2016/03/12 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城」にオーギュストさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 王城」からオーギュストさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城 査問会」にオーギュストさんが現れました。
オーギュスト > 査問会場はざわついていた。
被告の席につくのは、第七師団長オーギュスト・ゴダン。不機嫌そうなこの男は、それでもふてぶてしく座りながらあたりを見回している。
自慢の大剣はさすがに取り上げられているが、それでも軍装に身を包み拘束もされていないあたり、貴族たちといえども遠慮しているのだろう。

「――以上、この証言に間違いは無いと?」
「あぁ」

大判事にぶっきらぼうに告げる。

『地下室で魔族に操られていた貴族、王族が居て、王城へのテロを企図していたので全て殺した』

オーギュストの証言をまとめればそんな所である。
もちろん、信じている者など一人も居ない。

オーギュスト > 殺した連中の中に、かなり力のある王族が居たのがまずかった。
その母親が半狂乱になり、オーギュストを告発したのだ。
これでは査問会を開くしかなく、法務貴族達も普段のお返しとばかりにオーギュストを召喚した。

が、問題はそれだけではない。
普段から貴族達にあしざまに言われている騎士達も、この査問会の見学に訪れていた。
オーギュストの事はどうでもいいが、貴族のわがままで騎士を処分する前例を作られるのは困る。
普段煮え湯を飲まされている騎士達は、査問の行方を剣呑な瞳で見守っている。

「――では、検察側、意見陳述を」

うんざりとした顔で大判事が告げる。
胃が痛いのか、薬を飲んでいた。憐れな事だ。

オーギュスト > 検察が長々とオーギュストの罪を告発する。
王城に許可無く兵を連れて乗り込んだ事、貴族や王族を手にかけた事。それに普段の素行から言動、女関係に至るまで徹底的にオーギュストの行動を非難していく。

「――将軍、何か反論はあるかね?」
「そうだな、一つだけ」

オーギュストはぐるりと検事に向かい顔を向ける。
一瞬たじろんだその貴族に向け、オーギュストは歯を見せながら笑ってみせる。

「『憐れな少女を弄んで捨てた』って言ってるがな、俺はんな事ぁしてねぇよ。何せ、関係した連中は全部『女』にしてやってるからな」

一瞬の沈黙の後、騎士達から爆笑が起こった。
笑いの渦に立たされた検事は、顔を真っ赤にしてオーギュストを非難する。
大判事が呆れた顔で木槌を叩き、静粛にと呼びかける。

ご案内:「王都マグメール 王城 査問会」にリーゼロッテさんが現れました。
リーゼロッテ > 『いいですか?リーゼ、変な事は言わない様に。組合長のからの命での付き添いなのですから』
「わ、わかってますよっ。参謀さんこそ大丈夫なんですか?」

そんなやり取りが査問会へと踏み入る前にあったらしい。
木槌の仕切り直しの響きの後、査問会の扉が開かれた。
30過ぎの怜悧な雰囲気をまとった男と、その傍らには少女が一人。
更にその後には同じエンブレムを身につけた組合員が数名待機しており、二人を後から見送る。
チェーンブレイカーのエンブレムが入ったマントを揺らしながら男がカツカツと会場へと踏み入れば、その後を大人しく少女が続いて入っていく。

『取り込み中失礼致します。将軍からのご依頼の結果をご報告に上がりました。今件に関わることなので急ぎお持ちした次第です』

しれっと男は頼まれてもいないことを、さも当たり前のごとく査問会の面々へと宣告すると、将軍へと近づいていく。
彼の前のテーブルへ、マニラ封筒を差し出せば、そこに印字されたタイトルが目に入るだろう。
”腐敗した内部協力者の調査結果”というタイトルが書かれており、中には幾つもの調査結果が記された書類が詰まっている。
それは将軍が告げたとおり、地下に魔族に操られていた貴族、王族がおり、王城へのテロを企図していたという言葉を裏付けるようなものだ。
組合に属する関係上、こういうところに顔を出すこともあるかもしれないと、空気を感じさせるためにと付き添いに送り出された少女は緊張した硬い表情で、将軍の様子を見やっている。

オーギュスト > 「――ん」

そんな物を頼んだ覚えも無いが、さて、第九師団あたりの手回しか、それとも恩を売りつけたい何者かか。
罠の可能性もあるが、その時はディナームの部下あたりが止めているだろう。

封筒を開けて中を見れば、出てくるわ出てくるわ。物資の横流しから王宮の内部情報の漏洩、人身売買の記録まである。
まぁ、やっているとは思ったが、ここまであからさまなのを見ると、逆に脳みそがあるのか心配である。

