2016/04/12 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城」に暁燕さんが現れました。
■暁燕 > 「ふゥーン…王城だけはご立派ネ」
王城の綺麗な廊下を狐が歩く
先日ナイトクラブで知り合った貴族の口利きで、王城に遊びに来ることが出来た
当然"手土産"も用意してのことである
手っ取り早く要件を終え、城の中を見物してまわっていた
■暁燕 > 王城の中を歩いてまず最初に気にかかったのはその腐敗臭である
嫌な匂いが漂っていた…とか、そういうことではない
顔を見る貴族はどれもが腐ったような目をしている
パイプを繋いだ貴族から、地下にそういった娯楽のためのエリアがあるということも聞いていた
「(よくもまぁ、こんな腐りきった国が今まで帝国と戦えていたものネ)」
■暁燕 > 象徴たる王城の中がこの有様
持っている兵力のおかげで今まで戦い続けてこれたのだろう
こんな国だと知っていれば、あるいは今頃はあっさりと帝国の支配下だったのかもしれない
「(…ま、お薬を撒き散らすには良い土壌ヨ)」
望むがままに悦楽を貪る貴族たちは実に良い客だ
長い時間をかけずとも、ズブズブと薬の闇に引き込んでゆけるだろう
■暁燕 > 「(……ある程度浸透したラ、綺麗なお姫サマなんかを薬漬けにして愉しむのも良いかもしれないネ)」
通り過ぎた、綺羅びやかな衣装の美少女を横目で追いつつ、そんなことを思う
しかし狐には一つ疑念があった
「(…城の中に、魔族の気配がするネ。国の中枢に入り込んでいるのかしラ)」
腐っても妖仙
そういった存在は鋭敏に知覚する
故郷であるシェンヤンにおいては加護の強さもあり魔族をほとんど見かけなかった故に、警戒する必要もなかったのだが
「(よくない感じがするヨ。今日のトコロはそんなに長居しないほうが身のためかしらネ)」
決して格が高い妖仙ではない暁燕は戦闘能力に関しては普通の人間と大差がない
話の通じる相手ならば交渉の余地もあろうが、
相手が魔族となると話の通じない場合も多いだろう
■暁燕 > 薄朱色の尻尾を何かを警戒するように揺らしながら、やがて多くの扉が並ぶ廊下に到着する
おそらく貴族達の私室か、ゲストルームかだろう
試しに一つのドアに触れてみれば案の定、鍵がかかっている
ノックをしても返答はない
「(これだけ部屋があれば、人知れず悪いコトもし放題かしらネ…)」
■暁燕 > カモに出来る貴族
それもできるだけ上等な、世間知らず
遊びを愉しむならばできれば容姿は端麗、経験は少ないと良い
しかしすれ違う貴族はどれもこれも私腹ととも肥え太ったような貴族ばかり
さすがの狐も辟易してくるというものである
■暁燕 > 「(とはいえ、あまり長くうろついても流石に怪しまれるかしラ)」
普段見かけない顔、というだけでなくこの容姿
勘の鋭い衛士などには妙な疑惑を持たれてしまう可能性もある
「(でも、ネ…)」
収穫なしで帰るのは妙に憚られる
折角王城に侵入するために入念な支度を整えたのだ
■暁燕 > ふと一つの部屋の前で足が止まった
ぴくん、と狐耳が跳ねる
扉の向こう、おそらくは私室か客室
そこから聞こえてくる声と音……
「(……あァ、悪徳貴族が逆らえない騎士か誰かを…ってところネ)」
クスっと笑いが漏れる
こんなことは恐らく日常茶飯事のように行われているのだろう
普通の人間にはとても聞き取れないのだろうが、
暁燕には中で起こっている凌辱がよく理解る
こういう相手には、自分のクスリもよく売れるのだろう
■暁燕 > この国の騎士達はこうやって腐った上役に汚されながら、それでも尚国を守るのだろう
なんと滑稽なことか
思わず小さく笑い声すら上げてしまう
「国自体が莫迦の集まりといったところネ」
この荘厳なる城の中だけでも、一体どれだけの悲劇と喜劇が生まれていることか
階級制度の厳しいらしいマグメール王国
結局得をして肥え太るのは家柄に恵まれた者
正義や義を信とする者はそのような豚に仕え、命をかけて国を守る
「(こんな国と長らく戦を交えているなんテ、帝国もなぜこんな腐った領土が欲しイのかしらネ……)」
■暁燕 > 狐がそんな感想を胸中に抱き歩いていると、目の前に一人の貴族が歩いてくる
