2015/10/22 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城」にロザリーさんが現れました。
■ロザリー > 『何だ?小娘、おい止まれ!』
『ここが何処だかわかっているのか!?』
夜の帳が降りた深夜の王城
門番を務める兵士たちの怒号がこだまする
「賑やかなことだな…月が出たら静かに、騒ぐなと親御に習わなかったのか…?」
不敵な笑みを称える吸血姫はこともなしに歩みを進め、
その蒼碧の瞳を向ける
『───!?』
門の前の兵士二人はそれだけで意識を失い、その場へと倒れ伏す
大きな声をあげていたが、そんなものは空間魔法によって遮断されている
よって門の上…城塞の上から見張る者達には声は届いていない
■ロザリー > 「可愛らしいものよな」
笑みを浮かべるままに、王城の門扉へとその手を伸ばす
白く細い指がその扉に触れた瞬間、
バチィッ!!
まるで電撃が迸るような音と共に、ロザリアの右腕が弾け飛ぶ
「………ふむ」
肘から先がなくなり、焦げたような白煙を上げる自身の腕を見やり、小さく鼻を鳴らす
「随分と強力な退魔の術式を張ってあるものだな」
以前来た時はここまで強力なものではなかった
だとすれば、いくつか予測できるパターンがある
此処のところ増えた、人間の街に出没する魔族を警戒してのことか
富裕地区に仕掛けた、アイオーンの加護を打ち消すディスペルフィールドに気づかれたか
そして最後の一つが本命
王城を守る部隊の一部が遠征か何かで出払っているかだ
■ロザリー > ボコボコと血泡が右腕を形作り、大した時間もかけずにその腕が復元する
少し遅れるようにして、破れたドレスの袖も修復されてゆく
さて、自らが立てた予想の通りだとするならば…
「王族の一人でも、もらって帰るとするか」
歪な笑みを口元に浮かべて、再びその手を門扉へと伸ばす
バリバリと硝子を破るような音と共に、退魔結界を引き裂き破る
「出迎えも寄越さぬ無礼さは宵の刻故、仕方なしと許してやろう」
ギギギ…と重苦しい音と共に、城内への道が開かれる
■ロザリー > 深夜の王城は暗く静かで不気味である
もちろんロザリアがそれを恐れるようなことがありはしないが
カツンカツンという足音
夜間巡回の兵士のようだ
この様子では王城で過ごす王族のものも夜更かしなどはそうそうできないだろう
となれば部屋を探すことになるが、それは少々面倒である
厄介な加護の元でなければ霧に姿を変えて侵入するのも容易いことだが、
これだけ厳重な退魔措置が引かれていてはそうもいかない
「ごきげんよう、良い夜だな?」
角を曲がってこちらを向いたばかりの兵士がぎょっとした表情を浮かべ、強張る
とっさに大声で異常を知らせることが出来ないあたりは、練度が低い
『───!! ───…!?』
ぱくぱくと兜の下の口が忙しく動く
声が出ないのだ
サイレンスの魔術などは基礎も基礎
その程度の魔術もレジストできないとは、拍子抜けというものだ
王国の保有する討伐隊などはかなりの退魔能力を有していると聞いてきたが、
このような夜間の城内警備などは大して実力はないように思える
■ロザリー > 突然現れた少女と、突然出なくなった己の声に冷静な判断ができていない兵士を一瞥する
───と
「……ん?貴様、女か…」
それなりの体格に、分厚い鎧に覆い隠されていて気づかなかったが…
白い指先を躍らせるようにして、その兵士の兜を弾き飛ばすと、
少しくすんだような銀髪の女の顔が現れる
その顔は突然自身を襲った得体のしれない状況に、恐怖に慄いている
「……ふむ」
ぺろり、と紅い舌が下唇を舐める
見たところ器量は悪く無い
王城に勤務しているならば、最低でも平民以上、それなりの家の者だろう
大した魔力は感じられないが、若く生命力にあふれている
…何より、その恐怖に歪む表情が、非常に良いスパイスとなって───
ご案内:「王都マグメール 王城」に魔王アスタルテさんが現れました。
■ロザリー > サイレンスの魔術が効いているため、悲鳴はあがらなかった
ほんの僅かな時間
闇が僅かに深まるだけのほんの僅かな
女兵士は血の気の失せた顔で、音もなく壁際へと横たわる
その首筋には2つの紅い点がまるで印のように遺されている
「平民にしては悪くない味であったな」
見下ろし、くすりと笑う
恐怖に慄く様子が愉しく、つい飲み尽くしてしまった
これではヴァンパイア化して蘇生するということもないだろう
■魔王アスタルテ > (城内を歩く影が六つ。
その内二人は王族。そして、その王族の従者たる兵士が二人。
この王族は魔王軍の手の者であり、魔族だ。
そして一人は赤髪の大男、人に化けた四天王ロータス。
最後の一人は金髪紅眼の魔王、アスタルテ。
6人は、ロザリアと女兵士の前に現れる。
従者の兵士は何も知らず、ロザリアに武器の槍を向けていた)
「わぁー、ロザリアちゃんだぁー。
こんな所で偶然だねー」
(夜のお城、迷惑にならないように小声である。
ロータスも『ふむ、ロザリアか。お食事中だったかな? それは失礼したな』とロザリアに声をかける。
そしてロータスは、従者の兵士に武器を下げるように指示を出していた)
「お城でピクニックでもしてたの?」
(魔王は、きょとんと首を傾げた)
■ロザリー > 「む…」
こんな時間に随分と大勢で歩き回る者が……
「(───ッ、魔王、アスタルテ…!!)」
なぜ王城に?
