2017/08/31 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城」にロザリアさんが現れました。
ロザリア >  
晴天の夜
雲一つない夜、満月がよく映える

雨が降っているでもない夜の庭園
唐突に稲光のような音と共に光が庭園を照らす
そこへ一人の少女がふわりと降り立った

「──…力づくだとこんなものだな」

バチバチと音を立てて、空間に残る裂目
王城を守る騎士たちが張った退魔の結界である

「もう少し静かに入れるかと思ったが、中々に強力であったな」

以前此処へ来た時よりも自身の力が更に増大していたせいか、
随分と抵抗がかかった気がする
──旧神の加護の残るこの地で魔の力が抑えられているというのも大きな理由か

ご案内:「王都マグメール 王城」にツァリエルさんが現れました。
ツァリエル > もうそろそろ寝ようかと思って中庭を通る廊下を歩く。
ふと、暗闇の中一人の少女がふわりと中庭へ降り立ったようにみえたのだ。
あれは一体誰なのだろうと廊下の窓から覗き込んでしまう。
城の中のものではない……。だとするとどうやってあそこまで入ってきたのだろう。
得体の知れない不安と恐怖があったが、じっとツァリエルは窓越しに彼女を見つめる。

ロザリア >  
月明かりの下
照り映える白金の髪を夜風に揺らす少女が佇む

「──…おや」

見られていたようだ

夜の庭園、その暗がりの中でもはっきりと見てとれるエメラルドのような双眼を、廊下の窓───その向こうの視線へと向ける

…さて、あの人間はどう動くのだろうか?

ツァリエル > 見れば女の子は豪奢な衣服と綺麗な髪をしている。
とても美人だ……けれど今はそんな可憐な人が何故夜の庭園を訪れたのかが気になった。

と、彼女の視線がこちらを見たような気がして、バレてしまったという淡い罪悪感がわく。
こうなったなら意を決して、彼女の前に出てしまおう。
廊下から中庭に続く扉を開けて彼女の方へ歩いて行く。

「あの、こんばんは……
 こんな夜更けに庭園までお越しいただいてどうかされましたか?」

恐る恐る口にだすのはプラチナブロンドの柔らかな髪と澄んだ青の目、
褐色の肌の気弱で優しそうな少年だ。
服はここでは似合わない質素な修道服を着ている。

ロザリア >  
恐る恐ると話しかけるその少年に、突然現れた少女はどこか妖しげな笑みを返す

侵入を見られた以上、夜の警護にあたる兵士等へと報告が行くかと思っていたが──

暢気な挨拶、丁寧な言葉遣い
こうやって夜の訪問者に対して───警戒が薄すぎる

「……其方は?」

少女が小さな口を開き、鈴の音のような声が向けられる
その僅かな隙間から覗いた鋭い牙には気づくかどうか

ツァリエル > 「あ、あなたが突然庭園に現れてそれを見て気になって来ました……。
 あ、名前、ツァリエルっていいます!
 あの、あなたのお名前を伺っても?」

凛と澄んだ声音でこちらに尋ねられれば
いやに緊張したように畏まって答える。
彼女の顔をまじまじと見つめるのは失礼だと視線を下げていたせいで
彼女の牙については見れなかった。

ロザリア > 名前を名乗る少年
その名を知っており、一瞬だけその人形のように大きな眼を丸くして
 
「──ツァラトゥストラ・カルネテル=ルヴァン」

そう、呟くように名前を復唱した

「運が良い。
 邪魔も何も入らず、正統な血をもつ王家の人間と邂逅できようとは」

くつくつと笑い、ドレスを翻し一歩ツァリエルへと進む

「吾の名はロザリア…。
 ロザリア=Ⅳ=キルフリート。
 魔族の国の奥に眠る宵闇の城、キルフリートの主である」

ツァリエル > 自分の本当の名前を知っていることに
こちらも驚いて目を丸くする。

「どうしてその名を……?」

ロザリアが一歩近づくことに大きな忌避感を感じてツァリエルは一歩下がる。

「ロザリア=Ⅳ=キルフリート……まさか、魔族なんですか?!」

ここでようやく彼女がとても危険な人物であると認識できたようである。
さっと血の気が引くと同時に一目散に逃げ出したいのだが
どうしてか気圧されて体が自由に動かない。
ただがくがくと震える足が馬鹿みたいに突っ立っているだけである。

