2016/11/26 のログ
■オーギュスト > 王城内、軍議の間では第七師団が軍議中であった。
議題は宵闇城キルフリートの攻略。
かの城を陥落させ、城主ロザリアを討ち取る事が主目的である。
「――以上がキルフリート城の概要になります。簡潔にまとめると、夜のうちにマグメールのランダムな場所へと『ゲート』が開き、それが朝になると消える。そのような仕組みになっていると思われます」
会場がざわつく。そのような大掛かりな魔術だったというのか、あれは。
■オーギュスト > 情報将校の発言に、師団幹部達は唸る。
城ごと転移しているわけはないと思っていたが、よもや夜毎にまったくランダムにゲートを出現させるとは。
城主の力が如何ほどの物か、想像するだに恐ろしい。
「法則は無いのか?」
「現時点までに冒険者達から集めた情報をまとめ解析をしましたが、城の出現場所にパターンは発見できませんでした」
唸り声をあげる幹部達。
彼らの考えた攻略方法はこうだ。
夕方までにキルフリート城の出現場所に軍団を伏せさせ、出現と同時に突撃。朝までに攻略を完了させる。
だが、この手は使えない。
出現場所が分からなければ、待ち伏せの仕様が無いし、出現してから軍を動かしたのでは遅すぎる。
■オーギュスト > 「では、本物の城の場所は――」
「そちらはようやく絞り込めました」
地図の一点を情報将校が示す。
かつて魔族の国の村を襲い、そこから奪った書簡。
その解析がようやく終わった成果である。
「場所はここ、魔族の国の、とある渓谷です」
情報将校が示す場所に、再び幹部達の顔が曇る。
遠すぎる。
砦を落とし、さらに遠征を一度しなければならない距離だ。
そんな悠長に準備をしていれば、砦が再び魔族に襲われ、遠征準備が中断される。
■オーギュスト > つまり、取れる手段は、だ。
かつてオーギュストがやったように、宵闇城の付近への出現を待ち、精鋭のみで少数による襲撃を行うか。
あるいはタナール砦を陥落させた勢いのまま、強行軍で渓谷を強襲するか。
どちらにしろ、成功の確率は限りなく低い。
「夜に攻めるのはダメだ。あのヴァンピーナ相手に、夜の魔族の国は都合が悪すぎる」
オーギュストが口を挟む。
かの吸血姫と、夜に、相手のホームグラウンドで戦う?
悪い冗談だ、自殺と変わらない。
■オーギュスト > 少数精鋭による襲撃案はこれでポシャだ。
となると、渓谷への遠征案になる。
しかし――
「どう考えても、補給線が届きません。
現在の我が軍の装備では、タナールから3日の距離までしか食料が持ちません」
通常装備での遠征はそれが限界。
これが、魔族の国の奥深くへと王国軍が攻め入れない理由である。
だが。
「食料は心配するな、アテがある。魔族の国での進軍経路の確保、それと撤退時の退路の確保を最優先に考えろ」
そう、缶詰。
あれがあれば、食料の問題は解決する。
■オーギュスト > 一瞬ざわつく幹部達。
だが、すぐに静まると熱心に経路の確保の算段を始める。
誰もがオーギュストを信じ、その言葉を疑おうとしない。
あの絶望的なタナールでの戦いから見事生還を果たした彼は、軍団内で伝説になりつつあった。
「となると、先遣偵察が重要になります」
「ここはやはり――」
幹部達の言にオーギュストは頷く。
かねてより準備していたドラゴンライダー。
竜騎士達の出番である。
空からの先遣偵察、および敵斥候の排除に優れた彼らは、この遠征の要になるだろう。
■オーギュスト > 「さて、実際の攻略に関してだが」
幹部達は顔を引き締める。
たとえ遠征が可能になったとしても、あそこはアンデッドがうじゃうじゃ存在するヴァンパイアの巣。
並大抵の事では攻略できない。
「本来ならば、砲撃によるアウトレンジからの城砦破壊が良いのですが」
「いくらなんでも、大砲担いで遠征はできん。そいつは無しだ」
食糧事情が解決したとはいえ、大砲の運搬はさすがに出来ない。
車輪をつけても、見知らぬ土地で運ぶのにはリスクが高すぎる。
「見た限りでは城壁らしきもんはない。朝になったら突撃して正面から突破する」
こういう所は脳筋のままである。
■オーギュスト > その後、詳細が話し合われた。
第七師団のキルフリート遠征準備は徐々に進んでいく――
ご案内:「王都マグメール 王城 軍議の間」からオーギュストさんが去りました。