いくらでも疑問は湧いてくるが、それは扠置き…
「…久方ぶりに王族の血でも宵の盃にと思ったのですが、思っていたよりも退魔の結界が敷かれているようで。
───アスタルテ様こそ、なぜ王城などに…、それに、後ろの者は」
アスタルテの従えている王族へと目線をやる
■魔王アスタルテ > 「ロザリアちゃんは、王族の血が好みなんだねー。
あぁ~確かに、今宵はけっこー強力な退魔結界が張られているね」
(王族を連れて表から堂々と入ってこれば、あんまり関係ないけどねー)
「ちょっとしたお仕事だよー。
もう終わらせちゃったから、今日はお城で泊めてもらうつもりだけどね」
(お仕事とはもちろん、魔王の業務だ。
王城を浸食すると、魔族側にはおいしい事が多いよー)
「この人達はね、一言で言っちゃえば味方だね!」
(無邪気ににっこりと笑う。
ものすっごく簡潔な説明。
アスタルテは従者の兵士に、少し下がっているよう指示を出す。
ロータスはクールな態度でロザリアを見やり、魔族の王族二人は軽く会釈していた)
「ロザリアちゃん、聞いたよー。
タナール砦では、負けちゃったんだってね。
あの竜の人……そーどとかいったかな?」
(あの場に魔王軍がいたわけで、アスタルテにもすぐその情報が伝わったわけである)
■ロザリー > 「…人間の国に手下を忍ばせているとは聞いていましたが、
王城への出入りまでも自由自在とは思ってもおりませんでした」
後ろの者も人間に化けた魔族、ということか
「で、あれば最早王城も落としたも同義ではありませんか?」
すっと指で自身の口元を拭うようにして、真っ直ぐに魔王を見据える
魔王が人間の王の城に出入りできるのであれば、それはもう人間にとってはある意味では詰みであろう
「───!
…それは…不覚は取りましたが、既に再戦し勝利していますので、
アスタルテ様が気にかけるようなことではありません」
キリ、と僅かに牙を噛みしめる
あの屈辱的な話が、魔王軍に知れ渡っているというのか
■魔王アスタルテ > 「魔王軍の魔の手が、そこまで伸びているって事だねー。
だからってあたし達も油断したらいけないけどね。
ちなみに、赤髪の大男は四天王のロータスだよ」
(ロータスは一歩前に出て、『人間形態のロータスだ』と説明する)
「こんな事であっさりと落とされちゃう王城でもないよ。
人間側がものすっごくピンチなのは変わりないけどね。
この国では、王族の覇権争いで複雑に絡み合っているという事だよ」
(王族に化ける魔王軍の魔族達も、その覇権争いの勢力のひとつだ。
同時に、内側から王都を浸食する勢力でもあるねー。
大掛かりな行動に出るならともかく、慎重にいくならば、まだ王城が陥落しきったとは言い難い。
ある意味詰みと言われれば、その通りかもしれないが)
「わぁ~、再戦で勝利出来てよかったね!
ロザリアちゃん程の者を一度負かしたという事は、相手もかなり強かったんだね。
マルチダちゃんとエルちゃん……エルレストベーネちゃんは元気にしてるかな?