「どーモ。…相変わらず羽振りが良さそうですネ」
目を細め、その貴族と相対する
富裕層のナイトクラブで錬金術士の少女を買い、たっぷりと楽しんだであろう、小太りの中年貴族である
「あの子、どうなさいましタ?あァ…フフ、壊してしまいましたのネ。
いえいえ、ワタシはあの店のスタッフでもなんでもないのヨ」
気になるかね、と貴族が問えば自分は店とは無関係であることを伝える
少女の行く末など気にもかけていない
危機感の薄い、浅はかで莫迦な子がそうやって闇に堕ちてゆくのは珍しくもない
「(まァ、ワタシが積極的に壊したんですケド)」
表情にこそ出さないものの、胸中は至福である
あのような可憐な少女が薬に侵され、醜い貴族に玩具にされる様
想像するだけで身震いしてしまうというものだった
■暁燕 > 「そうそう、感謝していますヨ。
こうやって、王城を見学することもできましたしネ」
ぐるりと見回すオーバーアクション、
それはよかったと整った髭を撫でながら貴族は笑う
自分が蜘蛛の巣に囚われていることも知らずに
「(こんな汚らしい糞豚とは話すのも正直イヤだけどネ)」
真っ黒な内心を全く感じさせない笑顔で、ニコニコと言葉を続ける
「あの子があんなに乱れてしまったお薬…。興味、おアリでしょウ?
宜しければ。専属のルートで流して差し上げますヨ。
……仲の良い、秘密を守れるお友達にも…教えてあげてくださいまシ」
ほう、と貴族はまんざらではない声をあげる
こうしてまた一人、毒蛾の鱗粉に侵されてゆく
■暁燕 > 数日後、王城の中で正体不明の薬物中毒に陥った
上流貴族数名が廃人状態で拘束されることとなった
ご案内:「王都マグメール 王城」から暁燕さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」に暁燕さんが現れました。
■暁燕 > さてさて、今宵も狐は城にやってきている
とはいえ見学ではなく、ビジネスだ
『馬鹿な貴族が薬に手を出したらしい』
だの
『まったくもって怖い話ですな』
だの
ワイングラスを片手に危機感のない言葉を交わす貴族を尻目に、
薄朱の狐がソファで優雅にグラスを傾ける
「(お前達もそのうちそうなるのヨ)」
■暁燕 > 繋がった貴族が予想外に早く壊れてしまった
どうせ女に浸かった薬を自分も試してみたのだろうと小さく鼻を鳴らす
折角の城への伝手がいなくなってしまっては元も子もないと、
幸いにその貴族に仕えていた別の中流階級の貴族を通じて、地下へと入り込むことに成功した
「(昨日の今日で尻尾を出すと、流石に怪しまれるものネ)」
今日は健全なビジネスだ
港町で誑かした娼婦を適当に仕込んで、此処へ持ち込んだ
よりどりみどりであるはずの貴族達はそれほど興味も示さず、女達はステージの上で淫らに舞っている
見世物としての価値は一応あったようだ
『ところで例の事件といい、色々と続きますな』
『あぁ…しかも当の騎士団長と副団長は不問となったのだとか…』
ぴくん、と耳が揺れる
遊び場の情報は如何なものでも入手しておいて損はない
ご案内:「王都マグメール 王城」にオーギュストさんが現れました。
■暁燕 > 「何か、大きな事件でもあったのかしラ?」
しゃなりとした動きでグラス片手に貴族の男達に近寄る
最初から無遠慮に向けられる厭らしい目つきには反吐が出るが、にこやかな表情を保って
『この地下で貴族たちが死ぬ事件がありましてな…』
『このパーティーも久しぶりに開かれたものなのです』
貴族たちは肩をすくめながらそう話す
「あらあラ、コワイですわネ」
同じように肩を竦めた狐は内心に確信する
城には自浄作用も少なからずあるようだ
つまり、自分が此処で遊ぶ上では…それらを見定めて気を払わねばならない
■オーギュスト > 王城地下ホール。
噂の当人はといえば、このホールの一角に変装してやって来ていた。
ご自慢の大剣は受付で預け、まるで軍の高官のように髪をぴっちり整え目の傷を化粧で消し、師団の女を連れてさも遊びに来たかのように振舞う……
のに失敗して、やたら不機嫌そうに酒を煽っている。
この男、酒は騒いで飲むか一人静かに飲むのが好きであり、このような陰湿な場で優雅に飲むのは大の苦手なのである。
「将軍、将軍!
