2017/07/25 のログ
■砂姫 > (其れは深更の夜、しんと静まり返った薄暗い廊下。
祝祭の期間中とは云え、王族の姫や夫人たちの居室が並ぶ此の一角に、
目立った乱痴気騒ぎの気配は届かない。
ならば何故、とある部屋の扉前に、胸元へ手燭を携えたメイドが
配されているか、と云えば。)
―――― 姫様、そろそろ御休みになる頃合いで御座います。
(こんこん、と後ろ手に扉を叩き、そっと中へ声を掛ける。
程無く、内側から開かれる扉から吐き出されてくるのは、
姫とは似ても似つかぬ何処ぞの紳士だ。
蝋燭の灯火から顔を背けるようにして、そそくさと着衣の乱れを正しつつ、
足早に立ち去って行く其の背を冷やかに見つめて、溜め息をひとつ。
己は密かに袖口へ隠した紙片を開き、箇条書きされた名前を確かめて)
…夜明けまでに、あと、2人…。
全く、御盛んですこと。
(一夜のうちに、幾人もの男を褥に招き、とっかえひっかえ楽しむなど、
大した姫君もあったものである。
帝国から特段の対策を講じずとも、こんな王族ばかりなら、
脅威を憶えることも無いのでは、と、ちらりと思う。
一応、男の鉢合わせを避ける為に配置された己ではあるが、
鉢合わせたら鉢合わせたで、彼女ならば一緒に楽しもう、と云い出しそうだとも)
ご案内:「王都マグメール 王城 とある姫の寝室前」にグスタフさんが現れました。
■グスタフ > (廊下に影。現れたのは二人の人影だった。
一人はいかにも偉そうな佇まいの男。もう一人は筋骨隆々の中年である。
どちらも神聖都市風の正装をしていた。司祭と騎士と見て取れる。
中年の男が先導して部屋の前まで、男を連れてきて首を垂れた。)
「こちらでございます。では、ごゆっくり。」
(目の前のメイドに目配せをして、司祭を前に出して部屋の前へ導いた。
あとは中の姫様と仲良くやってくれればいいのだと、付き添いの男は胸中でごちる。
その間に俺は――司祭が部屋に消えるのを待ってから口を開いた。)
「――あの方は、長くなるぞ。暫くは暇を……」
(少し砕けた口調でメイドに小声で語り掛ける。
ここで控えてるだけというのもなんだろうと暇つぶしのようなものだったが。
上から下まで見る、なかなかに見目がいい。流石王都だと口笛でも吹きそうな心地で。
男の下心がむくりと鎌首をもたげた。
ここで騒ぎを起こすのはどうか、メイドの一人くらいどうとでもなるか。
考えを巡らせながら言葉を繋いだ。少しからかうように。)
「ここで、中の様子を聞いていたいというなら、まあ、止めはせんがね」
■砂姫 > (揺らめく灯火の中で、本当に二人一緒に来た、などと、
呆れ半分に考えたのは己だけの秘密である。
然し様子を見ていれば、如何やら姫君の客は一人だけで、
もう一人の男はただの護衛役であるらしい。
約束の相手であるらしい男の方へ、先ずは一歩進み出て頭を下げ)
失礼致します、御名前を伺っても宜しいですか?
……どうぞ、姫様が御待ちかねで御座います。
(一応は名前を確かめてから、一礼して男が部屋の中へ消えるのを見送る。
―――此れで、残りはあと一人。
内心の諸々を微笑の中へ押し隠し、再び門番じみた体勢に戻ろうとしたところへ、
もう一人の男から声が掛かった。
先刻までとは少し、雰囲気が変わったように思える男の顔を、
静かに見つめ返して)
……暇、では御座いませんわ、騎士様。
私には此方で、姫様の褥をお守りする、大切な御仕事が御座います。
(言葉つきも、表情も、良く訓練されたメイドの其れかと。
揶揄めいた物云いにも、仕事モードの己なら眉ひとつ動かさない。
ただ、困ったように眉を寄せて笑みを深め)
今、此処に居る私には、扉の向こうの声を聴く耳など、無いも同然ですもの。
騎士様こそ、司祭様と姫様との語らいに、御興味が御有りなのでしょうか?
(今でしたら未だ、酒宴の席を楽しむことも出来ますよ、と云い添えて、
彼の揶揄への返礼と為し。
会話の間だけ彼へ向けていた顔を正面へ戻し、仕事に戻ろうと)
■グスタフ > 「間逆。私的な意味でも、公的な意味でも、興味はないがね……。
何が起こっていたかは思い出せる程度には記憶はしてるんだろう?」
(乾いた顔で扉を見つめている。早速始まったかなどとごちてはいるが。
向きなおると、上から下まで見渡して。方眉を跳ね上げた。)
「護衛。これは失礼した。単なる侍女かと」
(頭をかいて、眉根を下げて見せた。矜持が高そうだ。
心を折るのは難しそうだ。ふっと息を抜いて、全身をリラックスさせるように。)
「確かに、司祭には好きに楽しめと言われていてな。
人払いを頼まれている。付き合ってもらうと楽だったんだが」
(困ったなぁと言ったふうに眉根を寄せて。ぐらりと男の姿が地面に倒れるように崩れた。
侍女の身体を撫でるように巨躯が寄りかかると思えたが、床に伏せるようにして相手の足首を引っかけ崩そうとしていた。廊下の隅の影に引きずり込むように。)
「仕方ない、実力行使だ」
■砂姫 > ……でしたらやはり、酒宴に御参加なさいませ。
私のことは、捨て置いて頂いて結構ですわ。
(彼はもしかすると居た堪れないのかも知れないが、己は此れも仕事である。
煩い、と云えば扉越しの声より、彼の視線の方がずっと煩く感じられた。
侍女であろうと、護衛であろうと、今、此の場ですることは変わらない。
そっと、一瞬目を伏せてみせるのみで、もはや言葉すら返さず)
―――――ですから、
………騎士様、……如何、なさ――――― っ、っ……!
(流石に、傍らに立っていた男が倒れそうになれば、ぎょっとして視線を向ける。
其の前の台詞の不穏さを、ほんの一瞬だけ忘れた、其れが、隙、となったか。
気づいた時には男の手が足首に掛かっており、己の身体は大きくバランスを崩す。
手燭が滑り落ちて床に転がり、灯火はふつと掻き消えた。
窓の無い廊下の暗がりに、男と女、ふたつの影が紛れて――――其の顛末は、闇の中に。)
ご案内:「王都マグメール 王城 とある姫の寝室前」からグスタフさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城 とある姫の寝室前」から砂姫さんが去りました。