マルチダちゃんの師匠をやってるなんて、ロザリアちゃんもけっこー面倒見が良い所があるんだね」
(牙を噛みしめる姿を見ると、これ以上敗北の話を続ける事はなく、再戦の勝利に笑みを浮かべて喜ぶ仕草を見せる)
■ロザリー > 「上手く化けるものですね。
…やはり加護の下ではアスタルテ様も大きな力は使えない、ということでしょうか?」
わざわざ回りくどい手を使うのはそういうことかもしれない
「忌まわしき古の怪物、ドラゴンの血を引く剣士でした。
…そういえばマチルダやエルレストベーネとも面識があるのでしたね。
………元が魔術士あがりなもので、熱心な娘のようですから」
■魔王アスタルテ > 「アイオーンの加護だからね、もちろん魔族の力は使い辛くなるわけだよ。
大きな力を使えないと言われれば、そーでもないんだけどね。
それでも、大幅な弱体化はしちゃってるよ。
あたしは魔王なわけだから、もろにアイオーンの加護の効力を受けちゃってるんだよね。
困ったもんだよー」
(元々の力が強大ならば、弱体化しても力が大きい事は変わりない。
だが結局は大幅に弱体化しているわけなので、本来の力を発揮できない。
なので魔王軍は表の戦力とは別に、謀略という手段もでるわけだ)
「ドラゴンの血を引く剣士かぁ。
ロザリアちゃんは、竜が嫌いなの?」
(首ろ傾げて問うてみる。
竜は、魔王軍にもけっこーな数いるね)
「マルチダちゃんもエルちゃんも、すっごく可愛らしいよね!
キルフリートには、あんなにも可愛らしい女の子達がいて羨ましいよ!
もちろん、ロザリアちゃんもすっごく愛らしいしね!
そうだねー、マルチダちゃんはすっごく熱心に魔術の勉強をしていたね。
三日間ずっと、魔導書を読みふけっていたぐらいだからね。
立派な魔術師に育てないとだめだよ、師匠ちゃん♪」
(そう言って、ウインクしてみせる)
■ロザリー > 「あまり困っているようには見受けられませんが」
軽い口調のままの魔王に苦笑する
事実、多少の退魔師が束になってかかったぐらいでは話にならないのだろうが
「魔術師は大体ドラゴンが嫌いでしょう。
人間以上の知性を持ち独自の言語魔法を使い、そのくせ本人は生体能力の一つとして馬鹿げた魔法防御を持っている。
目の上のたんこぶという言い方もできますが、ね…」
魔術を研鑽すればするほどに、目障りになるものらしい
「可愛らしい娘ならば魔王軍にも多くいるのでは?
それに、アスタルテ様自身、人間の街に頻繁に出入りし玩具を探しておられるでしょう。
…………道は、あの娘自身が選ぶものですから」
マチルダのことに関しては言葉を濁したのだった
■魔王アスタルテ > 「アイオーンの加護がある事を前提に行動しちゃってるからね。
だからいつの間にかに、自然体になっちゃってるわけだよ。
慣れって恐ろしいね♪
なかったらとっくにもっと大掛かりな事をしてたかな」
(無邪気に笑って言ってるものだから、かなり軽い。
困っているのはその通りなんだけど、その困ってる状況にも慣れちゃってるという事でもあるよー。
まあでも、油断に繋がらなかったら、そーいう余裕も大事だよ?)
「あぁ~そっかぁ。
確かに、魔術師にとってはよろしくないよね。
皮も頑丈で多くは飛行しちゃうし高温の炎も吐いちゃうし筋力も馬鹿げているわけだから、肉弾戦が得意な騎士タイプでも、いざ戦うとなったら嫌う人は多いよね。
要するに、色んな面から見てドラゴンという種族自体が強力という事だよ。
そういう意味では嫌う者も多いかもしれないね。
逆に、だからこそ無茶な討伐に燃える猛者も出てきちゃうんだけどね」
(まあ、魔術師だけではなく、あらゆる方面でドラゴンという生き物は厄介極まりないものだよ。
それだけ大きな力を持っているという事でもあるね)
「もちろん多くいるよー。
特に可愛い女の子魔族は、可愛がっちゃってるよ♪
あはっ♪ そうなんだよー、人間の街にもまた愛らしい女の子がいっぱいいるんだよ!
