2016/08/17 のログ
ラケル > ―――今日も、また眠れない。

通っていた学校はしばらくの間休校であるという、
母や姉たちの強い希望により、王城から外へ出ることも禁じられた。
日がな一日、与えられている自室へ引き篭もって本を読んだり、
姉たちの話し相手をしたり―――言ってしまえば、ひどく退屈な日々。
けれど眠れないのは、退屈が過ぎる所為、ではきっと、ない。

母の気に入りの白薔薇、長姉が最も好む鮮やかな紅薔薇。
色とりどりの花々が咲き乱れる庭園に、蒼白い月明かりが降り注ぐ。
踝まで隠れる白い寝間着、柔らかな布靴を履いただけの軽装で、
眠れぬ夜を漫ろ歩く己の両手は、自然、薄っぺらい下腹へ宛がわれる。

俯いて零す吐息が熱い、掌の下に、熱い充足を浴びせられた感覚が甦る。

―――あの日、自室で目覚めた時には、己の身体はもう元の通りだったけれど。
蕩けるような快楽の記憶は、とても夢とは思えないほど鮮明であったし、
何よりも―――

今も寝間着で隠れた白い肌のあちこちに、うっすらと残る情痕がある。
紛れもなく、この身が―――

「……あつ…い…。」

こんなことばかり考えていたら、きっと、本当におかしくなってしまう。
そう思うけれど、どうしても。忘れられる筈もなく、誰に相談出来る筈もなく。
ずきん、ずきん―――下腹が熱く疼き始める不穏な感覚に、乱れる呼吸を必死に整えようと目を瞑り。

ご案内:「王城 月夜の庭園」にトモノさんが現れました。
トモノ > 「ぅぅ~……飲み過ぎた……」

(瓶のボトルから炭酸水を飲みつつ、紅い顔で庭園に出てくる少年は。黒のベストに蝶ネクタイにスラックス。今はエプロンはしていないが、給仕の者の格好で)

「――――……なんでこう、料理人ってのは呑み会好きが多いんだろ……。」

(グビリと水で酔い覚まし。アルバイトで雇ってもらった王城の給仕係り。何か料理長に気に入られた、仕事後の飲み会に付き合わされた帰り。と言うか、抜け出してきた帰りだ。)

ラケル > ゆら、と視界の隅で揺らぐ人影に、刹那、びくりと肩を竦ませたのは生来の臆病さゆえ。
弾かれたようにそちらへ振り向けば、幽霊、と呼ぶには少しばかり―――
否、だいぶ世俗の色が濃いような、恐らく己と大差ない年頃の少年が居り。
どちらかといえば己の格好こそ幽霊に近いか、両腕で己の腹を庇うように抱き締めたまま、
声をかけるべきか、かけぬべきか。しばし、迷った後に。

「―――そこの、…え、と、…きみ。

 …大丈夫?」

顔が紅いようだ、とか、足許がどことなく危うげだった、とか。
己と同年配の者と、酩酊、という症状が結びつかない世間知らずは、
しごく真面目に気遣ったつもりだが、さて。

トモノ > 「んぇ?……」

(ぼーっとしたところに声をかけられて少しビクッとなって間抜けな声の返事になってしまう)

「ん……っと、ぁ……大丈夫だよ。ちょっとお酒入っちゃってるだけだから。」

(そういうと、愛想の良いような張り付いたような微妙な営業スマイルを浮かべてそちらを向き)

「僕はここで短い間だけど働かせてもらってる、トモノって言います。えぇっと、君は……お城の人?」

(ひとまず自己紹介から始めてみよう)

ラケル > 己から声をかけたくせに、反応が返ってくれば、また、びくりと。
身を竦ませてしまうのだから、どうにも御しがたい臆病さではある。

「……ぇ、……おさ、け……?」

飲んだのだろうか、目の前の彼が。
食事の時でさえ飲酒を許されたことの無い身は、不思議そうに瞳を瞬かせる。
ともあれ、向けられた笑顔から単純に、悪いひとでは無い、と信じ込んで。

