2017/09/03 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城地下」にサリさんが現れました。
■サリ > 片手には銀製の手燭、もう一方の手にはやはり銀製の盆。
盆の上に恭しく載せられているのは、見るからに怪しげな硝子の薬瓶だ。
一見、城内を歩いていても可笑しくない風体ではあるが、実は此の手燭も盆も、
仕事をサボりたかったとあるメイドと交渉し、手に入れた借り物だった。
彼女の仕事は此の盆を、地下某所へ届けることだったのだが、
己は勿論、真っ直ぐ其処へ向かう心算など無い。
最低限の灯りしか点されていない、暗く冷たく細い通路を、
可能な限り探索してみようと考えていた。
―――――何処からとも無く聞こえてくる、嗚咽とも呻き声ともつかない声。
男のものか、女のものかも判別のつかない其れが、もし、
己が兄のものであったら、と思えば、歩調は自然急ぎがちになるも、
万が一誰ぞと擦れ違った際、怪しまれては元も子も無い。
意識して慎重に、何でも無いことのように、石造りの通路へ靴音を響かせて。
ご案内:「王都マグメール 王城地下」にアダンさんが現れました。
■アダン > 王城地下に広がる空間。石造りの床や壁に囲まれた冷たい空気が満ち、灯りも多くない薄暗い通路が続いている。
王国との戦争で敗北し、捕虜となったものや、政治犯などが捕らえられている地下の牢獄郡もここには存在している。
当然の如くそこでは様々な拷問や陵辱が行われ、この国の暗部の一端といえるだろう。
他にも、腐敗した貴族や王族達による退廃的な宴などが行われ、その実態を知る者は軽々に地下へと降りてくることはないだろう。
そんな地下の通路に靴音が響く。一人の男がその通路を歩いていた。
名門のフェリサ家当主の男で、良くない噂も多い男だ。
その噂の多くは事実であり、今も地下での退廃的な宴や、自らが罠にはめて奴隷とした王族や貴族の姫などを弄んでいた。今はまさにその帰りといったところである。
アダンが、手に灯りを持ち先を進んでいると自身とは別の靴音と、灯りが目に入る。
それに近づいていけば、そこにいたのは一人のメイドであった。
アダンは彼女を見つけると、薄く下卑た笑いを浮かべて立ちふさがるように前に立つ。
「メイドか。この先に何か用かね。あまりメイドが立ち入る場所でもないと思うが」
彼女の前に立ち、疑問を投げかける。
彼女の持つ盆の上には見るからに怪しげな薬瓶が置かれており、おそらくはそれを届けるようにでも言われたのだろうという想像はつく。
■サリ > 得体の知れない物音と声の他には、己の靴音ばかりだった空間に、
別の誰かの靴音が聞こえ始める。
其れが近づいて来ていることに気づき、僅かに表情が緊張を孕むも、
狭い通路で進路を塞ぐように現れた男へ、深々と頭を垂れることで誤魔化し。
「……これは、フェリサ家の旦那様」
此の男は有名人だ、おもに悪い意味でだけれども。
恐らくは此の男が遣って来た方向に、何某かの後ろ暗い施設がある、と
確信出来てしまう程、此の男は全く有名人だった。
ゆえ、深く下げた頭を完全に持ち上げず、男の胸元辺りへ視線を伏せて。
「申し訳ありません、実は私、主より此方の瓶を、お客人の元へお届けするよう
言付かって参ったのですが…少し、道に迷ってしまいまして。
………失礼致しました、どうぞ、お先に…、」
しおらしく聞こえるだろうか、委縮して見えるだろうか。
何れにしても、行き違いも難しい細い通路ではあるが、そっと脇へ避けて通り道を作ろう。
男が何処かへ立ち去るというのなら、勿論、引き止めるべきでは無いのだから。
■アダン > 「ふむ、そうか」
メイドの装束に身を包んだ女はアダンを見て深々と頭を垂れる。
そして、彼女の言葉を聞くと短くアダンは呟いた。
相手は頭を下げたままであるため、その表情を伺うことはできない。そんなメイドの様子をアダンはしげしげと眺める。
王城にいるメイドの全てなどアダンは当然把握していないが、遭遇した際に見えた顔立ちはあまり見ないものであるようにも思われた。
「道に迷ったといったか。ならば私が送るとしよう。ここは入り組んで入る故、下手に迷うと出てこられないこともあるだろう。
罪人や捕虜たちの牢獄や尋問室もこの先でな。あまりメイドなどが出向く場所でもないのだ。
客人も待っていることだろう。私も探すのを手伝おう」
彼女が道を開けて、アダンの通り道を作ったにも関わらず、アダンはメイドの後ろに立ち、案内をしようなどと提案した。
不躾に彼女の背を押して先に進むようにも促していた。アダンはこのまま去るつもりなどはないことはわかるだろう。
「そういった薬を用いる宴には幾度か参加したことがある。とりあえずそこまで案内するとしよう
……よいかね? それで、君のご主人の名前が聞きたいところだ。私の知り合いやもしれぬしな」
薄く笑いながら彼女に言い、アダンは先へと進もうとし始める。
■サリ > 男の唇から零れ出た短い呟きに、己は更に深く頭を下げる。
恐縮しているように見えるかも知れない其の仕草は、実のところ、
男に出来る限り己の顔を憶えて欲しくない、という、
ただ其れだけを目的としたジェスチャーに過ぎない。
―――――然し。
送る、などと言われてしまえば、思わず振り仰いだ面に滲む焦りの色は、
掛け値無しに本物の焦燥から来るものであり。
「い、いいえ、いいえ、そのようなこと……!