だけどそれはそれとして、マルチダちゃんとエルちゃん、そしてロザリアちゃんもすっごく可愛らしいって事なんだよ!」
(魔王の熱弁。
その目はハートになっていた。
わぁ~、キルフリートハーレムとかもしも出来ちゃったら、すっごくステキじゃない?
想像しただけで、もうゾクゾクしてくるね!)
「確かにその通りだねー。
どう成長するかは、マルチダちゃん次第という事もあるね。
本気で己が目的を達したいというなら、これからどんどん伸びていくかもしれないね」
(魔王はにっこりと笑う)
■ロザリー > 「そうですか。
………」
チラリ、と今しがた自分が『飲み殺した』兵士を見る
「アスタルテ様の息がかかった兵士だったなら、殺してしまうこともなかったかもしれませんね」
見張りに出ている兵士全てがそうではないのかもしれないが、
王城内部の詳しい事情はロザリアにはわからない
「そういうことです。
あまり良い印象を持っていませんので、かの男…ソードを下したのも、
わざわざ滅竜の禁呪を解凍しての再戦でございました」
……同時に、魔王殺しの魔法も復元したのだが、今はまだその時期ではない
「…相変わらずですね。
マチルダやエルレストベーネについては本人の意思に任せることとしますので、どうぞご自由に…」
■魔王アスタルテ > (倒れている兵士が魔王軍の息がかかった者かは、魔王であってもその場ですぐに判断できない。
魔王軍に所属する王族が従者としている兵士である可能性は無きにしも非ず。
だがそれはつまり、魔王軍の末端の末端という事でもあるので、知らずに飲み殺したロザリアを責める理由にはならない。
まあでも、多分魔王軍と関わりのない兵士だ)
「その兵士ちゃんの身元は一応調べさせておくよー。
もちろん、内密にするね」
(そう言ってアスタルテは王族の一人に指示を出す。すると王族は従者の兵士の一人に命令をし、命令された兵士は敬礼した後にこの場から去って行った)
「そっかぁ。
ピンポイントで弱点をさせちゃえば、ドラゴンと言えども大分倒しやすくなっちゃうもんね。
ドラゴンキラーみたいな武器は、その筆頭だね!
ロザリアちゃんも色々と対策を施してから再戦したわけだね」
(ロザリアが魔王殺しを復元した事も、ましてや彼女が謀反を企てている事も、魔王アスタルテは詳しく知る由もなく。
呑気で無邪気な態度はそのままである)
「わぁ~、ならまた存分に可愛がっちゃうね♪」
(『ご自由に』と言われると、魔王はぱぁっと表情を輝かせる)
「それでロザリアちゃんは王族の血を求めてきたんだよね。
なら、王族がいる部屋に案内してあげよっか?」
(そう提案してみる。
アスタルテは何度か王城に来ており、案内できるぐらいには内部を把握していた。
ほんとに、王都の内部侵略はうまくいっちゃってるね!)
■ロザリー > 「………」
王城の中にどれだけ魔王軍の息のかかったものがいるのかはわからないが、
そのあたりの情報を集めておくのも良いかもしれない
言葉も発さずに兵士の背を見送り…
「以前の敗北は慢心もあった故、
本来ならばそうそうの相手に遅れをとることはありません」
それは、目の前の魔王も然りである
しかし今はまだ押し殺す
今は未だ、魔力が足りない
もっと血を飲み、蓄えなければ
「…マチルダに関しては普通のミレー族故、あまり無茶はされませぬよう。
まだ子供でもありますので」
そう言葉を付け加える
「…いえ、やめておきましょう。
兵士一人に、王族もとなれば人間もそうそうやられたままではいないはず。
こうやって宵の刻に忍び込むことも、下手を打てば王城の中に忍ぶ者を疑いはじめるかもしれませんので。
こういった事情を知っていれば、吾もこのような真似はしておりません」
あまり挑発するべきではない
先日キルフリートの2Fに進軍したような者達が大勢いないとも限らないのだ
■魔王アスタルテ > 「そうだよねー。
ロザリアちゃんは、魔術師としてはすっごく優秀だもんね。
人間に敗北したと聞いた時は、耳を疑ったぐらいだよ。
慢心しちゃったかぁ、なら仕方ないねー♪」
(仕方がない……とは、魔王は本心では思っていなかった。
慢心が油断に繋がり、それが敗北を導いたというなら、けっこー悪い癖になっちゃうよ?
