2022/05/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/邸宅街」に黒曜石さんが現れました。
黒曜石 > 貴族や豪商の邸宅が立ち並ぶ邸宅街。
その中のひとつ、表面上は貿易商、裏向けには奴隷売買で成り上がった商人の屋敷。
今宵は、得意客や貴族を呼んでの乱痴気騒ぎ、夜中を過ぎた頃になっても続いている。
屋敷の前には、広大な庭園が広がる。醜悪さを高尚な趣味で覆い隠したような庭園。

そこへ続く石段に、一人の男が腰を下ろしている。
この場所には似つかわしくない古ぼけた衣装を身に付けた男だ。
豪商か、客の雇った護衛か、それとも侵入の機会を窺う刺客か。
あるいはただ、迷って休んだ旅人かも知れない。
まるで朽ち果てた鋼のように表情なく、僅かに上げた瞳は空に浮かぶまるい月を見上げている。
ただし――静かに、ではない。

『―――――――』

甲高い声が、囀るように歌を奏でる。
歌詞がある訳ではない。様々な言語が混じったような歌声。
どこか弾むような、あるいは嘆くような、曲。

僅かに開いた男の唇が奏でているのではない。
奏でるのは男の肩からだ。
鳥――黒い羽毛に包まれた、掌で包める程度の鳥が歌っている。
首から上がないのに歌っている。
無聊を慰める、退屈しのぎのような歌声。

黒曜石 > 程なく、歌声が止む。
いつの間にかその場から姿を消している男。
向かった先は夜の闇の中か、あるいは騒ぎの邸宅の中か――。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区/邸宅街」から黒曜石さんが去りました。