2017/03/26 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城」にシャドウさんが現れました。
■シャドウ > 何とも貴族様と言うのは貪欲なもので、今宵も王都マグメールにある王城で以前と同じ場所で違う貴族様に有る程度の金額をお届けする事となり、少しばかり表情に苦いものを浮かべつつ、スマートにスピーディーに仕事を済ませて、今は休憩中である。
右手にはお土産に持たされた精巧な細工のされたグラスに並々と注がれた如何にもな赤いワイン、正直ワインよりもエールやブランデーが良いのだが、お客様の好意を無駄には出来ずで、受け取ったはいいが持余し、現在のこの状況に至る。
「……これそこらにぶちまけじゃダメだかねぇ?」
腰をかけているのは白塗りのアンティーク調のお高そうな木製のベンチである。
其処に以前と同じように深く腰をかけて、右足の膝に左脚を乗せるようにして脚を組み、深いため息と共に愚痴を零していた。
飲めないわけではない、飲まない理由も無い、ただそんな気分ではない、反吐が出そうな貴族の顔をツマミに酒を飲む趣味がないだけ、それと今は仕事のときと違い口に魔力を急速回復させるための特殊な草と薬液で作った煙草モドキを咥えている、コレを捨ててまで飲む価値があるとも思えず……。
思わずワイングラスを円を描くように揺すり、悪の親玉気分を味わった後に少しだけ傾けて中庭の地面に赤いワインをわざと零す。
ポタ、ポタポタポタ……と音をたて滴る赤い雫。
地面に小さな染みを作るのをチラっとだけ眺めると、すぐにワインを傾けるのを止めて、露骨に暇そうな表情を浮かべる。
薔薇の花咲き乱れる中庭の庭園。
其処に浮かんで見えるは煙草モドキが生み出す紫色の焔。
嗅覚が良ければきっとその不思議な色合いの火に似合う何処か薄ら甘い香りが広がっている事に気がつくだろう。
■シャドウ > 精巧な細工が刻まれたワイングラスを夜空に月に向けて掲げ、ワイングラスの側面に中に真っ赤な海の中に月を映すと、仕事の疲れが露骨に表れていた表情をふっと緩めて口元に笑みを浮かべた。
「……このグラス、売ったらエール何杯飲めるかねぇ?」
緩めたのは月明かりを通して見えたグラスに刻まれた細工の精巧さ、何度も言うが見事な細工がされていて価値が高いように見える、のでコレを売ればお小遣い程度にはなるんじゃないかな……と。
そう考えればあの品の悪い貴族様の顔も多少は宜しく見えるかもしれない、が想像してみたが残念そんな事は欠片もなかった。
さて、咥えていた煙草モドキも短くなり始め、口内に広がる甘ったるい味も魔力も非常に濃くなり始めている。
幸いな事に灰みたいなものは発生しないから良い、良いが熱を発しているのは当たり前で、それが唇に近づいてくれば勿論熱い。
そんな事をかんがえるだけの余裕のある緩やかな時間。
次第にそれは一番苦手な暇な時間へと移り変わっていく……。
■シャドウ > 十分に休息は取れた。
ワイングラスの鑑定も気晴らし程度にはなった。
――家に帰ろう……。
「……おっし、明日もお仕事がんばりますかねぇ……。」
溜息の代わりに思い切り煙草モドキを吸い上げるとそれは灰ではなく黒い何かに変わり夜風に吹かれるとその黒い何かも崩壊し風に紛れて消えていく。
其処まで見届けてから、両膝に手をついて気合一ついれてベンチから立ち上がると、口元に何とも言えぬ微妙な笑みを浮かべながら帰路へつくのであった。
ご案内:「王都マグメール 王城」からシャドウさんが去りました。