2020/07/01 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/街路」にルシュ・アシドさんが現れました。
■ルシュ・アシド > 降り続く小雨が身体を濡らすのも構わず、長身の男は一人、海沿いの煉瓦道を歩いていた。
貴族の開いたサロンに招かれ、いくらかの商談を成功させたまではいつもと変わらぬ日常と言えたが、
その後、ニヤけ面の男たちの誘いを断るのは骨であった。
聞けば、これから連れ立って娼館に行くのだという――しかも、貧民地区のそれへと。
どうやらプライドの高い高級娼婦ではなく、明日の食にさえ困る女たちに小金をチラつかせて無理を強い、
尊厳を踏みにじる行為が彼らの間で流行しているらしかった。
――吐き気がする。
怒りよりも、その下卑た性根に尚も笑みを向けなければならない己への嫌悪が胸にこびりつき、男の足取りを重くしていた。
従者に連絡することは容易だったが、今は馬車を呼ぶ気にもなれない。
やがて道筋に沿って備えられた鉄製のベンチに腰を下ろすと、瞼を閉じ、祈るように天を仰いだ。
嗚呼――雨がもっと降り注いで、この国のすべてを洗い流してくれればいいのに――と。
■ルシュ・アシド > 垂れこめる銀糸のような細い雨の中を、男は再び歩き出した。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/街路」からルシュ・アシドさんが去りました。