2021/01/19 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にシュティレさんが現れました。
シュティレ > 富裕地区と言う場所は、お金を持つ方々……富豪と言う方や、王城の周囲に住まいを手に入れることの出来ない程度の貴族が住まう場所で、私は、その場所の歩道を歩いております。
と言うのも、私の仮の住まいも、この周囲にある殻に外ならず、今宵は夜の散歩、と言う気分になりました。
何時振りでしょうか、外を何とはなく散歩をしようなど、と思ったのは。思い出す気は起きませんでしたが。
かつり、こつり、と私が歩く音、ヒールが石畳を軽く鳴らし、静かな夜の中に響いて消えていきます、この時間は人の往来はそれなりに少なく成るものです。
とは言えども、夜会の帰りの貴族や、冒険者、何某かの従事者などは、この時間も未だ歩いております、昼間に比べればとても少なくありますけれど。
そんな街の中を観察しながら、私は不意に、夜空を見上げます。
散歩の理由など、これが一番大きいと、自分でも判って居るのです。

 大きくて、まあるい、蒼い月。

私の国のそれと比べれば、とても、とても、眩しい位に蒼い月です。
私の国は常夜の国、月も優しい赤に包まれた、とても素敵な色の月です、此方の月はとても冷たく感じてしまいます。
寒さなどを感じぬ私の身にも、寒いという感情を呼び起こしてしまいそうな、蒼い月です。
その光が、星々の光と共に、この国を、この町を、この周囲を照らしているのでしょう。
ふぅ、と赤い唇から、溜息なのか、感嘆の吐息七日、自分でも判別のつかない息が零れて、消えていきます。
暫しの間、足を止めて、月を見て居よう、そんな思いに駆られ、私は、歩道の隅、月が良く見える場所で足を止めました。

シュティレ > 月は蒼白く、まあるい。私の国のそれとの違いは、其れこそ、色だけです、私の国の月は、紅く優しい光を落としてくれます。
この国でいえば夕方、黄昏時の様な……いいえ、もう少し赤いでしょうか。最近は全然国に戻ってはいませんので、思いを馳せてしまいます。
望郷の念という物なのでしょう、私は、自分で思うよりも、故郷などを恋しく思うタイプだったみたいです。
冒険者たちが私の事を不思議そうに眺めて、しかし、足を止めずに去っていきます、まあ、不思議だと思います、道の端で茫と月を見ている女は。
声を掛けないのは―――恐らく複数チームの中女性が居たからでしょう、仲間を気遣って、でしょうか。
それとも、私が普通ではないと気が付いたか、のどちらかでしょうが、私はどちらでも構いません、襲い掛かってこないのなら私から襲い掛かったり敵対する理由も積りもありませんから。

主から、私の役割を受けて、我が国の慮外物を追い、この国に来て。
一体どれだけの慮外物を捕まえ、送り返したのでしょうか、倒したのでしょうか。
判って居るのは、其れなりの数がこの国に流れていて私はそれらを送り返したという事。
今は、もうその役割は無くなりましたが、帰還の命令はまだ来ていません。
自由にしていいという事なのでしょう、だからこそ、私はここに居るのです。
そして、不思議なことに、未だ私に国からの支援が来ているのです、理由が判りません。

シュティレ > 考えても、仕方がないと、私は思いました。主は、何某かの意図を持ち私にこの国を散策させておきたいのでしょう。
放逐されたと考えるには、まだ早いです、放逐ならば連絡を一つよこして、支援を止めればいいのですから。
それを探るのもまた、私のするべき事、という事なのでしょうね、と軽く息を吐き出して、周囲を見回します。
人の気配の少ない、静かで瀟洒な街並み。
私の国ほどではありませんが、素敵といって良いレベルの街です。
ただ、其処此処で、嬌声が、性的なことが行われてばかりいるのは、頂けないと言えますが……この国の特色、なのでしょう。
その事自体には、私は感情を持ちません、好きにすればいいのです。ヒトは、好きな相手と交わり、子を成して増えていくのですから。

そろそろ、私の好奇心も、気分も落ち着いてきました。
屋敷に戻る事にしましょう、ゆっくりと良い睡眠をとれると思いますから。
誰かが私を見ているような気もしますが、見ているだけなら、見せていればいいのですし。
私は踵を返して、歩き始めます。
私に与えられた、この国での拠点である、屋敷へと。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からシュティレさんが去りました。