慢心自体はまあ、余裕の表れとかだったらいいかな。
だけどそれがきっかけとなって負けちゃったら、意味ないよね)
「マルチダちゃんの事を想ってその言葉を付け加えるという事は、ロザリアちゃんって意外に過保護なんだね。
ロザリアちゃんのステキな一面を見られたと思うと、結構きゅんときちゃうね!
分かったよー、その言葉ちゃんと覚えておくよー♪」
(にこりと優しげな笑みを浮かべる。
ロザリアもけっこー、優しいんだね)
「まあ利口な判断だねー。
人間は人間であほという事でもないからねー、残念な事に。
そっかぁ、ロザリアちゃんは今日のところは強引な手で忍びこんじゃったわけだね。
お城に安全に入りたかったら、あたしか四天王あたりに話を通してもらうのも一つの手だと、覚えておくといいよー」
■ロザリー > 「厳密には人間ではありませんでしたが」
それなりのプライド、あれは化物に分類すべきものだ
「アスタルテ様も不覚を取らぬようどうぞお気をつけて」
それだけのポテンシャルをあのソードという剣士は持っているように思えた
「む…そういうことではありませんが。
魔術の研鑽に身が入らなくなっても本末転倒です故」
視線を逸らしながらそう応える
過保護という意識はなかったようだ
「我が城の2階まで踏み込むほどの一団もいるようです。
……えぇ、こういった事情を知った上ならば、そうさせていただきます」
■魔王アスタルテ > 「そうだね、竜の人だね。
ドラゴンの血を引きし化物だったね!」
(そこは相手を高く評価するよう訂正する事で、一応上司として一勝一敗のロザリアの顔を立てる。
その時の表情もまた子供のように無邪気なものであった。
まあ、敗北ぐらい強者でも体験しちゃう事は多いからねー)
「不覚かぁ。
忠告ありがとー。
そのそーどとかいう竜の人は注意するよう、魔王軍にも呼び掛けるよ。
それにしてもロザリアちゃんがそう言うぐらいだから、本当に相当な腕だねー」
(どれだけの実力者か、興味が沸かない事もないよ)
「それは師匠とすればすっごく困っちゃうね。
マルチダちゃんも伸びなくなっちゃうもんね。
分かったよー。
それでロザリアちゃんは、マルチダちゃんの事をどう思ってるの?」
(視線を逸らした姿に、アスタルテは少しニヤニヤする。
そして首を傾げて問うてみた)
「キルフリート、それも二階にまで乗り込むなんて、凄い猛者もいたもんだねー。
それでそのキルフリート観光旅行をしに来た勇気ある団体さんはどうなったの?」
(まあ、団体さんの敗走あたりだよね。
下手すれば全滅しちゃったりしてね♪)
■ロザリー > 「………」
普段の態度や物言いはどうあれ、アスタルテが強大な魔王であることは間違いない
ただ、それを知った上でも尚あの男は、何を齎すかわからない雰囲気がある
「素直に言葉を紡ぐならば、
まだ人であった頃の、魔術師を志した頃の自分を思い出す…と言ったところです。
それだけですが」
そう、それだけだ
特別な思い入れがないわけではないが、ここで口にするほどのものでもない
ただ自分を好いてくれていることも理解できる上で、過保護と言えば過保護になっているのだろうか、と
内心少しばかり考えてしまう
「相当に戦闘勘の優れる指揮官だったようで、吾がその場に訪れる頃には既に撤退戦となっておりました。
相応の被害を与えることは出来なかった、というところでしょうか。
あのような一団が王国にいくつもあるのであれば、魔族の国への侵攻も考えられるかと」
■魔王アスタルテ > 「マルチダちゃんが、大昔のロザリアちゃん自身と被っちゃうんだね。
ロザリアちゃんにも、可愛らしい時代があったんだね。
つまり、マルチダちゃんと同じようにして、ロザリアちゃんも人間時代の頃は何かしらの目的があって魔術師を目指していたの?
