2020/06/24 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2 公園」に竜胆さんが現れました。
竜胆 > マグメールの富裕地区にある公園は、それなりに広く、子供たちが遊びまわるのに適していると言える場所。
 その場所に、大きな狼犬を連れた一人の少女がやってくる、深紅の髪の毛を持ち、蒼い竜眼で白い肌をしている。オープンバックのドレスを身に着け、その背中には竜の翼が生えていてドレスのスカートの部分からは、竜の尻尾が生えている。
 人竜だと隠すことなく、街を闊歩している姿は、堂々としていて、自分に自信があるのが見て取れる、そんな少女だった。
 公園を進んで、ある程度歩けば、周囲にあまり人がいないことを確認し、連れて来た狼犬のリードを外した。

「行ってきなさい、グリム。」

 軽く腰をなでて、言葉を放てば、狼犬はぅおん、と大きく一つ鳴いて、走り出す。犬の散歩に見えるだろう、犬の散歩なのである。
 そして、犬を離して走らせ始めれば、少女は一つ溜息を零して、ゆるりとした動きで、公園のベンチへと進む。
 手近なベンチに近づけば、そっと腰を下ろして、少女は本を開く。
 その本を、見るものが見れば、魔導書だということが判る代物、魔導士が己の人生かけて作り上げる研究の集大成。
 書物自身が魔法のアイテムであり、魔力が宿り、それが自動的にめぐる物、力のない物が手にすれば破滅すること間違いのない物騒なものだ。
 それを開き、少女は、その本が、それこそ料理本か何かかの様に気軽な様子で視線を這わせ読みふける。

竜胆 > 「―――。」

 書物をめくる、中に書いてある文字は、魔力を持ち、読み手を侵食しようとする。それが、魔導書と言うものが、危険だと言えるものなのである。
 読んでいるものを幻惑し、自分の手足にするのが魔導書、それを跳ねのけて初めてその研究の一端に触れることができる。
 魔導書を持つものは、魔導書に囚われることが多いのは、恐らくそのせいなのだろう、少女は竜であり、人ではないからこそ、その竜眼で本を読むことができる。
 今回読んでいるのは、治療に関する魔法を研究している魔導士の遺した魔導書である。
 治療の魔法の魔導書が、人を侵食するとは、ウィットが聞いているわね、なんて小さく少女は口を吊り上げて笑って見せる。
 様々な魔法のアレンジが乗っている、傷を治すだけではなく、傷を残し治療する方法、残さずに治療する方法、毒などの解毒や、石化の解除。
 様々な状態に対し、効果のある魔法を一つ一つ乗せてある。
 この本の著者は、本当はどのような状態でも、一瞬で元に戻す魔法を模索していた模様。


 ―――生き返りを、目標とし、挫折したのだろう。少女は、そんな魔導書を、はらり、はらり、と一枚、一枚静かにめくる。
 その目は座っていて、興味を全く持って、揺らしていない。
 回復は兎も角、生き返りなど、と鼻で笑ってしまう、そんな状態である。

竜胆 > ぺらり、ぺらり、魔導書をめくる指がぴたり、と止まる。
 そのページは、詠唱に関する魔導師の見識が書いてある部分であった。回復魔法と言うのは基本的に一刻を争う状況が多いので、詠唱の破棄や省略は研究に値するのだろう。
 書き込まれている部分に、指をあてて、ゆっくりと読むことにする。何故ならば、魔法と詠唱は切っても切れない所であり、故にそれは基礎と言えるべき場所。
 それを、魔導書で改めて研究しているこの魔導師の見解が気になったというのが大きい。
 その魔導書によると。

「………ふぅん?」

 中身は、とても興味深いものである、実践してみると面白そうだ、とは言っても、都合よく怪我をした人間がいる様子はない。
 しかし、怪我をしてる人がいて、怪我を治すつもりがあるのかと言えば―――無い。
 何故そんなことをしなければならないのか、と女は思うのだった。人を癒すなどと言う高尚な性質など無いのだ。

「別の魔法で、試してみることにしようかしら。
 いろいろな実験は、出来ないわけでも、ないし。」

 ふむ、と少女は考えを這わせる。家で、と思ったが家の魔法を後から変な魔法で壊しても仕方がない。
 どこか丁度良く実験に良い場所が無いだろうか、と。

竜胆 > 「………ま、いいわ。」

 急いでやるべきことではない、まずは研究、其処からの推測など、色々と先にするべきことはある、魔法とは、物理ではないのだ、知ったから実践とか、頭悪いにもほどがある。
 何故を突き詰めて、其処から理解を得て、その後に実験、そしてからの、実践だ。
 被害の少なさそうな種別―――エンチャントなどで、実験してみるのもいいだろうし、まずは、どの魔法で実験するか、から考え始める必要がある。
 ぱたんと、魔導書を閉じて、少女はハンドバッグに本を片付けて、視線を動かす。
 いまだ元気に広場を走り回り、転げまわり、遊んでいる狼犬グリム、無駄に元気ね、と軽く息を吐き出しながら、左手を持ち上げる。


 ―――パチン、と指を鳴らす。


 グリムがその音を聞きつけて、こちらの方を見る。まだ遊びたーいとその目が語っているけれど、にっこりとほほ笑んで黙殺。
 ほらはよ戻って来い、と、言葉にせずに脅す。竜胆の尻尾が地面をぶったたく。びしぃ、と地面が抉れて、少女の不機嫌を表した。
 渋々、と言った様子に、狼犬グリムが、戻ってくる。
 その首輪に、リードを付けなおして、少女は立ち上がる。
 さて、と軽く伸びをしてから、少女は、狼犬を連れて、夜の公園を去っていく―――

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2 公園」から竜胆さんが去りました。