ロザリア >  
「吾もこの地に落ちて長い。
 王位の継承権争い等、話は度々と耳に入るものでな。
 ……褐色の肌の王子は多くなかろう?」

一歩、一歩
装いと髪を揺らして近づいてゆく
やがて、顔を突き合わせるほどの距離へと接近して

「─…ふむ。
 人間は、吸血貴種もまた魔族の範疇に含めるものなれば。
 魔族と呼んでもらっても構わぬだろうな?」

くす、くす、と
逃げることも出来ない獲物を嘲笑する

ツァリエル > ついに逃げることも大声を出すことも出来ぬまま
一対一で魔族である彼女と接している。
背中を冷や汗が伝い、生きた心地がしなかった。

「吸血貴種……? 吸血鬼……。
 その、吸血鬼の魔族の方がどうしてこんなところに……」

もしかしたら王城に来たのは王族貴族たちを殺すためなのか
といった、よからぬ想像が頭を駆け巡る。
そうなると真っ先に死ぬのは自分だろう。体の震えが止まらない。

ロザリア >  
「どうして?」

問いかけに、嘲笑する
恐怖が先に勝っているのか、きっと単純なことがわからない

「ヴァンパイアが夜に訪れるなど、血を吸う以外にあると?
 下賤な血は口に合わぬ、同胞の血も飲み飽きた。
 豊かな生活をする貴族の血は好い──芳醇に香り、気品もある。
 ……受け継がれてきた、ナルラート王の血は、どうかな…?」

動けないツァリエルの耳元を擽るように囁き、牙を見せ笑う

ツァリエル > んっと耳元をくすぐられるように囁かれれば甘い声を漏らす。

「……お、お腹が空いていらっしゃるんですね……?」

だが次に出てきた言葉はいささか気の抜けたものだった。
顔色は青いままだが、なにやらあれやこれやと思案し始め
そうして決意を込めた目でロザリアを真正面から捉えると
自分の襟元をくつろげ始める。

「ぼ、僕だけでお腹を満たしてくれるなら、
 血をいくらかお渡しします。
 でもその代わり、
 この城のものには誰にも手をかけないと約束してください。」

そうして差し出すのは華奢な褐色の頼りない首筋、意を決したと言うのに
まだ体は震えていた。

ロザリア >  
「──…何?」

ツァリエルの言葉にその眼を丸くする
怯え、押し黙るだけだろうと思っていた
それが、今言った言葉は何だ?

「……この城の者の血など、いくら足してもお前の血一滴の価値に及ばぬ筈。
 それを、差し出すだと…?」

差し出された首筋
牙を立てろと言わんばかりに、据え膳を差し出すこの王子は──?

「下々の者を助ける為に、
 王族が犠牲になるなど何を考えている…?」

ツァリエル > 「この国の王族はたくさんいますから……
 それこそ僕なんて末席を汚させていただいている身の上です。
 僕が犠牲になっても、他の優秀な王族の人達がきっとこの国を護ってくれます。
 そして国を作るのは下々のものたちの支えです。
 誰一人欠けても国は作れません、だからお願いです。
 どうかこの城のものには手を出さないと誓ってください。

 その代わり、僕のことは自由にしていただいて構いませんから……」

本当は恐ろしくて仕方ないしぶるぶる震えて格好悪いのだが
決意は変わらないようだ。
さぁ、どうぞというように首筋を晒し、ぎゅっと目をつぶる。

ロザリア >  
「その為ならば死喰鬼になっても構わぬと?
 ヴァンパイアに血を吸われた者がどうなるか知らぬのか?」

適正のある者であればアルタードショックを経てヴァンパイアへと変貌する
そうでない者は…血肉を求め喰らい歩く死喰鬼<グール>となり果てる

「そうなればお前自身がこの城の他の者を……
 いや…この国の騎士はそれは許さぬか。被害なく、お前を斬り伏せるやもしれんな」

身体を震えさせるツァリエルを見て、つい意地悪な言葉を向けてしまうが
その決意は変わらないらしい

白く細い指が、つつ…とその首筋を撫でて

ツァリエル > 「もしもヴァンパイアになってしまったら、
 ううん、グールになってしまったら、
 その時は意識のあるうちに自分で……。
 それも叶わなければ騎士を呼んで斬ってもらいます。
 でも一番今近くにいるのはロザリアさんだから
 あなたに最後の介錯を頼みたいです」