もうちょっとにこやかに! バレますよ!」
付き添いの女に囁かれてなんとか笑顔を作るものの、似合わない事この上ないのでやめた。
結局付き合いで連れて来られた軍高官という事にしておくらしい。
■暁燕 > それよりも、とこちらに話題が向きそうになると、ステージの上でのイベントがはじまる
貴族たちがそちらに視線を奪われた隙にさっさと退散である
人目を引く外見なのはやむなし、
そして肉欲に溺れるのは吝かではないものの、汚い相手は御免なのであった
ソファに戻ろうというところでホールの一角に少し違う雰囲気を感じる
「(………貴族…というよりも、軍の偉いサンか何かかしらネ)」
じ…と視線を送る
格好はともかく、どうしてもこの場にそぐわないように見えた
■オーギュスト > まったく面倒な事この上ないが、これも任務だ。
流石に今回はサロメを使うわけにもいかない。アレにこの地下へ来させるのは少しばかり躊躇う。
「――あいつか」
暁燕の傍、何人かたむろしている美形の男――おそらく貴族か、下手をすれば王族であろうかという華美な集団。
それに狙いを定めると、オーギュストはゆっくり立ち上がる。
暁燕の隣まで来ると、片目でちらりとその集団を伺いながら、ゆっくりとウェイターに酒を頼む。
「……見慣れない顔だな」
適当に暁燕に言っておく。一応ナンパ狙いとでも思わせた方が、あの連中も油断するだろう。
■暁燕 > 「えぇ、新顔ですもノ」
ふとすれば王国の一般常識からはミレー族だと勘違いしてしまいそうになものだが、
その立ち振舞や装いからは異国のものとはいえ気品を感じるだろう
その、異国のモノという感覚がまれ人か、帝国か、どちらに向くかは人次第であろう
「(…ふゥん。こちらに声をかけては来たケド…特に用があるわけじゃないみたいネ。
全然、こちらに気配が向いていないもノ)」
ナンパという雰囲気をまるで感じなかったのはあるが、ではなぜ隣へという疑問が浮かぶ
「(何かのカモフラージュ…かしら、ネ)」
既に狐はオーギュストを訝しんでいた
場にそぐわぬ空気もそうだが、この行動も、自然とは言いがたい
……そんなことにまるで周囲の貴族たちは気づく素振りもないのが、滑稽なものだ
「お兄サンは、此処の常連なのかしラ」
目的はともかくとして、話を進める
ここからの相手の動き次第でもこの男の正体が掴めるかもしれない
何かおかしい、という漠然とした感情
しかしこれが、戦闘能力が皆無ともいえる暁燕が無事に裏で生きていけた理由
臆病なまでの警戒心である
■オーギュスト > 「前に2、3度な」
嘘ではない。何せ1,2回は潜入しているし、前回は堂々と乗り込んで皆殺しにしたのだ。
どうやら異国の商人か何からしいが、特に気にする事も無い。
魔族の独特の気配みたいなものも無ければ、こちらへの敵意も見えない。ならば気にする必要はない。
むしろ気にする必要があるのは……
(そろそろか……)
師団の女達がそれぞれ集団の退路を塞ぐように散る。
逃げられては元も子も無い。
和やかに談笑する青年貴族達に意識を向け観察しながら、オーギュストは暁燕との他愛ない会話を続ける。
「見たところ異国人か。――北からか?」
■暁燕 > 「そうかもしれないし、違うかもしれないヨ」
独特のイントネーションも手伝い、異国の者であることはほとんど黒であるが、
そこは煙にまくようにそう答えた
軍関係、とあらば北に良い印象を持つものは少ないことが明白であるからだ
「それより……何か始めるつもりかしラ」
グラスを傾けながら、ホールの入り口や非常口へ目をやる
僅かな人の動きすら全て察知しているかのような口ぶりで言葉を向けて
「ワタシに危害が及ぶようなことだけは避けてネ」
淡々とそう言うのだった
他は何がどうなろうとどうでも良いという氷の意思を示す
■オーギュスト > 「――へぇ」
意外と勘が良いようだ。
何かの商人なのか貴族なのかは知らないが、オーギュストのブラフを見抜くとは。
まぁ師団の連中に言わせれば、芝居が下手すぎるのだろうが。
「あぁ――すまんが、火を貸してくれるか?」
煙草を取り出しながら言う。
準備は整った。
■暁燕 > 「ホステスの真似事なんて柄じゃないんだけどネ」
自分に危害を加えないのなら、何でも好きにすればいい