「トモノ…くん。

 うん、ぼく……
 ら、ラケル…って、呼んで?お姉さまには、そう、呼ばれてるから」

本名を名乗っても良かったかのかもしれない。
けれど、明らかに男としか思えない、その名は嫌いだった。
自らを『ぼく』と呼称する己が、相手の目にどう映るかは知れないけれども。
いかにも気弱そうな微笑を、ふわりと添えて。

「トモノ、くんは…お酒、飲めるの。
 凄いね、…ぼくと、同い年ぐらいに見えるのに」

トモノ > 「ぅん、ラケルちゃんね……」

(相手の髪型とか、身体のラインがあんまりでない服装から。普通に女の子だと納得したようで頷く。)

「いやぁ、総料理長がさ無礼講だ~って薦めてくるもんだから断り切れなくて……。そんなに強い方じゃないからしんどいけどね。」

(ニコニコ喋っている間も、微妙に揺れているきっちり酔っ払いは。一人称が僕の少女も、まぁ。前にもそういう女の子、といってもふたなりだったけど。という出会いもあったのであんまり気にしていない。そもそもがこの世界の者じゃないので、女の子でも僕って言う人もいるのがスタンダードなんだろうくらいに思っていて)

「まぁ、お酒はともかく……君みたいな可愛い子が、こんな時間に一人で出歩くと危ないよ?怖い酔っ払いに出会うかもしれない。
エスコート……しましょうか?」

(そういって、恭しく手を差し出して、お部屋に案内しようかと問う。紳士な対応のつもりなんだけど、自分も微妙に酔っ払いなので……揺れてる)

ラケル > ―――『ちゃん』。

どうやら己のことを、女の子、だと思ってくれたらしい。
ほっとしたような、微かな罪悪感が胸を衝くような、複雑な心境になる。

「…お仕事するって、大変、なんだね…。」

働いたことなど無いけれど、彼の発言から、職場の上下関係の片鱗程度は、
ぼんやりと理解できた。
そっと眉根を寄せて、気遣わしげに彼を見遣りつつ、呟くような声で。

しんどい、と自ら言ったばかりの彼が、それでも、己の身を『女性』として
気遣ってくれるのへ、―――嬉しいような、申し訳ないような、こそばゆい思いを抱えて。
差し出された手指は明らかに揺れていたけれども、そろり、伸ばした片手を
その掌のうえへ預けて。

「……可愛い、なんてこと、ない、けど……

 ―――よろしく、お願いしま…す。」

恥ずかしげに頬を染めて、軽く頭を下げる。
触れた掌から伝わる彼の体温が、恐らくは酒精の影響だろう、やけに温かくて。
とくん―――鼓動が、大きく跳ねた。

トモノ > 「…………………ぁ……うん……でも、働くのは楽しいよ?」

(手を取ってから数秒。少し固まっていた。今まで一癖もふた癖もある人とばかり関わっていたせいか。あんまり素直に、レディーな反応を返されると。目の前の美少女が、凄い美少女に見えてきてしまうのだから。酒の魔力もほどほどに恐ろしいという者だ。)

「可愛いよ?それとも綺麗って言われる方が好みだった?
どれくらいかっていえば。普段は紳士な僕が、お酒のせいでちょっと悪い酔っ払いになっちゃいそうなくらい?」

(とった手を引き寄せて、自分の方へ引き寄せ、腰を抱き、身体を密着させようと。城の人間でも嫌悪さえ抱かれていなければ。明日の朝一番で給料もらってさっさとトンズラしちゃえばいいやくらいに思って。
給料のそこそこ良いバイト先が一つ減るのは惜しいけど。そこは酔っ払いな刹那主義的思考回路。)

ラケル > 触れた手指に何故か、緊張めいた気配が伝わる。
一瞬、男だと気づかれたのでは、と怯えるも、それは取り越し苦労だったようで。

「……楽しい、の?