ほら、マルチダちゃんには復讐という目的があるわけじゃない?」
(どちらにしても、状況を見れば過保護という事になっちゃうね。
自分と重ねているという事は、それだけマルチダの事を気にかけているという事でもあるよ)
(無邪気な魔王だったが、ロザリアの話を聞いてだんだん真剣な表情になってくる。
そのロザリアの報告は、魔王としてちゃんと対策を練らねければいけない案件だからだ。
そんな魔王からは、先程までと打って変わって、威厳すら発揮させる)
「人間側にも、有能な人は多くいるという事だね……当然と言えば当然だけどね。
だからこそアイオーンの加護以外にも魔族の脅威足り得るものはあるし、タナール砦も取られたり取り返したりと、なんだかんだで拮抗を保っているわけだ。
そっかぁ。
魔族だけが人間の国に進出しているなんて都合の良い状況が長続きするとは限らないよね。
そんな考えも、やっぱりあまいかな。
人間の一団が魔族の国に侵攻してくる事態は、十二分に警戒する必要があるね。
それ故にタナール砦もまた、立派な拠点になり得るかな。
ひとまず、キルフリートを攻めたその一団は要警戒しなければいけないね」
■ロザリー > 「吾は…そう家柄だっただけと言うこと。
こうやって道を外れ不死者となった今では思い出すことも少なくなったものです」
淡々と言葉を返す
その言葉にはなんの感傷も感じられない
「吾もその一人ではあるのですが、アスタルテ様以外にも魔族が人の国に出張ることが増えている故に、
人間も相応の警戒をはじめているのかもしれません。
信仰を失い、腐敗した人間どもと言えど、やはりその力は侮りがたい」
ここだ
こういうところがこの魔王アスタルテは恐ろしい
普段のあの姿、言動も魔王の一面ではあるのだろうが、
この、魔王たる立ち位置に据わった時の冷静さ、冷徹さ
それがこの魔王の最も警戒すべき部分だ
今しばらくは味方として、下僕として好機を待つ
最善の時が訪れるまでは雌伏の時だ
■魔王アスタルテ > (何の感傷も感じないそのロザリアの淡々とした言葉に、『そっかぁ』と返す。
家柄の都合で魔術師になり、そしてそこから何らかの理由で魔族たる吸血姫となった。
それは思い返す事もなくなった昔の話。
今は不死者ロザリアとして、キルフリートに君臨しているというわけだ)
(アスタルテの瞳は、紅に輝いていく。
そしてロザリアの言葉に重々しく首を縦に振った)
「人間は、秘めたる力を持つ者も多くいるからね。
思わぬ反撃を受けて痛手を負うのは、ロザリアちゃんも竜の人を相手にして体験詰みだよね。
腐敗しても信仰を失ったとしても、それで強力な力を持つ人間が消えるわけでもない。
だけど、邪魔な者は潰していけばいいんだよ。
警戒を始めているなら、対策を講じられる前に積極的に動く。
逆に慎重にいくべきところは、焦る必要もないよ。
最も、邪魔な者足り得るのは何も敵側だけとは限らないわけだけどね。
もしかすれば、案外近くにいる事もあるよ」
(紅く不気味に光る瞳は、ロザリアを見据える。
その表情はだんだんと、不敵な笑みへと変わっていく。
だがそれ以上、ロザリアに付け加える言葉もなく)
「人間がそれだけ魔族を警戒していくという事は、魔と人の闘争もだんだん激化していくね。
だけどもちろん、勝つのは我々魔族だよ」
■ロザリー > 「…魔王軍とて一枚岩ではない、ということでしょうか?」
くすりと笑みを浮かべる
自分の意図が魔王に理解されていようといまいと、やることは変わらない
好機を待つのみ
「…随分と長話をしてしまいました。
そのうち、アスタルテ様の城のほうにご挨拶に行かせてもらおうと思います
とびきりの献上品を以って…」
そう言って一礼し、ドレスを翻して背を向ける
「では、御機嫌よう」
最後に告げた別れの言葉は謙譲語ではなく、一城の主としての対等の言葉
城を預かるものとして、謙ってばかりはいられないということだろう
特に呼び止めなどしなければ、カツカツと靴を鳴らし渡り廊下の闇へと消えてゆくだろう
■魔王アスタルテ > 「魔王軍は、あたしに忠誠を誓った統率がとれた勢力だよ。
だからこそ、それを乱す者がいるといけないよね?」
(それは魔王軍が一枚岩ではない、という問いの否定。
ロザリアが謀反を企てている事を魔王は“詳しく”知る由もない。
だがそれは“全く”知る術がない、と同義でもない。
はっきりと分かっているわけでもないし、だからと言って全く感づいていないという程でもない。
幼女な状態だったら『ロザリアちゃんを疑うなんて可哀想だよね?』という風にもなるが、魔王の色を見せればそんな容赦など忘れてしまえる。
そして、だからこそ、不確定要素も“限りない確信”と頭で理解し始めるのだ。
アスタルテは不敵な笑みから無邪気な笑顔に戻る。
瞳の輝きもだんだんと消えていった。
そしてその目で『ロザリアちゃんの事も信頼しているよー』と語ってみせる。最も今はともかく、魔王の色を見せれば“限りなく黒に近いグレー”という扱いになるわけだが)
「わぁ~、是非是非おいでよー♪
やったぁ、ロザリアちゃんが来るよ!
