2023/06/03 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にリスリィさんが現れました。
リスリィ > 大雨一過。嵐の一夜が過ぎ去ってみれば、翌日は雲も何も吹き飛んで、一転晴れ上がる事になった。
その為湿気もぬかるみも水溜まりも、大いに残されているものの、当然何時も通りの授業が行われる事となり…
不平たらたら。それでも、真面目ぶっている手前、きちんと授業には出なければいけない。
憂鬱になりそうな一日を、どうにか、やり過ごす事が出来たなら。

「…御褒美は有った、と、思っても良いのかなぁ」

夕方、水はけの悪い石畳を避け、少しばかりルートを変えた帰宅途中に。
初めて見付けたカフェは…当たり、だった。
見た目だけでも愉しめるような、果実ゼリーのごろごろと浮かぶその上に、たっぷりクリームまで載せられたグラスの中身。
今はちょうど。その半分程を平らげて、小休止中。
テラス席で頬杖をつく、ちょっとした行儀の悪さも。品行方正な、お嬢様には相応しくない、健啖っぷりも。
どうやら、こんな穴場なら、学友達に目撃される事もなく、済みそうなので。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にスルーシャさんが現れました。
スルーシャ > 「こちら、相席構わないかしら」

 穴場、ともなれば、貴族の間では自ずと求められるであろう。
 従者から離れて一人の時間が欲しい時、重責、激務から解放されたい時。
 故に、徐々に客が増えてきて、席が埋まっていく中、一人の落ち着いた身なりの女性……、
 その”顔に覚えはない”がそれなりの身分であろう女性が声をかける。

「学院に通う貴族の方……、騎士を志す方、と振舞いからお見受けしますが、
 いかがかしら?」

 瞳に、淡い光が帯びて、吸い込まれそうな煌びやかを伴う色を帯びて瞳を覗き込んで
 柔和な笑みを浮かべて伺いを立てる。

 明らかに年下である相手に、許可を得るまで席につくことはないだろう。

リスリィ > メインストリートから外れた、とはいえ、富裕地区の一部。
貴族と呼ばれる身分の者達が、お忍びなりで現れる事、それ自体には。何の不思議もない。
実際、客層を見てみれば。似たような。仕事の合間か、遊行の途中か、遅めのティータイムと洒落込む者達は。良いみなりの者が、ほとんどを占めている。
そういった意味では。声を掛けてきた、その女性についても。きっと、何ら不思議ではない筈で。

「こちら、ですか?えぇ、どうぞ宜しければ。
…いえ、そんな。それこそ文字通り、志す…目指している、というだけの。まだまだ若輩です」

案外、席は埋まっているようだ。その中で比較的、相席を求めやすそうだ、と。見られたのだろうか。
見上げた相手は、既知でこそなかったが。他の客達と、同じような立場にも、見えて。

