言うのだ。
■ランドルフ > 鸚鵡返しに聞き返せば、何か文句でも有るのか、と動揺しながら、やや声を荒げる様子。
其れを見遣れば、ははあ、と合点が行って。
言及するまでも無く、今宵の夜会で何処ぞの令嬢を見初めて後を付け、
滞在の部屋を確かめた所までは良かったが、自身で其の扉をノックする度胸が無い、と言った所か。
細身のグラスに注がれた淡い黄金色の酒も、唯の酒ではあるまい。
凡そ、良からぬ企みを果たそうと言う所だろうが――さて、そう巧く行かせて良いものか。
一つの挙動で大体が察せられる青年貴族は、そんな執事風情の内心を知らず、頼んだぞ、
と捨て置く形でさっさと夜会の輪へと戻って行って。
「――…畏まりました。」
其の背に一度、丁寧に一礼を取ると、執事の足は華やかな夜会を離れて――ワルツの遠く響く、広い廊下に出る。
宴を好まぬ者、酒に溺れた者、秘密の逢引きを交わす者と事情は様々に、
大概こう言った時には幾つか客間が整えられる。
其の内の一つ、白薔薇の飾られた部屋へと歩みを進めながら――
何しろ今宵は王族から、貴族から、豪商と様々な人々が訪っている。
此の部屋に御滞在は何方様であったかと思案しながら――扉を規則正しいリズムで二つ、打った。
「――失礼致します。とある御方の命により、贈り物を御届けに参りました。」
■ランドルフ > やがて扉は静かに開かれる。
やや深めに目礼を取って部屋の主に対しようとした其の時――
「あ――…!も、申し訳有りません!」
足元を取られる様に僅かに其の上体を傾がせて、取り落したフルートグラスが廊下で砕けた。
器用に令嬢のドレスに弾ける事無く、全ての酒が廊下に広がって。
やや棒読みのきらいがあるが、其処は此の際だ。
恐縮する様に深々と頭を垂れば、困惑する様に令嬢がイブニングドレスの白い肩を竦めた。
「直ぐに新しいグラスを御持ち致します故、御待ち下さいませ。」
さっと返しそうになった踵を一度留めて、振り返る。
差し出したのは添えられていたカードだ。
「此方を――」
どうすべきか決めるのは、令嬢自身だ。
だが、此れで少なくとも其の意思一つで決断出来るだろう。
酒の“混ぜ物”が効いていないと知れば、青年貴族は怒るのだろうが――構わない。
どうせ王城に数多居る従僕から己を探し出す事は出来ないだろう。
彼等は召使いの顔等いちいち、憶えて居ないだろうから。
ご案内:「王都マグメール 王城」からランドルフさんが去りました。