それも血を飲む代価として条件に含めようというのだろうか
ロザリアの話にますます顔色を青くして、けれどなんとか普通を保とうとする。
首筋にロザリアの指が触れれば、ひゃっと可憐な悲鳴が漏れてしまう。
くすぐったいらしい。

ロザリア >  
「…王城に住まう貴族の娘の血でも飲んでやろうとやって来たが、
 思わぬ拾いものだな。…未だ高潔な王族もいるものだ」

このような人物が王位を継承していたなら…
いや、これでは他の国の侵略を許してしまうだろうか
が、それでも今のこの王国とは随分と違う未来になりそうだが

その芽を摘む…というのも、
人間達の恐怖の象徴たる吸血種としては正しい行いなのかもしれない

「恐ろしいか…?
 何…吾に血を座れるとな。大の男ですら甘美なる声をあげるのだぞ」

つつい、と首筋を丹念に撫で、やがて───
はぁ…と大きく開いた口から鋭い牙を覗かせて

つぷ──

首筋へとその牙を立てる
傷みは一瞬、吸血がはじまれば、即座にそれはとほうもない甘い快楽へと変わる

ツァリエル > 「お、恐ろしいです……でも、これで皆を助けられるなら……」

未だに震えたままぎゅっと目をつぶっている。
なんとも哀れで情けない姿だがそれでもロザリアが首筋に触れても逃げない。
否、もう逃げられないのだ。

彼女の白い牙が自分の肌に食い込み、ぷつっという音を伴って食いつかれる。
確かにその瞬間は痛かった、思わず顔をしかめてしまうほど。
だが、すぐに別に感覚が体を支配してくる。甘い快楽――。

「あっあ、……あっう、あ、あ、あ、っあああああ!」

ぞくぞくと体が恐怖ではなく快感に震え、めまいのように頭がくらくらと痺れてくる。
体に熱がともり、あついとうわ言を言いながら体をくねらせてしまう。

ロザリア >  
こく、こく…と
ロザリアの細い喉から鳴る音すらも伝わる距離

甘い快楽は全身を侵す熱へと変わる
まるで熱病に冒されたような気怠さにも似た脱力感が生まれる

少女の髪からふわりと香る軽やかなハーブのような香りが漂い、
生命を奪われゆく行為の最中だというのにまるで秘事のような感覚を与えてゆく

やがて、時が止まったかのような静けさが過ぎ去り…

「──は…っ」

つう、と血と唾液の混じった薄紅の糸を牙から引いて、ロザリアの口がツァリエルの首筋から離れる

「カルネテル王家の血…吾も口にするのは初めてであったが、
 フフ…なかなかどうして、好いものだな……」

ツァリエル > ロザリアの口が首筋から離れた途端ツァリエルはその場でかくりと膝をつき倒れてしまう。
あまりに強い快楽にカクカクと体を震わせ、表情はとろりと溶けて熱い吐息を漏らす。

「はぁっ……はぁ……あ、あんっ……んん……っ」

見れば下肢の間、股ぐらの少年らしい可愛い勃起が服を押し上げていて。
ふるふるとせつなそうに体を震わせ、ロザリアを見上げた。

「……お腹、いっぱいになりましたか……?
 約束、ちゃんと守ってくださいね……」

これから自分は吸血鬼になるのかグールになるのかわからないが……
とにかく城の皆が無事であるのを祈るしか無い。
そしてこのロザリアが約束を果たしてくれる人だと信じなければならない。