「ご苦労だったな、そっちの席で待機してろ」

空の弁護席を指しながら言う。オーギュストの弁護をしようという奇特な人間は居ない。当たり前の事である。

ともかく、こちらの有利な情報であることは間違いないようだ。
大判事に向かい提出する。

「ほら、証言の裏づけだ。何なら調査してもいいんだぜ?」

出来るはずもない。これが全部表ざたになったら、何人の貴族の首が飛ぶ事か。

「これで引き分けってとこだ。あいつらの首とこの情報全部、悪い取引じゃねぇだろう?」

書類を置きながら、大判事の耳にこっそりと聞かせる。

リーゼロッテ > 調査書類からはまさに裏付けとなる情報が溢れんばかりに出てくる。
それこそ、ここまで内部が腐り果てていては誰が味方で誰が敵なのやらと思えそうなほどに。
それだけの事を調べだしたのも、知り得ていたのも調書の作成者の名前を見れば分かるだろう。
将軍に山脈の麓の土地を交渉しに来た、あの男の名前である。

『ありがとうございます、では…』

空の弁護士席へと促されるまま男は腰を下ろした。
その隣へと少女も腰を下ろすわけだが、将軍と元軍師と年端の行かぬ娘が並ぶと、なんとも珍妙にみえるかもしれない。
大判事が書類を目にすれば、それこそ青ざめかねない情報の数々が詰まっている。
貴族の名前、彼らが使用した偽名、その偽名で作られた証書、交通の記録などなど。
物証も集めようとすれば、あっという間に善悪の位置が入れ替わりかねない。

(「凄く…ピリピリしてて怖いな…うぅ、こんなところにいつか呼び出されたら、何も言えなくなっちゃう」)

軍事請負としての仕事柄、関わる可能性のある場所とはいえ、緊張しきった空気の中で少女は居心地悪そうに縮こまる。
そして大判事と将軍の様子を見やりなが、その答えを待つようだ。

オーギュスト > 溜息を吐きながら書類を受け取る大判事。
そして、悔しそうな顔をする検事。
だが、大判事もこれを表沙汰にしてまでオーギュストを処断する気もないようだ。

最近、帝国の動向がまた活発になってきた。
第七師団は対魔族担当師団だが、その活動には魔族と帝国が手を結ばないようにする事も含まれている。ここで解体するわけにもいかないだろう。
要はやりすぎなオーギュストにお灸を据える為に開かれた査問会なのだが、こんなものが出てきてはそれどころではない。

『証言はこれで十分と認める。情報が機密に属する物の為、以後の検証は枢密院にて行う。
将軍にはおって沙汰を下す。本日は閉会!』

大判事が木槌を打ち、閉会を命じる。
貴族達は悔しそうに、騎士達は満足そうにしながら立ち上がる。

「――よう、面倒が無くて済んだぜ」

弁護席の二人に、軽く声をかける

リーゼロッテ > 書類を受け取る様子に参謀の口角が僅かに上がっていく。
これはもう、この反応だけで今後の答えが目に見えるものだ。
取り繕った閉会の言葉に、そう言うしか無いだろうと参謀は思うところなのだが…少女は良かったと心の底から安堵してホッと息がこぼれていく。

『いえ、組合長から貴方が万に一つでも舞台から降りられるのは困ると命がございましたので……』

足場をくれた彼が曲がり間違っても消えられては困る。
そして、自分達の諜報力についても彼に知らしめるには絶好の場でもあった。
そこまでは語らず、かわりに …それとと、話を切り出していく。

『貴方の大切な副長殿に泣かれては困るとも聞いております』

本気なのか冗談なのか、その言葉と共に参謀は笑みを浮かべる。
少女の方は ”副長?”ときょとんとしたまま首を傾げて参謀を見やる。
一言二言、彼女についてを参謀が答えると、何やら思い出したようで。

「組合長さんが言ってた美人さんのこと?」

もう少し言いようはないのかと参謀は呆れたように顔をしかめたが、そうですと肯定していた。

オーギュスト > 「あいつか――ディナームの所にやったのは正解だったな」

あの面倒くさがりの竜の所ならば、色々と動きやすいだろう。
こちらも協力者が居てくれるのは助かる。何せ、オーギュストは裏から手を回すとか諜報戦の類が苦手だ。

「サロメか? あいつが泣くようなタマか――今度の一件で、ただの氷から結晶とでも言うべき進化を遂げてるしな」

多少、自慢するような口調だったか。
もっとも、今の彼は副官の実力を疑っていない。ネックだったメンタルの問題も解決したし、一度師団を任せてみるのも良い時期にきたかもしれぬ。

