2020/08/15 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にビョルンさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にアイリースさんが現れました。
アイリース > 「……空いてますね」

日が沈む頃。富裕地区内の酒場に入れば。
そこは、決して混雑しておらず。
いや、むしろ快適な空き具合といった様子であった。
店員に促される、席を決めようとしつつ。

「どうしましょうか。カウンター?
 それとも、テーブルに?」

そこで、私は同行者にふりかえり、そう尋ねる。
静かな音楽の流れる店内。店の隅では、奏者がピアノを生演奏中。
さすがに富裕地区の店だけあるな、と思いつつ。
一応、周囲の客にも視線を向ける。

(……少なくとも、ヤバそうな気配の客はいない、かな?)

明らかな危険人物だの。怪しい雰囲気だの。
そういったものは感じない。店内には、私たち以外には数組の客のみ。
これなら、ゆったりとした時間が楽しめそうであり。
私は、同行者に笑みを見せる。

ビョルン > まだ夜はこれからという時間。
女を伴い足を踏み入れたのはバーラウンジといった趣の店だろうか。

「どこでも。
 欲を言うなら窓際がいい」

テーブル間も広く、高級感漂う店内。
既にピアノ奏者の指先は繊細なれど会話の邪魔にはならないような穏やかな旋律を奏でている。

給仕に引かれた椅子へと掛ければ、メニューに目を通している。
此処では無論、物静かな一面を見せて商家の嫡男の如き佇まいを醸し。

アイリース > 相手の言葉に、私は反対意見を口にしようとして。
そこで、ぐっ、と言葉を飲み込む。

(窓際だと、護衛がしづらいんだけど……!)

とかなんとか、ぎゃーぎゃーと騒いでは、店の雰囲気ブチ壊し。
それに、この相手と、今日は一日街を観光していた。
その最後の最後で、険悪なムード、というのは避けたく。

「では、テーブルで」

私は、相手の希望を了解し、店員に伝える。
そうして、窓際のテーブル席へと案内されれば。
そこでようやっと一息、であった。
幸い、相手と窓との間には、私が体を挟むことに成功した。

「……ん~……。
 いかがいたしましょうかね」

私も、相手同様メニューを見ながら思案。
基本的に、相手を護衛する必要があるので深酒は禁物。
だけど、せっかくなので、ある程度はお酒も味わいたいのだが。
などと考えつつ、相手の表情をちらり、と窺い見たり。

ビョルン > 護衛する側の気苦労などどこ吹く風。
引き留められねば己の選択のまま。

女越しに見る風景はもはや夜景というのだろうか。
給仕へ向けてとんとんとメニューを指差して

「一番高いのを頼む」と。

あとこれも、とひとつ上を指差した。
冷却魔法と風エレメント圧縮技術を駆使したクリームソーダ。
もう一つは半分凍ったミルクセーキ。
いずれも己のものでむろん、アルコールは入っていない。

どうする、と相手に視線を向け。

アイリース > そもそも私は、この相手に護衛を命じられてはいない。
あくまでも、自発的に行っているだけだ。
なので、それについて相手に感づかせたり、なんてことはしたくはないので。
まぁ、結果として相手の希望に従う、というのは。
そういう意味ではよかったのかもしれない。

「そうですね……」

相手が注文し、私に視線を向けてくるのなら。
私は、再度メニューに視線を向ける。
……当然といえば当然なんだけど。
あんまり、東の地の酒は置いてないなぁ。

「……では、オススメのシングルモルトを。
 あぁ、氷はいりません」

正直、こちらのお酒事情を知らない私としては。
銘柄の指定なんてできない。
なので、おすすめで、とお願いすることにした。
そうして、メニューを閉じ。相手に再度笑顔を見せ。

