2023/07/23 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2 裏路地のクラブ」にレディ・レッドさんが現れました。
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 王都マグメール 富裕地区 深夜

 星宙が埋め尽くす 夏の満月よりも煌めきが濃い
 月だけが丸く映る深淵の帳が下りた夜は、思わず溜息が出るほどだが
 星宙は瞳は細まるほどにうっとりとする。
 良い夜というものを、月と星が肌に光を当てることで染みわたるそれが実感させてくれる。

 しかし夏の夜は短い
 短い針は半分廻る程度で空が白み始める上に、やや蒸し暑い
 ひとしきり赤い瞳と、白い肌が夜を楽しんだら適当な裏路地
 表通りの紳士淑女の集まりとは違い、身分以外そこには人の気というもの
 それが十人十色な 格も品もバラバラな社会が写る。

 夜のクラブ 酒と葉巻 で寛ぐ三つ揃えの紳士とは違い カードと酒精 葉巻と女
 やや悪い空気と、紙巻と葉巻の香り やや安物も混じるだろうか。

 レースストールを腕に纏い、コツ コツ コツ と踵を鳴らす音
 一人用のソファに腰を下ろし、長いスカートの中で足を組む。
 寡黙なスタッフに、月と星を満喫したドラキュリーナは革のケースから葉巻を取り出す。


   「―――。」


 丸い刃先 筒型のそれはパンチカットと呼ばれる吸い口を造る仕掛け
 カリッと巻かれた葉を数枚抉ったものを咥えると、ロングマッチを手早く擦りあげる音
 スタッフが手の内側で火が落ち着くのを待ち、凛と佇む雫型の火となったのなら
 それを先端に近づけ、ジジッと焦がす音と甘い香りが広がるだろう。
 フゥ、と葉巻の息を吐くのは、火がじっくりと先端を焦がし終えてからだ。


   「ラムの黒に近いものを 一番甘い奴で。」


 渋みや熟成ばかりが売りの拙いワインよりも、甘く旨い酒のほうがいい
 それを示すように、スタッフは静々と下がり、手元には一杯の彫刻された杯
 ダーク・ラムの甘い香り 舐めるように海賊が好むラムを貴族が平然と舐める仕草。
 時折甘くなった舌先を、今度は休める口元が、葉巻でだんだんと再び辛くしていく。
 一人訪れながら、夏の短い夜を酒と紫煙で満喫する姿は、やや下振れる者らでは足も近づかないか。
 

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2 裏路地のクラブ」からレディ・レッドさんが去りました。