いけません、フェリサの旦那様にそのようなお手間をとらせては、
私が主に叱られてしまいます!」
飽くまでも表向きは、遥か目上の存在からの親切を、畏れ多いと固辞する風を装って。
どう考えても行きたくないような場所へ、先に立って行こうとする男に、
手こそ掛けぬものの、取り縋るように一歩、二歩と踏み出し。
「どうか、旦那様、後生で御座います、どうか……!
お許し下さい、私、私……、」
此の男同様、悪名高き貴族の面々の顔が、頭の中を忙しなく過ぎる。
取り敢えずどれかを口にして此の場を凌ぐ手もあろうけれど、
もしも男が行こうとしている場所に、本人が居れば万事休す、だ。
仕方なく、ひたすらに哀れっぽく許しを乞うてみたのだが――――
男が、騙されてくれるか、どうか。
■アダン > 「何をそんなに焦っているのだね」
こちらを振り向いたメイドの表情は明らかに焦りのものだった。
アダンはその様子を見ると怪訝そうな顔を作ってみせる。
もともとこのまま彼女を連れ込んで弄ぶつもりの予定だったのだ。
何かしら突ける場所、弱みがあるのならばなおさら良いというもの。
「私が良いと言っているのだ。何を憚る必要があろう。私も君がこのまま地下で行方知れずにでもなれば寝覚めが悪い。
君のご主人の名前は? 探しているという客人は誰かね。それを届けねばならんのだろう?
遅れた方が君も叱責を受けるのではないかと思うのだが」
敢えて疑念を抱くような表情を作って見せながら、必死の様子で懇願するメイドを見つめる。
こちらも一歩二歩近づき、彼女を見下ろし、質問を下す。
メイドならばすぐにこの質問に答えられるはずだろう、と。退廃的な宴に用いる薬物を運ばせているというのなら主人の名を隠したいというのもわかる。
だが、そうであっても客人の名前ぐらいは言えるはずである。
アダンは街の治安を守る警備隊の一つ――実際にはアダンの私兵と言える存在だが――を持っている。
この王城の治安維持任務の一部もアダンの管轄である。怪しげな人物は尋問することも可能だ。
彼女の様子にどこか不自然なところをアダンは感じた。
「少し来てもらおうか。何、君のご主人に迷惑はかけぬ。……来い」
最後の言葉はどこか命令口調で。彼女の手を掴もうとする。
つかむことができればそのまま先へと進んでいくだろう。
■サリ > 焦っている、のは其の通りだが、本当の理由を知られる訳には行かない。
おどおどと視線を彷徨わせ、俯いて盆の上へ視線を落とし、
―――ひたすらに、主人からの叱責を恐れているメイド、に見えれば良いとばかり。
「あの、……でも、私……困ります、本当に、こんな……、」
どうする、一か八か、誰かの名前を出すべきか、其れとも架空の名前をでっち上げるか。
俯いて必死に思考を巡らせている間に、男が此方へ近づいてくる。
己の上に掛かる深い影は、まるで己の未来に差す暗雲のようで――――
「きゃ、っ………!
な、何を、なさ……お放し下さい、どうか、旦那様、っ………!」
ぐい、と手を掴まれた拍子、銀盆は呆気無くバランスを崩し、
滑り落ちた硝子瓶は床の上で、こなごなに砕けてしまう。
運んでいた己自身すら、何の薬なのか知らない液体が飛び散り、
辺りにはまた、いかにも怪しげな甘い香りが満ちたけれど―――
志こそ高いけれど、所詮はか弱い女に過ぎない己は、
男に引き摺られるよう、何処かへ連れ去られてしまうのだろう。
■アダン > 手を掴んだことで彼女の手に乗っていた盆は手から滑り落ちる。
当然その上に置かれていた瓶も粉々に砕け、辺りには怪しげな甘い香りが満ちた。
その中身については何となく想像がつき、アダンは下卑た笑みを浮かべる。
目の前の女が怪しげな存在であることは何となくアダンには想像がついた。
というより、実際にそうでなくともアダンがそのように思ったというので理由としては十分である。
色々と確認する必要があった。それがもしアダンの不利益になるのならば手も打たねばならない。
だが何より、今のアダンはこのメイドを良いように陵辱するということを何より目的としていた。
「少し聞きたいことがある。お前もどのみちこの先に用があったのではないか?」
彼女の制止や懇願もアダンは一切を無視し、薄暗い廊下の先へと進んでいった。
その先は様々な理由で投獄された者達が尋問などを受ける場所。
そして、腐敗貴族たちの遊び場でもある場所である。
そんな場所へと、秘密を秘めたメイドをアダンは連れ去ったのであった。
ご案内:「王都マグメール 王城地下」からアダンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城地下」からサリさんが去りました。