ロザリア >  
「…食料でしかない人間との口約束など守ると思うか?
 確約もなしに血を捧げ犠牲になることを決めるなど思慮の浅いことだな」

見下ろすようにして言葉を投げかける
しかしすぐに表情を和らげた

「と、言いたいところだが王族の血の後に他の物の血を飲んだところでな。
 約束などをした覚えもないが、今宵は満足しておいてやろう──」

ドレスを翻し、踵を返すが、視線だけをそちらに向けて
喘ぎ声のような可愛げのある声をあげ、股間の一部分を盛り上げさせる少年に嘲笑の笑みを向ける

「…さて、グールとなるか、それとも…
 どのみちこの城にはおれぬようになるだろうが、どちらが幸福かとも言い難いな」

グールとなりこの場で死ぬことになるか
ヴァンパイアの眷属となり、やはり城を追われるか
無論、例外も多く存在する
カルネテルの王家の血が例外であるか、少年そのものが例外であるかは知るところではないが

ツァリエル > 「……ありがとうございます、ロザリアさん……」

みるみるうちに弱って憔悴していく中、それだけを言ってツァリエルは
ロザリアに微笑んだ。
だが、それを言い終えたあと彼は昏睡した。
これがアルタードショックといわれるものかどうかは判別できないが。
と、ロザリアが血を吸った痕がまるで時間が巻き戻るように薄れて消えていく。
と、少年の体に何か異様な空気がまとわりつく。
それは魔族よりも邪悪でおぞましい、恐ろしいほど澱んだ空気だった。
空気が実体を持つように仄暗い触手が彼の体に巻き付く。
ぐったりとしたツァリエルは未だ目覚めぬまま触手に体を捕らわれた。
どこからか地の底から響くような声が聞こえてくる。

『これは……我らが生贄……ヤルダバオートの贄……
 吸血鬼ごときに手出しは……させぬ……』

ロザリアにはもしかしたらわかるだろう。
この少年は何かおぞましい、邪神とも呼べるものに呪われていると。
その邪神の呪いが吸血鬼化を拒んでいることも。

澱んだ空気が庭園の花々を枯らし、並の人間では恐ろしさに発狂するであろう怪物がそこにはいた。
だが、怪物の現出からさほど時間を立たずにそれは塵になって掻き消えた。
触手に捕らわれていたツァリエルは柔らかな芝の上に放り出されそのまま気を失っている。
どうやらまだ人間らしい。だが呪いが溶け去ったわけでもないだろう。
常にじっとりとツァリエルを見つめる何者かの気配を感じる。

ロザリア >  
「──!」

幾度も見てきた、吸血からの人間の変異
心臓が停止し、夜明けを待たず蘇生し同族となる者
蘇生せぬまま、血肉を求め彷徨うグールとなるか
どちらでもなく目覚めぬまま土へと還るか

──何らかの耐性により、その身と魂を保つか

今宵の獲物は、成程
そういった類のものらしい

「…ふふ、これはこれは……。
 王国の擁する術士でもディスペルできぬであろうな」

顎に小さな手をあて、興味深げにその様子を眺める
そのおぞましき邪気、城を守る兵士達が気づかないわけもないだろうか

「より強大な呪詛に侵されていれば、同じく呪詛にも似た吸血鬼化をすることはない。
 ……しかし、ふふふ。其れは運が良かったのか、否か…?」

呪いを受けし血統の王子…

「ヤルダバオートの贄…。
 今宵は良い夜だな。良き血にも、面白き者にも出会えた」

ドレスを翻し、背を向ける

ツァリエル > しばらくすれば異変に気づいた警備の兵士が何名か
庭園へと足早にやってくる。
ロザリアを認めて、何者か!と口々に言うだろう。

ツァリエルは未だ目を覚まさず兵士によって発見されその身を保護された。
兵士たちの武器が次々にロザリアへ突きつけられるだろう。
このおぞましい気配の主がロザリアであるかのように勘違いしたのかもしれない。
さて、吸血鬼の姫はどうするのだろうか――

ロザリア >  
兵士が現れれば、小さな笑みを残し吸血姫はその場から霧のように変化し、抉じ開けた結界の隙間から夜闇へと消え去る

兵士達を蹴散らすことも、血を奪うことも容易かったろうが、
ツァリエルとの口約束を律儀にも守り、一人の生命も奪わず一晩は過ぎ去る

夜の庭園で倒れていた王族の少年──
庭園の変容や、その場に残り続けたであろう気配はその後しばく王城の衛兵達の間での論争を呼ぶこととなった

──かもしれない

ご案内:「王都マグメール 王城」からロザリアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」からツァリエルさんが去りました。