2022/04/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > 日は落ちた。
冬の短い昼に比べれば陽光の降り注ぐ時間が大分増したとはいっても、夜の帳は必ず降りるもの。
その摂理を覆す灯が煌々と照らし出す空間は、所有する財の証でもあるのだろう。
どれだけの油、どれだけの蝋、どれだけの魔法道具が費やされていることか。
今宵、小さな姿は、富裕地区の一角にある貴族の屋敷にあった。

「嗚呼、よい夜じゃな。
寒ぅて丸まる日々は過ぎ、辺境でもそろそろ騒がしい日々が再開となるのじゃろう?
物いりとなれば、先ずは儂に声を掛けるがよい。
回りくどい駆け引きなしで相談に乗る故。」

広い敷地の中、本館とは独立した別館のホール。
総勢五十名ほどのささやかなパーティーとの触れ込みに誘われた妖仙は、見知った顔を顔を見つけては声を掛け。
何処かの騎士団の中隊長を務めているという屈強そうな壮年の男と暫しの談笑をした後に別れ。
ここまでなら只の夜会の範疇ではあろう。
――当たり障りのない挨拶の最中、耳の届くのが演奏者による楽器の音色ではなく、女の嬌声でなければ。

ホウセン > 寒い時期には、どうしても兵站や補給に負荷がかかる。
防寒具やら燃料やらが必要になるし、軍馬を養う飼料も当然に生えてくる時期でもない。
故に、雪解けが如く方々の勢力が動き始める頃合いであろうと、人の集まる場には積極的に顔を出してみる昨今ではあって。
足を運んだ成果はといえば、少なくとも今宵に限っては有益だったと断言できるか怪しい。

「…件の伯の催しであることを失念しておった。
誰も彼も脳髄に血を巡らせるよりも、股座のモノに充血させるのを第一義というツラをしおって。
そうならそうと、儂も息抜きの時間としてしまうのが”すまーと”という奴なのかのぅ。」

案内状が届いた際に気付くべきだったのだ。
屋敷の主が、色欲に塗れた好事家であるという事に。
事実、先刻の軍人は、捕虜の性的虐待の噂が絶えぬ男だったし、他の面子も色絡みの話が纏わりつく面々だ。
そんな催しに自身が招かれている事には口を拭ってそ知らぬふりを決め込み、ホールの前方へと目を遣る。
繰り広げられているのは、主催者が手に入れた女奴隷達の痴態。
自身の財産を見せびらかすよう、彼女らは裸体を晒すか、或いは全裸よりも余計に扇情的な衣装を纏って晒し者になっている。
ある者は拘束されたまま淫具で責められ、ある者は参加者の手によって秘部を弄られ。

(春とは言うても、盛りのついたケダモノでもあるまいに。)

細めた黒い目が、そう物語って。

ホウセン > 予想からやや逸れてしまっているとはいっても、この乱痴気騒ぎに驚いた様子は無く。
生来の面の皮がどても厚いというのもあるけれど、単に場慣れしているというのが同程度に原因足りえるのだろう。
どれか目に留まるような奴隷が居れば、主催者に掛け合って借り受けるも善し…なんて、思考の四分の一程度を割いているのだから。
小柄な妖仙とは異なり、主催者の趣向を正確に予期していた参加者の中には、女を伴っている者も間々見受けられて。
単純にパートナーであったり、護衛であったりということもあるのだろうが、財産の”お披露目”に対する返礼として、自身の肌も露な性奴隷を連れている者も見かけられ。
こんな場では立場の誤認もちらほらと起こっているのだろうけれど、ささやかなハプニングの類と認識する輩の比率が、常人のそれを悠々超えている確信はある。

「ま、愉快な物が見られれば、文句は言うまいよ。
ちぃとばかり羽目を外しておるぐらいの方が好ましくもある故、無礼の一つや二つは目くじらも立てぬ。」

雪駄を履いた足で一歩踏み出す。
毛足の長い絨毯が敷き詰められているせいで足音はせず、小さな歩幅でちょこちょこ。
王都でも昨今見かける頻度の高くなった北方帝国系の子供が、真夜中の宴に紛れても摘まみ出されることも咎め立てされることもないという異常。
それだけ人倫の箍が外れた場だったから、寧ろ男娼の類と勘違いされて声を掛けられる可能性の方が高いぐらいかもしれず。
ちらりと横目で見るのでは飽き足らず、正面に陣取って絵画でも鑑賞するよう、じぃ…っと。
子供にしか見えない人外の物色が始まり。

ホウセン > 物色の成果があったかどうか。
成否が判明するのは、更に夜が更けた後で――

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からホウセンさんが去りました。