献上品、楽しみにしてるね!
あたしもキルフリートにまた遊びに行くねー。
この前行った時は、ロザリアちゃんいなかったんだよね」
(ドレスを翻すロザリアに手を振る)
「またねー、ロザリアちゃん」
(そんな対等な言葉に、特に何も述べる事もなかった。
だが当然、気付いていないわけでもない。
アスタルテは、闇に消えるロザリアを笑顔で見送る)
ご案内:「王都マグメール 王城」からロザリーさんが去りました。
■魔王アスタルテ > (魔王はロザリアを見送った後、再び廊下を歩み始める。
四天王ロータスや二人の王族、従者の兵士はそんな魔王に続いた。
アスタルテは呑気に、そして無邪気に鼻唄を唄いながら、王城内にある王族と化した魔族の部屋に戻る。
今日のところは、ここで一泊するためだ。
そしてふかふかの屋根つきベッドに寝転がると、先程のロザリアの別れの挨拶を思い出して、また不敵に笑う。
そして背中から翼を出現させる。
ちなみに、この一室には現在、アスタルテ以外いなかった)
「あはっ♪ あはは♪
ロザリアちゃんは、すっごく負けず嫌いだね。
キルフリート城主としての意地かな?
健気とは少し違うかもしれないけれど、そういうところもまたとっても可愛いんだよね」
(アスタルテはロザリアが触手で凌辱されているるあの時の姿を思い返しながら、ゆっくりと瞳を閉じる。
そして、その思い出により興奮していくのだった)
ご案内:「王都マグメール 王城」から魔王アスタルテさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城城壁前」にオーギュストさんが現れました。
■オーギュスト > 夜の王城。
修理中の城壁を見上げ、オーギュストはあくびをする。
何で彼がこんな所に居るかといえば、先日王城内で何人かの人間が「消えた」せいである。
王城で人間が「消える」事は珍しくない。政争や王位継承権争いの坩堝たるこの王城では、高貴な身分の者が「消える」事など日常茶飯事だ。
だが、今回は宮廷魔術師が何やら強大な魔族の気配を感知したらしい。
そこで、大々的な王城の結界修復工事が行われる事となったのである。
当然、工事中は王城の結界は薄くなる。魔物に対し、防御が薄くなる事を王府の官僚たちは事の他恐れた。
で、白羽の矢が立ったのがオーギュストだ。彼は工事箇所で監督、指揮を取るようにと、王府直々のご指名を受けた。
用は、体の良い番犬代わりである。
「アホらしい」
で、この男と来たら工事現場に来ては酒を飲んで眺めている毎日である。
名目上は近衛長官代理などと仰々しい地位をいただいたが、犬の鑑札に価値を見出す男ではなかった。
■オーギュスト > 彼は戦場に出ない王族、官僚の類を事の他侮蔑していた。
居なくては国が回らないのは分かるが、前線ではそのお役所仕事っぷりが鼻について仕方が無い。
非効率的な文章を書かされた事も何度あったか。
あの氷の魔法を使った魔族を第七師団の牢獄に推し込める手続きだけで、書類を何枚書いたか分からない。
まぁ全部副官に投げたのだが。
「おう、んな気合入れてやる必要ねぇぞ
疲れたらとっとと寝ろよ」
やる気なく労働者たちに声をかける。
王城の中の連中に比べれば、こいつらの方がずっとマシだ。
■オーギュスト > 城壁前の詰め所の机に座り、酒盃を傾ける。
退屈だ、いっそ魔族の襲撃でもあった方が面白い。
そうしたら、城の中に飛び込んで混乱した顔を見てから退治としゃれ込める。
■オーギュスト > 結局、オーギュストが期待したような事はなく、工事は無事終わった。
晴れてオーギュストはお役御免となり、第七師団長に返り咲く事になる。
なお、酒は全部経費につけた。
ご案内:「王都マグメール 王城城壁前」からオーギュストさんが去りました。