懐から火石式の着火道具を取り出し、オーギュストの煙草の先に火種を灯す
狐がそばにいたのはそこまで
"煙は苦手ヨ"と一言残し、隅へと歩き去ってゆく
安全圏の確保である
周りの状況、そしてこの男の言葉
少なくとも穏便に済むようなコトをやろうとしていないのは理解っている
「(あの顔、覚えておかないとネ…)」
■オーギュスト > ありがたい事に自分から避難してくれた。
やりやすくて結構な事だ。
これでもう少し肉付きが良ければ夜の相手にでも誘うとこだが。
「――はじめっか」
ぴんっと煙草を――目印の「火種」を灰皿の上に落とす。
その瞬間、四方から貴族たちの一団へ、参加者に化けた第七師団の兵達が襲い掛かり、取り押さえる。
オーギュストは真っ先に一番身形の良い貴族の男へ襲いかかり――
「逃がしゃしねぇよ」
慌てて何かの呪文を唱えようとした男の胸に、素早くナイフを滑り込ませる。
絶叫とともに、周囲に悲鳴が木霊した。
会場は騒然となる。
■暁燕 > 「………」
騒然となるその場で狐はただただ、その様子を眺める
目の前で起こっていること自体にはなんの興味もない
「(今日は新しい玩具、確保して置きたかったけどネ)」
少しばかりがっかりしたというような思いだけが、去来する
ちらほらうまいこと騙せそうな貴族たちもいただけに、
…まぁ、そういう貴族だからこそ今こうやってこういう目にあっているのだろうが
この統率っぷりや、男の雰囲気から彼らが
少なくとも盗賊や悪漢の部類でないのは確定的である
で、あるならば恐らく彼らはこの王国の、数少ない自浄作用だ
「(顔を見れたのは一つの収穫、ということにしておこうかしら、ネ)」
■オーギュスト > 慌てて飛び込んでくる衛兵に向かい、オーギュストは宣言する。
「第七師団長、オーギュスト・ゴダンだ。王城に潜入した魔族が居たという報告を受け、これを討伐した。
ほれ、そいつだ」
見ればオーギュストにより絶命させられた男の変身が解け、魔族の死体がひとつ転がっている。
残りはこの魔族に騙された貴族たちであろう。後で師団兵舎でこってり絞る。
第九師団からの任務はこれで完了。
しかし――
(――臭うな)
先ほどの少女。
そちらを見れば、まるで値踏みをするかのような視線。
流石に商人だろうが貴族だろうが、この光景を見て眉一つ動かさないというの生半可な胆力ではない。
(――ま、あとでディナームの奴にでも報告しとくか)
魔族でないならばオーギュストの管轄ではない。
面倒な事はしない主義なのだ。
■暁燕 > 「(へェ……そういうコト)」
やはりというかなんというか、この城には魔族すら入り込んでいるのだ
そして、目の前の男の正体も掴めた
「(第七師団…オーギュスト・ゴダン…ネ)」
手際の良さ、初動の早さ、何をとっても今のこの征伐劇は完璧であったと言える
ズブズブに腐りきっていたと思われたこの王国にはまだああいう連中がいるのだ、と
素直に感心してしまうほどであった
兵力だけで戦争を続けていたわけではなさそうだと考えを改める
こちらに視線を向けば、にっこりとした笑顔を向けてひらひらと手を振る
「(でも、それだけに逆に利用してやるのも面白そうネ…?)」
こんな連中がこぞって皇麻に侵され堕落したら…心が弾むようであった
■オーギュスト > さて、どんな女狐なのやら。
後日後悔する事になるかもしれないが、オーギュストはひとまず目の前の少女の事を先送りにした。
魔族の排除、腐敗貴族どもへの見せしめ、両目的は達成。
オーギュストは清々しながら会場を後にした。
ご案内:「王都マグメール 王城」からオーギュストさんが去りました。
■暁燕 > 後始末をする第七師団の人間をよそに、狐はカウンターに戻る
「何か美味しい地酒ないノ?」
平然と注文する狐にマスターは面食らう
まわりの貴族達も
『今日はお開きですな…』
などと、口々に解散ムードだ
「(この場にいる貴族達、今しがた殺られたヤツが魔族って知ってたクチね)」
その後の貴族たちの様子を見れば一目瞭然である
誰一人として"仲間内の貴族の正体が魔族であった"ということに驚愕していない
■暁燕 > マスターから出された酒を軽く煽る
「…ねェ、おじさんタチ?