ビョルン > 女がウイスキーを注文したと見れば追加でトマトのブルスケッタとローストビーフのサンドイッチも頼む。

陽が落ち、街は夜の空気を纏う頃。

注文したものが運ばれる間も特に話題を探すこともなく、かといって機嫌悪そうにもなく。
場所に似つかわしく姿勢よく座っている。

「たまには、」

ぽつりと口を開いて続ける。

「都を離れてどこかへ行きたい、とか思わないか」

アイリース > 私の注文を聞き、追加注文をする相手。
む? と首を傾げつつも。
私は、店の中に流れる音楽を聞きつつ、相手のことを見ていた。
しばし、黙っていたのではあるが。

「……はぁ」

相手の突然の言葉を聞き。思わず中途半端な返事。
そのまま、しばし顎に手を当て、考えてみるが。

「難しいですねぇ。その質問は。
 ほら。私はもう、ある意味。
 故郷を離れていますので」

ん~、と考え込みつつ、言葉を選ぶ。
この相手に、あまりウソだのお世辞だのは好まれないと思うので。

「……恒久的に、ということでないのなら。
 時々、旅に出たい、というのはありますよ」

こう言ってしまうと勘違いされそうだが。
私は、わりと自分の実力に自信がある。
なので、世界を旅して腕試ししたい、という思いもあるし。
それとは別に、見聞を広めたい、と思わないでもない。
だが、旅をし続ける人生、というのは。
ちょっと面倒そうだなぁ、なんていう思いもあるのであるが。

「どこかへ行きたいので?」

突然の問いだったので。
私は、相手にそう確認してしまう。

ビョルン > 酒だけを頼むのは野暮だから、と。
見栄でも人数分は飲み物も食べ物も頼めというのは養父の教育で、またこれを疑うことなく育った故。

ウイスクー、クリームソーダ、ミルクセーキ。
一品ずつ飲み物が運ばれてくる。
料理もそれに続くのだろう。

女の話を黙って聞く。
故郷を離れている、というくだりでは納得したような顔で頷き。

「旅か──…、」

言葉を切ってゆるりと首が傾ぐ。

「とは言っても、俺は18年間都の外では眠りについたことがないから……」

いつも都の中ばかり連れまわしていることに不満はないか聞いてみたが、かたや己は『異郷とは』の段階であった。
異邦からの女をじっと見て、ふたつのグラスへストローを差し。

アイリース > 当然ではあるが。
良い酒には、良いアテが必要である。
互いが互いの味を引き立てるということもあるし。
悪酔いを防ぐ効果もあるからだ。

「……」

届いた飲み物を横目に、私は、ウイスキーを取りながら。
クリームソーダ。ミルクセーキに意識を集中し、香りを嗅ぐ。
……うん。少なくとも、においのする毒は入っていない様子。

「寝れないんですか?
 街の外では」

もしや、そういうクセや、精神的な問題があるのか、と。
そう考えつつ、尋ねてみる。
相手が飲み物にストローを差したのなら。
私は、グラスを軽く掲げて見せ。

「では。乾杯で」

と言い。美しい琥珀色を、口内へと流し込む。
一気に鼻へと抜ける、芳醇な樽の香り。
目を閉じ、その熟成年数に思いを馳せつつ飲み込めば。
くっ、と力強いパンチ。

「……割とスモーキーなタイプですね」

その味のダイナミックさに満足しつつ。
そんな感想を漏らしてみたり。

ビョルン > 「いいや」

ストローでソーダ水を一口飲んでアイスクリームを碧いシロップに色づいたソーダの海に押し込んで沈めては浮き上がらせる。

「そもそも、他所での泊まりを画策したことがない」

ダイラスや九龍での用事があっても結局は夜っぴて馬を走らせるか馬車に乗り込んでいるか。
縄張りを持つということに随伴する厄介事だと思っていた。

乾杯の声にはグラスを少し持ち上げて応える。
そうして酒についての感想には、そうかいと頷いて。

「こっちは甘いけどソーダ自体はさっぱりとしているよ。
 アイスクリームは手間をかけるには相応しいくらい、砂糖も牛乳も良い物を使っているようだ」

アイリース > 「……それはなんとも」

相手の告白に、私は少なからず驚く。
いや、もしかするとこの国ではそれが当然なのかもしれないが。
特定の地域でしか宿を取らない、というのは。
なかなか、珍しいと私には思えた。
……そこで少し考え、相手の立場などに思い至れば。
納得できない話でもないのだが。