「ああ、とびっきりの――へぇ」

そこでリーゼロッテに気付く。
こういう場所には不似合いそうな、純粋そうな少女

「ま、お嬢ちゃんほどじゃぁねぇかな」

からかうように言う

リーゼロッテ > 『えぇ、その節は私からもお礼をお伝えしたく伺いました。より合う場所を提供いただき、ありがとうございます』

表では派手なことは少ない分、諜報や偵察、兵站はお手の物といったところ。
ちょっとした嫁自慢の様にも聞こえる言葉に、参謀は少し目を丸くするものの、直ぐに薄っすらと笑う。

『組合長の弟君からも、式には呼んでくれと伝言を頼ました』

冗談のように言葉を重ねていく。
場にそぐわぬ少女の方は、そんな美人さんの結婚式と浮かべて、純白のウェディング姿を脳内へと描いていけば、目を輝かせて参謀を見上げる。

「一度あってみたいですねぇ」

しみじみとつぶやくと、こちらへと向けられた視線にきょとんとしていたが、からかう言葉を真に受けて少しだけ頬を赤らめながら否定するように両手をパタパタと振っていく。

「い、いえ…サロメさんのほうがきっと美人さんですから…!」
『――リーゼ、冗談とお世辞ですよ』

小さくため息を吐いた後、参謀が呆れて突っ込みを入れる。
それを聞けば一層恥ずかしくなったのか、真っ赤になりながら少女は俯いていく。

オーギュスト > 「ありゃぁ、家族のようなもんだ。そういんじゃねぇよ――今はな」

そう、今は。
彼の望みは、欲しい物を全て手に入れる事。その欲しい物の中に入っている以上は……

「――ま、借りが出来たな。何かあれば遠慮なく言ってこい」

いずれにしろ、彼は早速役に立ってくれた。
この調子ならば、支援をするのもやぶさかではない。

ただし……

「――それと、伝言だ。
最近、帝国の動きがきな臭い。狙いはお前さんのねぐらだから、しっかり守れ、ってな」

そう、帝国。
彼らの目標は、九頭竜山脈。
ディナームが王都に出張ってきてからというもの、九頭竜山の防衛には不安があった。
それもあって彼らを推挙したのだ。諜報戦、防衛戦で存分に役に立ってもらう。

リーゼロッテ > 『そうでしたか…ではそのようにお伝えしておきます』

今はと、何か含みがあるものの垣根を超える時が来るまではという前置きだろうかと、参謀は思うことに。
続く言葉には、ありがとうございます と御礼の言葉と共に、組合長へと伝える旨を答える。

『帝国ですか…怪しい馬車の利用客がいましたが、やはり山に狙っていましたか…。噂通りだとしても、塒を荒らされるのはあまりいい気はしませんね』

山に埋まるという希少な魔術鉱石の存在。
噂程度に聞いていたが、こちらでも噂程度に聞いた情報と彼の言葉に確信へと変わっていく。
早急に手を打たねばと思案顔で頷いていく。

「あ、あの…! 麓のこと、ありがとうございました! 皆を助ける事ができて本当に…良かったです」

不意にそんなお礼を彼へと告げていく。
それから勢いよく頭を下げる少女、顔を上げれば満面の笑みで御礼の言葉を重ねる。

オーギュスト > 「――気にすんな、俺にも得があってやった事だ」

現に、こうしてつまらない査問会を早々に切り上げる事が出来た。
これだけでも、彼らの仲介をした労に見合うものはあった、という事だ。

「俺たちゃ人間相手は苦手だ。第九の連中とも協力してあたってくれや」

そう言うと、第七師団の兵を引き連れ査問会場を後にする。
何事も無く終わって、何よりだ。

「じゃあな。何かありゃ、遠慮なく第七師団を尋ねてこい」

リーゼロッテ > 利害の一致、それが将軍の答えではあったものの、困り果てていた自分達の居場所になったことは間違いない。

『えぇ、では警護に当たらせていただきます』

頷き、兵とともに立ち去っていく彼を見送ると、参謀も我々も帰ろうと少女へ告げる。
こくりと頷けば会場の外へと移動し、待機していた組合員たちと合流していく。
全ての緊張が溶けた少女は、参謀に言葉で突っつかれ、組合員には指先でいたずらするように突っつかれながら、麓の集落へと戻っていくのだった。

ご案内:「王都マグメール 王城 査問会」からオーギュストさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城 査問会」からリーゼロッテさんが去りました。