2023/01/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 貴族の邸宅/庭園」にリアさんが現れました。
■リア > とある貴族の邸宅で宵の口に始まった宴は、新しくした庭園のお披露目会ということだった。
年中薔薇を咲かせるためだけに気温を一定に保つ設備を取り入れたらしい。
見せびらかしが目的なので、警備はさして厳しくもなく、招かれたのもちょっと名の知れた商人だとか、身分も様々な様子。
母親のお供で連れて来られた娘は、主催の率いる庭園巡り、その後邸宅内へ入ってのパーティーで挨拶や会話やダンスに最初の一時間だけ大人しく参加していた。
が、酒も進み場が盛り上がってきた頃合いを見てこっそりと、邸宅内から目の届かない庭園の噴水のあるあたりへ抜け出していた。
「♪」
クロウタドリの鼻歌を機嫌よく響かせながら、階段状になっている噴水を上ったり下りたり。
銀色のヒールは芝の上に転がっている。
「今夜も自慢話ばかり聞き飽きたなあ――ふふ、でも杖を持ち込めたのは大金星では?」
さすがです――と自分で自分を褒めている。
くすくす笑いが止まらないのは酒が少し入っているせいもあるのかもしれない。
■リア > 「毛玉も持ち込めたら退屈しなかったのに――」
寮の友人に預けてきた仔猫を想ってため息をつく。
街で一目惚れした今夜のドレスは、仔猫と同じ白と黒。胸から足元まで体の中央縦のラインは白で、左右は黒。膝まである長い袂というデザインは、杖を忍ばせるのに大変都合が良かった。
「でもあの子は水が嫌いだしね……ほら、"水よ"――うさぎ!」
杖で指した先、噴水の水が巻きあがり、うさぎの形でぴょんと跳ねた。
「うさぎ、うさぎ、ドラゴン――はまだ難しいなあ」
ぱしゃぱしゃと足元を跳ねるうさぎが二匹三匹と増えて、更にざばあっと水柱が立つけれど、何かが生まれようとして、形を成さないまま落ちていく。
ここ最近学校で、友達や、果ては友達ですらない水系の魔法が得意な人に頼み込んで練習に付き合ってもらった成果である。
水練場で開催した『第一回・水魔法球技会』――手を使わずに水の魔法だけで球を相手陣地に叩きこんだら勝ち、という遊び――が一番練習としては効果的だった。
遊びかつ試合形式にしてしまうと俄然やる気が出るのだ。
先々週までは花壇の水やりくらいがせいぜいだったことを思えば目覚ましい進歩である、と、新たに水の魚をぴちぴち跳ねさせながら思う。
■リア > ドレスを濡らさないように裾を膝に手繰り寄せてしゃがみこむ。
水の中を泳ぐ水の魚は、目に見えないけれど水に不自然な流れを生み出している。
「ふふーくすぐったい」
足元を掠めていく水のかたまりは、猫が足元にすり寄って来たのと同じ感触がする。
「ドラゴンができるようになったら、次は光かな……水と合わせて虹が作れたら素敵じゃない?
また先生に『パーティーマジシャンでも目指してるのか』って言われてしまいそうだけど。
需要があるならそれもいいかもね、旅芸人の一座に入って、踊り子さんの踊りに華を添えたり……楽しそうでしょう?」
膝の上で頬杖をつき、跳ねまわるうさぎに首を傾げる。
うさぎのおかげでドレスはそこそこ濡れてきたが、気温が初夏くらいに保たれているおかげで寒くはない。
「――なあんて、うまく行き過ぎかなあ。
練習もするとして、魔法を騙す方法も探さないとね」
立ち上がってぴゅいっと杖を振り噴水から離れた。
うさぎも魚も水へ還り、素足で芝生の感触を楽しむ。
鼻歌に合わせて指揮棒のように杖を振る影は星明りの下、パーティーの終わる時間まで散歩していた。
ご案内:「王都マグメール 貴族の邸宅/庭園」からリアさんが去りました。