「さすがに富裕地区、と言ったところですね。
 こうなると、ブレンデットや、同じところのダブルカスクも気になります」

……正直言うと。私は酒には目がない。
そりゃあ、身を持ち崩すほどに飲んだくれたりはしないが。
手間のかかったこの生命の液体は。
それはもう。美味しいのだ。なんなら、不味い酒にも魅力がある、とすら思えている。
これだけの酒を出せる店なのだから。
相手の飲み物も、さぞや美味しいのだろう。
そう思いつつ。私は、もう一口、ウイスキーを流し込む。

ビョルン > 「だが、良ければどこか連れて行ってくれよ」

枕が変わると寝れない等の気質の問題でもなく。
今夏は何処かへ行くのも悪くないかもしれない。
『どこか』と少し強調して繰り返した。

「ソーダのシロップは純度の高い砂糖を使っている。
 糖蜜の気配を感じないくらいだ、と、すればこの値段でも悪くはない。
 これはミルクセーキにも期待が出来る」

己は酒はまだ嗜まぬから、嗜好品といえば甘味に向く。
一旦グラスの水を飲んでからミルクセーキに手を伸ばす。

アイリース > 「そうですねぇ……。
 いくらアナタが立場ある、といえど。
 職務に縛られすぎるのもよくないと思いますし」

息抜きの他、その土地での夜、というものも知らなくては。
完璧に見聞を広められている、とは言いがたい。
コレに関しては、ちょっと考えてみてもいいのかもしれない。

「……ふふっ」

相手の饒舌な様子に、思わずほほ笑んでしまうが。
まぁ、気持ちは分かる。
私も甘いものは好きだし。
私は、サンドイッチをはむ、とつまみつつ。
ウイスキーを一気に飲み干し。

「……どこか。ですか」

連れて行ってくれ、と言われたどこか、に思いを馳せてしまい。
そう、呟いてしまう。
……実際、考えてみるとどこにいけばいいのやら。
ちょっと、迷ってしまう。

ビョルン > 口にはしないけれども、現在は短期間であれば安心して己の縄張りを任せられる幹部も居る。

「それはそうと。
 あやめ、お前の育った国というのはどんな場所なんだ」

海の向こうや山の向こうに何があるともまだ実感はない。
断片的に聞きかじってきた相手の祖国の文物に関してはさながら絵本の中の世界の様に思える。
それでもまた、何かを聞き出そうと問いかける。

そうしてから、凍りかけたような、または溶けかけたような塩梅のミルクセーキをストローで飲む。

「嗚呼、これも美味しいもんだな。
 砂糖の雑味のない甘さは変わらずだけれど、クリームの味に少し変化がある。
 発酵乳のようなコクが少し──、うん、いいな」

メニュー自体が珍しいが、特に値段相応以上の価値を感じて頷く。
そうして旅の話には、

「どこか、と一口に言っても広いんだろうな」

と嘯く。

アイリース > 「……難しいですねぇ。その質問も。
 ……こちらの国ほど、栄えている、という感じはありません。
 自然が豊かで……あぁ、でも。小競り合いが多くって」

相手からの質問に、私は故郷の話をする。
と、言っても。いざ話をするにしても、語れることなどあまりない。
コッチの国が、ちょっと面白すぎるのもあるし。

「ふふっ。本当に美味しそうですね」

相手の様子がほほえましいので、思わず私はそんなことを言ってしまう。
別段、からかうつもりもないのだが。
ついつい、そんな口調になってしまった。

「……そうですね。
 でも、だからこそ。楽しみでもありますよ」

相手の言葉に、私は同意しつつも。
その、広い世界に相手と歩んでいくことを思って。
前向きな一言を添える。
……実際。どこに行くのがいいのか。思考は尽きないが。

ビョルン > 「まぁ、無論漠然とした質問なんだろうけど」

別の忍に、修行した隠れ里に関して聞いた時とあまり変わらぬ答えが返ってくる。
王都の歴史に関しての書物は多けれど、帝国ですらない東の小国に関しては実際にかの地を踏んだ者から聞く以外に知るすべはない。
侵略戦争よりも小規模な内紛の多い国だ、といった情報は共通していたので妙に納得した顔で頷く。