軽く会釈してから。座り易いようにと、椅子を引いてみせる辺りだけは。
騎士らしい振る舞い、と。言えるかもしれない。

スルーシャ > 「ありがとう。若くして作法をわきまえていらっしゃるのね。」

 椅子を引かれて了承を得れば席に着き、相手も席に着けば、柔和な笑みを絶やさず。

『私はスルーシャ。あちらの家の者よ。貴女はどちらの家の方かしら』

 明確にどの家の者か告げぬ言葉に、呪詛を乗せる。
 弱く、か細い呪詛。それを重ねるように、違和感を帯びさせないように流し込む。

 今はまだ、ただの会話、雑談だ。その中で、徐々に呪言で警戒を削ぎ、懐に近づこうと。

「それと、ご存じかしら? やんごとなき家柄であれば、たとえ目上でも不遜であり、
 作法や礼儀を重んじられないものよ。」

 そう言いながら貴女が食べているゼリーを見て”おいしそうね”と言いながら給仕に同じものを注文する。

『……見たところ、頑張っているけど頑張りすぎているようにも思えてるけど、
 肩に力が入ってるように見えて、少し気になってね』

 優しく、包み込むような笑顔。ニコニコと、ニコニコと、警戒をほぐすような笑顔。

「こうして相席になったのも縁だし、赤の他人だもの、何か悩みがあれば人形に話すと思って吐き出してもかまわないわよ」

リスリィ > 「ありがとう御座います。僕……っと、私は。リスリィと申します。
……へー、ぇ。そうすると、意外と、お近くの方になりますね?」

普段通い慣れた道から、ほんの少しだけズレた場所での、予期せぬ出会い。
実際、距離としてはそんなに、離れた訳ではないのだから。何処何処と判らなくとも、この辺り、というだけで。
馴染みを覚えてしまうのが。人間の記憶力の、曖昧さと。それを補完してしまう、細くも確かな呪い、なのだろうか。
些細なズレが。小さな違和感が。最終的に、どこまで大きく広がっていくのか、など…まだ、知る由もない。

「そういった物でしょうか?まぁその…その前提に則るとしましても。
貴女の方も、それその通りの、”やんごとなき”家柄の方だと。お見受けします。
それに。えぇ。貴族、騎士、よりも先ず。この歳ですと、学生、という肩書きが。先立ちますので」

席に着いた相手。…正直。少し、見とれたかもしれない。
初見で、目上で、同性で…しかし。それ等と関係無く。何処か引っ掛かって、惹かれて、しまう。
笑顔や言葉の裏を、察している、とまではいかなくとも。違和感を、自覚出来ていなくても。何処かで、きっと、ざわめいて。

「…………ぇ、ぁっ、はい?」

例えば。直ぐに届けられたゼリーが、運ばれる口元…唇。
其処に向いてしまいそうな意識が、ふと。其処から放たれた言葉で、急激に引き戻されて。
すすす、と姿勢を正し、座り直すと、こちらも。溶けつつあるクリームを一匙、口に運んでから。

「そのように、見えるでしょうか。
………ま、ぁ誰しもと同じ、ささやかな悩みだと、思います。
努力、というものには、どこまでやったら良いか、という…そこまでで良いという、句切りが有りません。
それでも、自分で頑張ると決めたからには、止める訳にもいかないでしょう?
だから、悩むとすれば、そうですね…どうすれば。そんな努力を、出来るだけ、続けられるか。…私は、いつまで、折れる事を。知らずにいられるか。…でしょうか」

スルーシャ > 「あら、意外とお互い知らない中なのね。ふふっ、いい出会いに巡り会えたものだわ。」

 無邪気そうに笑って。人懐っこい笑みで、徐々に近づいていく。
 まるで気が合う友人のように、無警戒な表情を、この腐敗した国では見せれば弱みとなりかねない
 無遠慮な距離の詰め方を見せて。

「それはそうだけれど。それでも、その家柄が時に重荷になる時もあるわ。
 そう言った人が、ここには来てるのではないかしら。

 だからこそ、そうね、学生でも、相席に応じてくれるその姿勢が嬉しくあるのよ」

 徐々に、徐々に、上下関係を呪言に刻み込んで、流していく。
 目上だが忌憚ない関係、なじみのある関係。

 心を許しても良い関係。

 そう、張り詰めた心に流し込んで、徐々に解きほぐす。

「あら、おいしそう。本音を言えば、おいしそうなものを食べてる人と、同じ気持ちを共有したいのもあったのよね」

 ややあって運ばれてきたゼリー、同じメニューを見れば、まるで少女のような感銘を受けた表情を、
 無邪気な表情、気心の知れた相手に見せるようなそれを見せて、目配せをして。

 魅せるように、目の前でゼリーを頬張って、視線を引き寄せて。

「努力、というものはいくらしてもいいものよ。
 でも、時には息抜きも必要よ」

 貴女の唇に指を伸ばし、僅かについたクリームを掬い取る。
 まるでそれが張り詰めた中での気のゆるみが如く、それを目の前で舐め取って。

「頑張る、己で上を目指す。その気位は賞賛すべきものよ。
 けれど、ね」

 微笑んだ瞳が僅かに開いて、視線が重なって

【たまには力を抜くことも必要よ。リスリィ。
 折れることを知らないより、折れても立ち上がる強さが必要。

 ……一度折れても立ち上がれるか、私と試してみない?】

 視線を重ね、言葉を重ね、呪いを注ぎ込み、型意地張った”お堅い騎士”に提案して。

【時にはよりかかる相手も、必要だと思わない?】