折角のパーティーがお流れになっちゃったわネ。
……奥のお部屋でワタシと遊ブ?」
ようやく静かになってきたホールで、その声はよく通った
『何を言っているんだ、あの女…こんな時に』
『しかし…イヤ、うむ。予定が崩れて時間は余ってしまったしな…』
『よく見ればなかなか、誰のゲストかな?』
未だホールに残っていた数人の貴族達がどよめく
それは実に調度良かったのだ
おそらく、今この場であったことは王城の中では大きな騒動に分類されるはずだ
ならば…
「(ここでワタシがちょっとくらい何かシても…全部魔族のせいにできそうヨ、ネ)」
■暁燕 > 「退屈になっちゃったでしょウ?」
ホールには3人の貴族、そして後始末をしていた2人の騎士、マスター
まばらといえる人影しかない
他の者達は保身のため、追求回避のため、即座に地下を離れた
つまり今この場に残っている貴族は愚鈍である
ようするに、獲物だ
…巻き込まれる騎士とマスターは不幸としか言えないが、どうでもいい
「折角だから、愉しませてあげようと思うの。
パーティーの続きで見れる筈だったユメ…とか、ネ」
グラスを置いて、ゆったりとした歩みで貴族たちに近寄っていく
第七師団の騎士二人はそれに気付いたように剣を抜いた
さすが、と僅かに狐が目を細めた時には、ホール全体に虹色の霧が出現する
……霧はほんの一瞬で晴れる
視界が開けたホールには、倒れた6人の人間
全員が全員、恍惚とも言えるような表情を浮かべ、虚空を眺めていた
■暁燕 > 「…さテ」
期待通りの効果にぱたぱたと楽しげに尻尾を振る狐
クスっと笑みを零した後は早速、倒れて意味不明な笑いを浮かべている若い貴族の側へとしゃがみこむ
胸元から取り出したのは、小さなメッセージカード
可愛らしい狐のマークがかかれたそれには、とあるナイトクラブの場所が書かれている
…あれ以来、贔屓にさせてもらっている店であった
そのカードを貴族の胸元へ忍ばせてゆく
目が覚めた時にロクな記憶はないだろう
ただただ今見ている『ユメ』への二度目の渇望、それを満たすための場所を記したカードを仕込む
それだけで良い
ご案内:「王都マグメール 王城」にリリさんが現れました。
■リリ > あまり無い場所からのパンの注文で少しだけドキドキと緊張している私。
王城の酒場へ両手にパンの入った紙袋を持ちながら歩き向かい、
その入り口と思われる扉の前に立ちこくりと息をのんで恐る恐る扉を(キィィ)という音を立ててゆっくりあける。
意を決して一度深呼吸、眼を閉じて酒場へと一歩足を踏み入れて、眼をぱっと開き笑顔で。
「こ、こんばんわっ、ご注文のパンを届けに参りましたっ・・・、マスターさんは・・・あれ?」
なんだか様子が変な店内、眼はパッチリとあいてぽかんとした様子。
入り口から少し遠く、倒れている数人の中に一人、貴族の下でしゃがみ何かをしている女性が眼にとまる。
・・・もしかして、何かの事件なのだろうか?
パンを地面に置き、ぱたぱたと急ぎ足でしゃがんでいる彼女の元へ駆け寄り。
「あ、あの・・・!大丈夫ですか?」
必死な様子で声をかける、心底心配している様子で声は大きく店内に響き渡った。
■暁燕 > 「……あラ」
まさかの来訪者
事が片付いたと見てこの場への立ち入りを制限していなかったのだろう
……なんとも、運が悪い
大きな声を出すお嬢さんのクチを素早くその手が塞ぐ
そのまま少女の後ろに回るようにして、耳元に口を近づける
「大声なんか出しちゃ駄目ヨ♡
…みぃんな、気持よくおねんねしているだけだから…ネ…」