「そりゃ──たまの贅沢だもの」

甘い口にトマトのブルスケッタ放り込んで咀嚼し、次はまたクリームソーダのグラスに手を触れる。
マドラースプーンの先でアイスを掬って口へ運ぶ。

「どこか旅行初心者向けの──そういう所から始めるか」

いきなりの長旅は難しいだろう。
グラスの中の桜桃を口に入れ。

アイリース > 「いえ、本当に。
 故郷のことを語れ、となると。
 なかなかどうして。難しいもので」

結局のところ、語れるのは。
美しい自然、だとか。絶えない争いだとか。
そういうことになってしまう。
……後は、こちらの国に比べて、割と食が独特、とか?

「えぇ、そうですね。
 ……なかなか。こんな穏やかな時間は」

過ごせないなあ、と思いつつ。
私も、サンドイッチを食していく。
……なにげに。食のレベルも高いなぁ、このお店。

「そうですね。
 だとすると……どこにしましょうか」

相手の言葉に同意しつつ。
と、なると。まずはやはり近場から、だろうか。
そんな風に、色々な候補地を考える。
……できれば、安全なところ、だな。

ビョルン > 「うん。
 逆に都を語れと言われても──ここを出ない者の身には厳しい」

そう命じられたとしてまず口をつくのは『多様性』だろうか。
そしてそれを語ってしまえばそれ以上の特徴を見つけるのは難しい。

ピアニストは変わらず、目立たないながらも心地よい旋律を奏で続けている。
夜が更けていくにつれ、ぽつりぽつりと酒を酌み交わし歓談を始めるテーブルが増えていく。

そんな中、旅行先を考えている女の向かい側。
しばらくむっつりと考え込むように黙りこくり何か言いたそうな顔をしたり苛立たし気に眉根を寄せたり百面相。

アイリース > 「ですよねぇ……」

相手からの返答に、苦笑してしまう。
難しいのだ。人に、『あたりまえ』を説明するのは。

辺りを見れば、ちらほら店内が混み始めてきた。
ふぅ、と私は息を吐きつつ。
相手と見詰め合うような形になって。

「……ふふっ。お互い、悩んでる、という感じですかね。
 それとも、他に何か気がかりが?」

くすくすと笑いつつ。
私は、周囲にも意識を向けておく。
幸いにも、敵意は感じないので。おそらく危険はない。

ビョルン > 女の問いかけにも答えず難しい顔つきをすること暫し。

その後伏せがちだった瞼がぱちっと開き、ほんの瞬間にこりと笑む。
テーブルに両肘をついて相手側へ身を乗り出すようにして、

「できた」

と一言。
徐に口を開けば下の中央に結び目のできた桜桃の茎がある。

アイリース > 「……ぷっ」

相手が何をしていたのか、とまじまじと見ていれば。
なぜか、口を開いて、見せてくる残滓。
思わず、吹き出してしまい。

「あははははっ。なんですか、それ。
 まったく……案外におちゃめなんですね」

確か、一説によると。
相手のしたことは、キスが上手な人間の証明、だったか。
実際のところがどうなのかは知らないけれども。
ずいぶんと可愛らしいことである。

ビョルン > 「褒めてくれよ、
 器用だってさ」

尖らせた唇から括り目のある茎を舌先で押し出して指先で抓み取ってはコースターの端に置いた。

「案外? どうだろうな」

汗をかいたグラスから飲む飲み物のまた美味であった。
けれどどちらも溶けきらぬうちに賞味して、頼んだ軽食類も食べつくせば給仕に向かいひらりと手を上げて会計を頼む。

マネークリップで束ねた紙幣で支払いを終えれば、この店を出て女と暮らす塒へ向かうだろう。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からアイリースさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からビョルンさんが去りました。