2015/11/28 のログ
フィリオソリス > 柱をふんふんと眺める少女など奇異に映るかもしれないが本人はいたって真剣である.
鞄からスクロールと筆を取り出すとさらさらと絵と文字を書きつらねる.
誰かがのぞき込んでも読めないだろう.
字が汚いなどというわけではない.この国ではみかけない文字であった.

「よしっと.しかし王城というのはこんなにも人が少ないのかのう」

スクロールを巻き上げながらつぶやく.
おもえば先ほどの衛兵しか会っていない.
大規模な戦争がちかいと聞かされていたがすっかり頭からこぼれ落ちていた.
もっとも平時であればこんなに易々と侵入を許しては暮れなかったのかもしれないが.

「まぁいいじゃろう.騒がれても面倒じゃしな.
 そうじゃな.つぎは寝室などあれば見たいのう」

気分はダンジョン探索である.
自分の素に挑む冒険者たちもこんな気持ちなのであろうか.

フィリオソリス > 適当に部屋の一つを選び侵入する.
扉の前にもそして中にも誰もいないようである.
部屋の前には【第七師団執務室】と書いてあるがすっかり見落としていた.

「寝室ではないか.残念じゃ.
 しかしなんじゃここは?書斎かなにかかのう?」

部屋の中であるにもかかわらず廊下よりも豪華さはなく落ちついている.
しかし調度品の質は良く見る人が見れば上品であると称するだろう.

もっとも今は地図や書類がうずたかく積まれているのであるが.

そのなかでひときわ立派な席が目につく.
机の上には小さな旗.

これがこの部屋のヌシの場所に違いない

フィリオソリス > 革張りのオフィスチェアは特に良いもののようだ.
これは座り心地が良さそうである.

座り心地を確かめようとひょいっとその椅子に腰掛け―――られなかった.

椅子は彼女の体重に耐える素振りすら見せず
けたたましい音を立てて真っ二つに折れ曲がった.

「ふぎゃ」

彼女はと言うと椅子を突き抜けたその反動で顔面を膝でしたたかに打ち付けていた.
それなりに痛い.

顔を押さえごろごろと転がる

フィリオソリス > むくりと立ち上がり惨状をみる.
椅子は見るも無惨なありさまである.

これは修理も不可能であろう・

ご愁傷様といった顔持ちである.

「……」

一言も発さずにごそごそと鞄をあさると
林檎を一つ取り出しミニチュアフラッグの横に置く.

「これで許すがよいのじゃ」

そう言うと執務室の窓を開け放ち羽を広げて飛び立つのであった.

ご案内:「王都マグメール 王城」からフィリオソリスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」に□□□さんが現れました。
□□□ > 「…………」

じわり。じわり。

床の僅かな……ほんのささやかな隙間から染み出てきたそれは、ゆっくりと量を増し……
第七師団執務室と扉に書かれた部屋の中に、ゆっくりとわだかまっていく。

わだかまっていた不定形のそれは、
最初はただふるふると震えていたが……
ある程度の量が集まると、静かにその形を変え始めた。

最初は腕。無惨に砕かれた椅子に指をかけて。

次に肩。細い手指と腕を支えるのは、華奢で柔らかく。

そして……長い長い髪の隙間から、ぼんやりとした瞳を覗かせる顔が、ぬるりと床から這い上がり。

粘液の塊だったそれは、人の姿をとって音もなく室内に立ち上がった

□□□ > 「…………るぃ」

椅子に……正確にはその残骸に手をかけつつ、その影はキョロキョロと辺りを見回す。

この小さな影の正体は、ある場所に居ついている不定形の魔物……
その本体から分化したいわゆる分体である。

過去に本体が街から移動した際、本体から千切れとんだ破片の1つであり……
時を経て分体として行動を開始し、
平原を越え、街道を渡り、その道なりの末に都へとたどり着いた個体であった。


本来ならば王城に興味を示す様な性質は持ち合わせていないのだが……
本体から伝わる微かな意識に従い、この場所へと現れたのであった。

□□□ > 「…………」

じいっとその場に佇み、本体からの伝達、その意識を受けとろうとする。

が……本体に何かがあったのか、それとも目的を失ったのか。微かな揺らぎが伝わる程度で、明確な目的意識が伝わらなくなっていた。

「…………」

ぼんやりと……所在無さげに立ち尽くす。
目的を失い、ただ佇むばかりのその姿は、見るものが居れば迷い子か何かにも見えたかもしれない……

もっとも、未だに不安を明確に感じられるほど自我は発達していないのだが

□□□ > 「…………?」

黙して立ち尽くすばかりの影が……
不意に、その視線を動かした。

無感情な瞳が捉えたのは、無惨に破壊された椅子の姿。

哀れな断面を晒すその椅子を静かに見つめていたが……
不意にその小さな手指を動かすと、ゆっくりとした手つきで裂けた断面を撫で始めた。

人形のように整えられた、柔かで小さな指。

だが……それが往復する度に、その持ち主が人間では無いことを示すかの様に……
薄く灰色がかった粘液が、椅子の断面にへばりついていく。

丁寧に……あるいは、感情を感じさせない無機的な執拗さで、小さな指が断面に粘液を塗りつけていく。

そして、断面の全てに粘液を塗りつけ終わると……
砕けた破片を徐に組み合わせ始めた。

塗りつけられた粘液が接着剤代わりになり、
断面がべったりと貼りついていく。

「…………る」

過程だけを見れば、それは椅子を直していると錯覚できたかもしれない。






「…………♪」


そこに組上がっていたのは、何だかよく分からない奇怪なオブジェであった。

破片と残骸が捻りあわされた結果
元椅子の全体が奇怪な曲線と難解な直線を描き出し、
さらに接着剤として使われた粘液が垂れ落ちることで近寄りがたい空気をより濃い物にしている。

□□□ > 「…………♪ ♪」

もしも、この場に誰かが居たならば……
僅かに伝わる明るい雰囲気から、
この小さな影が、物を使って遊べたことに満足したらしいことが分かったかもしれない。

かくして、椅子から謎のオブジェへと変貌した何かを部屋に残し……
来たときと同じように、その影は床へと沈みこみ……音もなく、その場を後にした

ご案内:「王都マグメール 王城」から□□□さんが去りました。