 ――――――ぇ、……っきゃ、…っ…!」

強かに酔っている相手、とは言え、可愛い、綺麗、と言われればやはり素直に嬉しい。
嬉しいが、しかし―――抱き寄せられる、までは、想定していなかった。
ろくに剣の修練もしていない己の身体は容易く彼の懐へ収まり、密着する肌に
とくとくと乱れ打つ鼓動を伝えることになる。
鼻腔をつく酒精の香り、耳朶を擽るように響く声音。

―――とくん、とくん、とくん……ずき、ん。

「……と、トモノ…く、…あの、…の、っ…」

どうしよう。
頭が、くらくらしてきた。
彼は己を女の子だと思い込んでいて、
もしかすると揶揄っているだけかもしれないのに。
レディとして、だって、押し退けるのがきっと正しいのに。
ぎこちなく身を捩りはしたけれど、抱擁を振り解くだけの力が入らない。
そうこうするうちに、肌が熱く火照り始めて―――身体の芯が蕩け出しそうな気配すら。
このままでは、本当に―――また、『女の子』になってしまいそうだ。

トモノ > 「……ねぇ、やっぱりちょっと飲み過ぎたみたいなんだよね。」

(話の流れを斬るように、近い距離で急に話し出す。相手が振りほどかないのを確認して、囁く様に呟けば。相手に見えない位置では薄く笑み)

「……だから、『どこか休める場所に案内してくれるかな?』
『例えば君のお部屋とか?』
『抱きしめられて逃げないってことは』
『大人しそうな顔して、男の子が大好きだったりする』
『割と遊んでる子なんでしょ?』」

(話術とでもいうべきか。微妙な強弱を織り交ぜつつ。長時間続けていれば人ひとりを洗脳でもしてしまいそうな。暗示にも似た技術。
相手の動揺等の心の揺れに合わせてすり込むのがポイントだ。
殆ど言いがかりも甚だしい発言だが。相手にはどう聞こえるだろうか)

ラケル > どくん、どくん。

今や鼓動は激しく乱れ打ち、呼吸は浅く、忙しなく、明らかな熱を孕んで。

鼻先を埋めた彼の肩口からは、己には早すぎる、濃厚な酒精の香り。
耳朶を舐るように、鼓膜を直接揺さぶるように。
重ねられる囁き声がひどく甘く―――
一度は彼の胸板を押し返そうと、互いの胸の間へ忍ばせた両手が、
彼のベストの胸元を掴み締めて固まる。

「そ、……ぇ、え、ちが、っ……、

 ちが、……ぼく、そんな、―――――」

そもそもが男同士なのだから、彼が飲み過ぎた、というのなら、
部屋へ招き入れて、休ませてあげるぐらい構わない筈。
けれど、―――駄目だ、違う、今は、駄目。
俯いた頭を弱々しく左右に振って、彼の言葉を否定、しようとするも。
身体は勝手に彼を『異性』として意識し、この抱擁の先に何かを想像して、
―――あるいは『期待して』、変貌を遂げてゆく。
彼の腕の中で、それは外見上、まだささやかな変化だけれど。
四肢からはくたりと力が抜けて、抗う力も無く。
心もち、柔らかさを湛えた肢体を彼に預けて―――きっと今なら問われれば、
自室の場所さえ、震える吐息交じりに教えてしまうだろう。

トモノ > 「そっかそっか……じゃ、とりあえず。」

(相手の否定の様子も、なんだかすがるような距離感に。
少し強引でも大丈夫そうだと。)

「……君の部屋に案内してくれる?
こっちかな?」

(そういって、腰を抱いた体勢のまま。勝手に歩き出して)

ラケル > 抱き込まれた身体が、逃れる素振りを示すことも、
大声を上げて誰かに助けを求めることも、ない。
攫われて、月夜の庭園から人影は消える。
あとにはただ、冴え冴えと蒼い月明かりが、花々を艶やかに濡らすばかり―――。

ご案内:「王城 月夜の庭園」からラケルさんが去りました。
トモノ > 【部屋移動】
ご案内:「王城 月夜の庭園」からトモノさんが去りました。